第1165話 カリンVSアラン! 挟まれし筋肉と撤退劇!
第1165話 カリンVSアラン! 挟まれし筋肉と撤退劇!
ここは南東エリア。
筋肉攻めにあっていた〈氷の城塞〉の拠点は頼りにならないサブマスターが退場した後、さらに激しさが増していた。
「筋肉筋肉!」
「押し返すのよ! 『 雪氷蓮華 ( せっぴょうれんげ ) 』!」
「〈上級対氷ポーション〉を飲んだ筋肉に氷なんて効かーん!」
「くっ、ただでさえ厄介なのにポーションを飲むことなんて覚えて……!」
強固な城塞、防壁などは造るのに時間が掛かる。
しかし、〈筋肉は最強だ〉は身一つで動けるフットワークの軽さが利点。
時間的な意味で、〈氷の城塞〉とはとても相性が悪かった。
せめて時間が稼げれば防壁と城塞が完成し、筋肉すら寄せ付けない堅固になるはずだが、その時間が圧倒的に足りない。
防御が整う前に攻められた軍が敗北するのは自明の理。
レイテルの頭に押し切られる光景が過ぎる。
しかし、そこへ明るい声が響いた。
「なら燃やしちゃえば良いんでしょ? バンちゃんたちやっちゃえー! 『ビーストキングの誕生』! 『覚醒スキル開砲』!」
「ギュルワアアアア!」
「なに!? ワイバーンだと!?」
「まさか、本物か!?」
「襲撃! 襲撃だー!!」
「慌てるな! まずは筋肉を引き締め、冷静になるのだ!」
そこへ襲来したのは〈ワイバーン〉。
〈ベビーワイバーン〉が進化し、とうとう〈ワイバーン〉へと至った、〈集え・テイマーサモナー〉の〈ワイバーン〉第一号。
そう、〈氷の城塞〉を攻めていた筋肉の後ろを突く形で、〈集え・テイマーサモナー〉が襲撃してきたのである。
これには筋肉たちも多少は慌てたが、アランの言葉に防御姿勢を取って第一波を防御する。
そこへ放たれた轟炎の火球が直撃した。
「ぐおおおお!?」
「なんだこのダメージは!? 半端ではないぞ!?」
「〈炎主張主義〉と相対したとき以来の――あっちぃぜ!!」
その威力は防御姿勢を取っている筋肉を持ってしてなお驚きの威力だった。
それもそのはず。
〈ワイバーン〉のテイマーカリンはすでに五段階目ツリーの開放者だ。
その〈五ツリ〉である『ビーストキングの誕生』で全身バフを決め、さらにモンスターのスキルを1段上へと昇華させて放つ『覚醒スキル開砲』で特大の威力の攻撃を放ったのだ。
いくら防御姿勢をしていたとしても、筋肉を引き締めていたとしても、防御スキル無しで受けるにはダメージが大きい。
「空を飛んでいるぞ!」
「筋肉では届かない!?」
「案ずるな! 我らがマッスル先輩は空飛ぶモンスターとの戦いを教えてくれただろう!」
「そうだ! 決めるぞ! 俺に続け―――〈マッスルポーズ〉!!」
「「「「応!! ―――〈マッスルポーズ〉!!」」」」
グッと筋肉が盛り上がった。しかし〈ワイバーン〉は首を捻っただけだった。
「効いてない!?」
「バカな! 筋肉が5人もいたんだぞ!?」
「やはりマッスル先輩の筋肉でないとダメなのか!」
「テイマーを探すのだ! モンスターはテイマーを倒せば消える! 筋肉の鼓動で位置を感知するのだ!」
「あ、アラン、あそこに!」
「背中の上だと!?」
「あはは~、見つかっちゃったね! そうだよ筋肉たち、 私 ( テイマー ) は空の上だよ。さぁ、自慢の筋肉ポーズも不発に終わってどうするのかな?」
そうカリンはワイバーンの上に居た。
テイマーはアランが言ったように狙われやすい。いくら強大なモンスターを操ることが出来てもテイマー本人は弱く、大きな弱点となる。
その弱点を単体でカバーする対処法の1つとして空中にいるというのはとても有効だ。さらに騎乗していればちょっとやそっとのことではやられない。空を飛ぶモンスターに攻撃を当てることは難しいからだ。範囲攻撃を撃たれたとしてもモンスターが代わりに受けてくれるため無傷でやり過ごすことも難しくはない。
「カリン先輩か! ぬぬぬ、やるではないか。だが、まだだ!! 対飛行ユニットアイテムを準備!」
「「「筋肉!」」」
さすがのアランも身一つでは空飛ぶ相手には分が悪い。筋肉は飛べないのだ。
しかし、相手が単体しかいないのであればやりようはある。投擲アイテムだ。
飛んでいる相手を墜落させるアイテム〈 落槍 ( らくそう ) 〉は命中したモンスターを墜落させることのできるアイテム。さらには〈フラッシュ・バン〉という閃光を放つアイテムを使うことで、より空中に居る相手を落とし易くする戦法を筋肉たちは身に着けていた。上級ダンジョンでは飛行型モンスターは割と出るのだ。
アランに〈落槍〉が手渡されるが、アランの振りかぶる腕が途中で止まる。
「ふふん! そんなもので私たちを落とそうなんて、これを見てもまだ言える?」
「ぬぬ!」
しかし、それは単体、もしくは少数ならというのが頭に付く。
大軍相手ではそれは焼け石に水みたいなものだ。
そしてギルドマスターのカリンに続くように多くの飛行型モンスターたちがアランたちの前に現れると、筋肉たちは唸りを上げた。
〈集え・テイマーサモナー〉の戦力を舐めてはいけない。
彼女たちは1月から多くの強力なモンスターたちをテイム、育成し続けていた。
これはその成果である。そのテイマーたちは今インビジブル系で隠れている状態。
さすがのアランたちもこれと背後の〈氷の城塞〉に挟まれれば筋肉が危うい。
「ふ、見事だカリン先輩! ここは一旦撤退させてもらおう!」
「「「「筋肉!」」」」
アランは不敵に笑った後、潔く撤退を選んだのだった。
「追撃! あの背中を蹴散らして!」
「はははは! また会おう!」
〈集え・テイマーサモナー〉が追撃を放つが筋肉はそれを軽やかなダッシュで躱し、あるいは耐えきり東に向かって去って行ったのだった。
見事な撤退。
「む、無駄に速い! 深追いはしないで、戻ってきて!」
カリンは仕方なく諦めてモンスターたちを呼び寄せると、〈氷の城塞〉へと向く。そして提案した。
「〈氷の城塞〉に提案します。私たち〈集え・テイマーサモナー〉と対〈筋肉は最強だ〉戦線を組みませんか?」
筋肉は強い。
それは学園の共通認識(一部は否定している)。
よって〈集え・テイマーサモナー〉は〈氷の城塞〉と共に対〈筋肉は最強だ〉戦線を張ることにしたのである。
そして、これは〈氷の城塞〉に快く受け入れられることになる。
――――――――――――
後書き失礼いたします。
……昨日からカクヨムの作品ページがリニューアルしましたね。
毎回サブタイトルが二行にならないよう文字数に気をつけていたのに、横幅が狭くなった影響で二行になっていてしばし呆然……。おっふ!