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第1182話 〈カオスアビス〉の総攻撃。でも壊せない。

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第1182話 〈カオスアビス〉の総攻撃。でも壊せない。

俺の名はハーラル。

〈カオスアビス〉に所属するサブマスターハーラルと言えばそれなりに名の知れた、は見栄を張りすぎたか。ちょっとした、いや、少しくらい? 名の知れた男だ。

〈カオスアビス〉はロデンを中心とした新進気鋭のギルド。

ロデンは学園では数少ない大罪職の【暴食】に就き、他を寄せ付けない圧倒的戦力で勝ちを掴み、一代でAランクギルドまで築き上げたすげぇ男なんだ。

そんな男が引っ張る〈カオスアビス〉だが、今はかなり厳しい状態になっていたりする。

「結界が破れないんだね。これは厳しいんだね」

「壁が! 壁がまた建ちました!?」

「ああ! せっかくもう少しで破壊出来そうだったのに直っていくー!?」

そんなセリフが至るところから聞こえてくるのだ。

現在〈エデン〉の拠点を攻略中。しかし、俺たちの手は拠点に届いてすらいなかった。

城壁に阻まれ、結界に阻まれ、盾に阻まれ、俺たちは20人も集まっていながら拠点を破壊できるビジョンが描けなかったのだ。

それほどまでに〈エデン〉の城壁は硬かった。

「結界を食え――『グルメン』! 『 食腕鞭 ( しょくわんむち ) 』!」

ロデンの五段階目ツリー、4メートルにもなる闇の大男が出現。体のどこに触れても食べられてしまう恐ろしい眷属だ。さらに腕を鞭状に変化し、対人仕様に変化、そのまま防壁と結界へ鞭を振るい体ごとぶち当たる。しかし、ロデンの能力はこういう無機物や防御系に酷く弱い。人に当てられなければその真価を発揮できないのだ。闇の大男グルメンも結局回り込んできた盾に阻まれ消滅してしまった。

防壁だけならばまだロデンの能力で乗り越えることは可能だった。

それこそ俺たちが計画していた作戦。〈暴食開放作戦〉。

【暴食】は人を飲み込む、これを利用してメンバーが敢えて飲み込まれ、防壁を乗り越えたところで開放。防壁をスルーして中へ進入する作戦だった。

しかし、結界と盾を突破出来ず、未だに作戦実行に至っていなかった。

「道を空けろ! チャージが溜まった!」

「!! ハイウドのチャージが溜まったぞ! 道を空けろ!」

だが、それもここまでだ。

俺たちには【サイボーグ 完全体 ( パーフェクト ) 】のハイウドが居る。

このハイウドは昨年度、当時1年生の身でありながら〈上級転職チケット〉を渡されたほどの逸材。どこからか仕入れてくる上級の錆びた系装備というシリーズを身に着け、瞬く間に〈カオスアビス〉の主力戦力の1人になった男だ。いずれ俺のサブマスターの座を譲る日も近いと考えている。

「ハイウドの攻撃に合わせて一斉掃射だ! みんな、諦めるなよ!」

俺の指示に全員がハイウドに合わせるようにスキルアクションを行なう。

これで破壊出来ないと正直手が無い。だから破壊できることを願う。マジで。

「ハイウドだけに良い格好はさせないよ。あの城塞は結界と壁の組み合わせで防衛力が大きく上がっている。破壊するには防壁を狙うよりも、拠点に覆われた結界を狙う方が効果的、故に――」

「キール、話が長い。それよりも合わせろ」

キールにジェイ、期待の2年生たちだ。彼らも春休みで〈上級転職チケット〉を使用し、キールは【ソウルイーター】から【死神代行】へ、ジェイは【超能力者】から【ダークマターサイキッカー】へと〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉している。

キールは対人戦闘向けの 職業 ( ジョブ ) だが、城を落とすためのスキルが使えないわけではない。とはいえ、出番は結界が破壊された時だろう。一番槍を決めるためすぐに飛び出せるよう待機していた。

城塞の上には3人の女子がいる。あの3人の防御が強力だ。この一斉攻撃により結界を破壊し、結界を張り直される前にロデンの【暴食】で捕らえるか、キールが即死させてくれることで活路が開けるだろう。

ジェイは火力面で非常に強力な魔法使いとなっている。ハイウドに続き、うちでは2番目の火力保持者だ。

事実、先ほどまで結界を破壊できる寸前まで追い詰めていたのはジェイだった。

ハイウドとジェイの火力が合わさり、メンバー全員の力を解き放てば、きっと結界も破壊できる。そして隙を突き3人の女子をなんとかした後は作戦決行だ。

「撃つぞ! せーの! 『パーフェクションオーバー・バーン』!!」

「『闇狩りのカマソウル』!」

「とっておきのユニークスキルだ――『 暗黒物質 ( ダークマター ) ・ギャラックス』!」

「俺も続く――『大戦艦落とし』!」

あ、ちなみに俺は少し前にここを卒業していったアギドン先輩と同じ【バンディット・パイレーツキング】の 職業 ( ジョブ ) に就いている。俺の自慢だ。

「全て食べ尽くすのだね――『暴食の化身・グラ』!」

全員の総攻撃。ハイウドは強力な炎の砲弾を両手で造ったキャノン砲から発射し、キールが大鎌を投げ、ジェイはユニークスキルの大技。闇の球体による魔法攻撃。

俺は船を投げつけ、ロデンは五段階目ツリー、巨大な口を持つ獣を召喚して飛び掛かる。

さらには15人のメンバーも一斉に攻撃。

これだけの一斉攻撃だ、きっと破壊出来るはず!

そう思っていたのだが……どうやら俺は破壊出来ると思いたかっただけのようだった。

「『アジャスト・フル・フォートレス』!」

「『プリンセスヴァレション』!」

「『 重操 ( じゅうそう ) 結界強化 速展 ( そくてん ) 』!」

突如として現れた城のような巨大盾。さらにはおそらく強化魔法だろう、巨大盾にユニークスキルの光が掛けられたのが見えた。え? 盾を強化? ここら辺から背中に冷たいものが流れ始めたんだ。

さらに盾の前に集まってくる結界たち。何重にも重ねられもう数えられないほどの密度に展開して攻撃に備え始めた。

魔法の発動はたった3つしか聞こえなかった。こっちは20人だ。それも溜めてからの一斉攻撃。大丈夫、きっと大丈夫だ。

そう思っていた、いや思いたかったが、「ズドドドドガッシャーン!」という着弾音とガラスが割れるような音が響き渡り結界は消滅、そして城のような盾も破壊――できなかった。

「うっそだろう!?」

いやいやうっそだろう!? 声と心の中で2回も言っちまったぞ!?

耐えた? 耐えたの? なんで? こっちは20人なんだけど!? あの城のような盾、ボロボロだけどちゃんと防ぎきっていた。

城壁と拠点を覆う結界の方は攻撃が届いてすらない。

え?

……え?

〈カオスアビス〉は生まれ変わった。

新進気鋭とはいえAランクギルドに入ってからは常に非公式ランキングで下から2番目という順位に甘んじていた。新しくAランクギルドが増えたことで危機感は増し、あのゼフィルスさんの主催する上級ダンジョン合同攻略に参加してレベルを上げた。

おかげで〈山ダン〉どころか〈岩ダン〉すら深層まで潜れるようになった〈カオスアビス〉は五段階目ツリー開放者が5人、上級職を新たに6人も増やしてこのギルドバトルに挑んだのだ。

なのになぜ? 防がれちゃうの? ……え?

「『拠点を覆う大結界』! 『拠点を守る二重巨大結界』!」

「ま、またあの結界が張り直されたぞ!?」

「うそだろ、おい」

さらには今まで散々ダメージを与えまくって1つめの結界をなんとか破りかけていた拠点を覆う大結界の方も、新しく張り直されてしまった。

つまりは仕切り直し。ぜ、絶望感がパナい!!

「う、うおおおおおおおお!」

「おっとそれはダメだよ。『暴風結界』! 『防壁召喚』! 『誘導路』! ついでに『防壁大回復』!」

諦めずにもう何度も攻撃を放つ。

結界がダメならば、防壁へ。

しかし遠距離攻撃は暴風の風に逸らされて空の彼方に消えたり、もう少しで城壁が壊せそうになると新しい城壁が召喚され、さらには変な迷路まで俺たちの周りに立ち並び迷わせてくる。迷路を破壊して脱出すればすでに城壁は回復していた。おそらく、城壁を修理魔法で回復しているのだ。

ぜ、絶望的すぎる!

そしてあのさっきから攻撃に割り込んでくる4つの小盾だ。

「『クイーンオブカバー』!」

先ほどからこの盾に阻まれてそもそも攻撃が城塞まで届かないということが多い。

完全に防がれていた。

また先ほどと同じくハイウドが溜めて、それに合わせて一斉攻撃を加えたとして、城塞は破壊出来ないだろう。

となれば持久戦になる。向こうは3人だが、こちらは20人。MPの消費がどちらが大きいかは火を見るより明らかだ。それに時間を掛ければ遠征に出ているという部隊だって戻ってくるだろう。

時間は俺たちの不利になる。くっ、あの3人の女子になんとかロデンかキールを当てることができれば勝てるのに!

そう思いながらも攻撃の手を止めず、MPがどんどん少なくなっていき焦る 最中 ( さなか ) 、それはやって来た。伝令だ。

「報告! ロデン先輩――〈カオスアビス〉の拠点に〈集え・テイマーサモナー〉が強襲してきました!」

「な、なんだってーー!?」

「た、大変なんだね!」

それは拠点が襲われているという報告だった。