第1090話 〈カオスアビス〉と〈ミーティア〉VSボス。
第1090話 〈カオスアビス〉と〈ミーティア〉VSボス。
「もう、ゼフィルス! また楽しそうなことをして、なんで私を誘わないの!?」
「おお?」
帰って来たらラナが大変お冠だった。プリップリだ。
「もー! 今度楽しそうなことをする時は私を誘いなさいって約束したじゃない! また自分だけ楽しそうなことをして、もー! ずるいわ!」
「だがラナたちだってヒナの世話で忙しそうだっただろ?」
「それでも私もゼフィルスと一緒に行きたかったのよ!」
おう。ラナがなんだか嬉しいこと言ってくる。
「ゼフィルスと一緒に行きたかった」とかツンデレにしか見えないのはきっと俺だけではないだろう。
ちなみに、俺に約束した覚えは無い。
……約束、したかな?
俺が記憶の中の思い出を漁っていると、カッカッと鋭い足音が近づいてきた。
そっちに顔を向ければやってきたのはシエラだった。
「ラナ殿下。それくらいに」
「シエラ~」
「よしよし。――ゼフィルス、おかえりなさい」
「お、おうシエラ。ただいま?」
「ええ。それでゼフィルス。ちょっと来てもらえるかしら? 話がしたいの」
シエラは抱きついてきたラナを撫でると、とても穏やかそうな表情で俺を奥へと促した。
あれ? なぜ『直感』が囁くのだろう?
この感じはまさか、お説教の予感!
「緊急脱出!」
「ダメですよゼフィルスさん」
「ダメ、だと!?」
いつの間にか近くにリーナがいた。
そして腕に抱きつかれていた。あかん。こんなの振りほどくなんてできないよ。
「さ、行きましょうね?」
「あい……」
奥の部屋で椅子に座ると事情聴取が始まった。
内容はもちろん〈合同攻略2年生編〉の件だ。
一応ダンジョンに入る前メッセージにて概要を説明して「いってきます!」と送っていたのだが、「こんな説明だけで納得出来るわけないでしょ? 詳しく話して頂戴」と笑顔のシエラに言われたのだ。
うん、笑顔だった。
でも説明が終わると腰に手を当ててお説教モードのシエラになっていたんだ。
「まったくゼフィルスは、なんでいつもこんな 大事 ( おおごと ) にしてしまうの?」
「ゼフィルスさん見てください。学園ニュースにも載っていますわよ?」
シエラとリーナが俺を挟みながら聞いてくる。前方のシエラ、後方のリーナだ。
リーナが後ろから腕を伸ばして見せてくる〈学生手帳〉を見れば、今日の話がニュースになってた。確かに大事だ。
だ、だが俺にも弁明はあるのだ!
「だが、〈エデン〉のみんなは忙しそうだったし、今日は土曜日だったし、ここは俺が行動しなければと――」
「あなたが自ら行動を起こすと大概大事になってしまうのだけど?」
「うむ。まさかニュースになっているとは俺も思わなかった。しかし! 俺は多く広めたい、学生をパワーアップさせたい! そして2年生ギルドからの要望も叶えるチャンスだったからな。仕方なかった!」
「はぁ。確かにヒナに構ってゼフィルスから目を離した私も悪かったわ」
「ですが、2年生を中心としたギルドと合同攻略をするのは悪くない手ですわ。3年生を中心としたギルドだけに教えている状況では余計な妬みを買いかねませんもの」
「そうだろ! うん、俺もそうだと思ったんだ」
「すごく後付けっぽいわよゼフィルス!?」
俺の弁明が伝わったのだろう。
シエラやリーナは理解してくれたようだ。お説教は回避された。やったぜ!
何やらラナが凄く懐疑的な表情で俺を見つめていたが、俺はサッと目を逸らしておいた。
そしたらシエラからジト目をもらった。やったぜ!(2回目!)
そこからは詳しい経緯や今後の目標やらを語っていく。
今回連れて行ったのはアイギス、タバサ先輩、エリサ、フィナ。
ラナは可愛く小さな口を尖らせていたのだが、シエラが後追いで〈山ダン〉を攻略すると言うと少し機嫌が直った。
後で攻略情報をシエラに流しておこう。
あ、それと後で合同攻略メンバーが装備買いに来ることも言っておかないと!
翌日、〈ハンター委員会〉も含め集まると、ショートカット転移陣で5層へと転移する。
5層の守護型ボスは〈フユキウサギ〉。
巨大なウサギ型の白い木だった。
ボス戦は全員で挑むより1から2パーティくらいで挑む方がちょうど良い。
ということで壮大なじゃんけん大会が幕を上げた。
「ではー! 本日初のボス戦参加枠を 競 ( きそ ) ってーー! じゃんけーん! ぽん!」
「「「「「ぽん!」」」」」
「ふっはははなのだね! 勝利の V ( ブイ ) なのだね!」
「おいおいマジか、ロデンの1人勝ちかよ!」
アーロン先輩の言うとおり、ロデン先輩以外全員がパー、ロデン先輩だけチョキだった。
両手で勝利のブイを飾るカニさんポーズのロデン先輩が不敵に笑う。
決まるの早っ!
「まだまだーー! 次行くぞーー! じゃんけーん! ぽん!」
「「「「ぽん!」」」」
続いて勝ち抜けたのは、〈ミーティア〉のマナエラ先輩だった。
「勝ってしまったのだわ」
「ナイスですわマナエラさん! 私の目に狂いは無かったのです!」
〈ミーティア〉からはサブマスターのマナエラ先輩がじゃんけんに参加していた。
マナエラ先輩曰く、アンジェ先輩はじゃんけんが弱いらしい。
ついでに言うとマナエラ先輩は強いらしい。これは2つ目のパーティを勝ち取ったところからも分かるな。
「では、よろしくなのだよ」
「ええ。お互い無理なく戦いましょう」
ロデン先輩とアンジェ先輩がお互い笑顔でよろしくし合うが、なぜか表情が硬かった。
「あそこは同じAランクギルドとしてライバル同士でもありますから」
「アイギスは知ってるのか?」
「ええ。というよりほとんど周知の事実ですよ。少し前のAランクギルドでは〈カオスアビス〉が下から2番目、〈ミーティア〉が下から3番目の評価でしたから。よくぶつかっていたのです」
アイギスの話だと〈カオスアビス〉は新進気鋭のギルドでその昇格速度は目を見張るほどだった。どこまで行くのか、誰もが注目していたところでピタリとその進行を止めたのが〈ミーティア〉だったのだ。以来、〈カオスアビス〉と〈ミーティア〉はお互いをライバルだと認識しているらしい。
アンジェ先輩ライバル多いな。ちょっと羨ましい。おそらく、負けず嫌いなのだろう。
ちなみに元Aランクギルド最下位は〈サンハンター〉である。
現在はかなり入り乱れていてまだ投票中だと聞いたな。まあ、1位は〈エデン〉だろう。
ふはは!
お、始まるな。
「キュウウウウウ!!」
「『パーフェクトバリア』!」
「「「「『プロミネンスバースト』!」」」」
おお! 〈ミーティア〉が合図も送っていないのに見事な一斉攻撃を放った!
全員が同じ技を同じタイミングで撃ち、そして同じタイミングで当てるのは相当な練度が無くてはできない。
この疑似〈ジャストタイムアタック〉のような戦術が〈ミーティア〉をAランクたらしめているのだ。
しかもあれはフレアバーストの上位ツリー、〈四ツリ〉の『プロミネンスバースト』だ。
アタッカー系の魔法使いなら大体の 職業 ( ジョブ ) が覚える。強いぞ。
「キュウウウウウウ!!」
白い蔓や蠢く樹木が地面から伸び〈ミーティア〉を狙うが、【結界師】系の女子のバリアがそれを完全に防ぎきる。
「みんな、続くのだよ。『 蟒蛇 ( うわばみ ) 』なのだよ!」
「おうさ! 『パーフェクトサイボーグ化』! 『マグネットメタルハンド』ぉ!」
続くのは〈カオスアビス〉。
〈ミーティア〉のほぼ反対側に回り込んだ〈カオスアビス〉が攻撃を仕掛ける。
ってハイウドかっこいい! 一瞬のうちに体がメタルチックの機械チックに変身したぞ! あれが【サイボーグ完全体】の変身能力だ。
更に右腕だけ巨大化させるハイウド。どんどんパワーアップしていく。
「ギュウウウウウウウ!?」
まず〈フユキウサギ〉に絡みついたのは闇の大蛇『 蟒蛇 ( うわばみ ) 』。身体に巻き付いたかと思うと動きを押さえつつガブリと噛みついてHPドレインを開始する。大蛇の先はロデン先輩の周りに蠢く闇に繋がっていて常時ロデン先輩のHPを回復させるという強力なスキル。
これが7つある【大罪】職の「熊人」系、【暴食】の能力だ。
【暴食】は相手のHPをドレインしながら状態異常にする技に長け、さらに相手を拘束、捕獲して飲み込んでしまう。それどころか遠距離攻撃されてもそれを飲込み、近接攻撃してくれば相手の身体ごと飲み込んでしまうというヤベぇ【大罪】だ。
ミューの【ハンターカウガール】のようにギルドバトルでは伯爵を攫う 職業 ( ジョブ ) の筆頭で「【暴食】だけは本拠地に近づけさせるな」と言われていたほどだ。
放出系の魔法攻撃は大概飲み込んでしまうので遠距離魔法攻撃で迎撃することができず、ダメージを負っても攻撃が全部HPドレイン系なのですぐに回復してしまう。とんでもない 職業 ( ジョブ ) だ。
ボス戦ではアタッカーからタンク、デバッファーまで幅広いポジションで活躍し、〈五ツリ〉となり『お裾分け』系が使えるようになるとドレインしたHPを仲間にも分け与えて疑似ヒーラーもできるようになる。
さすがは【大罪】職。強い強い。
「うぉらあああ!!」
「キュウウウウウウ!?」
ハイウドが右手を超巨大な鉄拳に変化しての強力なパンチを放った、拘束されている〈フユキウサギ〉に直撃。さらにそれだけでは終わらない。
「『マキシマムバンカー』!」
ズドンッ! と衝撃が轟いた。それはゼロ距離衝撃。
ハイウドの巨大な腕がゼロ距離からさらなる衝撃を叩き付けたのだ。
おお、かっけぇ!! HPをごっそり削った! むちゃくちゃ効いてるぞ!!
「ギュウウア!?」
「『メテオレイン』!」
そこへチャンスとばかりに打ち込まれたのが複数のメテオだ。
これは【流星の魔女】の魔法。アンジェ先輩の 十八番 ( おはこ ) である。
ハイウドや〈カオスアビス〉の攻撃を、樹木を地面から生やすことで防ごうとしていた〈フユキウサギ〉だったが、上からの攻撃は防げない。
そして複数のメテオが〈フユキウサギ〉に降り注いだ。
「フキュウウウウウ!」
「効いているのだわ。―――『クレセントアイビーム』!」
「出た! 眼からビームだ!」
マナエラ先輩の 職業 ( ジョブ ) は上級職、高の下である【ゴッドアイズン】。
【魔眼使い】の上級職だ。
眼で見たものを識別するのはもちろん。相手の行動を予測観察し、インビジブル系を見破る。さらに眼からビームや様々な攻撃魔法まで放てる良 職業 ( ジョブ ) だ。
杖を持ってはいるものの、先ほどの『プロミネンスバースト』も含め眼から出しているので杖は飾りだ。
マナエラ先輩がパチンとウインクした瞬間飛び出したビームに触発され、ハイウドも気合いを入れる。
「ええい負けられんーー! 『パーフェクトサイボーグ・ビーム』!」
「こっちもビーム出した!」
やっぱりサイボーグって言ったらビームだよね。
「ギュウウウウウウウ!?」
上からのメテオに加え、二方向からのビームが直撃した〈フユキウサギ〉のHPが目に見えて削れていく。
お互いのギルドが競い合うようにガンガンダメージを稼いでいくためにどうなるかとも思ったが、良い感じだな。というかロデン先輩がマジ良い働きをしている。ボスの動きを封じるってかなり難しいんだぞ?
その後も『闇の触手』がうごめき〈フユキウサギ〉を自由にさせないのだ。
〈フユキウサギ〉が抵抗すれば、その抵抗に合わせて柔軟に闇の大蛇や触手を動かし行動を阻害する。非常に高度なプレイヤースキルが要求される動きだ、正直すげぇ。
これはボスである〈フユキウサギ〉ですら簡単には解けず、HPをドレインされ、動きを制限され、さらに他の人たちからもボッコボコにされている。
おかげでタンクもかなり余裕そうだった。
「トドメです。『舞う流星』!」
そして最後はアンジェ先輩の魔法でトドメ。
今度は雨のように降るのではなく、操られて 数珠 ( じゅず ) つなぎのように降ってくる流星に連続で叩き付けられ。〈フユキウサギ〉のHPがゼロになる。
まるで潰れたウサギのようになった樹木はそのままエフェクトの海に沈んで消えていったのだった。
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後書き失礼いたします。
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