第1206話 アイギスの妹アルテちゃんは騎乗が得意です!
第1206話 アイギスの妹アルテちゃんは騎乗が得意です!
アイギスの妹が学園に到着したという。
ならば、面倒を見なければなるまい!(使命感)
「アイギス! 早速妹さんを紹介してくれ! いったいどの 職業 ( ジョブ ) に就きたいんだ?」
「え? えっと……」
「こらゼフィルス。焦りすぎよ」
「おお!?」
話は早い方が良いとばかりにアイギスに話を聞こうとしたらシエラから怒られてしまった。ついでにアイギスを庇って俺との間に入ってきた。さすがはタンク。カバー慣れしてらっしゃる!
「い、いえ。そう言っていただけるのはありがたいです。ゼフィルスさんに任せれば全て上手くいくというのは分かっています」
「アイギス、それは 誤信 ( ごしん ) よ。全部ゼフィルスに任せたらとんでもないことになるわ」
どうやらアイギスとシエラの認識には食い違いがあるようだ。
し、失敬な。俺のどこにとんでもない要素があると言うんだね?
そう聞き返したかったがシエラのジト目が心地よくて口を噤んでしまった。
「それでアイギス。妹さんはいつ学園に到着したの? さすがに荷解きとかあるでしょ?」
「いえ、どうやら金曜日には到着していたようです。ですがその日は私たちもSランク戦がありましたし、その後はなぜか〈エデン〉へ向かおうとすると謎の方々に止められたとのことで、今日連絡が届いたようなのです」
謎の方々ってなんだろう?
「そうなの? それで 職業 ( ジョブ ) の面倒を見てほしいということは準備は出来ているということなのね?」
「はい。実はもうギルドの前で待機しているのです」
「何! それはいけない! セレスタン、未来の仲間だ。おもてなししてきてくれ」
「承知いたしました」
「あ、私も行きます」
ギルドの前に待たせているという話を聞いてセレスタンを向かわせると、アイギスがすぐにあとを追う。
この場にはジト目のシエラと俺だけが残された。ポーカーフェイス!
「さっき残りの〈エデン〉枠について相談したばかりだというのに、もう新しいメンバーを増やす気なのね」
「アイギスの妹だ。仕方なかった」
「はぁ。アイギスの味方でもあるのだけど」
シエラの言葉の意味がよく分からなかったが、ジト目だけはよく伝わった。やったぜ!
そう思っていると部屋にノック音が響いた。
「セレスタンです。お連れいたしました」
「早っ! オーケーオーケー、入ってくれ」
さすがはセレスタン。まだ出ていって1分も経っていないはずなのにもう連れてきた。
いったいどんな手を使ったというのか。しかし、そこは慣れたもの、すぐにセレスタンに入室を促すと「失礼いたします」と言って入ってきた。
セレスタンとアイギスの後ろに居たのは、アイギスと同じく白に近い銀髪系の長い髪を一部三つ編みカチューシャにしてリボンで留めている女の子、瞳の色もアイギスと同じ青系で、ぱっと見アイギスにかなり似ているが――背がだいぶ小さかった。
「おや?」と思う。
おそらく、というか間違いなくこの子がアイギスの妹さんだろう。髪色、髪型、瞳の色までアイギスとそっくりなんだから。だが、体格がとても小さい。
ラナと同じくらい?
「騎士爵」というのはデフォルトで背が高く、発育が良い。
前にエステルから、騎士爵には秘伝の料理があり、それを食べて育つと発育がとても良くなるという話を聞いたことがあった。証拠に今まで出会った騎士の子は総じて高身長、体格も良い子が多い。エステル、アイギス、ロゼッタを見ればそれが分かるだろう。
唯一タバサ先生だけは騎士爵でも背が低かったが、秘伝の料理を食べてこなかったからだと聞いたことがある。
ということはこの子もそうなのだろうか? アイギスの妹なのでアイギスと同じ物を食べてきたはずだが。……しかし一部は育っている様に思える。
「紹介しますねゼフィルスさん。妹のアルテと言います。――アルテ、こちらが〈エデン〉のギルドマスターゼフィルスさんです。挨拶してください」
「はい! アイギス姉さま! ――いつもアイギス姉さまがお世話になっております。妹のアルテと言います! アイギス姉さまを【竜騎姫】に就かせたというゼフィルス先輩とはずっと話してみたかったのです!」
「こ、こらアルテ、余計なことは聞いてはいけませんよ?」
「ええ? アイギス姉さまをあの〈テンプルセイバー〉から救い【竜騎姫】にまで就かせてくれた馴れ初めとか聞きたいですよ?」
「そ、その話はまた今度です。アルテ、もう少し騎士らしくしなさい」
「絶対ですよ?」
「はは、俺はゼフィルス。この〈エデン〉のギルドマスターだ。よろしくな」
「よろしくお願いします!」
どうやら姉妹仲は良好なようだ。
確か学園祭の時にアイギスの家族が当時【姫騎士】に就いたアイギスを祝いに家族全員でやって来たという話を聞いたことがあったのを思い出す。
「こほん。ゼフィルスさん、アルテはこの通り少し成長が遅いので、あまり剣や槍の扱いが得意ではありませんが、乗馬などの腕は姉妹の中でも一番なのです。できれば騎乗系で活躍出来る 職業 ( ジョブ ) が良いかと思います」
「なるほど――アルテは?」
「私も異論はありません! 馬の扱いでしたら誰にも負けない自信があります」
ほほう。それは凄いな。
以前聞いた話なのだが、アイギスの家は代々【ナイト】系で鳴らしてきた名家だそうだ。
騎士爵が就ける 職業 ( ジョブ ) というのは大きく分けて2種類、【騎士】系と【ナイト】系がある。まあ、その両方を使いこなす【姫騎士】もあるが、基本はこの2つに分かれるわけだ。
そういえば、アイギスも最初出会ったときは【ナイト】だったな。あれは〈標準職〉ではあったが、同じ標準職の【騎士】を選ばなかった所からも【ナイト】へのこだわりが伺える。
なるほどなるほど。
良いじゃないか。
丁度【姫騎士】から至れる最後の〈上級姫職〉がその【ナイト】系のトップ職に当たる。
これは運命かな? 運命かもしれないな。よし、運命だ!
「採用で!」
「ふぇ?」
「こらゼフィルス。だから待ちなさいって」
思わず出た俺の「採用」発言にアルテから変な声が漏れ、いつの間にか俺の後ろに回り込んでいたシエラが肩に手を置く。それだけで「おっとやばい落ち着かないと」と頭が冷えてくるのだから効果は抜群だ。
シエラが今どんな表情で俺を見ているのかとても確認したくなった。
「まずはもっと色々すり合わせなくちゃいけないことがあると思うの」
「こほん。シエラの言うとおりだな。今の話はもうちょっと保留で」
「はぁ」
これで良し。まだセーフのはずだ。(セーフ?)
「それでアルテ。 職業 ( ジョブ ) に就かせてほしいということは、そのまま〈エデン〉に加入したい、ということでいいのか?」
「もちろんです! 〈エデン〉に 加 ( くわ ) わりたくない新入生なんていません!」
「そこまで断言しちゃうか!」
事実ってすげぇ。
「アルテの性格面などは私が保証します。問題を起こしましたら私が責任を持って――しますので安心してくだされば」
「待ってアイギス姉さま、今の部分よく聞こえませんでした! 私がもし、本当にもし問題を起こしたら何をする気なんです!?」
「問題を起こしてはいけませんよアルテ?」
「答えになってないですよ!?」
うむ。まだ出会って数分だが、アイギスとの会話を見る限り問題なさそうに見える。
問題を起こせばアイギスが任せろと言っているのだし、加入してもらっても問題なさそうだな。
「じゃあ続いて 職業 ( ジョブ ) だ。アルテ、【聖乗の姫騎士】に興味はないか?」
そう、俺は〈エデン〉に所属していない〈上級姫職〉の名を出した。