第1224話 壁画の謎。これが上級職発現条件のヒントだ!
第1224話 壁画の謎。これが上級職発現条件のヒントだ!
「〈天魔のぬいぐるみ〉は差し上げますのでどうか〈幸猫様〉をどこで手に入れたのか、情報開示をお願いします!」
「いいですよ」
先生方からのとても熱心なお願いに感銘を受け、俺は〈幸猫様〉をどこで入手したかを開示することにした。
決して〈天魔のぬいぐるみ〉が欲しくて折れたわけではない。嘘です。〈天魔のぬいぐるみ〉をお土産にしないと〈エデン〉のギルドハウスに戻れない気がしたのだ。いや、きっと気のせいのはず、はて、なんでそんなことを思ったのだろう?
ちなみに今回のクエストでゲットした物の分配方法は、俺が参加した戦闘では俺と学園の山分けということになっている。
そして今回俺は〈地獄の三つ叉の戟〉、学園側は〈天魔のぬいぐるみ〉をゲットとなったわけだ。その〈天魔のぬいぐるみ〉をくれるというのだから「うむ」と頷かざるを得ない。ぬいぐるみ情報の交換というわけだ。
それはともかくとして、〈幸猫様〉が増えてたくさんの幸運が降り注ぐのは良いことだ。
俺は快く〈幸猫様〉がドロップしたダンジョンを教えようとした。
しかし、ここで問題が発生する。
「俺が〈幸猫様〉をお迎えしたのは〈猫ダ…………いや、〈野草の草原ダンジョン〉のレアボス〈エンペラーゴブリン〉からだったな」
「なんと……〈野草の草原ダンジョン〉のレアボスドロップとは」
「あそこは今1年生の狩り場です。そこを荒らすわけには……」
「むむむ」
「時期を見計らう必要があるね」
「〈笛〉回復の予算もいるな。あそこでは資金の回収が難しいぞ」
「どうりで今まで発見されなかったわけだな」
俺が聞かれたのは「〈幸猫様〉がどこでドロップしたか」。
教えようとして気が付いたのだが、そういえば俺、〈幸猫様〉を手に入れたの〈猫ダン〉じゃないぞ?
本当は〈猫ダン〉の方がドロップ率が高いのだが、それを俺が知っているというのはおかしくなってしまう。どうしよう。
ということでまたタバサ先生に一芝居打ってもらい、〈仔猫様〉について情報を開示した。
「――というわけなんだ。タバサ先生、頼む!」
「任せてゼフィルスさん。――先生方、実は〈エデン〉にはもう1体幸運を授けてくれる守り神がいるの。ね、ゼフィルスさん」
「そう、その名も―――〈仔猫様〉という」
「「「「おおー」」」」
タバサ先生にはお世話になります!
少しわざとっぽくなってしまったが問題ない。
〈仔猫様〉は〈猫ダン〉でドロップしたという情報も語っておいた。〈仔猫様〉の情報料は後で別に貰えることになって情報開示は終了する。
この情報開示は巡り巡って俺の、というか〈エデン〉の利益になるからな。
学園側もしっかり力を付けてもらいたい。
「ゼフィルス君、ちょっと来てくれないか」
「おー」
話が一段落したところでキリちゃん先生に呼ばれて奥へ行く。
このイベントボス部屋は奥に通路があるのだ。まるで何かを守っていたようにな。
というよりイベントボスというのは本来そういうものだ。
ランク1〈嵐ダン〉のイベントボスは救済アイテムを全て取ったことがトリガーだし、ランク9〈 火口 ( ひぐち ) ダン〉はお宝を守るイベントだった。
ということでこの先にもお宝があります。
レアイベントはお宝とは切っても切れない関係なのだ!
まあ、隠し部屋の延長みたいなものなのでそこに何があるか俺が知っているんだけどな。
キリちゃん先生の声に通路を進むと、カノン先生とヨウカ先生が立ち止まって壁を見ている光景に出くわした。
その理由を、俺は知っている。
「ねえゼフィルス君、これって何か分かるかな?」
「どうも抽象的すぎて分っかりづらいのじゃ」
「おう、どれどれ? ――これは!!」
俺はそこで大げさに驚いてみせる。
そこにあったのは 壁画 ( へきが ) だ。
左側と右側で別の絵が描かれていて、左は吹雪吹き荒れる大地に人がたくさん眠っており、その奥に1人の女性が描かれている。
右側は多くの人たちが立ち上がり武器を持ち、1人の角の生えた男性に立ち向かっている絵が画かれていた。
これ、実は左側が【睡魔女王】を、右側が【サタン】を描いていたりする。
吹雪と睡眠を司る「悪魔」系上級職―――【睡魔女王】。
全種族に立ちはだかり尚且つ倒れない強大なタンクの「悪魔」系上級職―――【サタン】だ。
そしてそれぞれに古代文字的な何かが画かれている。
うーむ。盛り上がるぜ。
そう、ここは【悪魔】系 職業 ( ジョブ ) である【睡魔女王】と【サタン】の発現条件、そのヒントが現存する場所なのだ。
まあ、一度知ってしまえば二度と来ない場所でもある。
何しろ〈夜ダン〉のレアイベントのお宝はこれだけで、この通路の先へ行っても宝箱はないからだ。この壁画がお宝、というわけだな。宝箱はさっき〈金箱〉出たし。
俺が〈エデン〉で〈夜ダン〉を攻略したとき、ここをスルーした理由でもある。
え? ここをスルーしたのになんでエリサが【睡魔女王】になってるの? だって? 細かいことはいいんだよ! 発現条件なんて偶然発見されることもあらぁ!
もし聞かれてもそう乗り切れば問題はない。多分。
「これは古代語か? ゼフィルス君は分かるのか?」
「いや分からん」
「ほわちゃ」
おっと、キリちゃん先生の言葉に正直に答えたらカノン先生が滑った。
「さっきの「これは!!」は何だったのさもう~!」
「あはははは」
うむ。良いリアクションである。
カノン先生ごちそうさまです。
ぶっちゃけこの古代文字っぽいものは飾りだ。意味なんて無い。ただの雰囲気盛り上げよう的な模様なんだ。
それで、本命はこの奥。
「ゼフィルスさん、ここに何か書いてあるわ」
「おう。――行ってみようぜ」
奥にいるタバサ先生からお声が掛かると、3人と一緒にそっちへ行き、今度は普通の日本語で読める文字が書かれている壁画を見つけた。内容は。
「〈夜を身に纏え〉? 〈寝ている者を糧とせよ〉?」
「読めはするが、こっちも抽象的な言葉じゃな」
まあヒントだからな。
ちなみにこれは【睡魔女王】の発現条件のヒントで、〈『夜』という名称の付いた装備を身に着ける〉ことと、〈〈睡眠〉状態の人間からHPとMP両方をドレインしたことがある〉という意味になる。
これをクリアすれば後は簡単だ、〈宝玉〉と、〈【ナイトメア】からの〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉〉というのはすぐに分かるしな。【ナイトメア】も眠りを司るのだ。
「こっちは〈強大な者と肉体言語〉と〈囲まれても生き残れ〉、こちらはまだ分かりやすい、かな?」
「〈肉体言語〉?」
こっちは【サタン】の条件だな。カノン先生が読み上げヨウカ先生が「ふむ」と言いながら思考にふけるが、キリちゃん先生は最初の条件ですでに躓いていた。ちょっと可愛く思ったのは秘密。
ちなみに肉体言語とは武器無しの意味である。〈武器無しの素手でボスモンスター撃破〉が条件だな。これはLVを上げて〈クマアリクイ〉を相手にすれば達成出来る。「言語」がどこから出てきたのかは不明。
あと肉体言語のところでイルカ先生が苦虫を噛み潰してしまったような顔をしていたが、どうしたのだろう?
また〈囲まれても生き残れ〉の方はほとんどそのままの意味で〈30体のモンスターに囲まれ生き残ること〉が条件だ。この30体が割とネックで、初級ダンジョンではその数を集められず、達成することが出来ない。
つまり中級ダンジョン以上のモンスターに囲まれなくちゃいけないわけで、相当なVITと防御力の高い装備を持っていないと囲まれたら生き残ることができない。達成の難易度がかなり高かった条件――だった。
なお、これは「スラリポマラソンで出した大量のスライムを使えば良いんじゃね?」という画期的なアイディアが発見されたことで簡単にクリアできる条件に成り下がってしまったのにはあまり突っ込まないであげてほしい。
結局この場所で行き止まり。
壁画は俺がスクショを撮り、文字は先生方が複写して大変な盛り上がりを見せた。
「研究員を呼ばなければ!」
「しかし、あの〈ホネデス〉が厄介だ。あれは強すぎるぞ?」
「ゼフィルス先生の話によればレアイベントボスはフィールドボスと同じく毎朝リポップとのことよ。明日には復活してしまうわ」
「今日中に解析してもらう?」
「しかし、我々には攻略もあるしな……」
先生たちが頭を悩ませながら唸った。
確かに、〈即死〉は本来なら 上級中位 ( ジョーチュー ) から出てくる非常に強力な状態異常攻撃である。
それまでは〈カウントダウン即死〉と言って食らってもカウントダウンが発生し、ゼロになる前に状態異常を回復すれば即死にはならなかったが、〈ホネデス〉はゼロ秒即死使いである。今の先生たちには荷が重いだろう。
なお、〈ホネデス〉の攻略法は、割と簡単だ。『即死無効』を付けておけば勝てる。
〈エデン〉には『即死無効』の付いた〈身代わりのペンダント〉のレシピがあるんだよなぁ。売り出そうかな?
研究員ならお高く買ってくれるだろう。うむ。
というわけで〈エデン〉が〈身代わりのペンダント〉を売り出すという話をして先生たちが湧き、問題も解決したため隠し部屋のレアイベントは終了したのだった。
それからは攻略に戻り、6日目には最奥へ到着した俺たちは、それから〈夜ダン〉の50層と51層でエリアボス周回をしまくって、最終日には無事先生方の約半分をLV30にさせることに成功したのだった。
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後書き失礼いたします!
〈夜ダン〉最強ボスも倒したので先生編はこの辺で。
明日は掲示板。
明後日は学園長。