LNCrawler

第1163話 いきなり総力戦〈ハンマーバトルロイヤル〉!

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第1163話 いきなり総力戦〈ハンマーバトルロイヤル〉!

「罠を仕掛けるのだ! 急げ! 急がないと〈エデン〉が来るかもしれないぞ!」

場所は北エリアの南西にある〈ハンマーバトルロイヤル〉の拠点。

そこではギルドマスターのラディッツが声を張り上げていた。

最初の〈エデン〉との小競り合い、というには被害が大きすぎる一当てにサブマスターのアディを含む7人が開始数分で退場したという知らせを索敵担当から聞いたラディッツは、お隣が〈エデン〉だったという報告も合わさってしばし放心した。

きっと現実を受け入れられなかったのだろう。

しかしなんとかギルドマスターの矜持が彼を奮い起こさせた。

そうしてすぐに防衛設備を組み始めたのだ。

「ラディッツ! 人手が足りないんだ、手伝ってくれ!」

「え? いや、俺はギルドマスターだから指示を――」

「〈エデン〉が来るかも知れないんだぞ!」

「くぅ!!」

ラディッツはこの間ギルドマスターに昇格したばかり。前ギルマスとサブマスは卒業してしまったのでヒラからの昇格だ。

そのせいか、ギルドメンバーからは未だにヒラの時と同じ接し方をされるときがある。

「奇襲部隊は分担して〈エデン〉の拠点との 間 ( 通路 ) に罠を配置! もし来たら時間を稼いでくれ!」

「「「「「おう!」」」」」

防衛設備の設営を手伝いつつも指示を出していくラディッツ。

〈エデン〉は〈ハンマーバトルロイヤル〉のサブマスターを倒した。こちらが浮き足立っていると思って本隊が攻めてくる可能性は十分あった。

急がなければならず、また、防衛設備が整っていないうちに攻められないために時間稼ぎも派遣する。

仕事は山ほどある。

「同盟班! 〈エデン〉の向こうに居るはずのギルドに急いで同盟を打診してきてくれ!」

「ですが、アディ隊長がいません!」

「くぅ、アディがいないのが悔やまれる! しかし、行かねばなるまい! 〈エデン〉との接触を避けるべくCルートを使って移動し、スリーマンセルで行動。もし〈エデン〉と接触しても誰かは無事に帰って来い!」

サブマスターのアディは探索担当。それと同時に別のギルドへ同盟を申し入れる使者の役目もあった。

まあ、ゼフィルスが斬って退場させてしまったが。

おかげで〈ハンマーバトルロイヤル〉は大ピンチ。予備役の3人を引っ張り出して〈エデン〉よりさらに東にあるだろうギルドへ使者を派遣した。

もちろん、対〈エデン〉戦線を結ぶためだ。

向こうに居るギルドがどこかはまだ分からないが、正直どこでも問題は無い。

みんな〈ハンマーバトルロイヤル〉よりも格上だからだ。

とにかく〈エデン〉の動きだけは封じなければならない。

「くぅ。なぜ〈エデン〉の隣なのだ」

「ラディッツ、ぼやいてないで手を動かせ。今度は壁を設置するぞ!」

そうやって指示を出しながらも防衛用のアイテム設置を手伝わされて少し経つと、急報が届いた。

「報告! 緊急報告! 罠・奇襲部隊がやられました! 〈エデン〉が最速で迫っています!」

「は?」

思わず聞き返してしまうラディッツ。

無理も無い。奇襲部隊を送り出してから3分と経ってないのだ。

送り出した奇襲部隊が速攻でやられ、足止めもほとんどできずに〈エデン〉が拠点へ迫っている?

そんな報告が届けられたらどこでもこんな反応をするだろう。

しかし、ラディッツは動かなければならなかった。

「ラディッツ、しっかりして」

「おぶほ!?」

「ギルドマスターでしょ!」

「そういうセリフと活を入れるならグーではなくパーにしてくれないか!?」

こんな時だけギルドマスター扱いするメンバーに目を白黒させながらもラディッツはおかげで動くことができた。

「全員防御を確保!! 作製途中の防衛設備はそのままで良い! 〈エデン〉が迫っている! 迎撃準備だ! 配置に移――」

「〈エデン〉来ました!」

「早っ!? 早いよ!! ――各自! 罠作戦だ! 作戦開始――!!」

もう〈エデン〉到着。

ゼフィルスたちの部隊が〈ハンマーバトルロイヤル〉から見て北の方角にある通路から駆けてきていた。

あまりに早い展開に〈ハンマーバトルロイヤル〉は完全に浮き足立っていた。

足止め、もとい相手の勢いを弱めなければならない。

しかし、防衛設備と罠の設置はまだまだ全然足りないだろう。だが、罠があるという情報だけで足止めはできる。

〈ハンマーバトルロイヤル〉は全員が配置に付くための時間稼ぎのために「罠作戦」を実行する。

「罠―――!!」

「「「「罠―――――!!!!」」」」

「大量のトラップ仕掛けてあるのだーーー!!」

方法は罠やトラップがあると叫ぶこと。

要は罠を意識させて動きを鈍化させる作戦だ。

人は罠が仕掛けられていると分かると慎重になる。普通なら。

〈ハンマーバトルロイヤル〉のみんなで「罠罠」と叫んだ。割と必死に。

だが、〈エデン〉にそんな作戦は効かなかった。

「マジで!? 教えてくれてサンクス――レグラム!」

「任せるがいい――『天眼』! ここら一帯に無数に仕掛けてあるぞ。特にあの辺と地面に集中している。あっちにはむき出しのものがあるが、おそらく囮の罠だろう。目を逸らしておいて本命を悟らせない二重の罠と見た」

「おっしゃナイス、範囲攻撃を連射してぶっ壊せ――! 『サンダーボルト』! 『シャインライトニング』!」

「任せるがいい、罠を全て破壊する――『轟光閃破』!」

「あちらにある罠は俺がやる――『フリズドスロウ』! 『フレアバースト』!」

「私も手伝うよ~『シャイニングブラスト』! 『ホーリースパイク』!」

「凍っちゃえ~『神本・永久凍土』!」

「あれーーーーー!?!?」

罠には弱点がある。もちろん破壊されることだ。

〈ダン活〉の罠は基本的に設置タイプのアイテムで、例えば穴を掘るなんて物理的な罠は作れない。

ダンジョンオブジェクトは破壊不可だからだ。穴なんて掘れるわけが無い。

例えばメジャーな〈落とし穴〉という罠も、そういうアイテムを設置することで擬似的に足なんかが埋まる穴が作られるだけだ。ちなみにアイテムが破壊されれば穴も無かったことになる。嵌っていた人が地面に埋まっているなんてことも無い。

つまり、罠が仕掛けられていそうだと思ったらとりあえず範囲攻撃をぶっ放して破壊しておくという手が 定石 ( 有効 ) なのだ。故に、普通なら罠は仕掛けられていると思わせないことが大事。

ゼフィルスにとって、罠があるよと教えてくれる行為は悪手どころか、思わずありがとうと感謝を言いたくなるような所業だった。

そしてレグラムの『天眼』は隠されているものを見つけてしまうので、罠を隠したところであると分かっていれば暴けてしまう。

というわけで〈エデン〉はピンポイントで罠がある方へ攻撃を放ちまくり、破壊しまくった。

動きが鈍り、罠に嵌ったところを大打撃を与えようと待ち構えていた〈ハンマーバトルロイヤル〉だったが……作戦は失敗したようだ。

どこからかアホバカマヌケーの声が聞こえてきたような気がした。

「ああ、あわわわわわ!?」

「レグラム!」

「ああ。罠はあらかた破壊完了だ。道は開けたぞ、ゼフィルス」

「おっし突撃だーーー!!」

「げ、迎撃ーー! モンスターも全部出せーー!!」

「モンスター出します!」

もうこうなったら迎撃するしかない。モンスターも全部出して総力戦だ。

まだ試合開始から5分しか経っていなかったが、もう総力戦が勃発したのである。

〈ハンマーバトルロイヤル〉のモンスターはかなりの大物。

この日のために奮発したと言って良い。

それは上級のモンスター15体。ボスこそいないものの、上級のモンスター15体に襲われれば普通はそう簡単には倒せず、倒すのにかなりの時間が掛かる。下手をすればやられてしまうだろう。数は力だ。

そこへパワー型の〈ハンマーバトルロイヤル〉が大打撃を入れて撃破する作戦。

シンプルではあるが、なかなかに有効な作戦だった。

相手が〈エデン〉でなければ。

「『神剣・コールドカリバー』! 『神剣・ラストソード』!」

「『神本・フォールフレイム』! 『神本・シャインアウト』!」

「『神弓・ピンポイントボルト』! 『神弓・24ダート』!」

「「「せーの! 『神気開砲撃』!」」」

「な!?」

〈エデン〉のメンバーは上級モンスターにも戦い慣れしている。

しかも普通より遥かに。

15体のモンスターとそれに続くハンマー使いたちを前に、サチが氷の巨剣を振るう範囲攻撃を打ち込み、続いて威力の高い単体攻撃スキルでモンスターを屠ると、エミが上から炎の塊を落っことす範囲攻撃で追撃。それを抜けて接近したモンスターがいたが、撃つことができない代わりに目の前に超威力の光の玉を出す『神本・シャインアウト』で迎撃、屠った。

ユウカはサチとエミによって隙だらけとなったモンスターを、単体攻撃スキルで屠り、続いて24の連射を放つスキル『神弓・24ダート』でさらにモンスターを3体屠る。

最後は3人お得意の『神気開砲撃』でハンマー使いを1人巻き込んでモンスターの大半を消し飛ばしてしまったのだ。

あまりに流れるような自然なスキル回しに、モンスターが壊滅するまでほんの数十秒程度しか掛かっていない。

彼女たちは【神装】系。新しく進化したユニークスキル、『神装共鳴』で前よりもさらに威力が増していた。

火力だけで見れば〈エデン〉でも指折りの実力者なのがサチ、エミ、ユウカなのだ。

「「「『神装武装』!」」」

使用できるスキルに回数があるのが少しネックだが、それも気にならないくらい3人は 職業 ( ジョブ ) を使いこなしている。

「くおおおおお! イケメンやられろー! 『グランド・ロック』!」

「レグラム様、援護いたします。ご武運を『生命のメロディ』!」

「行ってくる。誰もオリヒメの元へ届かせやしない。『雷速天空・ 閃断 ( せんだん ) 』!」

「速っ!? ふっじゃば!?」

レグラムの五段階目ツリー、『雷速天空・ 閃断 ( せんだん ) 』は雷速で近づいて斬るソニック系。

一瞬で空中の右側面に移動されたハンマー使いは、振りかぶったハンマーが振りにくい位置に現れたレグラムに何もできず斬られ大ダメージを負って吹っ飛ばされてしまう。

オリヒメはそんなレグラムをうっとりと見つめていた。

一応援護の『生命のメロディ』は継続回復と、時々状態異常回復までしてくれる優秀な回復魔法なのだが、レグラムは結局ノーダメージで倒したのであまり意味は無かった。

「くぅ! 全員集まれ! 相手は10人だ! 1人ずつ確実に屠るぞ!」

「「「おおー!!」」」

「行くぞー! ハンマーを振りかぶれーー!」

そこでついに〈ハンマーバトルロイヤル〉が〈エデン〉のメルトとミサトに標的を絞ってきた。結界をクラッシュするスキルはハンマー使いの 十八番 ( おはこ ) だ。

ハンマーを振りかぶったままそこへ突っ込もうとするが、彼らの後ろに回り込むようにしてシエラが現れる。

「『アジャスト・フル・フォートレス』!」

「? ――何!? 後ろに巨盾の壁だと!?」

「そういうことだ。ここからは逃がさん」

「たはは~、覚悟してね?」

彼らハンマーたち主力の前に現れたのはメルトとミサトの2人。

逃がさないと聞いてラディッツが反論する。

「覚悟するのは君たちの方だ! この人数差では例え〈エデン〉のメンバーでも勝てまい!」

「いや、俺は言ったはずだぞ。逃がさないとな」

「なに?」

メルトの含みを持ったセリフにラディッツが疑問の声を返すと、後ろの方で歓声が上がった。

「〈エデン〉の増援だ」

「な、なんだとおおおおおおお!?!?」

まさかの反対側からの襲撃。

北の道に思い切り意識を集めていたら、南東の方から第2部隊が到着したのだ。セレスタンの部隊だ。

それも、ハンマーの主力が全員シエラに通せんぼされた状態で。

「ぜ、全員横から突破するぞ!」

「逃がさないと言っただろ。食らえ――『ブリザードテンペスト』!」

「たはは~悪く思わないでね~『鏡映しの迷路道』!」

「!!」

身が吹き飛びそうになる氷の暴風が吹き荒れると、続いてそこに現れたのは全てが鏡でできた迷路道。

しかも、メンバーとは分断されて少数になっていた。

これぞメルトとミサトの合体技。〈吹雪の鏡迷宮〉である。