第1092話 階層門が見つからない。これが正しい攻略法!
第1092話 階層門が見つからない。これが正しい攻略法!
攻略は順調で、2年生合同攻略開始から4日が経とうとしていた。
みんな気合いの入れようが半端なく、ダンジョン週間に入ってから毎日攻略を進めている。
慌ただしくも急遽決めたパーティだったのにもかかわらず、今の所抜けたり脱落する人は皆無。むしろ各ギルドでは替わってくれという人が多いらしい。
それでも参加メンバーは誰1人としてそれに頷かず、どんな交渉をされても屈せずに合同攻略メンバーの座を死守しきっている、とのこと。
「3年生の合同攻略の結果がとんでもなかったからな。みな夢を見ているのさ」
そうかっこいい言葉を紡ぐのは〈サクセスブレーン〉のギルドマスター、カイエン先輩。
気難しそうな先輩かと思いきや、話せば結構喋りやすい人だった。
言葉の節々から滲み出る雰囲気がなぜか心地良いのだ。なんでだろう?
おかげでカイエン先輩とも仲良くなれた気がするんだ。
また、攻略も順調だ。
3日目には〈エデン店〉で大装備着せ替え回イベントを行ない、大体の人は〈木箱〉産〈銀箱〉産問わず上級装備に身を包んでいる。
まあ、〈木箱〉産だと 中級上位 ( チュウジョウ ) 級の〈金箱〉産に劣るので、ほとんど〈銀箱〉産の装備だな。
中には目が飛び出そうなお値段の〈金箱〉産をご所望になった強者もいる。
カイエン先輩は強者だよ。
それからみんなの装備を慣らしつつ攻略を進めついに昨日〈ハンター委員会〉が行き詰まっているという31層まで足を進めることに成功してた。
ここからは難易度が高くなるんだよなぁ。
〈上下ダン〉に合同攻略のメンバーを全員集め、俺は注意喚起を行なった。
「みんなよく集まってくれた。今日からは〈山ダン〉も折り返し、ついに31層だ! ここからは攻略がグッと難しくなるから、しっかり付いてきてくれ。アーロン先輩、31層の様子を改めてみんなに教えてあげてくれ」
「おう。俺たち〈ハンター委員会〉の最高攻略階層は34層。中途半端に聞こえるかもしれないが、これがなかなか攻略が進まない。その大きな理由がこのダンジョンの地形にある。階層門が必ずフィールドの端、崖の上にあり、さらに31層からはその崖が全方向に現れるために時間がやたら掛かっているからだ」
正直〈ハンター委員会〉の実力的に最奥ボスを倒せていても不思議ではない。
しかし未だに34層までしか進めていないのは階層門を見つけるのに時間が掛かっているからだ。
この〈山ダン〉は特殊で、階層門が必ず崖の上にある。そしてその崖はフィールドの端にしか存在しない。
上級ダンジョンという超特大のオープンフィールドで端までいかなければならないのだ。
まあそれだけなら逆に場所が限定され見つけやすいかも知れない。
崖さえ簡単に登れる手段があれば突破も容易いだろう。
だが、31層からは激むずとなり、フィールドを上から俯瞰したとき、フィールドの端全てに崖が現れる、盆地のようなフィールドに変化する。
しかも崖は陸続きではなく、崖と崖とが切り離され、崖の中は洞窟となって上に登れるような作りとなっている。まるで一つ一つがダンジョンだ。
〈ダン活〉プレイヤーはこれを〈ビル群〉なんて呼んでいた。〈階ダン〉と〈山ダン〉を合わせて「ビル群を登山する」なんて言われていたくらいだ。
要は初回だと階層門がめちゃくちゃ見つけづらいということだな。
階層門のある場所さえ分かっていれば急激に難易度が 萎 ( しぼ ) むダンジョンでもある。
〈ハンター委員会〉も31層に入ってからかなり経つのに未だ34層で足踏みしているのはそういう理由だ。
また、35層以降の守護型ボスもなかなかに厄介なモンスターとなる。
まあ、それは到着してからで良いだろう。まずは35層を目指さなくてはならないということで、〈ハンター委員会〉が苦労に苦労を重ねて発見した階層門の場所の地図を元に、34層まで真っ直ぐに進む。
「ここが、34層。混沌的には33層と変わりは無いように見えますね。近くに混沌――無し、残念」
「崖の上だが、すでに西側は全部 潰 ( 確認 ) してある。後は北、東、南のどこかに階層門はあるんだろうぜ。今は南側の崖を確認中でな。4割方潰してある」
オスカー君が早速索敵を開始し、アーロン先輩が攻略状況を教えてくれた。
ふむ、どうやらアーロン先輩はビル群を一つ一つ上って確認するという正攻法で調べているらしい。それじゃ時間が掛かるだろう。
だが安心してほしい。
頼もしいメンバーを連れて来た! これがこのフィールドの攻略法だ!
「フィナ、ゼニス。出番だ!」
「はい。任せてください教官――『天空飛翔』!」
「お願いしますねゼニス。気をつけるのですよ?」
「クワァ!!」
俺が示した攻略法は非常にシンプル。
空から見て階層門を発見する、だ。
〈山ダン〉はそこら中からサボテンのように山が伸びているが、崖の頂上には植物は無いので意外に見晴らしが良かったりする。
飛べないのなら、「高い山に登って崖の上の階層門を見つけろ」と言われていたくらいだ。
まあ、山の上にはボスとまではいかないが結構凶悪なモンスターが根城にしているので難易度が高いのだが。
空を飛べるキャラがいれば問題は解決する。フィナには『望遠』の付いた双眼鏡を持たせておいた。
「いやぁ、空を飛べるってのは便利だな~。ゼフィルスには良いことを教えてもらったぜ」
「複雑すぎ……」
そしてフィナとゼニスが飛び立ったところ、アーロン先輩とミューの言葉がこれだった。
アーロン先輩はこれで攻略が進むぞと陽気だが、ミューは複雑そうだ。
まあ、そりゃ今まで苦労して登山していたのが空から確認するなんて方法で簡単に発見されたら複雑な心境だろう。アーロン先輩が大らかなのだ。
そしてものの1分ほどで飛び立ったフィナが、なぜかゼニスに跨がって帰還した。
「私の場所が」
なぜかアイギスが「ガーン」となっていたが、きっと気のせいだろう。
スキルが無くても乗ることは可能なのだ。とはいえスキル無しだと振り落とされることもあるし、何も守られていないので危険なんだけどな。
本来スキルで騎乗時は、術者か騎獣モンスター、どちらかがどちらかのHPを肩代わりする仕様で守られているし、操縦なども術者の自由に出来る。
フィナがしているのは操縦不能、シートベルト無しのスポーツカーに乗っているのと同義なのだが、まあHPがあるので大丈夫なのだろう。振り落とされても本人が飛べるし。
しかし、ゲームではシステム的に出来なかったが、リアルだと物理的に出来てしまうのがすごいところだ。
「ただいま帰還しわっぷ!」
「おっと、大丈夫かフィナ?」
言わんこっちゃない。ゼニスがブレーキを掛けたところで背中に乗っていたフィナがちゅるんと前方に吹っ飛び俺の腹部分に向かって飛び込んで来たのだ。もちろん俺は『直感』を駆使してキャッチする。セーフだ。鳩尾に当たらなかった的な意味で。
「はい。ありがとうございます教官。おかげで助かりました」
「あー! フィナちゃんだけそれはずるくない!? 私にもプリーズご主人様ハグ!」
「姉さま、みんな見ているところで恥ずかしいです。やめてください」
「フィナちゃん!? そんなぎゅっとご主人様に回した自分の手をもう一度見ても同じことが言える!?」
何やら色々と騒動があったりなかったりしたが、一先ずフィナには「危険だからスキルの無い騎乗はしないように」と言い含めてその場は落ち着いた。
「それでフィナ、階層門は見つかったのか?」
「いやまだ探し始めて1分だぜゼフィルス。さすがにそう簡単には――」
「見つかりました。北の崖の上でした」
「――って見つかったのかよ!」
「愕、然……」
フィナの報告にアーロン先輩が驚愕し、ミューが口に出すほど愕然としていた。
こういうこともあるさ。
「じゃあ、気持ちを切り替えて行こうか!」
「だな! こんなに簡単に見つけられるなら最奥まであっという間だろうぜ!」
「今までの苦労は……」
俺の言葉にすぐに切り替えられたアーロン先輩はさすがだな。
ミューは、今はそっとしておこう。
その後俺たちはフィナが見つけた階層門のある崖まで一直線に突き進み、〈トラン・プリン〉で崖の上までひとっ飛び。
フィナの言うとおり、その崖の上にはしっかりと階層門が鎮座していたのだった。
さて、次は35層か。あそこのフィールドボスから少し大変になってくるんだよなぁ。
―――――――――――――
後書き失礼いたします。
ブックウォーカーにて〈ダン活〉小説第7巻の予約が始まりました!
よろしければお手にとっていただけると嬉しいです!
またブックウォーカー特典SSの希望・要望、たくさんのご意見ありがとうございました! 締め切らせていただきました!
いただいたものの中から選ばせていただきます!
どうぞ楽しみにしていてください!