第1119話 ランク4〈冠水の島鳥ダンジョン〉へ入ダン!
第1119話 ランク4〈冠水の島鳥ダンジョン〉へ入ダン!
〈山ダン〉周回に一区切り付くと、今度はどこ行こうか? という話になり、今度は上級下位ダンジョンのランク4、〈冠水の島鳥ダンジョン〉通称〈島ダン〉に行くことに決定した。
もちろんみんなでだ。
なんだか攻略がギルドの全体行動になりつつあるな。遠足みたいで大変良き。
足並みを揃えるのは悪いことではない。というより、俺たちが突出してレベルを上げすぎたのだ。俺たちが五段階目ツリーを開放したときはみんなに手伝ってもらったのだから、今度は俺たちがレベル上げを手伝う番だな。
「では、〈島ダン〉を攻略するということでいいかしら?」
「「「「いいよ~」」」」
「「異議無しです」」
「楽しみね!」
サブマスターのシエラがギルドメンバーの意見を聞いてホワイトボードに書き込む。
現在ギルドハウスでブリーフィング中だ。
正式に決定したということで、俺は注意点などを語っていく。
「さてみんな聞いてくれ! 知っての通りランク4ダンジョンからは、ランク3ダンジョンまでより強さが1段階上がる。モンスターは急激に強くなり、推奨LVが5も上がると言われている難関だ。故に、今までの攻略者、及び上級ダンジョンの入ダンは基本的にランク1からランク3だけだった」
「ゼフィルスはランク6を攻略してたけどね」
「しかし! モンスターが強いということは見返りも大きいということだ! そう、ランク4ダンジョンからは五段階目ツリーが開放できるLV30へのレベル上げが可能になるのだ!」
「「「「「おお~!!」」」」」
ボス周回のし甲斐があるな!
途中でラナが茶々を入れてきた気がしたが、そんなもの「〈エデン〉は別格」で解決だ。
今回も攻略してやんよ!
ソフィ先輩に作ってもらっていた救済アイテムの出番だぜ!
ということでやってきました〈上下ダン〉。
春休みで最上級生は卒業してしまったため、ここの住民も少なくなるかなぁと思ったが、そんなことは無かった。
みんな帰省もせず、がんばってダンジョン攻略に励んでいる様子だな。
特に2年生の熱意が凄い。
「頑張れ俺、負けるな俺! 新入生に抜かされるのだけはいやだー!」
「次の新入生も何をしてくるかわからん。あの〈エデン〉の例もある」
「そうね。高位職への発現条件がだいぶ解明されたとも聞くわ」
「今年の新入生は 選 ( え ) りすぐりだ。間違いない。だって願書の数がその年の新生児と同じ数あったとも聞くんだ」
「つまり同世代で本校に願書を出さなかった者はいなかった?」
「そんな超が付くほど送られてきた中から選ばれた選りすぐりのエリートたち。それが今年の新入生たちだ」
「〈エデン〉のあのインパクトの再来は近い?」
「いやだー! 新入生に抜かされるのはいやだー!」
「お、落ち着け!? まだ決まったわけじゃ無い!」
「いいえ。もう十中八九決まったようなものよ。去年の新入生も凄かったけれど、今年は高位職が去年以上に増えるでしょうね。そして――」
「ごくり。そして?」
「〈エデン〉がそれに拍車を掛けるように〈上級転職チケット〉をばらまいてるわ」
「「「あれマジどうやって集めてんの!?!?」」」
おお。なんだか多くの人たちの心からの叫びが聞こえた気がしたぞ。
まあ、俺にはどうすることもできない。
「上級職が増える! 増えるー!!」
「もはや高位職でも下級職はダメなのか? 抜かされる運命なのか?」
「上級ダンジョンを進めるのは上級職だけ。下級職は抜かされる 運命 ( さだめ ) 」
「いやだー! 新入生に抜かされるのはいやだー!」
うむ。2年生たちの気合いが凄いな。
4月になれば3年生、つまり学園の最上級生になるのだし、気合いを入れているのだろう。
「ゼフィルス様、手続きが完了いたしました」
「ご苦労様セレスタン。よし、行くぞ!」
「「「「「おおー!」」」」」
いざ、ランク4、〈島ダン〉に入ダン!
「あ、あれは!?」
「ま、また〈エデン〉が知らないダンジョンに入っていくぞ!?」
「あ、それはもう諦めました」
「海だー!」
「海ねー!」
「海なのですー!」
「ゼフィルス、ここは湖よ」
「――こほん! ああ。ちょっと言ってみたかったんだ」
「そ、そうよシエラ。私はちゃんと知っていたわ。ちょっと言ってみたかったのよ」
「ここは湖なのです??」
入ダンして目の前に広がった光景に思わずシャウトすると、ラナとルルがノってきてくれた。
そしてシエラからツッコミが入った。
「大きな湖ですわね~。確か足首くらいの深さが続いているという話でしたが」
「ですが、私が聞いた話ですと所々水深が深い場所があるそうです。そこには罠が仕掛けられていて落ちると大変な目に遭うのだとか」
リーナが辺りを見渡しながら言い、アイギスが注意点を告げる。
〈島ダン〉の見た目は、なんというか超巨大な水たまり。というかほとんど海。
だって奥の方とか陸が見えないし、ずっと先まで水が続いているのだ。
俺が「海だー」と叫んだのも仕方ないことだったんだ。真水だけど。
一面水が広がるダンジョン。そこにいくつか見える島がある。
今俺たちがいるのも島だ。広さは半径20メートルから50メートルと様々。意外に小さく見える。
あの島のどこかに階層門があるので、それを見つけて階層を進むのだ。
最初は結構簡単。島の数だってここを抜いて7つしかない。階層門がある可能性は7分の1だ。
しかし下層に行けば行くほど島が増える。
島のバリエーションも平地、森林、マングローブ、丘、山、崖、岩などなど難易度が増していき、洞窟なども出始める。ただ広さはさほど大きくないのが救いだ。
移動はほとんどが水たまりを歩くことになり、移動速度が落ちていく。
そしてここに登場する敵の多くが速度の速い鳥型モンスターだ。
こちらは動きが 鈍 ( にぶ ) いので逃げることが難しく、遮蔽物も無いので結構遠くからエンカウントされ襲撃されるという凶悪仕様だ。さすがはランク4ダンジョン。
しかも鳥型なので飛んでいて攻撃が当たりにくいというのもいやらしい。
幸いなのは耐久力がさほど高くは無いので、範囲攻撃が弱点というところだな。
遠距離攻撃や範囲攻撃が得意なメンバーを連れて行くのが正解。
以前俺がシエラ、ラナ、エステル、カルアとパーティを組んでいたときにここではなくランク6の〈岩ダン〉を攻略したのは、遠距離攻撃という手段が乏しかったからだ。
しかし今はそんなことはない。というかメンバー全員連れて来ているのでまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで攻略が可能だろう。
だが、その前にここの歩き方を改めて教えておかないとな。
「今アイギスが言ったように所々深い場所がある。だがそこには必ず罠が仕掛けられているので『罠発見』などで発見は容易だ。見つけたらどんどん教えてくれ。そして近づかないように」
「もし近づいたら?」
「その場合エリサが天を舞うな。吹っ飛ばされる的な意味で」
「ひえ~」
エリサの質問に的確に答えてやる。
まあ、罠の種類はいくつもあるんだが、大体が爆発系だ。まるで間欠泉のようにプシャっと噴射され、キャラは天を舞う。もちろん大ダメージだ。
あれも面白くて、ゲーム〈ダン活〉では〈間欠泉コンテスト〉なる〈スクショ回覧会〉の一種が行なわれたりして、誰が一番面白く打ち上がったかで盛り上がったりしたんだ。懐かしい。ちなみに優勝者は吹っ飛んだところに偶然通りかかった鳥さんに連れ去られたキャラのスクショだった。あの表情には笑わせてもらったな。
ということで。
「もし吹っ飛ばされたらその面白写真が俺の〈スクショ〉に収められる可能性があるのでくれぐれも注意してほしい」
「「「「ええー!?」」」」
うむ、こう言っておけば誰も近づかないだろう。十分注意するはずだ。
やはり〈スクショ〉は偉大だよ。ちなみに有言実行はします。
「あと、このダンジョンの救済アイテムを紹介しよう。これだ!」
言いたいことがありそうなラナたちを置いておき、俺はここで重要アイテムを取り出した。真面目な話だ。
「傘?」
「それが、ゼフィルスの言っていた〈海塗りのベール傘〉ね」
「そう、シエラの言うとおり。これこそがランク4上級下位ダンジョンの救済アイテム――〈海塗りのベール傘〉だ!」
「〈海〉って付いているのです!」
「げふんげふん! そしてこれを開くとだ」
ルルが気付いてはいけない部分に気が付いてしまったが、誤魔化しながら傘を開く。
「わ。透明?」
「でも日は遮っていますね。教官に影が差していますよ」
エリサとフィナが言ったように傘を差して上を見上げると、バッチリ青空が見えていた。
しかし、日差しはシャットアウトしており日傘の役目までこなせてしまうという有用アイテムだ。なお、このリアル日陰効果については俺も作ってから初めて知った。ゲームでは弱いインビジブル効果があって、遠目から鳥型モンスターに発見されにくくなるというだけだったからな。
「それでこれの能力は?」
「ああ。この傘の能力は『パーティ完全防水』。水完全シャットアウトだ。これを差しながら水に入ると、なぜか濡れなくなる」
「なにそれ?」
ラナが首を傾げた。意味が分からないのだろう。傘は雨を凌ぐものだから。
だけど本当なんだ。これを差したまま水に入ると、水の抵抗も薄まって陸に近い感覚で歩けるようになるし、陸に上がっても靴は乾いているという意味不明仕様なんだ。しかも差している本人だけじゃなくパーティ・ギルドメンバー全員が対象。
移動速度も阻害されないので優秀なアイテムなんだ。
「ふーん。良いじゃない。ちょっと試して見ましょ!」
しかし、ラナの順応は早かった。さすがはラナだ。
「わ、これ本当に濡れないわよ。不思議ね!」
「ラナ様、まずは私が実験しますから自ら行くのは――」
「にゅ! 靴に水が染みこまないのです!」
「ん。快適。水走り出来る?」
「水の中は踏み込みや踏ん張りが効かないのかと思ったが、地上とそれなりに近い感じで戦えるのだな」
ラナを筆頭にルルやカルア、リカなどがバシャバシャと水に入る。
「水掛けちゃうよ~えい!」
「きゃー! やったわねー」
「あははは、これ楽しいね」
向こうではサチ、エミ、ユウカの仲良し3人娘が水の掛け合いをしているぞ。
服は全く濡れることも透けることも無い安心仕様です。
俺のスクショが光る! パシャパシャ!
ふはは! これが〈海塗りのベール傘〉の力だ!
でも少し残念に思ったのはここだけの秘密である。