第947話 Aランク戦まで少しの間、お祭り回って楽しもう
第947話 Aランク戦まで少しの間、お祭り回って楽しもう
「本当に、〈千剣フラカル〉が勝ったわね」
「ゼフィルスは〈獣王ガルタイガ〉が棄権するって知ってたのか?」
「ガルゼ先輩から教えてもらって、な」
「なるほど……」
ラナが目をパチクリして言い、リカが俺に確認してくるように聞いてきたのに答える。
「ガルゼ、楽しそうだった。強かった」
「それな! それに【暴食】相手に真正面から挑むとはガルゼ先輩も分かってるぜ。【暴食】は闇を払えるのなら真正面から最短を突破したほうが効果的なんだ。【暴食】は搦め手系だし、【獣王】とは相性悪いからな。おそらくガルゼ先輩が1対1を受け入れたのも自分に攻撃を集中させるためだろう」
カルアの呟きに思わず長文で答えてしまう。
燃える展開に思わずテンションが上がってしまったぜ。
「ん。あとリカのお姉さんたち。すごかった」
「うむ。自慢の姉様方だ」
「キリちゃん先輩は【紅の 竜峰将 ( りゅうほうしょう ) 】、リンカ先輩は【炎刀の 戦武将 ( いくさぶしょう ) 】か」
「ゼフィルスは見ただけで分かってしまうのだな。そのとおりだ」
ここにきてリカの姉であるキリちゃん先輩とリンカ先輩の 職業 ( ジョブ ) 判明。
キリちゃん先輩の方は前にユーリ先輩と戦っていた時に大体見当は付いていたが今回で確信、リカと同じ武将系。前衛で戦う侍の将【紅の 竜峰将 ( りゅうほうしょう ) 】だった。
【鬼浪人】の上級職で高の上。SUPは35だ。
一刀流で構え、攻撃を捌き、力を溜めてドカンするタイプだな。カウンターなんか入った日にはとんでもないダメージを食らってしまう。まさに〈ミーティア〉のギルドマスターアンジェが食らったあれだ。あれで流れが完全に変わったからな。
接近戦では相手にしたくないタイプだ。まあ侍系はどれも接近戦が怖いんだけどな。油断したらカウンター飛んでくるから。
そしてリカの一つ上のお姉さん、リンカ先輩は炎系の武将、【炎刀の 戦武将 ( いくさぶしょう ) 】だったな。
【炎武侯】の上級職で高の上、こちらもSUPは35だ。
〈火属性〉に特化した武将で、刀で薙げば炎の斬撃範囲攻撃が飛び、敵を燃やし斬りながら殲滅する。恐ろしい武将だ。範囲攻撃主体の 職業 ( ジョブ ) だな。
リカも上級職になって範囲攻撃を得たが、まさにあんな感じのスキルを多く覚える。
加えて防御破壊の範囲攻撃が使えるのも強い。あれがマジやべえ。軒並み崩される。防ぐには専用のスキルが必要だ。
防御破壊されない効果の付いた広範囲防御スキルとかな。それなりに希少。シエラが今回たくさん獲得していたけど。
あれ、上級職しか持って無いんだよなぁ。まあ、だから一方的に〈ミーティア〉がやられたんだけど。
「あの〈ミーティア〉が終始劣勢だったわね」
「キリエ姉様は姉妹で一番度胸があると言われていてな。刀一本でどんなところにも飛び込み、切り伏せる胆力を持っているのだ。私もあれに憧れた時期もあったが、私は二刀流の防御のほうが向いていると言われてな。今はこっちに転向している」
「リカのお姉さん。炎の剣使ってた。かっこいい」
「うむ。リンカ姉様は炎を刀に宿して放ち相手を殲滅することが出来る。だが、ああ見えて接近戦の方が得意でな、やっと炎を潜り抜けて接近したのにその後に待ち受けているのがもっと過酷な剣戟戦なのだから相手には同情してしまうよ」
リカは鼻高々に姉自慢を始める。
優勝こそ棚ボタ的なものがあったが、優勝は優勝だ。
これで〈千剣フラカル〉はSランクギルドになったのだ。姉たちが所属するギルドとあってリカの喜びも 一入 ( ひとしお ) だろう。
まあ、ちょっと〈千剣フラカル〉と〈獣王ガルタイガ〉の勝負も見てみたかったけどな。
ガルゼ先輩が大笑いしながら実況席でコメントし、続いて勝利者インタビューで〈千剣姫カノン〉先輩が呼ばれたが、顔を合わせた2人はヒートアップ。
最後の方ではカノン先輩が「ガルゼのバカやろー! 勝負して負けたらよかったのにー」と叫んでガルゼ先輩が「がーはっはっはっは! それじゃあ俺たちが勝っちまうだろうが」なんて言い合って強制終了させられていた。
うーむ、ガルゼ先輩余裕の貫禄。
これじゃあ、どっちが勝者かわからんなぁ。
こうしてSランク戦は終わり、解散したのだった。
「さて、時間はかなり余ったが、一度解散するか。時間になったら現地集合ってことで」
「賛成ですわ。Aランク戦出場ギルドの拠点位置も調べないといけませんし。情報収集ですわね」
「それも祭りを楽しみながら片手間でいいからな」
「出店でも行くゼフィルス君?」
元々〈拠点落とし〉は4時間スケジュールが組まれていたが、1時間半くらいで終わっちゃったからな。時間がそれなりに余ってる。
Aランク戦はスケジュール通り午後2時に開催されるそうだ。Sランク戦の影響は受けないとのこと。
ならばやることは決まっている。Aランク戦の情報収集も兼ねて一時解散だ。
もちろんお祭りを巡るのがメインだ。
俺の提案にリーナを始め、みんなが頷き、ハンナがいち早く俺を誘ってきた。
「あ、それなら私も行くわ! なんだかこの辺たくさんお店が出ているじゃない? 散策しましょう!」
「私も、行かせてもらおうかしら」
「わたくしも参加させていただきますわ」
「えっと、できれば私もよろしいでしょうか?」
ハンナの誘いに釣られたのか、ラナ、シエラ、リーナ、アイギスまで集まって来る。
「ん、じゃあ私も――んみゅ?」
「いいんだカルア、あそこは今刺激してはいけない。私たちは私たちで遊ぼう」
しかしそれ以外は集まらず、いや、カルアがほんの少し混ざりたそうにしていたがリカにさっと連れ去られていった。
「それじゃあ、私たちも別で遊ぼうかな。ね、メルト様?」
「まあ、それでもいいか」
「もう、素直じゃないんだからメルト様は~」
「レグラム様はもちろん私と」
「ああ。それでは行こうかオリヒメ」
「はい!」
「あれ? ラウ君は誰か一緒に行く人いないの?」
「俺は1人でいい。いや、今は1人でいさせてくれ。ルキア頼む」
「? まあいいけど気をつけなよ~?」
なんだか周りからそんな声が聞こえてきた。みんなもクリパみたいなこのイベントを楽しむ様子だ。
「なんだか良い感じの空間がいっぱいだよ~」
「これがゼフィルス君の言ってたクリパってやつかな?」
「では、いつもどおり3人一緒に回ろうか。でもこっそりとゼフィルス君たちの様子は観察しよう」
「ねえ、サチ、エミ、ユウカ、それ私も混ぜてー」
「姉さまが入るなら私も入ります」
「「「大歓迎だよ~」」」
そんなこんなで〈エデン〉も解散し、アリーナの周囲でにぎわう屋台で腹ごなしをしながらお祭りを楽しむことにした。
「ゼフィルスさん、あれはクレープの屋台ですわ! またあの時みたいに食べさせあいっこしませんこと?」
「リーナ、あの時っていつのこと? というかゼフィルスとそんなことしてたの!?」
「ラナ殿下もしたでしょう」
「シエラもね!」
「はわわ!」
「これは、かなり出遅れていますね。私もさせていただきます」
女子が集まればなんとやら。
中々に騒がしい空間が形成されていたが、これはこれでとても楽しかった。
結局クレープの食べさせあいっこもしたよ。全員と。
俺の分のクレープが見る見る減っていくのが厳しいな??
まあ、みんなのいろんな味のクレープも食べられたし結果良しだ。
他にも中々気合が入った屋台が多く、少し買い過ぎてしまったかもしれないな。
多くは〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉へと収納して、また後日食べるとしよう。
そうしているとあっという間に時間は過ぎていくもので、Aランク戦の時間が迫ってきたため俺たちはそのまま、第二アリーナの控え室へと向かったのだった。