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第1080話 ゼニスのいない悲しみを癒す新たなマスコット

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第1080話 ゼニスのいない悲しみを癒す新たなマスコット

ゼニスが〈ファーム〉に預けられることになり、感動のお別れをした〈エデン〉メンバーたちだったが、ギルドハウスでは上の空なメンバーが量産されていた。

「はぁ。ゼニスが。私たちの癒しが去ってしまったわ」

「悲しいです」

ラナが溜め息を漏らし、エステルが珍しく肩を落としていた。

そんな様子がギルドハウスのそこら中で見られるのだからゼニスが抜けたマスコットの穴は予想以上に大きかったのかもしれない。

「うむむ。これは、なんとかしなければ」

「なんとかなるのか? ゼニスの抜けた穴は予想以上に大きいぞ?」

悩む俺にそう問うてくるのはメルトだ。

「む~。恋に破れたときは新しい恋、というのが鉄板だが」

「その公式で言えば新しいテイムモンスターか? マスコット枠の」

「そう、なるよなぁ。だがそう都合の良い話なんて……あれ?」

「ん?」

新しいマスコット枠。

そんなフラグを立てたからだろうか、それは唐突にやってきた。

「「「わぁ!」」」

大ホールの端に設置した〈孵卵器〉の前で仲良く眺めていたロリッ子、ルル、ハンナ、フラーミナが声を上げる。

「卵が光っているのです!」

「これは、卵が孵るのでしょうか!?」

「うん! うん! ついに卵が孵るんだよ! わぁ!」

そこにあったのは2週間前に〈上級転職チケット〉と交換した〈ピュイチ〉の進化条件を満たした卵、それが孵卵器の中で輝いていたのだ。

そういえば孵卵器に入れてもう5日。そろそろ孵化してもいい頃合いか!

ギルドメンバーがぞろぞろと〈孵卵器〉の前に集まる。

「ついに生まれるのね!」

「待ち遠しかったです」

「みんなギルドハウスに来たらまず確認していたものね」

「だって気になるのです!」

ラナ、エステル、シエラ、ルルが口々に言う。

「ダンジョンに潜るときとか、寮に帰っている間に生まれちゃってたらどうしようってみんなで騒いでいたもんね!」

「私たちがいるときに孵ってよかったわね」

「はい。フラウの新しいテイムモンスター。どんな子なのか楽しみです」

フラーミナ、カタリナ、ロゼッタも新しく仲間になるモンスターに興味津々の様子だ。

ギルドメンバーの多くが揃っている、こんな瞬間に多くのメンバーが立ち会えるなんて幸運だ。もしかしたら、これも〈幸猫様〉と〈仔猫様〉のお導きなのかもしれない。ありがたやありがたや~。

「あ!」

誰かの声と共に〈孵卵器〉の中の卵が更に強く光ったと思うと、急速に光は収まって次の瞬間には〈孵卵器〉の中に雛がいた。

「「「「「わ~!!」」」」」

「う、生まれました!」

「可愛いのです!」

「い、今出してあげるからね!」

思わず歓声がギルド内に響いた。

〈孵卵器〉の中の雛の見た目は〈プリミティブエミュー〉の血統なだけあって、ダチョウの雛っぽいモンスターだった。首がやや長く、図体がずっしりしていて足が太く長い。そしてデフォルメされて可愛い見た目。

体毛が黄色なのはヒヨコにそっくりで、生まれたてにもかかわらずふわっふわとしている。さすがはファンタジー。こんなの見せられたら女の子は虜になるよ。

フラーミナが〈孵卵器〉を操作してパカッと開けると、その中から雛を取り出した。

「ピー!」

「「「「ふわぁ~!!」」」」

取り出した雛は大きさ30センチほど。結構な大きさだが、一鳴きすれば女性陣はもうメロメロだ。

「さ、触ってもいいのかしら!?」

「私は抱っこしてみたいです」

「待つのです! この子は生まれたばかりなのですから下手に触っちゃダメなのです!」

「さすがルルです」

「そうですね。今は眺めるだけにしましょう」

わいわいがやがや。

思わず手が伸びそうになる女性陣をルルがぴしゃりと止めたのはかっこよかった。

今回はみんなで眺めるだけにするようだ。

「この子の種類は、えっと〈ヒナミュー〉?」

「そう。〈エミュー〉系の雛で〈ヒナミュー〉だな。確かLV5で進化したはずだ」

フラーミナがモンスターを『看破』できる〈幼若竜〉で調べると、このヒナが〈ヒナミュー〉というモンスターだと判明したので、俺が補足を付け加えた。

〈ヒナミュー〉の頃は正直初心者ダンジョンに登場する〈コケッコー(ヒヨコ)〉とほぼ変わらない能力なので、さっさとパワーレベリングして進化させてしまった方が良い。しかし。

「進化……」

「進化すると姿はどうなるのですゼフィルスお兄様?」

「え? そりゃ見た目は大人のエミュー型モンスターになるけど」

「大人……それは可愛いの?」

「可愛いかどうかで言えば、かっこいいな」

「可愛さはどこ行ったのよ!?」

俺の答えにラナのツッコミが鋭く飛んだ。

仕方ない。確かに可愛くは無い。だってでっかいもん。脚力が戦車だし。

俺がそっと目を逸らすと、ピシりとかたまり〈ヒナミュー〉を見る女性陣。

あれ? これってもしかしてまずい系では?

「だ、だめだよ! 〈ヒナミュー〉は進化させない!」

「そうよ! こんな可愛い子を進化させるなんてとんでもないわ!」

「えええ!?」

まずい、不穏な予想が現実になった! フラーミナとラナがご乱心だ!

「ピー!」

「ほら、この子もこう言ってるよゼフィルス君!」

「なんて言ってるの!?」

ハンナには生まれたばかりの雛の言葉が分かるというのか!?

俺には残念ながら分からない。誰か教えて!?

だが、マスコットにするわけにはいかない。なにしろこの子は〈上級転職チケット〉と交換して手に入れた〈ピュイチ〉への進化ルートが開放された卵なんだから!

君たちだって貴重な〈上級転職チケット〉と同じ価値のモンスターを、ただマスコットにするだけなんて勿体ないと思うだろ?

そんなニュアンスのことを聞いてみた。そしたらラナがこう言った。

「〈上級転職チケット〉は、また稼げばいいのよ!」

「「「はい!」」」

おっふ。

すでに〈エデン〉では〈上級転職チケット〉の価値観はずいぶん変わっていたようだ。

〈上級転職チケット〉を与えられた学生はギルドに精一杯貢献出来るように努めるのが常識という、この世界の価値観が完全に失われています。

誰だこんな価値観を植え付けたのは!?

「大丈夫だよゼフィルス君。この子には癒しというとても重要な役割があるもん!」

ハンナの目がハートマークだ。

ルル、こういう時に頼りになるルルは何処!?

「いた! ルル、いいのかコレ!?」

「みんなゼニスがいなくなってとても寂しかったみたいなのです。今は癒しが必要なのです」

「むむむ、なるほど」

ルルはしばらく様子見すべしと言っている。

みんなHPに大ダメージを受けたから現在回復中、ということだろう。

確かに、進化の話はHPが回復しきってから改めてする方が良さそうだ。

「本当に可愛いよ~。よし、君の名前は今日から〈ヒナ〉だよ。よろしくねヒナ」

「ピー!」

「あ、完全に雛のまま進化させない名前付けちゃった!?」

フラーミナの命名力、恐ろしい。

結局この〈ヒナミュー〉、命名ヒナは、しばらくマスコット枠として〈エデン〉のギルドハウスで活躍してもらうことになったのだった。

みんな、それほどゼニスがいなくなって寂しかったんだ。

しばらくすれば元に戻ることだろう。早く戻ってほしいな。

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後書き失礼いたします。

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