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第5話:王選『騎士の盟約』

極悪貴族、謙虚堅実に無双する~原作知識と固有魔法<虚空>を駆使して、破滅エンドを回避します~ — kakuyomu.jp · All chapters

第5話:王選『騎士の盟約』

【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】

なんと『極悪貴族』の第1巻が、角川新作ライトノベル、3月の売上ランキングで【第1位】に輝きました!

これは間違いなく、本作を買ってくれた読者様のおかげです! 本当にありがとうございます!

(まだ買っていなかったという方は、本作の目標であるアニメ化&打ち切り回避のため、ぜひお買い上げいただけると嬉しいです!)

さらに先日連載が始まった、極悪貴族のコミカライズ!

こちらも凄まじい人気らしく、カドコミの新連載ランキングで【第1位】を獲得しました!

いろいろなランキングで1位をいただいており、ありがたい思いと同時に「とにかく書かねば……っ」という気持ちです。

後は、カクヨムで累計1位を取れるよう、Web版も全力で頑張りますっ!

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聖暦1016年7月19日。

ボクはこの日、ハイゼンベルク家の当主として、王城の中心『玉座の間』へ 参殿 ( さんでん ) した。

(おぉ……原作通り、風格のある場所だなぁ!)

天井からシャンデリアが吊るされ、壁面にクライン王国の国旗が飾られ、床には美しい大理石が広がっている。

そんな部屋の最奥――数段高い 壇 ( だん ) の上に玉座が 据 ( す ) えられ、両サイドの 貴賓席 ( きひんせき ) に、四人の『王選候補者』が座っていた。

向かって左から第二王子ネードリヒ・第一王女クリス、 空 ( から ) の玉座を挟んで、第一王子ツァリオン・第七王女アリシア。

(王位継承権の上位三名+前国王バルタザールの特別指名枠という構成だね)

現在、ボクやニアといった貴族の当主たちは、王族たちを見上げるような形で静かに整列している。

(参加資格は伯爵以上の貴族、だいたい100人ぐらいか……?)

これだけの数が集まると、玉座の間も少し手狭に感じた。

ちなみに……ここの警備は聖騎士協会王都支部長が、うちのエリザが担当しており、今も壁沿いで目を光らせている。

(ニアやエリザのほかにも、ゾルドラ家とかトーマス卿とか、見知った顔がいくつもあるけど……さすがに話し掛けるような空気じゃないな)

ボクがさりげなく周囲を見ていると――醜く肥え太りつつも綺麗に 禿 ( は ) げた大臣が、クライン王国のNo.2が、のっそのっそと壇にあがった。

原作と同様、彼がこの場を仕切るようだ。

「……ん゛んっ」

大臣は喉を鳴らし、バッと両手を広げる。

「王族ならびに 諸侯 ( しょこう ) 列席のもと、今ここに王位選定継承儀礼――『王選』の開幕を宣言する!」

次の瞬間、重厚かつ荘厳なファンファーレが王城全体に響いた。

(ふふっ、『Theイベント』って感じでワクワクするね!)

原作ファンとして胸を躍らせていると、大臣は懐から古い 羊皮紙 ( ようひし ) を取り、そこに書かれた内容を読み上げる。

「此度の儀礼は、王位継承権上位三名に加え、 前王 ( ぜんおう ) より特別推薦を受けた第七王女アリシア様――合計、四名で執り行います」

彼はそこで一拍置き、

「まずは慣例に則り、王選の説明をば……」

詳しい 要綱 ( ルール ) を語り始めた。

(さて、この王選は大きく三段階に分けられる)

①騎士の 盟約 ( めいやく ) :王選候補者は、王選を共に戦い抜く騎士を一人選定し、< 盟約 ( アライア ) >の魔法を交わす。

② 神玉 ( しんぎょく ) の試練:王選候補者と騎士は、国宝の神玉に魔力を流し、『神の試練』を課される。

③王位継承の儀:見事に試練を達成した者が、次代の王となる。

今日のところは、王選の概要を説明して、騎士探しを始める……って感じだね。

「これから王選候補者の皆様には、自身と運命を共にする『騎士』を選び、< 盟約 ( アライア ) >を 結 ( むす ) んでいただきます。期限は今日を含めて三日、このとき注意されたいのが、<盟約>の危険性で――」

大臣が細則を話そうとしたところで、パチンという鋭い音が響く。

第一王女クリスが、左手の 扇子 ( せんす ) を勢いよく閉じたのだ。

「――長い、くどい、 鬱陶 ( うっとう ) しい」

彼女はため息をつき、椅子からスッと立ち上がる。

「ぐだぐだぐだぐだと、いつまで 管 ( くだ ) を巻いておるのか……。まったく以て時間の無駄じゃ」

第一王女クリス・クロム・クライン、二十五歳。

身長170センチ、 橙 ( だいだい ) 色のロングヘア。

紅の 双眸 ( そうぼう ) ・白く透明な肌・大きく豊かな胸、ただそこに在るだけで、世界から色を奪うような 美貌 ( びぼう ) を誇る。

自信に満ちた勝ち気な顔をしており、黒と赤を基調とした派手なドレスに身を包む。

「クリス、 慎 ( つつし ) め」

「姉上、これは神聖な儀式ですよ?」

「クリスお姉様……?」

他の王選候補者たちが、 咎 ( とが ) めるような視線を飛ばすも……。

クリスはまるで意に介さず、絶対王者たる瞳を尖らせ、淡々と告げる。

「――ホロウ・フォン・ハイゼンベルク、前へ」

「はっ」

ボクは言われた通り、貴族の集団から一歩進み出る。

「ふむ……悪くない。屈強な 肉体 ( からだ ) ・充実した魔力・ 相貌 ( つら ) も整っておる」

クリスは値踏みするようにこちらを見つめ、満足気に頷いた。

「恐縮です」

どうやら、お眼鏡にかなったようだ。

「よし、決めたぞ。 妾 ( わらわ ) はそこなハイゼンベルクと組む。 王選 ( ちゃばん ) はこれにてしまいじゃ」

その瞬間、

「「「なっ!?」」」

玉座の間に衝撃が走る。

「かかっ、案ずるでない。本来、王選に敗れた他の候補者は、処刑するのが 最善 ( ベスト ) なのじゃが……妾は慈悲深い。 愚弟愚妹 ( ぐていぐまい ) は 閑職 ( かんしょく ) へ回し、飼い殺しにしてやる。寛大な処置に感謝するがよいぞ?」

自信家の彼女は、既に王位を獲ったかのように 嗤 ( わら ) う。

「貴様、ふざけるなよ!」

第一王子ツァリオンは怒りのままに立ち上がり、

「……冗談では済まされませんぞ?」

第二王子ネードリヒが魔力を 滾 ( たぎ ) らせ、

「 些 ( いささ ) か横暴が過ぎるかと」

第七王女アリシアが 言葉少 ( ことばすく ) なに非難する。

これを受けたクリスは、悲しそうに 頭 ( かぶり ) を振る。

「未だ状況さえ読めぬ、その 愚鈍 ( ぐどん ) っぷり……。とても同じ 血脈 ( けつみゃく ) とは思えんのぅ」

傲慢な姿勢に過度な煽り……クリスって少し原作ホロウに似ているね。

「 蒙昧 ( もうまい ) な 塵芥 ( ちりあくた ) にもわかるよう、わかりやすく教えてやろう。妾は神に選ばれし特別な存在。そこなハイゼンベルクもまた、神の 寵愛 ( ちょうあい ) を受けし 稀有 ( けう ) な人間。 天恵 ( てんけい ) を得た二人が組むのじゃ、結果なぞ言うに及ばぬ」

クリスは 傲岸不遜 ( ごうがんふそん ) に語ると、

「さぁホロウ、『騎士の盟約』を結ぼうぞ。妾の望みは、王位の獲得。そなたの望むモノを言うがよい」

< 盟約 ( アライア ) >の魔法を起動し、こちらへスッと手を伸ばした。

(ふふっ、いいぞ、完璧な流れだ……!)

ボクの描いた攻略チャート通りの展開、思わず頬が緩みそうになる。

(クリスは性格こそ腐っているものの……その 能力 ( スペック ) は本物)

王選候補者の中でぶっちぎりの最強格、 起源級 ( オリジンクラス ) の固有を持ち、単騎で大ボスクラスの武力を誇る天才だ。

優れた美貌・完璧な 肉体 ( プロポーション ) ・卓越した知力、広大な領地を抱えており、経済力でも申し分ない。

(そして何より、王位継承権は『第一位』)

王選 ( ・・ ) を勝 ( ・・ ) ち抜 ( ・・ ) くの ( ・・ ) なら ( ・・ ) 、彼女と手を組むべきだろう。

最高の勝ち馬から、公開指名を受けたボクは、完璧な『貴族スマイル』を浮かべ、

「――お断りします」

きっぱりと拒絶した。

刹那 ( せつな ) 、

「……あ゛っ?」

クリスの瞳に危険な色が宿る。

「恐れながら、クリス様には、私よりふさわしい騎士がいらっしゃるかと」

「貴様……何をふざけたことを!」

彼女は苛立ちのあまり、灼熱の魔力を解き放つ。

(おーっ、イイ出力だ)

単純な魔力量で言えば、ラグナの二倍はあるだろう。

「何故断る!? 妾に何が足りぬというのだ!」

「強いて言うならば、『矜持』ですかね」

クリスは以前、バルタザールの寝室に 呪水晶 ( じゅすいしょう ) を仕掛け、老衰に見せかけて殺そうとした。

王選を早々に実施させ、自分が王となるために。

その考えは、確かに合理的かもしれない。

(でも、個人的には嫌いだ)

ボクはこれまで矜持というモノを大切にしてきた。

ホロウルートを攻略するため、悪巧みとかはするんだけど……。

『極悪貴族としての矜持』を持ち、人の道を違えたことはせず、約束はきちんと守ってきた。

(その点、クリスは駄目だ)

自分が王になるためならば、 父親 ( おや ) でさえも道具として使い捨てる。

そこに『王としての矜持』はない。

「薄汚い殺し屋 風情 ( ふぜい ) が、図に乗りおって……っ」

第一王女クリスが 憤 ( いきどお ) る中、これを好機と捉えた者たちが動き出す。

他の王選候補者――第一王子ツァリオンと第二王子ネードリヒだ。

「さすがはホロウ殿、人を見る確かな目を持っている。よければこの後、お茶でもどうかな?(ホロウ・フォン・ハイゼンベルクは、此度の王選における『最強の騎士』! この男と組んだ陣営が、大きな 優位性 ( リード ) を取る!)」

「ハイゼンベルク卿は、貴族として確固たる矜持をお持ちのようだ。今晩、お食事でも?(怠惰傲慢な極悪貴族にして、 天喰 ( そらぐい ) を討伐した『王国の英雄』! こやつと組めば、王位は獲ったも同然!)」

ボクのもとへ、ラブコールが殺到した。

二人の気持ちは嬉しいんだけど……。

「申し訳ございません」

ボクは柔らかい笑顔で断った。

「貴様、どういうつもりだ!?」

第一王女クリスは 激昂 ( げきこう ) し、

「王選への協力は、貴族の責務。それを放棄するつもりか?」

第一王子ツァリオンは眉を 顰 ( ひそ ) め、

「どこぞの『 大翁 ( おおおきな ) 』でもあるまいし、かような横暴は許されんぞ!」

第二王子ネードリヒが唾を飛ばした。

(……ホロウ、どうするつもりなの?)

(いったい何を考えているんだ……?)

ニアとエリザが不安げに瞳を揺らし、玉座の間に大きな動揺が走る中、

「私とて四大貴族の端くれ、自身の務めは果たすつもりです」

ボクはゆっくりと横へ歩き、とある王選候補者の前で 跪 ( ひざまず ) く。

「……おい、何をしておる?」

「貴様、正気か……っ!?」

「馬鹿な、あり得ん……ッ」

第一王女・第一王子・第二王子は、驚愕に言葉を失った。

それもそのはず、

「……えっ……?」

ボクが膝を折った相手は――王位継承権 第十二位 ( さいかい ) 、最も勝ち目の薄い泥船。

「――アリシア様、どうかこの私を騎士に選んでいただけませんか?」

第七王女アリシア・エル・クライン、王位から遠く離れた、最弱の候補者だ。