第5話:王選『騎士の盟約』
第5話:王選『騎士の盟約』
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こちらも凄まじい人気らしく、カドコミの新連載ランキングで【第1位】を獲得しました!
いろいろなランキングで1位をいただいており、ありがたい思いと同時に「とにかく書かねば……っ」という気持ちです。
後は、カクヨムで累計1位を取れるよう、Web版も全力で頑張りますっ!
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聖暦1016年7月19日。
ボクはこの日、ハイゼンベルク家の当主として、王城の中心『玉座の間』へ 参殿 ( さんでん ) した。
(おぉ……原作通り、風格のある場所だなぁ!)
天井からシャンデリアが吊るされ、壁面にクライン王国の国旗が飾られ、床には美しい大理石が広がっている。
そんな部屋の最奥――数段高い 壇 ( だん ) の上に玉座が 据 ( す ) えられ、両サイドの 貴賓席 ( きひんせき ) に、四人の『王選候補者』が座っていた。
向かって左から第二王子ネードリヒ・第一王女クリス、 空 ( から ) の玉座を挟んで、第一王子ツァリオン・第七王女アリシア。
(王位継承権の上位三名+前国王バルタザールの特別指名枠という構成だね)
現在、ボクやニアといった貴族の当主たちは、王族たちを見上げるような形で静かに整列している。
(参加資格は伯爵以上の貴族、だいたい100人ぐらいか……?)
これだけの数が集まると、玉座の間も少し手狭に感じた。
ちなみに……ここの警備は聖騎士協会王都支部長が、うちのエリザが担当しており、今も壁沿いで目を光らせている。
(ニアやエリザのほかにも、ゾルドラ家とかトーマス卿とか、見知った顔がいくつもあるけど……さすがに話し掛けるような空気じゃないな)
ボクがさりげなく周囲を見ていると――醜く肥え太りつつも綺麗に 禿 ( は ) げた大臣が、クライン王国のNo.2が、のっそのっそと壇にあがった。
原作と同様、彼がこの場を仕切るようだ。
「……ん゛んっ」
大臣は喉を鳴らし、バッと両手を広げる。
「王族ならびに 諸侯 ( しょこう ) 列席のもと、今ここに王位選定継承儀礼――『王選』の開幕を宣言する!」
次の瞬間、重厚かつ荘厳なファンファーレが王城全体に響いた。
(ふふっ、『Theイベント』って感じでワクワクするね!)
原作ファンとして胸を躍らせていると、大臣は懐から古い 羊皮紙 ( ようひし ) を取り、そこに書かれた内容を読み上げる。
「此度の儀礼は、王位継承権上位三名に加え、 前王 ( ぜんおう ) より特別推薦を受けた第七王女アリシア様――合計、四名で執り行います」
彼はそこで一拍置き、
「まずは慣例に則り、王選の説明をば……」
詳しい 要綱 ( ルール ) を語り始めた。
(さて、この王選は大きく三段階に分けられる)
①騎士の 盟約 ( めいやく ) :王選候補者は、王選を共に戦い抜く騎士を一人選定し、< 盟約 ( アライア ) >の魔法を交わす。
② 神玉 ( しんぎょく ) の試練:王選候補者と騎士は、国宝の神玉に魔力を流し、『神の試練』を課される。
③王位継承の儀:見事に試練を達成した者が、次代の王となる。
今日のところは、王選の概要を説明して、騎士探しを始める……って感じだね。
「これから王選候補者の皆様には、自身と運命を共にする『騎士』を選び、< 盟約 ( アライア ) >を 結 ( むす ) んでいただきます。期限は今日を含めて三日、このとき注意されたいのが、<盟約>の危険性で――」
大臣が細則を話そうとしたところで、パチンという鋭い音が響く。
第一王女クリスが、左手の 扇子 ( せんす ) を勢いよく閉じたのだ。
「――長い、くどい、 鬱陶 ( うっとう ) しい」
彼女はため息をつき、椅子からスッと立ち上がる。
「ぐだぐだぐだぐだと、いつまで 管 ( くだ ) を巻いておるのか……。まったく以て時間の無駄じゃ」
第一王女クリス・クロム・クライン、二十五歳。
身長170センチ、 橙 ( だいだい ) 色のロングヘア。
紅の 双眸 ( そうぼう ) ・白く透明な肌・大きく豊かな胸、ただそこに在るだけで、世界から色を奪うような 美貌 ( びぼう ) を誇る。
自信に満ちた勝ち気な顔をしており、黒と赤を基調とした派手なドレスに身を包む。
「クリス、 慎 ( つつし ) め」
「姉上、これは神聖な儀式ですよ?」
「クリスお姉様……?」
他の王選候補者たちが、 咎 ( とが ) めるような視線を飛ばすも……。
クリスはまるで意に介さず、絶対王者たる瞳を尖らせ、淡々と告げる。
「――ホロウ・フォン・ハイゼンベルク、前へ」
「はっ」
ボクは言われた通り、貴族の集団から一歩進み出る。
「ふむ……悪くない。屈強な 肉体 ( からだ ) ・充実した魔力・ 相貌 ( つら ) も整っておる」
クリスは値踏みするようにこちらを見つめ、満足気に頷いた。
「恐縮です」
どうやら、お眼鏡にかなったようだ。
「よし、決めたぞ。 妾 ( わらわ ) はそこなハイゼンベルクと組む。 王選 ( ちゃばん ) はこれにてしまいじゃ」
その瞬間、
「「「なっ!?」」」
玉座の間に衝撃が走る。
「かかっ、案ずるでない。本来、王選に敗れた他の候補者は、処刑するのが 最善 ( ベスト ) なのじゃが……妾は慈悲深い。 愚弟愚妹 ( ぐていぐまい ) は 閑職 ( かんしょく ) へ回し、飼い殺しにしてやる。寛大な処置に感謝するがよいぞ?」
自信家の彼女は、既に王位を獲ったかのように 嗤 ( わら ) う。
「貴様、ふざけるなよ!」
第一王子ツァリオンは怒りのままに立ち上がり、
「……冗談では済まされませんぞ?」
第二王子ネードリヒが魔力を 滾 ( たぎ ) らせ、
「 些 ( いささ ) か横暴が過ぎるかと」
第七王女アリシアが 言葉少 ( ことばすく ) なに非難する。
これを受けたクリスは、悲しそうに 頭 ( かぶり ) を振る。
「未だ状況さえ読めぬ、その 愚鈍 ( ぐどん ) っぷり……。とても同じ 血脈 ( けつみゃく ) とは思えんのぅ」
傲慢な姿勢に過度な煽り……クリスって少し原作ホロウに似ているね。
「 蒙昧 ( もうまい ) な 塵芥 ( ちりあくた ) にもわかるよう、わかりやすく教えてやろう。妾は神に選ばれし特別な存在。そこなハイゼンベルクもまた、神の 寵愛 ( ちょうあい ) を受けし 稀有 ( けう ) な人間。 天恵 ( てんけい ) を得た二人が組むのじゃ、結果なぞ言うに及ばぬ」
クリスは 傲岸不遜 ( ごうがんふそん ) に語ると、
「さぁホロウ、『騎士の盟約』を結ぼうぞ。妾の望みは、王位の獲得。そなたの望むモノを言うがよい」
< 盟約 ( アライア ) >の魔法を起動し、こちらへスッと手を伸ばした。
(ふふっ、いいぞ、完璧な流れだ……!)
ボクの描いた攻略チャート通りの展開、思わず頬が緩みそうになる。
(クリスは性格こそ腐っているものの……その 能力 ( スペック ) は本物)
王選候補者の中でぶっちぎりの最強格、 起源級 ( オリジンクラス ) の固有を持ち、単騎で大ボスクラスの武力を誇る天才だ。
優れた美貌・完璧な 肉体 ( プロポーション ) ・卓越した知力、広大な領地を抱えており、経済力でも申し分ない。
(そして何より、王位継承権は『第一位』)
王選 ( ・・ ) を勝 ( ・・ ) ち抜 ( ・・ ) くの ( ・・ ) なら ( ・・ ) 、彼女と手を組むべきだろう。
最高の勝ち馬から、公開指名を受けたボクは、完璧な『貴族スマイル』を浮かべ、
「――お断りします」
きっぱりと拒絶した。
刹那 ( せつな ) 、
「……あ゛っ?」
クリスの瞳に危険な色が宿る。
「恐れながら、クリス様には、私よりふさわしい騎士がいらっしゃるかと」
「貴様……何をふざけたことを!」
彼女は苛立ちのあまり、灼熱の魔力を解き放つ。
(おーっ、イイ出力だ)
単純な魔力量で言えば、ラグナの二倍はあるだろう。
「何故断る!? 妾に何が足りぬというのだ!」
「強いて言うならば、『矜持』ですかね」
クリスは以前、バルタザールの寝室に 呪水晶 ( じゅすいしょう ) を仕掛け、老衰に見せかけて殺そうとした。
王選を早々に実施させ、自分が王となるために。
その考えは、確かに合理的かもしれない。
(でも、個人的には嫌いだ)
ボクはこれまで矜持というモノを大切にしてきた。
ホロウルートを攻略するため、悪巧みとかはするんだけど……。
『極悪貴族としての矜持』を持ち、人の道を違えたことはせず、約束はきちんと守ってきた。
(その点、クリスは駄目だ)
自分が王になるためならば、 父親 ( おや ) でさえも道具として使い捨てる。
そこに『王としての矜持』はない。
「薄汚い殺し屋 風情 ( ふぜい ) が、図に乗りおって……っ」
第一王女クリスが 憤 ( いきどお ) る中、これを好機と捉えた者たちが動き出す。
他の王選候補者――第一王子ツァリオンと第二王子ネードリヒだ。
「さすがはホロウ殿、人を見る確かな目を持っている。よければこの後、お茶でもどうかな?(ホロウ・フォン・ハイゼンベルクは、此度の王選における『最強の騎士』! この男と組んだ陣営が、大きな 優位性 ( リード ) を取る!)」
「ハイゼンベルク卿は、貴族として確固たる矜持をお持ちのようだ。今晩、お食事でも?(怠惰傲慢な極悪貴族にして、 天喰 ( そらぐい ) を討伐した『王国の英雄』! こやつと組めば、王位は獲ったも同然!)」
ボクのもとへ、ラブコールが殺到した。
二人の気持ちは嬉しいんだけど……。
「申し訳ございません」
ボクは柔らかい笑顔で断った。
「貴様、どういうつもりだ!?」
第一王女クリスは 激昂 ( げきこう ) し、
「王選への協力は、貴族の責務。それを放棄するつもりか?」
第一王子ツァリオンは眉を 顰 ( ひそ ) め、
「どこぞの『 大翁 ( おおおきな ) 』でもあるまいし、かような横暴は許されんぞ!」
第二王子ネードリヒが唾を飛ばした。
(……ホロウ、どうするつもりなの?)
(いったい何を考えているんだ……?)
ニアとエリザが不安げに瞳を揺らし、玉座の間に大きな動揺が走る中、
「私とて四大貴族の端くれ、自身の務めは果たすつもりです」
ボクはゆっくりと横へ歩き、とある王選候補者の前で 跪 ( ひざまず ) く。
「……おい、何をしておる?」
「貴様、正気か……っ!?」
「馬鹿な、あり得ん……ッ」
第一王女・第一王子・第二王子は、驚愕に言葉を失った。
それもそのはず、
「……えっ……?」
ボクが膝を折った相手は――王位継承権 第十二位 ( さいかい ) 、最も勝ち目の薄い泥船。
「――アリシア様、どうかこの私を騎士に選んでいただけませんか?」
第七王女アリシア・エル・クライン、王位から遠く離れた、最弱の候補者だ。