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「午後休暇と推しグッズのお店、まさかの経営者」

教育係のさくらには恋心を知られてはいけない。 — www.pixiv.net · All chapters

「午後休暇と推しグッズのお店、まさかの経営者」

――午後12時30分。会社の食堂。

あなたは昼食を食べ終え、午後の予定を確認していた。

あなた(心の声) (よし……午前中の仕事は全部終わった。他の社員さんの手伝いも済ませたし、今日は午後休暇をもらっている)

(そして、今日こそは……!)

あなたはスマートフォンを取り出した。

画面に映っているのは、あなたが大好きなアニメのキャラクター。

あなた(心の声) (推しの新作グッズが発売されたんだよな……! 限定アクリルスタンドに、ぬいぐるみ、それから新作イラストの缶バッジ……!)

思わず口元が緩む。

あなた「……ふふっ」

さくら「何か、いいことがあったのですか?」

あなた「っ!?」

振り向くと、そこには教育係のさくらさんが立っていた。

さくら「先ほどから、とても嬉しそうなお顔をされていますね」

あなた「い、いえ! なんでもありません!」

さくら「そうですか? ふふっ、気になりますね」

あなた(心の声) (危なっ! 推しグッズを買いに行くなんて言えない! いや、言ってもいいんだけど、なんとなく恥ずかしい!)

さくら「それでは、午後のお休み、ゆっくり楽しんできてくださいね」

あなた「はい! ありがとうございます!」

さくら「……どこへ行かれるのか、少し気になりますけれど」

あなた「えっ?」

さくら「いえ、なんでもありません。お気をつけて」

さくらさんは、いつもの優しい笑顔で手を振った。

あなたはその笑顔を見て、胸がドクンと鳴る。

あなた(心の声) (……かわいい。いやいや、落ち着け! 今日は推しのグッズを買いに行く日だ!)

あなた「し、失礼します!」

あなたは逃げるように食堂を後にした。

さくら「……ふふ。何をそんなに慌てていらっしゃるのでしょう?」

さくらさんは、あなたの後ろ姿を見送りながら小さく微笑んだ。

そして、スマートフォンを取り出す。

さくら「お兄ちゃんのお店に……行かれるのでしょうか?」

実は、さくらさんには心当たりがあったのだった。

1.推しグッズ専門店へ!

午後1時。

あなたは駅前の大きな商業ビルに到着した。

目的地は、アニメグッズ専門店『アニメイト・スター』。

新作グッズの発売日ということもあり、店内にはたくさんのお客さんがいた。

あなた「おおお……!」

店内に入った瞬間、あなたの目は輝いた。

あなた(心の声) (すごい……! 推しのコーナーができてる!)

<PRIVATE_PERSON>の描き下ろしイラストが大きく飾られ、アクリルスタンドや缶バッジ、キーホルダーがきれいに並べられている。

あなた「これは……買うしかない!」

まず手に取ったのは、推しのアクリルスタンド。

あなた「よし、確保!」

次に、ぬいぐるみ。

あなた「こっちも……!」

さらに、限定イラストの缶バッジ。

あなた「これも欲しかったんだよな……!」

気づけば、あなたの手には買い物かごがあった。

あなた(心の声) (待て待て。落ち着け。今日は午後休暇だ。時間はある。でも、予算は……)

あなたは真剣な顔で計算を始めた。

あなた「……よし。予算内!」

その瞬間。

店員「お客様、そちらの新作グッズは本日入荷したばかりなんですよ」

あなた「本当ですか!?」

店員「はい! 特にこちらのぬいぐるみは人気でして」

あなた「ありがとうございます! 教えてくださって!」

あなたは、普段の仕事中とはまるで違う満面の笑みを浮かべた。

その姿を、少し離れた場所から見ている人物がいた。

???「……あれ?」

男性は目を細める。

???「あの子、確か……さくらの会社の……」

そう。

その男性こそ、この店を経営している人物だった。

そして――。

さくらさんの実のお兄さんだったのである。

2.店長、まさかの正体

買い物かごを持ってレジに向かおうとしたあなた。

すると、先ほどの男性が声をかけてきた。

男性「こんにちは。ずいぶん熱心に選んでくれているね」

あなた「えっ? あ、はい! この作品が大好きで!」

男性「そうかそうか! いやあ、嬉しいなあ!」

男性は楽しそうに笑った。

男性「ちなみに、そのキャラクターのどんなところが好きなんだい?」

あなた「えっ、語ってもいいんですか?」

男性「もちろん!」

あなた「では、まず第3話で仲間を助けるために一人で立ち向かったところが――」

そこから、あなたの話は止まらなかった。

キャラクターの優しさ、物語の伏線、最新話の名シーン。

気づけば、あなたは身振り手振りを交えながら熱弁していた。

あなた「それで、最後に笑うんですよ! あの笑顔が本当に最高で……!」

男性「うんうん! 分かる! あの演出は素晴らしい!」

あなた「ですよね!?」

二人はすっかり意気投合した。

あなた(心の声) (やばい……! この人、分かってくれる……!)

男性「いやあ、君とはいい話ができそうだ!」

あなた「ありがとうございます!」

男性「ところで、君の名前を聞いてもいいかな?」

あなた「はい。僕は――」

あなたが名乗ると、男性は「あっ!」と声を上げた。

男性「やっぱり! さくらが話していた子だ!」

あなた「……え?」

男性「いや、失礼。私はこの店の経営者なんだ」

あなた「経営者……?」

男性「そして、さくらの兄だよ」

あなた「…………え?」

沈黙。

あなた「…………えええええっ!?」

店内の何人かが、こちらを振り向いた。

あなた「さ、さくらさんのお兄さん!?」

男性「そうそう。いつも妹がお世話になっているね」

あなた「い、いえ! こちらこそ、さくらさんには本当にお世話になっております!」

あなたは慌てて頭を下げた。

あなた(心の声) (待って待って待って! さくらさんのお兄さん!? 僕、さっきまで推しについて熱弁してたんだけど!?)

男性「ははは! そんなに緊張しなくていいよ。むしろ、あんなに楽しそうに話してくれて嬉しかった」

あなた「そ、そうですか……?」

男性「ああ。仕事中の君は、きっと真面目なんだろうね。でも、好きなものの話をしているときの君は、本当にいい顔をしていたよ」

あなたは少し照れくさくなった。

あなた「……ありがとうございます」

男性「よかったら、これからも遊びに来てくれ。うちはスタッフも作品好きが多いからね」

あなた「はい! ぜひ!」

あなたは、推しグッズを抱えながら深々とお辞儀をした。

3.まさかの電話

会計を済ませ、袋を受け取ったあなた。

あなた「ありがとうございました!」

男性「また来てね!」

あなたは店を出て、近くのベンチに腰掛けた。

あなた「……はあ。楽しかった」

買ったグッズの袋をそっと開け、アクリルスタンドを取り出す。

あなた「……最高だ」

思わず微笑んでしまう。

そのとき、スマートフォンが震えた。

画面には――さくらさんの名前。

あなた「……えっ?」

恐る恐る電話に出る。

あなた「も、もしもし?」

さくら『お疲れさまです。今、お時間よろしいでしょうか?』

あなた「は、はい! 大丈夫です!」

さくら『実は兄から連絡がありまして』

あなた「…………」

さくら『今日、お店に来てくださったそうですね?』

あなた「……はい」

さくら『ふふっ。兄が、とても楽しそうに話していましたよ』

あなた「な、何をですか!?」

さくら『推しのキャラクターについて、たくさんお話ししてくださったそうですね』

あなた「~~~~っ!」

あなたはベンチで顔を覆った。

あなた(心の声) (まさか、さくらさんに伝わるとは……!)

さくら『それから、兄が言っていました』

あなた「……な、何を?」

さくら『「あの子は本当に楽しそうに笑うんだね」って』

あなた「……!」

さくら『私、少し嬉しかったんです』

あなた「……え?」

さくら『会社では、いつも周りの方を助けてくださっていますよね。お仕事も一生懸命ですし』

さくら『ですから、あなた自身が楽しめる時間も、ちゃんとあるのだと分かって……安心しました』

あなたは、思わず黙り込んだ。

あなた「……さくらさん」

さくら『はい?』

あなた「……ありがとうございます」

さくら『ふふっ。どういたしまして』

少しの沈黙。

そして、さくらさんがいたずらっぽい声で言った。

さくら『ところで……今日、何を買われたんですか?』

あなた「えっ!?」

さくら『兄が気になっているそうです。今度、おすすめの作品も教えてほしいと』

あなた「そ、それは……!」

さくら『あ、もちろん、無理にとは言いませんよ?』

あなた「い、いえ! それなら、ぜひ!」

さくら『本当ですか? ありがとうございます』

電話の向こうで、さくらさんが嬉しそうに笑った。

その声を聞いただけで、あなたの胸はドクンと鳴った。

あなた(心の声) (……だめだ。電話越しでも、さくらさんの声って……)

あなた「……さくらさん」

さくら『はい?』

あなた「……その、今日もお仕事、お疲れさまです」

さくら『……っ』

今度は、電話の向こうが静かになった。

さくら『……ありがとうございます。あなたも、ゆっくり休んでくださいね』

いつもより、ほんの少しだけ柔らかい声だった。

4.そして翌日、会社で……

翌朝。

あなたが出社すると、さくらさんがデスクのそばで待っていた。

さくら「おはようございます」

あなた「お、おはようございます!」

さくら「昨日は、楽しかったですか?」

あなた「は、はい! とても!」

さくら「よかったです」

さくらさんは微笑んだ。

そして、少しだけ顔を近づけて、小さな声で言った。

さくら「……今度、私にも教えてくださいね」

あなた「……え?」

さくら「あなたの好きなもの。昨日、お兄ちゃんから聞いて、私も興味が出てきたんです」

あなた「さ、さくらさんも……!?」

さくら「はい。あなたがあんなに楽しそうにお話しされる作品ですから」

にこっ。

あなた(心の声) (む、無理だ……! その笑顔は反則だ……!)

ドクン。

あなたは慌てて視線をそらした。

あなた「わ、分かりました! 今度、説明します!」

さくら「ふふっ。楽しみにしていますね」

さくらさんは自分のデスクへ戻っていった。

しかし、数歩進んだところで、ふと立ち止まる。

さくら「……あっ、そうだ」

あなた「は、はい!?」

さくら「兄から伝言です」

あなた「……伝言?」

さくら「『次に来たら、店長おすすめのグッズも紹介するから、ぜひまたおいで』だそうです」

あなた「……!」

あなた「ありがとうございます! ぜひ行きます!」

さくら「ふふっ。よかったですね」

さくらさんは嬉しそうに笑った。

あなたも笑顔になった。

ただし――。

あなた(心の声) (……待てよ? 次にお店に行ったら、またさくらさんのお兄さんに会うんだよな……)

(そして、さくらさんにも推しの話をすることになる……?)

(……いや、別に悪いことじゃない。悪いことじゃないんだけど!)

あなたは、そっと胸を押さえた。

ドクン、ドクン。

あなた(心の声) (推しのグッズを買いに行っただけなのに……どうして、さくらさんのことまで考えちゃうんだよ……!)

その様子を、さくらさんは少し離れた場所から見ていた。

さくら(心の声) (……ふふ。昨日より、少しだけあなたのことを知れた気がします)

さくらさんは、誰にも気づかれないように微笑んだ。

推しのグッズを買いに行った午後休暇。

それは、あなたとさくらさんの距離が、ほんの少しだけ近づいた一日だった。

そして、あなたはまだ知らない。

さくらさんのお兄さんが、翌日、妹にこんなメッセージを送っていたことを。

『あの子、すごくいい子だね。今度は二人でおいでって伝えておいてくれ』

さくら「……っ!?」

さくらさんの顔が、みるみる赤くなる。

さくら「お、お兄ちゃん……! 何を勝手に……!」

その日、さくらさんは午前中の仕事で、何度か書類を読み間違えた。

そしてあなたは――。

あなた(心の声) (今日のさくらさん、なんだかいつもよりかわいい気がする……?)