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第4話:清楚ビッチ(純情)【※漫画版、無料のWeb連載開始!】

極悪貴族、謙虚堅実に無双する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~ — kakuyomu.jp · All chapters

第4話:清楚ビッチ(純情)【※漫画版、無料のWeb連載開始!】

【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】

本日、極悪貴族のコミカライズが、ニコニコ漫画(https://manga.nicovideo.jp/comic/77864)とカドコミ(https://comic-walker.com/detail/KC_008774_S)で始まりました!(こちら無料のWeb連載です!)

ホロウや馬カスが、『圧倒的な超画力』で描かれているので、どうかぜひ見てみてください!

どちらの漫画サイトも登録なしで読めるのですが……アカウントを持っている方は、本作を『お気に入り登録』して、『いいね』ボタンを押して応援いただけると嬉しいです!

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ボクは色欲の魔女リゼを連れて、ボイドタウンの『工業地区』を進む。

一応、エンティアにも声を掛けたんだけど……「ビリビリ女と一緒なんてごめんだわ」と断られてしまった。

人間、合う合わないがあるから、こればかりは仕方ないね。

目的地へ向かう道中、リゼが話し掛けてきた。

「……ねーぇ」

「なに?」

「私たちってさ、その……『家族』、なのよね?」

「うん、そうだよ」

ボイドタウンのみんなは、ボクの大切な 家族 ( コレクション ) だ。

「前にも少し話したと思うんだけど……。私、小さいころからの『夢』があるの」

「どんな夢?」

「結婚式は海の見える小さな教会であげたいなぁって」

「いいんじゃない、ロマンチックで」

「ほ、ほんと? ありがと……っ」

リゼは頬を赤く染め、幸せそうに微笑んだ。

その後、子どもは何人欲しいかとか、仕事と家庭の優先順位とか……。

まるで夫婦のような話をしながら歩いていると、正面に木造二階建ての立派な建物が見えてきた。

「さっ、着いたよ」

「ここは……?」

「ボイドタウンの新施設、『鍛冶工房』だ」

扉をノックして中に入るとそこでは、大勢のドワーフたちが武具を打っていた。

「洞窟に住むドワーフが、どうしてこんな街の中に……!?」

「ふふっ、いろいろとあってね」

トネリ洞窟のドワーフたちは全員、ボイドタウンに住むこととなった。

当然、 拉致 ( らち ) ってきたわけじゃない。

ボクは 人権派 ( じんけんは ) の極悪貴族だからね。

他の凶悪な犯罪者と違い、ドドンたちは自らの意思で、虚空界に移住すると決めたのだ。

(ドワーフは鍛冶師、代表的な『生産職』)

その戦闘力は極めて低く、魔獣と遭遇した場合、逃げることしかできない。

さらに人界では、亜人差別が 蔓延 ( はびこ ) っており、人間社会に上手く馴染めない。

だから彼らは、狭い洞窟の中で一生を過ごす。

外へ出るのは、街へ酒を買いに行くときなど、特別な事情があるときだけだ。

ボクは思った。

(どうせ洞窟から出られないのなら、ずっと外敵に怯え続けるぐらいなら、安全なボイドタウンに引っ越した方がよくない?)

もちろん、デメリットもある。

虚空界に入ったが最後、二度と 娑婆 ( しゃば ) には戻れない。

でも、広くて賑やかな街or狭くて物寂しい洞窟。

どちらが住みやすいかと問われれば……個人的には、前者だと思う。

(それに何より、ドワーフに武具の製造を頼むとき、わざわざトネリ洞窟まで行くのって、地味に面倒なんだよね……)

彼らとは今後も長い付き合いになるし、ボイドタウンにいてくれた方が 捗 ( はかど ) る。

っというわけで三日前――第六章が始まってすぐ、ドワーフの族長に交渉を持ち掛けた。

「ドドンよ、『理想郷』に興味はないか?」

「理想郷ぉ? 急になんの話だ?」

「実は今、とある秘境に街を作っていてな。腕の立つ鍛冶師を探している」

「そらぁつまり……」

「あぁ、ドワーフ族を招待したい」

ドワーフは典型的な 直情型 ( ちょくじょうがた ) だから、下手に言葉を飾らず、単刀直入に用件を伝える。

「こちらが望むのは、理想郷への移住とトネリ洞窟の採掘権だ。その見返りとして、最高の労働環境・月額制の給与制度・万全の治安を提供しよう」

「ふむ……悪い話じゃねぇな」

「しかし、理想郷は『片道切符』。一度足を踏み入れたが最後、元の世界には戻れない。このデメリットを踏まえたうえで考えてくれ」

その瞬間、ドドンの顔が固まった。

「二度と、か……?」

「あぁ、もう 娑婆 ( しゃば ) の空気は吸えん」

将来、この方針が変わる可能性はゼロじゃない。

特にドワーフ族みたく善良な協力者には、『外出制度』的なモノを設けたいと考えている。

しかし、予定はあくまで未定。後々トラブルになっても嫌だし、厳しめの条件を伝えることにした。

「うぅむ……少し時間をくれ。儂だけでは判断できん事案じゃ」

ほどなくして、ドワーフ族が全員参加する、緊急会議が開かれた。

「――っというわけじゃ。ホロウの作った新しい街に移住するかどうか、 皆 ( みな ) の 忌憚 ( きたん ) なき意見を聞かせてくれ」

ドドンの説明が終わると、小さくないざわめきが起こった。

「おいおい、街に住めるってマジか!?」

「儂は行くぞ! この湿っぽい洞窟とおさらばじゃ!」

「待て、 逸 ( はや ) るな。トネリの採掘権は、儂等の生命線だぞ?」

「しかし、元の世界に帰れんとは、いったいどういうことだ……?」

酒を片手に議論しているのが、『Theドワーフ』って感じで面白い。

(さて、ボクも参加させてもらおうかな)

せっかくここまで来たんだし、手持無沙汰ってのもアレだしね。

「ドワーフ諸君、此度の理想郷移住に関して、何か質問のある者はいるか?」

ボクが質問を募ると、バババッと手があがった。

「ホロウさんよぉ、月額払いってぇ話だが、具体的にいくらなんだ?」

「表の世界換算で50万ゴルドほどと思ってくれ」

「そ、そんなにもらえんのかっ!?」

ボクは「仕事には相応の対価を支払うべき」という考えなので、自分が適正だと思う額を提示しただけなんだけど……。

これまで人間に 搾取 ( さくしゅ ) されてきたドワーフにとって、かなりの大金だったらしい。

「奴隷のように働かされるとか?」

「一日八時間、週休二日制だ」

「クソホワイトじゃねぇか……っ」

まぁ、たまに残業とかはあるけど……。

うちの福利厚生は、世界でもトップクラスだと思う。

「その理想郷ってのは、クライン王国にあるのか?」

「悪いが、街の在処は機密事項でな。ただ、住民の数は五千を超えており、高い満足度を誇っている、と言っておこう」

「ふむ、なるほどのぅ」

先日ルビーの提案で実施された、『ボイドタウン生活調査』によると――住民の満足度は、なんと驚異の100%!

凄いね、不正の臭いがプンプンだ。

その後、どんな酒が売っているのか、ドワーフ差別はあるのかなど……いくつかの質問を経て、ついに決断が下される。

「では、採決を取るぞ。ホロウの街――理想郷に移住するか否か。賛成の者は挙手を」

ドドンの声に応じ、

「「「おぅ!」」」

全員が一斉に手をあげた。

「――よし、決まりじゃな!」

ドドンが微笑むと同時、

「今日はめでたい日じゃ! しこたま呑まねばな!」

「何を言う、いつも呑んだくれておるじゃろう!」

「がっはっはっ、 違 ( ちげ ) ぇねぇ!」

どんちゃん騒ぎが始まった。

トントン拍子に話が進んで、こちらとしては助かるんだけど……一つ気になることがあった。

「俺のことを疑わないのか?」

ボクの持ち掛けた話は、ドワーフ族にとっておいしいものだ。

騙されている、とは思わないのだろうか?

「確かに、あんたは邪悪な顔をしているが……ゾルドラ家のクズどもとは違う!」

「あの豪快な呑みっぷりを見りゃわかるってもんよ!」

「『 蟒蛇 ( うわばみ ) のホロウ』を疑うわけねぇ!」

どうやらボクは、自分が思っているよりも、ドワーフの信頼を得ていたらしい。

まさか第四章の『呑み比べ』が、こんなところで活きるとは…… 僥倖 ( ぎょうこう ) だね。

「つーわけで、よろしく頼むぜ、ホロウの旦那!」

ドドンが無骨な手を伸ばし、

「こちらこそ、よろしく頼む」

ボクはそれをしっかりと掴んだ。

っとまぁそういうわけで、トネリ洞窟のドワーフたちは、ボイドタウンに移住し――現在に至る。

(よしよし、いい具合に稼働しているね!)

色欲の魔女リゼを連れて、鍛冶工房を視察していると、

「おぅ大将、ここは最高の場所だな!」

「酒はうまいし、治安もいいし、亜人差別もねぇ!」

「自由に外を歩き回れるなんて、まるで夢のような話じゃぜ!」

すれ違うドワーフたちから、絶賛の言葉が寄せられた。

(ふふっ、そうだろうそうだろう?)

自分の街を褒められるのは、思いのほかに気分がイイものだった。

嬉しい気持ちに包まれながら、工房の最奥へ向かうとそこには――ドワーフ族の長がいた。

「やぁドドン」

「ん……おぅ、ホロウの旦那じゃねぇか!」

「三日ぶりだね。もう街には慣れた?」

「あぁ、ここはまさに理想郷じゃぜ!」

「ふふっ、それはよかった」

軽く世間話をしていると、ドドンがボリボリと後頭部を掻いた。

「ときに旦那、一ついいか?」

「なに?」

「そっちの 別嬪 ( べっぴん ) さんは、どこぞのお姫様じゃ……?」

ドワーフたちはみんな、リゼに釘付けとなっていた。

彼らは種族的特性として『女好き』だから、仕方のないことだろう。

「色欲の魔女リゼ、こう見えてけっこう強いから、変なことをしちゃ駄目だよ?」

「私はボイドの 妻 ( モノ ) 、妙な勘違いはしないようにね?」

リゼは柔らかく微笑みながら、威嚇とばかりに帯電してみせた。

「「「お、おぅ……っ」」」

魔法に疎いドワーフにも、魔女の強さは伝わったらしく……ドドンたちは顔を引き 攣 ( つ ) らせた。

「挨拶はこの辺りにして、そろそろ『本題』へ入ろうか」

ボクはコホンと喉を鳴らし、みんなの注目を集める。

「キミたちを雇ったのには、二つの理由があってね。一つは、高品質な武具を量産してもらうこと。そしてもう一つは――『原初の剣』を打ってもらうこと」

「原初の剣……まさか!?」

「前にも一度、見せたっけね」

右腕を漆黒の渦に突っ込み、『自慢のコレクション』を取り出す。

「―― 神魔断罪剣 ( じんまだんざいけん ) 。遥か原初の時代、神が打ったとされる、至高の一振りだ」

「「「おぅふ……っ」」」

ドドンたちの口から、 艶 ( つや ) っぽい吐息が漏れた。

「これは刀剣における一つの到達点。キミたちにはいつか、このクラスの武具を打ってもらいたい」

「う、打ちてぇ……っ」

「確かホロウの旦那は、『原初の製法』を知っているんじゃったな!?」

「頼む、教えてくれ! どうすれば、あんな剣を打てるようになるんじゃ!?」

大興奮するドワーフたちへ、シンプルな答えを伝える。

「『原初の剣』に至る道は一つ――ただひたすらに打つことだ。と言っても、ゾルドラ家が命じたような安い仕事はいらないよ? 今の自分が打てる、最高の武具を作り続けるんだ」

努力 ( レベリング ) の成果は、『質』×『量』。

雑な仕事を繰り返して、数だけをこなしても駄目。

一つの武具に没頭して、時間を掛け過ぎても駄目。

大切なのは、バランスだ。

「ボクは、キミたちが最高の仕事ができるよう、完璧なバックアップ態勢を用意する。手始めに、『ランキング制度』を作ってみた」

「「「ランキング制度……?」」」

「そっ。人間、普通に仕事をするだけじゃ、どうしてもダレてしまうからね。 修業 ( レベリング ) の効率を上げるために『 競争 ( ゲーム性 ) 』と『 人参 ( インセンティブ ) 』を取り入れるんだ」

人差し指をピンと立て、簡単に説明を行う。

「キミたちはこれから、修業と労働を兼ねて、大量の武具を打つことになるんだけど……。そのうえで月に一つ、自分の打った『最高傑作』を提出してもらう。ボクがそれを< 鑑定 ( アプレーザル ) >で評価し、順位を付けていくんだ」

「「「ふむ」」」

「そして、その月で最も優れた武具を打った者、すなわち『月間第一位』を獲ったドワーフには―― これ ( ・・ ) をプレゼントしよう!」

右手を漆黒の渦に突っ込み、『とある素材』をバッと引き抜く。

次の瞬間、

「「「な、なんと……っ!?」」」

ドワーフたちに衝撃が走った。

7月のランキング第1位の報酬、それは――『 夜龍 ( よりゅう ) の牙』。

第三章の途中、闇オークションのイベントで 競 ( せ ) り落としたモノだ。

「あれはまさか、夜龍の牙……!?」

「市場価格2000万を超える『原初の素材』……っ」

「な、なんと豪華な景品じゃ……ッ」

ドワーフたちの視線は、夜龍の牙に釘付けだ。

どうやら『鍛冶師の血』が騒いでいるっぽいね。

「もちろん、ランキング報酬は、これだけじゃないよ? 第2位~第10位にも、豪華なモノを用意している。……どうかな、ちょっとした動機付けになったら嬉し――」

刹那 ( せつな ) 、

「「「――うぉおおおおー!」」」

凄まじい雄叫びが、虚空界に木霊する。

「最っ高じゃ! ここは鍛冶師の理想郷――否、天国じゃ!」

「ホロウの旦那! あんたには、感謝の言葉もねぇぞぃ……!」

「やるぞ、やるぞやるぞやるぞ! 夜龍の牙は、儂がいただく!」

ドワーフたちのモチベーションが限界を突破した。

(ふふっ、これは想像以上だね!)

彼らなら、本当に原初の剣を打ってくれるかもしれない。

ちなみに……この 月間報酬 ( ごほうび ) は元々、ドワーフたちにプレゼントする予定の素材だ。

ただ、そのまま「はいどうぞ」と渡しても面白くないので、勤労意欲を煽るための 人参 ( にんじん ) にさせてもらった。

(ボクは生産性が上がって嬉しいし、ドワーフたちも遣り甲斐が増して嬉しい)

みんなが幸せになる、Win-Winのシステムだね。

ボクが満足気に頷いていると、服の袖がちょいちょいと揺れた。

「ねぇボイド、私に『手伝ってほしいこと』があるんじゃなかったの?」

手持無沙汰のリゼが、 所在 ( しょざい ) なさげに口を開く。

「うん、キミに頼みたいのはここからなんだ」

ボクはそう言いながら、ドワーフの族長に目を向ける。

「ドドン、これからちょっと実験したいことがあってさ。 同じ ( ・・ ) 技量 ( ・・ ) のド ( ・・ ) ワー ( ・・ ) フを ( ・・ ) 二人 ( ・・ ) 、ここに呼んでもらえないかな?」

「あぁ、お安い御用じゃ」

彼はコクリと頷き、ドワーフAとBを連れてきてくれた。

今からこの二人には、『剣の強化』をしてもらう。

市販の剣に魔水晶を打ち込み、魔法攻撃力を高めるという、ロンゾルキアの世界で一般的な鍛冶だ。

「それじゃ、始めてくれ」

ボクの言葉を受け、

「「おぅ!」」

二人のドワーフは、作業に取り掛かった。

まずは 鍛冶炉 ( かじろ ) で剣を熱し、刀身が 橙色 ( だいだいいろ ) になったところで、サッと 金床 ( かなとこ ) へ移し――魔水晶をあてがえて打つ・打つ・打つ。

鉄の 槌 ( つち ) が振り下ろされるたび、甲高い音が響き、火花が散った。

(おぉー……っ。 生 ( なま ) の鍛冶は、迫力があるね!)

灼熱の刃に魔水晶が溶け、淡い光がじんわりと滲み出すと、

「「――よしっ!」」

ドワーフA・Bは、同じタイミングで 鍛錬 ( たんれん ) を終え、魔力の籠った錬金溶液に 浸 ( ひた ) した。

ジュゥーっという唸り声が響き、白い蒸気がモウモウと立ち昇る中、

「リゼ、今だよ」

「えぇ――<未来の 色見 ( いろみ ) >」

色欲の魔女が、 ドワ ( ・・ ) ーフ ( ・・ ) Aに ( ・・ ) のみ ( ・・ ) 固有魔法を使った。

その結果、とんでもないことが起きる。

(ふふっ、 やっぱり ( ・・・・ ) そうだ!)

ボクは微笑み、

「「「な、なんと……!?」」」

ドドンたちは驚愕に目を見開く。

ドワーフAの剣は、刀身に強大な魔力が宿った素晴らしい一振り。

ドワーフBの剣は、刃先に薄っすらと魔力の走ったまずまずの一振り。

同じレベルの鍛冶師が、同じランクの素材を使い、同じ設備で打ったにもかかわらず、その仕上がりには 雲泥 ( うんでい ) の差が生まれていた。

(ロンゾルキアの鍛冶には、『ランダム性』がある)

その内訳は、失敗・成功・大成功・超成功・ 極大 ( きょくだい ) 成功の五段階、ゲームにおける定番の設定だ。

(リゼの<未来の色見>は、因果干渉系の固有魔法。『最善』と『最悪』の未来を選択・実現できる……)

この特異な力を鍛冶に応用できないかなと考え、ちょっと実験したみたところ――結果は大成功!

「ホロウの旦那、これはいったいどういうことだ!?」

混乱するドドンへ、簡単に説明する。

「リゼは<未来の色見>という珍しい魔法が使えてね。因果律に干渉して、最高の結果を引き出せるんだ」

「い、いんがりつ……?」

「えーっと、『運をあげる魔法』ってところかな? とにかく、彼女の魔法を受ければ、イイ鍛冶ができるんだよ」

「ほぉ、そりゃ凄いのぅ!」

ドワーフは魔法に 疎 ( うと ) い種族だから、これぐらいザックリした説明の方が、きっとわかりやすいだろう。

(市販の武具を軽く強化しただけなのに、けっこう性能が上がるもんだなぁ……)

ドワーフAの打った剣には、極大成功を引いたそれには、高い魔法攻撃力が宿っている。

もちろん、神魔断罪剣とは比較にもならないけど……王国軍の武具よりも遥かに高性能だ。

(ラグナの呼び出した不死の 軍隊 ( スケルトン ) に、リゼとドワーフの作った上質な武具を持たせれば、圧倒的な軍事力になるぞ!)

ボクがそんなことを考えていると、リゼが「ハッ」と息を呑んだ。

「ねぇボイド、私に頼みたいことってもしかして……」

「うん。キミにはここで、ドワーフと一緒に『鍛冶』を担当してもらいたい」

「嫌よ! どうして私が、こんな暑苦しい場所で、そんな面倒なことをしなくちゃいけないの!」

彼女は口を曲げ、異議を申し立てた。

でも大丈夫、この反応は想定の範囲内だ。

「これはリゼにしか頼めない、とても大切な仕事なんだ」

「……私にしか……?」

「あぁ、キミだから」

「ふ、ふーん……そう、なんだ……っ」

魔女は満更でもなさそうな顔で、 黒紫 ( くろむらさき ) のロングヘアを指で 弄 ( いじ ) る。

「リゼ、お願いできないか?」

彼女は押しに弱い。

熱意を持って頼み込めば、ある程度のことは聞いてくれる。

「……もぅ、ボイドがそこまで言うなら仕方ないわね」

「ありがとう」

「でも、一つだけ条件があるわ」

「なに?」

そんな風に聞き返しつつも、だいたいの予想はついている。

(色欲の魔女は美しいモノが――特に『黄金』が大好きだ)

おそらく相応の 金 ( きん ) を要求してくるだろう。

当然、これも想定の範囲内。

こうなることを見越して、大量の金塊を 備蓄 ( びちく ) している。

「私が鍛冶を手伝うことで、あなたの役に立てたら――」

「ボクの役に立てたら?」

「……手……」

「『て』?」

「手を繋いで……くれませんか?」

彼女は頬を真っ赤に染めながら、とても可愛いらしいお願いを口にした。

(が、は……っ)

完全な不意打ち。

死角からぶん殴られた。

あまりにも純情過ぎる願いに。

(ぐっ、マズい……ッ)

強烈な『情欲の波』が、怒涛の如く押し寄せる。

純粋無垢なリゼをこのまま連れ去り、自分色に染めたくなってしまった。

(色欲の魔女は、『超絶 純情 ( ピュア ) 』だ……っ)

公式の実施した『純情なヒロインランキング』で堂々の第一位。

煽情的な服を着ている癖に、挑発的な台詞を吐く癖に、中身はピュアッピュアの乙女。

清楚ビッチ(純情)という相反する魅力を持つ、ロンゾルキアでも屈指の人気ヒロインだ。

(だが待て、リゼに手を出すのは……あれ?)

……思ったより、悪くないかも。

彼女は性格に難はあるけど、惚れた相手に尽くすタイプだ。

明るく快活で誠実な努力家、きっといいお嫁さんになるだろう。

(感情激重ダイヤ・不憫の女王ニア・被虐体質エリザ・破産確定の馬カス・未亡人セレスさん、第一章~第五章のヒロインの中じゃ、かなりイイ方なんじゃないだろうか?)

そこまで考えたところで、とある欠点が脳裏を 過 ( よぎ ) る。

(いやでも、『超束縛するタイプ』なんだよな……)

リゼは『色欲』の名を冠する癖に、身持ちと貞操が非常に堅く、『浮気のライン』が恐ろしく低い。

他の女性キャラと出掛けるのはおろか、同じ空間で喋ることさえ許さない。

(ロンゾルキアのヒロインは、みんな基本的に重たいんだけど……)

その中でも、かなり重いタイプだ。

えっ、ダイヤさん?

彼女は別格だよ。

同じ次元で話をしちゃいけない。

「ふぅ……っ」

思考をリゼから他のヒロインに飛ばし、ちょっとばかし時間を稼いだことで、情欲の波が収まってきた。

「いいよ。リゼがこの鍛冶工房で働いて、ボクの役に立ってくれるのなら――手を繋ごう」

「ほ、ほんとに? 約束だからね!?」

「あぁ、< 契約 ( コントラ ) >を結ぼう」

「えへへ、やったぁ……っ」

彼女はそう言って、世界で一番幸せそうに微笑んだ。

(……ほんと可愛いな)

ロンゾルキアのヒロインは、みんな 途轍 ( とてつ ) もなく魅力的だ。

「それじゃリゼ、頑張ってね」

「えぇ、任せてちょうだい!」

その後、ボクは<虚空渡り>を使い、ハイゼンベルク家の自室に戻る。

「ふぅ……疲れた」

家族会議・街の視察・魔女同士の 戦闘 ( イベント ) に加え、リゼの<未来の色見>×ドワーフの鍛冶の実験など……中々に濃密な時間だった。

(でもこれで、ボイドタウンの運営は、しばらく手放しでオーケーだね!)

この先はひたすら、第六章の攻略に専念できる。

(さて、明日からついに『王選』が始まる……)

ボクが王位を 簒奪 ( さんだつ ) するには――やっぱり あの ( ・・ ) 王族 ( ・・ ) と組むのが一番だろう!