第1065話 ヨッシャー反撃。初の退場者は〈エデン〉から
第1065話 ヨッシャー反撃。初の退場者は〈エデン〉から
「受信! Bチームが北東エリアの〈7〉を手に入れたと報告が来ました」
「よくやった! チルミ君、巨城の〈13〉はどうだ?」
「うん、もうすぐで落ちるよ! 〈エデン〉この辺に集まって何かをしているみたい」
「十中八九罠を仕掛けているな。オスカー君のおかげで奇襲はできないと分かったら罠に切り替えてきたのだろう。俺でもそうする」
【通信兵】からBチームが北東エリアの入口とも言われている巨城を落としたと報告が来た。
〈エデン〉風に言えば〈北東の3〉地点のことだ。
インサーはそれに歓喜するとすぐに【ワールドマッパー】のチルミにリアル地図を見せて貰う。
すると〈エデン〉が〈中央巨城〉の北西付近に集まっているのが確認出来た。
オサムスは冷静に罠だと判断する。
「オスカー君の意見は?」
「混沌の香りが強い」
「ほう」
「あの、「ほう」とか納得してないで説明プリーズ! なに通じ合ってんですか!」
チルミが激しくツッコんだ。
オスカーはたまに常人では通じないことを言うのだ。
そしてインサーは常人ではないので通じてしまう。
まだ一般人枠のチルミは声を大にしてツッコミを入れるしか無かった。
「まだまだだなチルミ君。オスカー君は『あそこは危険がいっぱいだ。無防備に突っ込めばこちらが全滅するほどの被害が出るだろう』と言っているのだ」
「あんな言葉にそんな意味が!? そ、そうなのオスカー君?」
「チルミ、君は良い混沌の素質を持っています」
「だからそれじゃ私には通じないんだって! って、なに拝んでるの!?」
「混沌に感謝」
小城を走りながら次々と取る中で騒ぐメンバーたち。
そしてオスカーはチルミが気に入ったらしい。どういう基準で気に入ったのかは不明。……不明だ。
そして現在〈ギルバドヨッシャー〉は攻めに出ているメンバーを4班に分け、巨城を確保しつつ決戦に向けて準備を進めていた。
そこでインサーがしたのはまず巨城をひっくり返すこと。
どこでも良いわけでは無い。最も相手からして取りにくい巨城を手に入れることが目的だった。
〈エデン〉が何か集まっているうちに〈ギルバドヨッシャー〉は〈北東の3〉〈北東の1〉〈南西の3〉〈南西の2〉という4箇所の巨城を落とし、〈エデン〉との点数差を約6000点まで縮めてきていた。
〈エデン〉からすると、この4箇所の巨城は取り返しにくい。
まずは取りやすい巨城をインサーたちはひっくり返していた。
それと同時進行で〈エデン〉の狙いがなにで、どんなところに罠を仕掛けているのかを、オスカーが看破していく。
「こっちは混沌の濃い香りがします。こっちルートなら混沌は少ない」
「オスカー君、こっちならどうだ?」
「……いや、〈エデン〉の裏をかいているように見えますが、強い混沌を感じます」
「なるほど。ならばこっちのルートで行こう。オサムスは通信だ!」
「【通信兵】! Bチームに連絡」
「受諾!」
「残り時間11分!」
「そろそろ行くぞ。オスカー君のおかげで比較的安全な道が2箇所判明した。そこを同時に突く。連携がキモだ。タイミングを合わせて行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
〈ギルバドヨッシャー〉の4班が再び2班へと集まり、北東と南西から白本拠地方面へ目指し進軍する。
「行くぞ! ユニーク準備!」
「「「「おう!」」」」
こうして〈エデン〉と〈ギルバドヨッシャー〉がついにぶつかる。
〈ギルバドヨッシャー〉の 読 ( よ ) みは的確だった。
このフィールドは第三アリーナ。
しかも端から端まで使われているせいでとんでもなく広く、マスも多い。
そんなところに罠を仕掛けても全てのマスに仕掛けられるはずもなく、穴が存在することになる。
待ち構えている〈エデン〉のメンバーの配置も一見隙が無いように見えるが、囮やアイテムを用いれば隙を作ることは可能だと判断した。
要は囮を使い隙を作り、その隙に白本拠地へ向かうのが〈ギルバドヨッシャー〉の作戦だった。
そしてまずはオスカーの感じたウィークポイント、〈ギルバドヨッシャー〉の一番被害が出にくい部分に囮を投げ、〈エデン〉の隙を作り出す。
オスカーは 職業 ( ジョブ ) 名、【レーダーマン】の上級職、高の下【エウレカカオス】に就いている、〈調査課〉のエリートだ。
元々は索敵が得意の【シーフ】だったが、高位職の索敵特化【レーダーマン】に〈転職〉、これに絡んだのが〈ギルバドヨッシャー〉だった。
オスカーは常人とは違う独特な感覚を持っており、なんとなく遠くの混沌が匂いで分かる。そこに索敵スキルが加わるとかなり高い精度で危険などを察知する事が出来るのだ。とんでもない能力である。
この能力を本人は「混沌臭」と命名していたが、この名はあまり使われてはいない。
このオスカーの特殊な感覚と索敵能力も相まって、〈新学年〉の〈調査課〉では次席と大差でトップを爆走しているエリートだ。見る目が確かなインサーたちがオスカーを育て上げ、上級職にまでしてしまったのである。
オスカーの【エウレカカオス】は遠くからでもどの辺に罠が仕掛けられているのかから、ハイド系やインビジブル系で潜伏している、させているものまで全てを看破出来る。
さらにそこからオスカーの感覚が合わさり、大体ここら辺が安全だと分かってしまうのだから本当にとんでもない。
そしてこの能力とロード兄弟の能力を使い、相手の 弱点 ( ウィークポイント ) を的確に、素早く、電撃的に突くことで突き崩す。
オスカーの感覚頼りな部分はあるものの、これが〈ギルバドヨッシャー〉の真の奥の手だった。
「ここだ!」
そして、ついに〈エデン〉の待ち構える 領域 ( 北東 ) へと踏み込んだ。
「ここをピンポイントで狙うか!」
最初に立ち塞がったのは、ラウ。
〈エデン〉の中で唯一下級職の 職業 ( ジョブ ) 持ちの前衛。
彼が一番近く、最初に登場する位置に〈ギルバドヨッシャー〉は切り込んできたのだ。
オスカーのスキルと感覚は言っていた。ここ が安全である ( に混沌は感じない ) と。
「『超進化』!」
「変身系を敵集団の目の前で使うのはやめた方がいい」
「だな。あれはほんの少し体が動かなくなる欠点がある、たかだかほんの少しの間であるが、集団戦では命取りだ」
ラウがまずやったのはユニークスキル『超進化』。人狼化とも言える変身スキル。
全体的なバフを得ることに加え、視覚的圧力を与えられるので選択したのだが、インサーやオサムスにとって変身系はカモ以外の何物でも無かった。
「!?」
変身が終わった後ラウの目の前には、陣形を組み終わり、今まさに一斉攻撃しようとする〈ギルバドヨッシャー〉の姿があった。
ラウの役目は足止め。ラウ1人で〈ギルバドヨッシャー〉を止めるなんて不可能なので、他のメンバーが到着するまで耐えれば良かった。
「待たせました!」
そこに到着したのがシェリア、メルト、ミサト。
ラウが変身し終わって、僅か2秒後の到着。
ほとんど隙は無いといってよかった。
元々はこの4人がこのエリアを受け持っていた担当だったのだが、メルトたちはインサーたちの囮に釣り出されかけ、ほんの数秒だけ対応に後れが生じていた。
おかげでほんの数秒ではあるものの戦線に穴が開きかけていたのだ。ロード兄弟がスキルを使えば突破されかねない、これを押さえられるのはラウだけという状況。
突破されないためにはラウがなんとかするしかない。
ラウが考えたのは変身で牽制している間にメルトたちと合流する作戦。悪くはない。普通なら警戒して相手の歩みは遅くなるだろう。ただ、〈ギルバドヨッシャー〉がそれの上を行っただけである。
同時にラウへの一斉攻撃が放たれた。
これは攻撃魔法では間に合わないと判断したメルトとミサトが支援と防御スキルを使おうとする。
「く――『プロテクバ――」
「『テラ――」
「今だ! モンスタートラップ!」
「あぃちょー!!」
「――ベノン、バァッ!!」
「これは!? 『イグニスバースト』!」
しかし、そこに立ちはだかるものがあった。
それはミミック。宝箱の形をしたトラップモンスター。
〈ギルバドヨッシャー〉のメンバーの1人【モンスタートラッパー】のスキルで生み出され仕掛けられていたものがメルトとミサトに襲いかかったのだ。対処するか否かで一瞬の迷いが生じればそれだけで良し。
すぐにシェリアが吹きとばすもすでに手遅れ。
「『 連拳 ( れんけん ) ・ストリーム』! うおおおおおおお!!」
すでに逃げ場はなくラウは拳の連撃で迎撃するが、数が多すぎて対応しきれず。そこにインサーの『天からの落雷』が降ってきて―――。
ラウがこの試合最初の退場者となった。