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第3話 金槌VS金属スライム 2021年11月13日 公開

金属スライムを倒しまくった俺が【黒鋼の王】と呼ばれるまで — kakuyomu.jp · All chapters

第3話 金槌VS金属スライム 2021年11月13日 公開

元々ダンジョンになど興味はなかった。

一部の民間人がダンジョンの探索者(通称シーカー)になって大金を稼いでいることは知っていたが、ダンジョンの中が危険なことは間違いなく、そこにわざわざ入ろうとするのは酔狂な人間だけ。

まだまだ偏見の多い職業だ。悠真もそう思っていたし、それは今も変わらない。

だが目の前には小さなダンジョンがあり、中に珍しい魔物がいる。倒せば魔宝石がドロップするかもしれない。

珍しい魔物なら、珍しい魔宝石が出てくることだってあるだろう。

魔宝石の中には数億円で取引される物もある。これは自分に巡ってきたチャンスなんじゃないのか?

自分は頭も良くないし、特別才能がある訳でもない。Fランの大学にいって就職しても、人生たかがしれている。

ここで大金を稼げれば、一生遊んで暮らせるかも……。

そんな俗念が頭をよぎる。

悠真は急いで家に戻り、タンスを漁って何か武器になるものがないか探す。ネットによればスライムは弱く、怪我をする心配はなさそうだ。

危険がないなら躊躇する理由はない。

タンスの奥から、ホームセンターで買った 金槌 ( かなづち ) が出てくる。確か1280円で買ったよな、と思いながら縁側でサンダルを履き、三度庭の穴に舞い戻る。

懐中電灯で中を照らしながら、慎重に穴の中へ入ってゆく。

その様子を、小さなマメゾウは不思議そうな顔で眺めていた。

「うわ、ほんとに狭いな」

穴の中は、大人一人がなんとか入れる程度の広さだ。金槌を振り上げるスペースもなく、身動きを取るのが難しい。

だが、それは相手も同じ。スライムにも逃げ場はないはずだ。

異物が穴に入ってきたことにより、スライムは穴の端によって警戒する。悠真は体を丸め、亀のような体勢でスライムと睨み合う。

右手に持った金槌を小さく振り上げ、スライムの頭に落とした。

キンッ! 金槌が弾かれる。

「か、硬い!」

予想以上の感触。金属っぽい見た目だったが、本当に金属なのかは半信半疑だった。

しかし、この感触は間違いなく金属。それもかなりの強度を持つ鋼鉄だ。

こんなの倒せるのか? と思っていると、目の前にいたスライムが猛スピードで動き回る。狭い空間なので逃げ場はないが、金槌を振り下ろしても当たらない。

「くそ! ちょこまかと」

悠真も狭すぎて、うまく動けない。四苦八苦していると、スライムは悠真に向かって飛びかかる。「うわっ!」と驚くと、スライムは膝に体当たりしてきた。

「痛っ!!」

激痛が走る。まるで鉄球で殴られたかのような痛みだ。

「こ、この……!」

もう一度金槌を振り下ろすが、スライムは軽やかに避け、悠真の腕に向かって飛びかかってきた。右腕にぶつかると、あまりの痛みで金槌を落とす。

スライムは安全!? 怪我をすることはない? 冗談だろ!

悠真は必死な思いで穴から這い出し、右腕を押さえて地面に寝転がる。ハァハァと息を乱し、空を見上げていると、飼い犬のマメゾウが心配そうに近づいてきた。

悠真の頬をぺろぺろと舐め、くぅ~んと泣き声を上げる。

「ハァ、ハァ……ダメだマメゾウ……ここには凶悪な魔物がいる……危険だから近づくな」

悠真はヨロヨロと立ち上がり、家へと戻る。冷凍庫に入っている 氷嚢 ( ひょうのう ) を取り出し、 痣 ( あざ ) になっている腕と膝に当てた。

「いたたた……なんだよ、酷い目にあったな」

ソファーに座って息を吐き、氷嚢を膝に置いてスマホを持つ。

改めてダンジョンの魔物について検索した。スライムについて出てくる情報は、どれも似たり寄ったり。

スライムはとても弱い魔物で、子供でも倒すことができる。動きは遅く、人間より素早く動くことはできないなど、危険性を否定するものばかりだ。

「嘘ばっかりじゃねーか! 金属スライムとは全然違う」

ダンジョンの浅い層にいる弱い魔物であれば、物理的な攻撃で倒すことはできるらしい。だが、深い層にいる強力な魔物には物理攻撃が効かず、倒すことが困難になるとネットの記事には書かれていた。

金属スライムも打撃で倒せそうにない。

「あれも強力な魔物なのか? めちゃくちゃ浅い階層にいたのに」

記事によれば強力な魔物でも、魔法のような間接攻撃なら効くようだ。

魔法はダンジョンの中でしか扱えない特殊な力だが、火や水、雷などの魔法がよく使われている。

「間接攻撃……金属……だとしたら――」

悠真は庭の低木に目をやる。

「燃やせば倒せるんじゃ……」