第1083話 ばったり本人たちにあったので勧誘だ!
第1083話 ばったり本人たちにあったので勧誘だ!
「良い買い物が出来たわ」
「よかったですねタバサ先輩」
「ええ」
タバサ先輩はゼニス似のぬいぐるみを抱きしめてご満悦そうだった。
目の前にいるアイギスが、エリサとフィナのぬいぐるみを持っているのもご満悦の理由だろう。これでぬいぐるみが3体だ。
エリサとフィナは元々〈天魔のぬいぐるみ〉そっくりと言われるほどの子たち。竜とは違いぬいぐるみとして作製するのもそれほど手間は掛からなかったようだ。
「みんな〈天魔のぬいぐるみ〉は大好きだもの。このそっくりぬいぐるみには飛びつくこと間違いなしね」
「なるほど」
「〈エデン〉は相変わらずぬいぐるみ好きのあつまりなのじゃ」
フラーラ先輩の言葉が否定できない。
だが、確かにこのぬいぐるみは良い。〈天魔のぬいぐるみ〉の代用品としても使えそうというところがポイント高いな。
〈天魔のぬいぐるみ〉はやはり実用品。もうすぐ新入生が入学してくるし、あの〈天魔のぬいぐるみ〉は使ってしまうかもしれない。その時にこのエリサとフィナのぬいぐるみがあれば安心だ。
そんな俺の心境を見抜いたのか、アイギスが語りかけてきた。
「これで〈天魔のぬいぐるみ〉を学園長に返せるかもしれませんね」
「……?」
「……ゼフィルスさん。忘れているかもしれませんが、あの〈天魔のぬいぐるみ〉の一つは学園からの借り物ですよ?」
「……おう、そうだった!」
アイギスの言葉にポンと手を打つ。
そういえばエリサとフィナに〈天魔のぬいぐるみ〉を使用したことで消滅してしまい、悲しげなルルのために学園が保管していた〈天魔のぬいぐるみ〉を借りたんだった。完全に忘れてたぜ。
今ギルドにあるのは2つ。内借り物が1つだ。
ふむ。そうなると新しい〈天魔のぬいぐるみ〉がもう1つ欲しいな。できれば「天使」用と「悪魔」用で2つ持っておきたい。
どこかで当たらないかなぁ。
ちなみに【マギドールメイカー】で〈天魔のぬいぐるみ〉は作れない。こうして見た目だけそっくりは作れるけどな。
フラーラ先輩は相変わらず良い仕事をする。
「そういえばフラーラ先輩、例のアレの進捗状況は?」
「ああ、それがあったのじゃ。先週頼まれていたものももう出来ているのじゃ」
「おお! マジか、さすがはフラーラ先輩だぜ。グッドタイミングだ! 実はこのあと使う用事があってさ。ちゃんと本人に渡すから預かっていいか?」
「なんじゃ。それなら持って行くといいのじゃ」
ふっふっふ、天が俺に味方しているように感じるぜ。
先週注文していたアレも出来ているとのことでフラーラ先輩から預かり、こっそり〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉の中に収納する。
「ゼフィルスさん、それはなんですか?」
「新しいぬいぐるみかしら?」
「ああ、だがまだ秘密だ。お披露目はもうちょっと後で、お楽しみだな」
そう言うと、きょとんとしたタバサ先輩が首を傾げて聞いてくる。
「そういえば聞いていなかったけど、2人はさっきなにをしてたの?」
「ああ。実はちょっとある計画を立てていてな。立ち話をしていたんだ」
そこでタバサ先輩に合同攻略の計画の内容を話す。
「面白そうね」
「だろ?」
「ええ。その話、私も参加させてもらえないかしら?」
「もちろん構わないぜ」
「ゼフィルスさん、人数は大丈夫なのですか?」
「大丈夫大丈夫。今回は大人数で行くことにしてるから」
前回、第1回合同攻略の時は戦闘メンバーが10人、サポートが10人。計20人だった。
今回はさらに人数を増やした超大人数を予定している。理由は攻略もそうだが、レベル上げを目的にしているからだな。
人数が多いほど経験値が分散してしまいレベルは上がりにくくなる仕様ではあるが、前回は10人の戦闘職で普通にLV上限限界まで育っている。
もうちょっと増やしても大丈夫だと感じたんだ。
「各ギルド、出すのは5人まで。1パーティまで来ても良いとしたんだ。また、〈ギルバドヨッシャー〉からは【エウレカカオス】のオスカー君や【ワールドマッパー】のチルミを別枠で出してもらえることにも話が付いている。問題は〈ハンター委員会〉だが、〈山ダン〉の下層に行くと言ったら食いついてきたから、後で合流を予定している」
「なるほど、そうなると〈エデン〉はあと2人メンバーが足りませんね」
俺、タバサ先輩、アイギスがいてあと2人。
タバサ先輩とアイギスはすでに参加することを決めている様子だ。
問題無いぜ! 最悪俺1人でもよかったくらいだしな。
さて、後2人か。男子はみんな用があるみたいだし。あの〈ヒナミュー〉誕生で蕩けているメンバーたちの中で俺たちに付いてくると言ってくれる人物は果たしているのだろうか?
そんなことを思いながらとりあえず目的地に向かうことにし、フラーラ先輩の隠れ家を出たところで、また遭遇。意外な2人とバッタリ出会うことになった。
「……あれ、本物がいる!」
「んにゃ? あ! ご主人様 抱 ( だ ) ――ぐほぉ!」
「姉さま、どさくさに紛れて抱きつこうとしないでください。ここは往来の場ですよ」
「エリサさん、フィナさん!」
そこにいたのは現在進行形でアイギスが抱いているぬいぐるみのモデルとなったその人。
エリサとフィナだった。
「2人はなんでこんなところにいるんだ? ヒナはいいのか?」
「「ヒナ?」」
ヒナの単語に首を傾げるアイギスとタバサ先輩。
そういえばタバサ先輩も途中で別れたんだっけ? なら2人ともヒナのことは知らないのか。
「ふう。フィナちゃんのパンチの威力が上がってるわね。――ご主人様の質問に答えるとね、私たちも新しいぬいぐるみが欲しくなったのよ!」
「でもそれはもう良いです。教官が代わりになってください」
「あれ!? フィナちゃんが抱きついてる!? さっきのアレは!? ていうかずるいよフィナちゃん!?」
「お、おおお?」
なんということだろう。
気が付けば右の腕にエリサが、左の腕にフィナが抱きついていた。
というかフラーラ先輩の隠れ家の場所ってみんな知ってんの?
いや、いつもなら抱きつかれるのもやぶさかでは無いが、今日の俺はぬいぐるみの代わりをするわけにはいかんのだ。
ということで秘密兵器を見せる。
「タバサ先輩、あれを本人にも見せてあげては?」
「そうね。2人ともアイギスを見て、このぬいぐるみ良く出来ているでしょ?」
俺の言葉にタバサ先輩がアイギスが抱いているエリサとフィナのぬいぐるみを見せた。
すると。
「「私たちだ(です)!」」
あっという間に抱きつかれた腕が離されてぬいぐるみに向かったのだった。
ふ、どうだ(勝利)。
「すご! なにこれ、かなり良質の手触りよ!?」
「丁寧な仕事です。これはやっぱりあの方が?」
「そう、フラーラが作ってくれたのよ」
「! やっぱりフラーラさんの作品!」
「すご! でもなんで私たちをモデルに?」
「なんだか作りたくなっちゃったみたいよ?」
「「なるほど~」」
話が弾み、エリサの腕の中にフィナぬいぐるみ、フィナの腕の中にエリサぬいぐるみが収まる。なんだこの光景、超ほっこりする。やばい。和みの境地かな?
「フィナちゃんが可愛い~。これ欲しいわ~」
「姉さまもこれくらい喋らなければ可愛いのですが」
「フィナちゃん!? それどういう意味!?」
うむ。このまま癒されているのも悪くはないのだが、せっかくの機会だ。
こういう機会は有効に使わなければいけない。
「愛でている最中に失礼するな。2人ともちょっといいか?」
「んにゃ? 大丈夫だよご主人様~」
「はい。また後でも愛でることができますから」
「それなら良かった。それでもし2人さえよければなんだが、俺たちとダンジョンに行かないか?」
俺はそう2人に提案した。