第1219話 ゼフィルスが居るうちにレベル上げがしたい!
第1219話 ゼフィルスが居るうちにレベル上げがしたい!
教師陣のキャリーは順調で、3日目の昼には55層に到着していた。
ちゃんと〈海塗りのベール傘〉を差してモンスターの襲撃回数を減らし、イルカ先生に強化された広範囲索敵を使って先に敵を発見してしまえば問題なく進めるので、とりあえず徘徊型〈音速ロック鳥〉が出る魔の56層手前までは案内した形だ。
現在は〈フルート〉を使いエリアボス狩りに勤しんでいる。
ちなみにこの〈フルート〉は以前〈パーフェクトビューティフォー現象〉の時にパメラが当てたあれを売ってある。
〈ハンター委員会〉も1本持っているので、今は50層と55層でエリアボス周回を敢行しているな。
成果は、まあまあ。
いやぁ、上級職とはいえ高位職もいれば中位職もいて結構時間が掛かっている。
特に飛行型モンスターを苦手とする近接型オンリーの人がメンバーだとその分時間が掛かってしまう。先生方はLVがまだ25にも届いていないので返り討ちに遭うこともあった。
レベルが上がり慣れてくるまでは俺たちもエリアボス戦のパーティに入って狩っていたのだが、そろそろ慣れたかなと先生方のみのパーティでやってもらったら、まだ早かったらしい。
「あ、崩れた! ヤバそうだよ!」
「……仕方ない、助太刀に入る!」
「了解。ヘイトを奪い返すぞ! 『カリスマ』ー!!」
「彼らを守護してください『 大式神ノ姫 ( おおしきがみのひめ ) 』!」
55層のエリアボスを狩ってもらっていた10人2パーティの先生方だったが、ヒーラーを守り切れずに狩られたことで一気に崩れそうになったためキリちゃん先生が助太刀に入ることを決め、俺たちが割って入った。
上級ダンジョンで全滅するのは危険なのだ。
すぐに俺が『カリスマ』を発動し、タバサ先生が五段階目ツリー、いつも召喚していた鬼の姫君を召喚して先生方の守りにつかせる。
さすがは【メサイア】、救世主。
守りと回復を司る強力な 職業 ( ジョブ ) だけあって、エリアボスの〈ケツァルライオン〉という巨大な翼を持ったライオンの前に立ちはだかって 弾き飛ばし ( ノックバック ) 、先生方を守った。
さらに先生方の回復とやられてしまった人の復活までこなしていくタバサ先生には頭が下がる。まさに救世主だ。
ただ回復と復活はかなりヘイトを稼いでしまうので、タバサ先生にタゲを奪われないように俺もガンガンヘイトを稼がないとな。
「『カリスマ』ー! 『フルライトニング・スプライト』!」
「グアアア!?」
「た、助かった」
「すまん」
「かまわんのじゃ。これが我らの役目じゃからのう。『 六尾解放 ( ろくびかいほう ) ・ 紅蓮焔 ( ぐれんほむら ) 』!」
「カノン、一度あれを降下させるよう仕向けてくれ。まずは動きを止める」
「おっけ~キリちゃん――『千聖操剣』! 『大空千回斬』!」
「グワアアアウ!!」
俺たちが助けに入ってからは一気にこっちに優勢が移った。
何しろこちらは五段階目ツリー。文字通り火力が違う。
途中で割り込んだためHPは全回復してしまったし、ハンディが発動して〈ケツァルライオン〉のステータスを上昇させてしまうが、そんなもので五段階目ツリーを開放した俺たちは止められないな。
俺の雷撃の花火の爆発で中空に 吹き飛ば ( ノックバック ) されると、そこへヨウカ先生の巨大な炎の直撃を受けて視界を奪われつつダメージが入り、炎が晴れるとそこには千の剣が殺到していて切り刻まれる。
ご丁寧に下には逃げられるスペースが空いており、〈ケツァルライオン〉が降下しながら反撃を試みようとするも、そこに居るのはキリちゃん先生だった。
「『竜王の構え』!」
「グル!?」
「落ちろ――――『 竜峰仙牙討閃 ( りゅうほうせんがとうせん ) 』!」
「グオオオオオオ!?」
一閃。
強力な威力を秘めたそれが巨大な翼にヒットしたかと思えば、〈ケツァルライオン〉はきりもみ回転しながら地面に墜落しダウンした。
くぅ~かっけぇ!! 大チャンスだ!
「おっしゃ総攻撃――! 『 勇気 ( ブレイブハート ) 』! 『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
「みんな、力を貸して――『多重口寄せの大儀式』!」
「大狐の爪に焼かれるがいいのじゃ――『 五尾解放 ( ごびかいほう ) ・ 灼熱 ( しゃくねつ ) の 大爪 ( たいそう ) 』!」
「いっくよー! 『 合天 ( がってん ) 千剣・ 破斬 ( はざん ) 』!」
「追撃するぞ――『 緋閃竜迅 ( ひせんりゅうじん ) 』!」
そこへ俺たちの総攻撃が突き刺さり、大ダメージが入った。
タバサ先生は五段階目ツリーによって複数の〈依り代〉を操れるようになったためにホワイトタイガー型ぬいぐるみの〈タイにゃん〉や、ゼニス似の竜型のぬいぐるみの〈リュキくん〉、マンモス型ぬいぐるみの〈マンちゃん〉を出して怪獣大決戦みたいになってたよ。
カノン先生は千の剣を合体させた巨大剣で強力な一撃を振り下ろし、キリちゃん先生は離れた距離であるにもかかわらず追撃の緋色一閃をズバンと決めていた。
「す、すげぇ」
「あのボスを圧倒している」
「先生方! 何をしておるか! 傷が癒えたなら協力せよ!」
「この感覚だと、あと1回、これでヘイトを奪えるはずだ。『カリスマ』ー!」
「グワアアアウ!!」
「うっし、タゲ奪ったぞ! ついでに『スターオブソード』もプレゼント!」
「グガアアアアア!?」
「みんな~攻撃だー! 『 天覆千斬風 ( ヘブンサウザンドテンペスト ) 』!」
「もうカノンさん、そんな大技使ったらみなさんが近づけないじゃないの。――ゼフィルスさん、回復しますよ『儀式:妖精の手』!」
「サンキュータバサ先生!」
「ならば妾の出番じゃな。ゼフィルスよ、離れるのじゃ、妾が焼き尽くしてくれよう――『 七尾 ( ななび ) 解放・ 妖炎津波 ( ようえんつなみ ) 』!」
「だから特大範囲攻撃なんかしたら近づけないだろう!?」
なんというか、余裕。
いつも〈エデン〉で戦っているときのあの余裕が感じられる。
このパーティ、すごくいい。
〈ケツァルライオン〉も反撃に口から火のブレスを吐いたり、横回転しながら突っ込んでくる『トルネードライオン』や縦回転しながら突っ込んで来る『大車輪ライオン』で応戦してくるも、そう簡単に優勢を覆すことは出来ず。タバサ先生から『妖精の手』で継続回復を受け取ってガンガンタンクをキメていた俺が、最終的には『フィニッシュセイバー』でフィニッシュを決めてやったぜ。
「怪我人は手を上げてね?」
「……どうやら怪我人は居ないようだな」
「うう~ん、もうちょっとレベリングが必要だね」
「熟練度の方は五段階目ツリーを開放してからでいいじゃろう。とにかくゼフィルスを借りられている間にレベルだけは上げとかんといかんのう」
タバサ先生とキリちゃん先生が怪我の有無を確認し、カノン先生とヨウカ先生が今後の育成を相談する。
え? 俺? 俺はもちろん宝箱の回収である。今回は〈銀箱〉が1つだった。残念。
その後は、55層で先生方のレベリングを続行、〈ハンター委員会〉は50層の先生方を担当してくれているので俺たちはこっちに集中だ。
〈救護委員会〉は万が一があったときように見回りを強化したり、まだLVの低いメンバーをレベル上げに参加させていたりする。
今回のレベリングは先生たちだけじゃなく〈救護委員会〉のレベル上げも兼ねているのだ。
まだ〈救護委員会〉でLVが30に届いているのはラムダしか居ないからな。
シグマ大隊長なんて息子にLVを抜かれたからとかなり張り切ってレベル上げに勤しんでいる。年齢がもうすぐ40歳なので経験値は俺たちと比べて半分くらいしか貰えていないはずだが、それでももうすぐLV30になりそうだというのだから凄い。
また、ほとんどのメンバーが成人しているからか、ダンジョンでの活動時間はなんと22時まで続行が許可されている。
おお~新鮮。ゲーム時代は24時になる前に帰還しないとペナルティだったのでギリギリまでダンジョンに入ダンしているのが鉄則だったが、リアルでは大体夕食までに帰還していたからな。
これが大人の力よ。
毎日そんなに活動していて体力は大丈夫かと思うも、この世界ではステータスのおかげで体力が異常に伸びるので、連日のダンジョンでも無問題とのことだ。
そんなことより俺がいるうちにじゃんじゃんレベル上げがしたいらしい。
俺と一緒ならこんな深層に来ることも簡単に出来てしまうと身をもって体験したためか、先生方の目に信頼が宿っている。
ならばその信頼に応えよう。
次は魔の56層。
徘徊型が必ずと言って良いほど登場する階層の突破だ!
〈音速ロック鳥〉のことを説明し、まずは俺たちのパーティと〈ハンター委員会〉で出撃し、他の先生方は入口階層門の近くの 救済場所 ( セーフティエリア ) で待機、見学してもらうことにした。
周りが湖なので見晴らしが良いからこそ出来る見学会である。
そしてその時は来た。
「な、なんだこの音は?」
「全力回避!!」
「「「おおー!!」」」
ダンカン先輩が音に反応すると、俺が指示して全員で回避行動。
そこを巨大なボスが通り過ぎていった。
「被害は!?」
「ゼロ!」
「おっし!」
すぐに被害確認をするが全員が回避に成功していた。さすがは〈ハンター委員会〉のメンバーにタバサ先生たちだ。
対処法はすでに伝授してあったが、しっかり行動に移せるのはさすがの一言である。
「おいおいゼフィルス、こいつは想像以上じゃねぇか?」
「これ、多分ダンカン先輩だけじゃ受け止めきれない」
高速で離れ、そして大きく旋回して戻ってくる〈音速ロック鳥〉にアーロン先輩が不敵な笑みを浮かべ、ミューは眉を寄せて次の行動に迷いを見せた。
だが、そんな味方を鼓舞するように俺は前へ出る。
「俺がやつを止める! そしたら全員で総攻撃だ!」
「ゼフィルスさん!」
「大丈夫だタバサ先生、俺に任せとけ!」
「ギュィィィィィン!!」
「来るぞゼフィルス!」
「おっしゃー! これぞ勇者の奥義! 『 完全勇者 ( アブソリュートブレイバー ) 』だ!」
ユニークを発動したタイミングでズドンと衝撃。
――俺、無傷。
「ギュィィィィィン!?」
「弾いた!?」
「ゼフィルス打ち勝ったーー!?!?」
たとえ〈音速ロック鳥〉でも俺は突破出来ないぜ?