第1087話 ロマンのトランプリン!良い夢をごちそう様!
第1087話 ロマンのトランプリン!良い夢をごちそう様!
「ゼ、ゼフィルス氏よ。これはいったいなんなんだ!?」
「〈山を越えるトラン・プリン〉だ!」
インサー先輩が問いかけてきたので再び正式名称を答えてあげた。
〈ギルバドヨッシャー〉のみなさん、良いリアクションをありがとうございます!
「ゼフィルスさん、それじゃあなんの説明にもなっていないわよ?」
「そうですよ。ですが言葉で説明するより見せた方が早いかもしれませんね」
タバサ先輩とアイギスの言うことももっともだ。そこにエリサが手を挙げる。
「はいはーい! なら私が見せてあげるわ! 刮目して見なさい!」
「はいはい。姉さまは教官の真似をしていないでさっさと行ってください」
「あ、ちょ、フィナちゃん押さないで!? 自分のタイミングで行くから!」
「じゃあエリサ、頼めるか?」
「まっかせてよ!」
ということで、エリサがまず飛ぶことになった。
「注目――は言うまでも無さそうだな。では、エリサが実演をしてくれるので、刮目して見よ!」
救済アイテムの効果説明に注目を集めようとしたら。もうみんな注目していた。
話が早い。
「じゃあエリサ、行っきまーす!」
右手を挙げて渾身のアピールをする見た目10歳の少女エリサが〈トラン・プリン〉にぴょんと跳び乗ると。
「うひゃああぁぁぁぁぁ―――――」
ポヨンと弾んで悲鳴を上げながら上空へと跳んでいった。
「「「「おおおおおおおおおおおおお!?!?」」」」
そして〈ギルバドヨッシャー〉を始めみんな良いリアクションを見せてくれた。
エリサ、ナイスだ! グーを送ろう。
俺は大変満足した。
「うん。姉さまは無事上へ登れたみたいです」
「うむ」
上を見上げていたフィナがどことなく安心そうに呟いていた。
普段はツンツンしているけれど実は姉が大好きなんだよフィナって。
こういうところがほっこりきます。
「ゼフィルス氏! まさかこのアイテムは!」
「ふっふっふ。見てもらったとおり、この〈トラン・プリン〉はこの崖をひとっ飛びするための専用アイテムなのだ!」
「な、なんだとー!!」
「こ、これが、山を越えるためのプリン!」
「ちょっと美味しそうなんだよ」
「この形状。確かにプリンは山に似ている!」
「山を越えるために必要なのはプリン。なのか?」
「混沌!」
うむ。〈ギルバドヨッシャー〉が〈トラン・プリン〉の前に集まり色々と分析を始めだした。さすがは〈ギルバドヨッシャー〉だ。少し混迷しているようだが。あとなぜかオスカー君が嬉しそうだ。
「ちなみに使い捨てアイテムで放置しておけば翌朝には消滅しているぞ。再びカップに戻すことはできない仕様だ。――さて、じゃあどんどん跳んで行ってくれ。まずは〈エデン〉からだ」
長話をしていると上のエリサを待たせてしまうからな。説明はここら辺で一旦終わらせる。
「では私が行きます教官」
「おう。いってらっしゃいフィナ」
「――――――」
言うやいなや、フィナはピョンとプリンに跳び乗ってそのまま上へと跳んでいった。凄まじく迅速。それだけエリサのことが心配なのだろう。良きかな。
その次にタバサ先輩、アイギスと跳んでいく。〈ギルバドヨッシャー〉は観察に夢中なので、続いて〈ミーティア〉のメンバーが跳んだ。
「な、なんだか緊張しますわね。これスカートは大丈夫なのかしら?」
「他の人を見る限り下から見えなかったのだわ。何か不思議なスキルで見えないようになっているようよ」
「本当に不思議なプリンですね。わかりました、では〈ミーティア〉、行きますよ!」
アンジェ先輩が意気込んで飛ぶと、マナエラ先輩が続き、〈ミーティア〉が跳んでいく。
そこからは早かった。
〈サクセスブレーン〉、〈カオスアビス〉、〈集え・テイマーサモナー〉も次々跳んでいき、サポートメンバーも跳ぶと、最後は〈ギルバドヨッシャー〉の番となる。
「も、もう少しだけ待ってくれ!」
「ダメだ。これのことなら歩きながら説明するから、なんなら売ってあげるし。だからさっさと跳んだ跳んだ」
「本当か!? 絶対だぞゼフィルス氏! おおおぉぉぉぉ―――――」
インサー先輩が珍しく縋り付いてきたが首を振ってプリンに向かわせる。
他のメンバーも同じリアクションなのが面白かった。
まあ、売ってあげると言った途端すぐに跳んでいったが。
「よし、これで全員だな」
そして最後に俺の番。
ピョンとプリンに跳び乗ると、一瞬のポヨンという柔らかい感触のあと、一気にビュンと真上に跳ばされた。
うおおおおお。相変わらずのジェットコースター感!
しかしそれもすぐに終了。
あっという間に崖の上に到着したからだ。
俺が到着すると全員が俺の方へ向く。
「ゼフィルスさん、あれすごく面白かったです!」
真っ先に話しかけてきたのは〈ミーティア〉のアンジェ先輩だった。
とても表情が輝いている。
いやアンジェ先輩だけじゃないな。少なからずキラキラした瞳の人が多かった。
気に入ったらしい。
「そりゃあ良かった。高い所が怖いという人がいたらどうしようかと思ったぜ」
「〈ミーティア〉にはそういう人はいないのだわ。むしろスリルを求める人が多いのよ」
「うむ。スリルとロマンはダンジョンにおいてもっとも心躍る重要な要素だ」
マナエラ先輩の言葉にインサー先輩も頷く。
何か共感できることが多そうだ。
「じゃ、どんどん行こう! 〈ハンター委員会〉がいる5層まで一気に行くぞ!」
「「「「おおー!!」」」」
大体のことは分かったので、この辺からはスピードアップ。
今日は入ダンした時間も遅かったし、〈ハンター委員会〉との合流もある。
俺たちは移動メインのフォーメーションで行くことにした。
崖の上にぽつんと置かれた階層門を潜ると次の2層へと進む。
「ここが2層、なんだね。相変わらず山と樹木の見分けが付かないんだね。食べられるのかね? 食べられなさそうなんだね」
「ロデン先輩、食べるのはモンスターだけにしてくださいよ」
ロデン先輩とハイウドが辺りを警戒しながら言う。
「『カオスレーダー』! 向こう側に弱い混沌が5。その奥に6いますね」
「助かるぜオスカー君。また接触しそうになったら教えてくれ」
オスカー君の探知によりエリアボスは近くにはいなさそうと判明。
崖の方面のモンスターだけ探知して、接触しそうになったら教えてもらう。これは以前3年生組との合同攻略でもやったな。
あの時は一直線に進んで、邪魔する敵は全て粉砕。踏み潰して進んだ。
そして今回も同じ。ただ、今回は更にモンスターにとって理不尽があるだけだ。
「エリサ。頼む」
「ご主人様にお願いされたら全力で叶えないとね! 後でご褒美よろしくね!」
「おう。何か考えておくぜ」
「それよりも私のリクエストを聞いてほしいな~」
「姉さま、そんな流し目をしてなにを頼む気ですか? ――教官、姉さまが度を越した我儘を言った場合は私が責任を持って 誅 ( ちゅう ) するので」
「フィナちゃん!?」
「え? ……おお。まあ俺に出来ることならなるべく叶えるよ」
え? チューするの? と一瞬思ったのは内緒。
今回活躍するのはエリサだ。
結構大変なことを頼んだのでお返しを考えていると、何やらフィナがシャドーしながらエリサを牽制していた。新しい遊びかな?
「ゼフィルスさん、なにが起きるのかしら? あの子たちは噂の天使と悪魔の双子姉妹よね?」
「ふっふっふ、マナエラ先輩。これからあまり知られていない悪魔の力の一部をお見せしますよ。刮目せよパート・ツー!! 今から見せるのはとある悪魔 職業 ( ジョブ ) の戦法! 戦闘開始→即全体睡眠→MP吸収→即死、を永遠ループさせる掃討奥義――〈良い夢をごちそう様〉戦法だ!」
「弱い混沌接近!」
「エリサ!」
「眠っちゃいなさい――『ナイトメア・大睡吸』! MP取って『MP大睡吸』! そして最後の――『夢楽園』!」
オスカー君の声と共に巨大な根っこから飛び降りてきたのは5体の樹木型モンスター。
それがなんのモンスターか見極める前に、すでにエリサはユニークスキル『ナイトメア・大睡吸』を発動していた。
エリサは『状態異常耐性貫通LV10』と『睡眠付着率上昇LV10』を持つ。さらにはユニークスキルでの〈睡眠〉付与だ。
そのため大体の雑魚モンスターはこのユニークスキルで眠ってしまう。
続いて発動したのは『MP大睡吸』。ユニークスキルで眠っている相手からは大量のMPをぶんどれる魔法だ。
これでMPを回復し、もう用がないと言わんばかりにトドメを刺す。
それが眠っている相手を高確率で〈即死〉させる魔法――『夢楽園』。
Aランク戦ではこれによって大量の筋肉が〈敗者のお部屋〉へと送られた、強力な魔法である。
そして『夢楽園』の幻想が現れたかと思えば、それが消えたとき、5体のモンスターはおらず、ドロップだけがその場に残されていたのだった。
――戦闘、終了。
それは戦闘開始から僅か10秒の出来事である。