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第1016話 〈霧ダン〉最奥のボス〈ジョウキ〉戦―決着。

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第1016話 〈霧ダン〉最奥のボス〈ジョウキ〉戦―決着。

「隙有りー! 『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」

〈ジョウキ〉は全体攻撃後で隙だらけ。

その背中に全力のユニークスキルを放った。

「ガアアアア!?」

後ろから突如ぶった斬られた〈ジョウキ〉は怒り心頭のようだ。

ついでに箱へ『シャインライトニング』も放つと、振り向いた〈ジョウキ〉が全力の金棒スキルで殴りかかってきた。

「『クイーンオブカバー』!」

「サンキューシエラ――『ライトニングバニッシュ』だ!」

しかし俺を庇うように白からピンク色、そして装飾が大きく変化した小盾が割り込み金棒を抑えたのだ。『カバーシールド』の上位ツリー『クイーンオブカバー』だ。

クイーンを守るほどの強力な盾に阻まれ、完全に金棒の攻撃を防がれるさなか、俺は踏み込んで雷の剣でぶった切る。

「グオオオオ!?」

「あの距離で、かばえるのですか!?」

〈ジョウキ〉の叫び声とソトナ先輩の驚愕の声が心地良い。

さすがは〈五ツリ〉の『クイーンオブカバー』。速度が違う。

「ん! 『64フォース』!」

「ここで――『聖剣』!」

「ガアアアア!?」

よし、カルアと共に良いのを当てて一瞬停止させてやったぜ。

「後は頼むぜ、ユーリ先輩!」

「任せろ! 『戦場を駆ける英雄王』!」

そこへ飛び込んで来たユーリ先輩が〈ジョウキ〉を叩っ切る。

あれは【英雄王】版の『テンペストセイバー』みたいなものだ。

素早い移動からの斬撃スキルだな。

「ガアアアアア!」

「ふっ!!」

しかし、〈ジョウキ〉も負けてはいない。

金棒を振り回しユーリ先輩にぶち当てる。

だが、そんなもので吹き飛ぶ【英雄王】ではない。

「『超反撃』!」

逆に反撃スキルを叩き込むユーリ先輩。

あれは俺の『超反応』と同系統のパッシブスキルだ。

パッシブで攻撃を受けたら反撃するんだぜ? しかもスキルだから通常攻撃にいくらか威力が乗ってて強いんだこれが。バフ乗っけたら手が付けられなくなるんだ。

パッシブだから言わなくても発動するのだが、これは後ろから狙っている俺への配慮とみた。

「大技行くぞ! ――『フルライトニング・スプライト』!」

俺も叫んでユーリ先輩が跳び 退 ( すさ ) るのと同時に雷の花火を発動する。

俺の剣先から飛んだ雷は〈ジョウキ〉に命中すると、その場を中心にして雷が暴れ回った。

もちろん筒箱も巻き込んでだ。

「ガアアアアア!」

「ヘイトを稼ぐわ『シールドフォース』! 『オーラポイント』! 『挑発』! 『ガードスタンス』!」

〈ジョウキ〉は筒箱を攻撃されるとタゲがヘイト関係無く攻撃した人物に向く特性がある。

シエラからかなりのヘイトスキルを使われておきながら、〈ジョウキ〉の狙いはやはり俺だった。

「! まだ足りないの? 『シールドスマイト』! 『グロリアススマイト』!」

「いやシエラ、こいつはどうやら上の筒箱を攻撃したものを優先的に狙うらしい!」

「! そういうことね。『インパクトバッシュ』!」

俺の説明にシエラは四つの小盾で宙に浮く筒箱に攻撃を開始。

「『クロスソニック』!」

「ガアアアア!」

カルアが2連続の高速すり抜け斬りで翻弄すると。

「すごく、やりやすいね――『フルライトスラッシュ』!」

「ガアアアア!」

光る大剣の一撃。ユーリ先輩の攻撃でかなりのダメージが入った様子だ。

ボス部屋の霧はごく僅か。

そしてこっちには【勇者】と【英雄】がいる、これは勝つるな。

俺とユーリ先輩がメインアタッカーを担当。カルアがサブアタッカーで所々で攻撃を決めると、ついに1本目のHPがゼロになる。

「全員、気をつけろ! ソトナ、バリアを張ってくれ!」

「はい! 『聖域の守り』!」

「第二形態が来るぞ! 今のうちにMPが厳しい者は補給を!」

ユーリ先輩が注意を促した。

それは〈ジョウキ〉が自らの雲に沈み、姿が消えたためだ。

これは第二形態にいたる演出。

これが何を意味するかは分かっていないようだが、ボスはHPバーが1段消えるとパワーアップするというのは有名な話だ。

「来る!」

カルアが二刀の短剣を構えて珍しく真剣な目で見つめている。

雲から現れたのは3メートルを超す 鬼の手 ( ・・・ ) だった。

雲の横から二本の腕が生えると、それは一気にカルアへと襲いかかったのだ。

「カルア!」

「『回避ダッシュ』! だいじょび」

しかし、カルアは回避アタッカー。完全に構えていたカルアを捉えるにはそんな攻撃では足りないな。

「どうしてカルアを? 『シールドフォース』! 『オーラポイント』!」

すぐにシエラがヘイトを稼ぐ。すると雲から生える腕だけの〈ジョウキ〉がシエラの方へ振り向いた。

こいつは目で見て判断していない。何しろ腕だし。それ故に形態変化の最初はヘイトがリセットされ、ヘイト関係無しにランダムに攻撃してくる特性があったりする。

なので俺はこっそりソトナ先輩を守れる位置にいたが、杞憂だったようだ。

シエラがヘイトを取ったし、これで無差別に攻撃を仕掛けることもあるまい。

「筒箱が、高い! 『投刃』!」

しかし、肝心の筒箱は先ほどとは打って変わり、かなり上空に距離を取られることになる。

つまりは上からの雷攻撃と霧が来ることになり、こちらの攻撃は届きにくくなる。

カルアが『投刃』で1個を黙らせるが、まだ4個の筒箱がその口を開いていた。

4個とはシエラの盾と同じ数だな。

「『インパクトバッシュ』!」

すぐにシエラがこれを攻撃するが1個だけ躱されてしまった。

その箱から雷が降り注いだ。

「上からの攻撃に気をつけてください!」

ソトナ先輩の指示に巨大腕になった〈ジョウキ〉と戦っているユーリ先輩は片手を挙げることで承知を示した。

俺も〈ジョウキ〉戦に参加する。

襲ってきた腕を切り払い、時には盾で受け流したり、弾いたりして剣で攻撃する。

ダメージが出るのは肉体である腕だけなので注意。

本体はあの雲に居るはずだが、今雲に攻撃しても〈ジョウキ〉本体には届かない。雲を切ってみたけどダメだった。手応えなくってとっても不思議!

だが所詮は腕のみ。

上から雷の攻撃と霧が降ってくるが、そっちはシエラとカルアがなんとかしてくれるので気にせずユーリ先輩と斬る。

ユーリ先輩なんて『超反撃』でダメージも稼げるからダメージが高いのなんの。

そんなことを考えていたら2本目のHPバーが消失し、腕が再び雲に隠れてその大きさが膨れ上がった。

「む、もう第二形態が終わったのか?」

「回復します――『癒しの祈祷』!」

ユーリ先輩が呆然とした声でそう言った。

ユーリ先輩は夢中で斬っていたようでちょっとビックリしていたな。

つまりは集中して攻撃出来る環境が整っていたということだ。

これがシエラのタンクとカルアのサポート力よ。

また火力面ではさすが【英雄】に【勇者】のコンビ。

無茶苦茶威力高いし展開が早すぎだ。もう二つ目のHPバーがゼロになったとか。

まあ【英雄】と【勇者】の上級職が組めばこんなもんよ。

「すごいですね。私たちは〈クジャ〉戦の時、第二形態を突破するのに数日掛かったというのに」

それは掛かりすぎだよソトナ先輩。

だが、それにしても早いな。

俺はゲーム時代、大体の場合【聖女】を選んでいたので【英雄】はあまり選んだことが無かった。

ヒーラー大事。

……いつか【英雄王】【大聖女】【救世之勇者】でパーティ組みてぇ。

ゲームではあり得なかったドリームメンバーズだ!

そんなことを思っていると変身が終わり、第三形態が現れた。

「ガアアアアアア!!」

まるで産声を上げるように雲から出てきたのは、〈ジョウキ〉の第三形態。

大きさは第一形態と変わりすぎの7メートル。腕も4メートル近くなっていて太くなりすぎのデカくなりすぎ。

赤銅色の筋肉モリモリのボディと、さらに巨大化して5メートルほどになった金棒を2本持っていた。

それが現れた瞬間『直感』が警報を鳴らす。

「全員集まって固まれ!」

「ガアアアアア!」

瞬間、〈ジョウキ〉が叫んだかと思ったら、乗っていた雲が霧化して部屋全体に一気に広がっていった。

「なに?」

「これは! 霧が!」

まるで爆発したかのように一瞬で霧が深まると、周りが真っ白になった。

「ゼフィルス、これは」

「シエラはカバーを頼む。この霧は多分晴らせないだろう」

「……わかったわ。『 守陣形 ( しゅじんけい ) 四聖盾 ( しせいたて ) 』! 『カバーシールド』!」

俺はシエラに指示を出しておく。

これで相手が霧の中から攻撃してきたとしてもとりあえずは安心だ。

そう〈ジョウキ〉戦は第三形態になると強制的に霧で覆われた状態になる。

この霧を払わないとボス戦続行はなかなか高い難易度となる。

「深い霧だな」

「下層と同じ霧ですね」

ユーリ先輩とソトナ先輩はこの霧を見たことがあるらしい。

しっかり辺りを警戒している。

さて、ここの攻略法だが。

「カルア、出番だ。ボスの居場所が分からないのは困る。頼めるか?」

「ん、任せる。『エージェント猫召喚』!」

「「「にゃあー」」」

出てきたのは3匹の黒猫。クミン、シナモン、ナツメだ。

ただこの前までの猫では無い。

カルアの〈五ツリ〉『上位エージェント・開放』により現れた上位の猫だ。

見た目的に変わったのは額にある宝石がより大きく、より輝いているところだろう。これは魔法の触媒。猫が魔法を使うのだ。ファンタジーだぜ。

また3匹のうちナツメだけは大きく変わっている。

1匹だけ黒豹の姿になっているのだ。体長も1メートル半ほどあり、他のクミンとシナモンが前と同じく普通の猫サイズなのと比べるととても大きかった。

だがその本職はエージェント。つまりは斥候から一番槍まで様々なことをこなすカルアの手足だ。

この霧の中でも猫たちの目には普通のボス部屋が映っているはずだ。

「ん『ピーピング』! ――見っけ」

「どこだカルア?」

「付いてきて」

「おう!」

視線を飛ばすスキル『ピーピング』だが、上位エージェント召喚中は猫の目を通してその光景が見ることもできるらしい。

カルアはすぐにボスを見つけたようだ。

〈ジョウキ〉は未だに霧を振りまきながら移動しているらしい。

攻撃開始。

「「にゃー!!」」

「そこ! 『スターブーストトルネード』!」

猫の鳴き声に導かれ、カルアがまず自身を中心に回転してトルネードを起こすスキルで切り込んだ。

「ブオオオオオ!!」

〈ジョウキ〉が吠えたことで位置判明。

こいつは霧を張って少しすると奇襲を仕掛けてくるんだが、こちらが無防備なところに奇襲を許すと大体何人かが退場するやべえスキルの連打をしてくる。

故にまずは俺たちがこいつを発見して攻撃するのが最適解だ。そうすれば奇襲を潰せる。

そのために索敵も出来るカルアを連れてきたんだからな。

「ナイスカルア! スキルをぶっ壊す! 『ディス・キャンセル・ブレイカー』! ユーリ先輩!」

「任せてくれ! 『 大壊 ( たいかい ) 光円断 ( こうえんだん ) 』!」

ここでユーリ先輩と攻撃。

狙いは霧を発生させている雲だ。

ここに〈ブレイク〉系か〈防御破壊〉系を詰め込んだ攻撃を打ち込む。

これがクリティカルで決まると雲が破壊されて霧が消えるのだが。

「霧が、晴れました!」

運良く1発目で霧を解除することに成功した。

「うおっしゃーー! 『聖剣』!」

「! こうなればこちらのものだ! 『グランドクロス』!」

「ガアアアアア!!」

本来なら霧で命中率とか色々低下しているやりづらい中のボス戦となるのだが、丸裸であれば超やりやすい。

この第三形態の攻撃は強力で3発くらい金棒が直撃すれば上級職でも軽くやられてしまうだろうという威力だが。これはシエラが止めまくった。

「『城塞盾』!」

「ガアアア!!」

巨大金棒が振られてもそれを平然と受け止めるのだからシエラはすごい。

また、シエラの〈五ツリ〉『盾姫ヒーリング』が地味に活躍。これはバトルヒーリングスキルだ。パッシブで時間経過で自動回復するために使い勝手が良い。

またカルアもすごい。全長7メートルのボスの肩に乗ったかと思うと、首に『急所一刺し』を打ち込んでダウンを取っていた。

「マジナイスカルア! 総攻撃チャンスだー!」

その後もダメージディーラーの俺とユーリ先輩でスキルを連打。〈ジョウキ〉のHPを削ると、5分くらいでレッドゲージまで減り、怒りモード発動。

「ガアアアアアア!」

赤銅色の体から蒸気が立ち上がり、2本の金棒を無茶苦茶に振ってくる。

「下がれ!」

ユーリ先輩の指示は正解だ。だが、冷静さを欠いた通常攻撃は、割と俺たちのパーティではカモなんだ。シエラ、やってやれ。

「そこよ! ――『カウンターノヴァ』!」

「ガア!?」

「ズドン」とカウンター。

怒りにまかせた直線的な通常攻撃に対し、シエラがカウンターを完璧に決めた。

〈ジョウキ〉がグラついて大きくノックバックしたところで、気が付けばカルアが〈ジョウキ〉の肩の上にいた。

「ん! 『ナンバーワン・ソニックスター』! 『急所一刺し』!」

「ガアアアアア!?」

「え、ええ!?」

ソトナ先輩の驚愕の声が聞こえた。それもそのはずだ。何しろ怒りモードとなった〈ジョウキ〉が速攻でダウンしたのだから。理解が追いつかなかったのだろう。

だが、それじゃあこの次は困るぜ。

「総攻撃だ! 全部使うぞ!」

「! ああ! ――『ヘブンブレイドオーバーソウル』! 『グランドクロス』! 『フルライトスラッシュ』!」

「『スターオブソード』! 『聖剣』! 『フィニッシュ・セイバー』!」

「『128スターフィニッシュ』! 『64フォース』!」

「『グロリアススマイト』! 『インパクトバッシュ』!」

「! 『ホーリーピラー』!」

「ガア……ア……」

そこへ総攻撃、もう全力で強スキルを連打しまくると、ついにボスのHPが尽き、膨大なエフェクトに包まれて消えていったのだった。

そして俺たちの手には攻略者の証が握られていた。

それを実感が沸かないように見つめていたユーリ先輩に声を掛ける。

「ユーリ先輩。お疲れ」

「! ゼフィルス君。はは、ああ……お疲れ様だ」

パチンっというハイタッチ音がボス部屋に響いた。