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「女子会で明かされる恋心と、さくらさんの秘密」

教育係のさくらには恋心を知られてはいけない。 — www.pixiv.net · All chapters

「女子会で明かされる恋心と、さくらさんの秘密」

1.金曜日の午後、女子会のお誘い

金曜日の午後。

あなたは専務室で、来週の会議に向けた資料をまとめていた。

「よし……これで一段落かな」

書類を整え、椅子の背もたれに寄りかかる。

ふと、数日前の出来事が頭をよぎった。

さくらさんと二人で訪れた、あのレストラン。

恋仲の男女が訪れると、必ず結ばれるという噂のある場所だった。

そして、あなたは心の中で呟いたつもりだった。

――ここって、恋人たちが結ばれるレストランじゃないか?

ところが。

さくらさんには、しっかり聞こえていた。

『……うわあああ! なんで聞こえてるんですか!?』

思い出しただけで、顔が熱くなる。

「……忘れよう。あれは忘れよう」

あなたは両手で顔を覆った。

その頃。

あなたが知らないところでは、別の事件が始まろうとしていた。

「さくらさん、今日の仕事が終わったら、少しお時間ありますか?」

声を掛けてきたのは、女性社員の美咲さんだった。

「はい、大丈夫ですよ。何かありましたか?」

「実は、女性社員のみんなで女子会をしようって話になっていて!」

「女子会、ですか?」

「はい! 普段は仕事の話ばかりですから、今日は恋愛の話でもしようかなって!」

その言葉を聞いた瞬間。

さくらさんの手が止まった。

「……恋愛、ですか?」

「そうです! さくらさんもぜひ!」

「わ、私もですか?」

「もちろんです!」

周囲の女性社員たちも、次々と賛同する。

「さくらさんの恋愛事情、気になります!」

「普段、全然そういうお話をされませんよね?」

「好きな人とか、気になっている人とか、いませんか?」

さくらさんは、にこやかな笑顔を保ったまま固まった。

(す、好きな人……?)

頭に浮かんだのは、もちろん一人。

最近、隣にいるだけで妙に意識してしまう人。

仕事を一生懸命頑張っていて、困っている社員を放っておけなくて。

時々、庭で一人になっては、何かを小さく呟いている人。

そして、あのレストランで――。

(だ、駄目です! 今は考えてはいけません!)

「……さくらさん?」

「は、はい! ぜひ参加させてください」

「やった!」

女性社員たちは大喜び。

さくらさんは笑顔のまま、心の中で小さく叫んでいた。

(どうしましょう……!)

2.女子会、開幕!

仕事が終わった夜。

会社近くの落ち着いたカフェに、女性社員たちが集まっていた。

テーブルにはケーキや紅茶、軽食が並んでいる。

「それじゃあ、女子会を始めましょう!」

「かんぱーい!」

グラスが軽く触れ合う。

最初は仕事の話や休日の過ごし方など、和やかな話題が続いていた。

しかし。

美咲さんが、ついに本題を切り出した。

「では……ここからは恋愛のお話です!」

「待ってました!」

「まずは、好きな人がいるかどうか!」

「順番に話していきましょう!」

さくらさんは紅茶を飲もうとしていた。

ピタッ。

カップが口元で止まる。

(き、来ました……!)

「私は、ちょっと気になっている人がいます!」

若い女性社員の一人が頬を赤らめた。

「ええっ、誰ですか!?」

「秘密です!」

「ずるい!」

「じゃあ、次は美咲さん!」

「私ですか!?」

美咲さんは少し考えてから、にこっと笑った。

「私は……一緒にいると安心できる人がいいですね。困ったときに自然に助けてくれて、見返りを求めない人!」

「それ、素敵ですね!」

「もしかして、社内の人ですか?」

「そ、それは秘密です!」

再び歓声が上がる。

そして。

全員の視線が、ゆっくりとさくらさんへ向いた。

「……さて」

美咲さんが、意味ありげに微笑む。

「さくらさんは、どうですか?」

「えっ?」

「好きな人、いますか?」

「あるいは、最近気になっている人!」

「さくらさんって、仕事中は完璧ですけど、恋愛のお話になるとちょっと照れますよね?」

「そ、そんなことは……!」

さくらさんは慌てて手を振った。

「私は、特に……」

「本当に?」

「ほ、本当です」

「じゃあ、最近ドキッとしたこともありませんか?」

「…………」

沈黙。

さくらさんの頭に、次々と思い出が浮かぶ。

あなたが隣の席で真剣に仕事をしている横顔。

困っている社員を助けたあと、誰にも気づかれないように庭で一息ついている姿。

あなたが自分のことを気遣ってくれた瞬間。

そして、レストランでの出来事。

『ここって、恋人たちが結ばれるレストランじゃないか……』

あのときの、あなたの心の声。

さらに、その後のあなたの慌てた様子まで思い出してしまった。

(……ふふっ)

思わず、口元が緩む。

「……さくらさん?」

「はっ! な、何でもありません!」

「今、笑いましたよね!?」

「い、いえ!」

「絶対に何かあります!」

女性社員たちが身を乗り出した。

さくらさんは、とうとう観念したように紅茶を置いた。

「……実は」

「「「実は!?」」」

「少しだけ……気になる方は、います」

一瞬。

カフェのテーブルが静まり返った。

次の瞬間。

「「「えええええっ!?」」」

歓声が店内に響いた。

「さくらさんに気になる人が!?」

「どんな方ですか!?」

「社内の方ですか!?」

「いつからですか!?」

質問の集中砲火。

さくらさんは顔を赤くしながら、両手を小さく振った。

「ま、待ってください! そんなに一度に聞かれても……!」

美咲さんは、にっこり笑った。

「では、一つずつ聞きますね。その方は、どんな人ですか?」

さくらさんは少し考えた。

そして、柔らかく微笑んだ。

「……とても優しい方です」

「優しい?」

「はい。自分が大変なときでも、周りの方を助けようとするんです。困っている人を見つけると、自然に手を差し伸べて……」

女性社員たちは顔を見合わせた。

「……あれ?」

「なんだか、聞き覚えのある特徴ですね?」

「私も思いました」

さくらさんは慌てて付け加える。

「そ、それに、仕事にも一生懸命で、時々、少し抜けているところもあって……」

「抜けているところ?」

「はい。真面目なのに、ふとしたときに面白いことをしてしまうんです」

その瞬間、さくらさんはまた思い出した。

あのレストランで、心の声が聞こえていると知ったあなたの表情。

あまりにも慌てていたので、思わず笑ってしまったこと。

(……あのときの表情、かわいかったですね)

「……ふふっ」

「さくらさん、また笑いましたよ!」

「そ、そのお話はもう終わりです!」

「終わりません!」

女子会は、ますます盛り上がっていった。

3.美咲さんの鋭い推理

ケーキを食べ終えた頃。

美咲さんが、ふと真剣な顔になった。

「さくらさん。もしかして、その方って……」

「……っ!」

「専務、ですか?」

「…………えっ?」

さくらさんの動きが止まった。

紅茶を持つ手まで、ぴたりと止まる。

美咲さんは慌てて手を振った。

「あっ、すみません! 違ったら忘れてください!」

しかし、周りの女性社員たちは一斉に反応した。

「えっ、専務!?」

「確かに、専務って優しいですよね!」

「私も仕事で助けていただきました!」

「相談すると、最後まで話を聞いてくださいますし!」

「それに、さくらさんと一緒にいることも多いですよね?」

「教育係と専務ですからね!」

「……そう、ですよね」

さくらさんは、何とか平静を装った。

けれど。

美咲さんだけは、彼女の小さな変化を見逃さなかった。

「さくらさん?」

「……はい」

「今、少しだけ安心しました?」

「えっ!?」

「専務の名前が出たとき、何か言いたそうな顔をされたので」

「そ、それは……!」

さくらさんは口を開いたものの、言葉が出てこなかった。

美咲さんは優しく笑った。

「大丈夫ですよ。無理に話さなくても」

「……美咲さん」

「ただ、私は思うんです」

美咲さんは、カップを両手で包みながら続けた。

「さくらさんって、いつも誰かを支えているじゃないですか。だから、さくらさん自身も、誰かに支えてもらえるといいなって」

その言葉に、さくらさんの表情が少しだけ変わった。

「……ありがとうございます」

「その方と一緒にいるとき、さくらさんが自然に笑えるなら、それだけでも素敵なことだと思います」

「…………」

さくらさんは、そっと目を伏せた。

(自然に笑える……)

確かに、あなたと一緒にいるときは、仕事中とは違う自分になっている気がする。

少し意地悪をしてみたり。

あなたの反応を見て、つい笑ってしまったり。

本当は、もう少しだけ一緒にいたいと思ってしまったり。

(……私、思っていた以上に……)

そこまで考えて、さくらさんは頬を押さえた。

(だ、駄目です! これ以上考えたら……!)

「さくらさん?」

「な、何でもありません!」

美咲さんは、そんなさくらさんを見て微笑んだ。

(……これは、かなり本気なのかもしれませんね)

4.女子会の最後に、さくらさんが明かしたこと

帰り際。

女性社員たちは、すっかり打ち解けていた。

「今日は楽しかったですね!」

「次は恋愛相談会にしましょう!」

「さくらさんの続報も聞きたいです!」

「続報なんてありません!」

「えーっ!」

みんなが笑う。

そんな中、美咲さんが最後に尋ねた。

「さくらさん。その方に、いつか気持ちを伝えたいと思いますか?」

さくらさんは、すぐには答えなかった。

夜の街を歩く人々を、窓越しに眺める。

やがて、小さな声で答えた。

「……そうですね」

「はい」

「いつかは……きちんと、自分の気持ちを伝えられたらいいなと思います」

美咲さんは、嬉しそうに頷いた。

「応援しています」

「ありがとうございます」

「でも、さくらさん」

「はい?」

「その方、さくらさんの気持ちに気づいている可能性はありませんか?」

「…………っ!?」

さくらさんの顔が、一気に赤くなった。

なぜなら。

あなたは以前、心の中で思っていたことを、うっかり口に出してしまったことがある。

しかも、あのレストランの一件以来、さくらさんはあなたの反応を以前より注意深く見るようになっていた。

あなたが自分を意識しているように見える瞬間も、何度かあった。

(ま、まさか……)

(いえ、でも……)

(もし、私の気持ちが知られていたら……!?)

「さくらさん、顔が真っ赤ですよ!」

「き、今日は少し暑いですね!」

「もう秋ですよ!?」

「そ、そうでした……!」

女性社員たちは、また笑い出した。

さくらさんも、恥ずかしそうに笑った。

けれど、その胸の中には、確かな思いが残っていた。

(……いつか、伝えたいですね)

(あなたに、私の気持ちを)

5.翌朝、何も知らないあなた

翌朝。

あなたはいつも通り、誰よりも早く出社していた。

「よし、今日も頑張ろう」

パソコンを起動し、メールを確認する。

そこへ、さくらさんがやって来た。

「おはようございます」

「おはようございます、さくらさん!」

あなたは振り返り、いつも通りに挨拶した。

さくらさんも微笑む。

「昨日は、楽しかったですよ」

「昨日? 何かあったんですか?」

「はい。女性社員の皆さんと、女子会をしていたんです」

「へえ、そうだったんですね!」

あなたは何の疑いもなく頷いた。

「楽しそうですね。何のお話をしたんですか?」

「……いろいろです」

「いろいろ?」

「ええ。お仕事のお話や、休日のお話。それから……恋愛のお話も」

「ぶっ!?」

あなたは危うく飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになった。

「れ、恋愛!?」

「はい」

さくらさんは、いつもの丁寧な口調で答える。

「好きな人がいるかどうか、とか」

「…………」

あなたの脳内で、警報が鳴り響いた。

(待って!? 女子会で恋愛話!?)

(まさか……さくらさんにも聞いたのか!?)

(いや、聞くだろ! 普通に聞くよな!?)

(さくらさん、何て答えたんだ!?)

あなたは平静を装おうとした。

しかし。

「……ちなみに」

さくらさんが、そっと顔を近づけてきた。

「あなたは、好きな人はいらっしゃるんですか?」

「…………えっ?」

「いえ。昨日のお話の続きが、少し気になりまして」

にこっ。

さくらさんが微笑む。

あなたの心臓が、ドクンッと大きく鳴った。

(待って待って待って!?)

(昨日、女子会で恋愛話をして……)

(今朝、僕に好きな人がいるか聞いてきた!?)

(まさか……まさか……!)

あなたは視線を泳がせながら答えた。

「い、いやあ……その……仕事が忙しいので、今はそういうのは……!」

「そうですか」

さくらさんは、少しだけ残念そうに微笑んだ。

「……残念です」

「…………えっ?」

「いえ、何でもありません」

さくらさんは自分の席へ戻っていった。

あなたはその場に立ち尽くした。

(今、残念って言った!?)

(何が!? 何が残念なんですか!?)

(もしかして……いや、まさか……!)

あなたは頭を抱えた。

一方のさくらさんは、パソコンを立ち上げながら、誰にも見えないように小さく笑っていた。

(……ふふっ)

(昨日の女子会で、少しだけ勇気をもらえました)

(でも、もう少しだけ……あなたの気持ちを知りたいです)

そして、ちらりと隣のあなたを見る。

目が合った。

さくらさんは、そっとウインクした。

「今日もよろしくお願いしますね、専務」

「…………っ!?」

あなたは椅子の上で固まった。

(だ、駄目だ……!)

(この人、絶対に何か知っている……!!)

さくらさんは何事もなかったかのように仕事を始めた。

けれど、その口元には、いつもより少しだけ幸せそうな笑みが浮かんでいた。

恋心を隠したいあなたと、恋心を隠しながら少しずつ距離を縮めようとするさくらさん。

そして、あなたの知らないところでは――。

美咲さんたちのグループチャットに、こんなメッセージが届いていた。

美咲:昨日のさくらさん、絶対に好きな人がいますよね?女性社員A:いますね。しかも、かなり本気と見ました!女性社員B:お相手、専務だったりして……?美咲:……私も、そう思います。女性社員A:えええええっ!?

その頃、専務室では。

「……何か、嫌な予感がする」

あなたがそう呟くと。

「どうしましたか?」

隣から、さくらさんの声がした。

「い、いえ! 何でもありません!」

「ふふっ。そうですか」

さくらさんは、優しく微笑んだ。

(……いつか、あなたの口から聞けたら嬉しいですね)

(あなたの、本当の気持ちを)