第1230話 〈氷ダン〉最奥ボス〈ジャイアンペンギン〉!
第1230話 〈氷ダン〉最奥ボス〈ジャイアンペンギン〉!
「もー! もー!」
「はっはっは!」
〈氷ダン〉最奥への到着を途中で抜かしてしまったせいでラナがとってもお冠になってしまった。
今は俺の二の腕をペチペチ叩いたりして不満を訴えている。
まったく痛くないどころかむしろ気持ちいいくらいの力加減だった。
「…………」
シエラも今日一番のジト目だ! もう俺の気分は最高潮です!
シエラたちは例の51層の氷の迷宮で数日足止めを食らったらしいが、階層門の位置を知るアイギスたちが一緒なら速いのだろう。そう考えたのかシエラがジト目をやめて溜め息を吐いた。残念。
「はぁ。まあいいわ。もう夕方だし時間もそうあるわけではないわ。ボス戦を始めましょう」
「だな! 料理アイテムだが、ここでがっつり夕食を取りたい派と、今はティーで済ます派に分かれるか」
つまり夕食を料理アイテムで取るか否かだ。
ここはティーで済まし、帰ってから夕食を取りたい人もいるだろうから強制はしない。
このやり方は春休み中、上級ダンジョンを4箇所攻略していたときにしていた方法だ。
まだ17時だが、ここで料理アイテムを食べて夕食にするのは悪くない。
食後に動いて横腹が痛くなるということも無いので安心だ。なぜかは知らないが。
結局料理アイテムで済ます派が大半。
帰還して お風呂 ( おんせん ) に入って夕食に行くのは、ちょっと面倒というか、うん面倒なのだ。みんな お風呂 ( おんせん ) に浸かった後はゆっくりしたいよね。
というわけで料理バフを得て、準備完了。
「んじゃ、ギルドマスターの俺は確定として、タンク1、ヒーラー1も確定。残り2つだが……ノエル、頼めるか?」
「私? もちろんいいよ~」
最奥のボス戦はパーティに縛られない先着5名だ。
まずは初見ということでみんな慎重な様子。俺も慎重に選んだ。
そこで俺が声を掛けたのは【 声聖 ( せいせい ) の歌姫】のノエル。主にバフをメインに使うが、回復系の『ヒーリング・ミュージック』を覚えてからかなり強力なサブヒーラーとしても活動出来るようになり、そしてなにより強いのがそのユニークスキル。相手の怒りモードを強制的に静めてしまう『鎮静の一曲・ラブ&ピース』だ。
初見のボスは通常の攻撃パターンなども把握しなくちゃならないのに怒りモードまで手が回らないことが多いため、怒りモードになって攻撃速度が上がった瞬間に全滅させられるということが割と起こる。タンクがやられることもあれば、怒りでヘイト無視してヒーラーがやられるなんてこともある。故に怒りモードにさせないという戦術は非常に有効だ。
「ヒーラーはもちろん私よね!」
「あ、ラナ殿下ずるい! ねぇご主人様、私でも良いでしょ~?」
「たはは~、私も立候補したいな~!」
おっとヒーラーの立候補にラナ、エリサ、ミサトが真っ先に手を上げた。
これは悩ましい。とはいえ誰でも大丈夫なのでやはり公平にクジだな。
「タンクは私が入りたいな! ゼフィルス君をここまで連れてきたのは私だしね!」
「確かにトモヨにはゼフィルスの盾になる資格があるわね」
「む、これはいささか不利か?」
「わ、私はノエルちゃんがいるなら一緒に参加したかったのですが」
「教官にも聞いてみましょう。もしかしたら教官に考えがあるかもしれません」
タンク側では、本日40層から俺に付き合ってくれていたトモヨが名乗りを上げ、シエラとリカが難しい顔をし、ラクリッテがおずおずと主張したところでフィナがこちらに話を振った。
シエラがなぜかトモヨを功労者のように扱っているのが気になるところだ。
とりあえず、聞かれたことに答える。
「ん? ん~。正直誰でも良いぞ。初見のボスだしな」
「…………」
俺がそう答えるとなぜかシエラにジッと見られた。くっ、今回はジト目じゃないだと!?
「ということだから、今回は譲ってね~」
「仕方ないわね」
タンク組は今回トモヨで話が付いたらしい。
「たはは~、当たっちゃった」
「お?」
ヒーラーの方を向けばガクンと肩を落としたラナがいた。同じくエリサも。
どうやらこっちはミサトに決まったみたいだな。
ラナってば色々と運が良いというか、やたらゴールデンモンスターとかを発見するくせにクジには弱いんだよな~。
「さて、あと1人だが」
「俺に決まった」
「お、ラウか!」
最後の1人はいつの間にかラウに決まっていたらしい。
残りのメンバーで、初見でやりたい人たちが立候補し、クジで決めたようだ。
チラッと見ればメルトが何やら陰のある仕草で「フッ」とか言っている様子が目に入る。
そこにニヤニヤしたミサトが近づこうとしたので肩を掴まえて押さえておいた。やめてあげなさい。
「ということで、初戦は俺、トモヨ、ミサト、ノエル、ラウに決定だ! みんな準備は良いかー!」
「「「「「おおー!」」」」」
なんか4人より多く返事が返って来たような気もしたが、気を引き締めてボス部屋の扉を潜った。
「あ、なんか凄いでかいのがいるよ!」
「だな。俺の直感もアレがボスだと言ってるぜ」
ボス部屋は氷に閉ざされた、むしろ氷しかない部屋だった。
地面も壁も天井も全部凍っている。俺たちは〈ホカホカドリンク〉を飲んでいるため寒さは感じないが、通常では防御力などにデバフを食らっていたことだろう。寒いと 痛み ( 被ダメ ) が増すのだ。
当然道中もデバフを付与しようとしてくるモンスターの多いこと多いこと。
ほとんどは〈イブキ〉によって光にされてしまったが、本来ならかなり厄介なダンジョンなのだ。ヒーラーとバフが重要なダンジョンだな。
話が脱線したが、この氷の部屋には主がいた。
中央にデーンと立つ存在。大きさは10メートル級。そしてペンギン型のボス。
――――〈ジャイアンペンギン〉、通称〈ジャイアン〉だ!
なお、某有名な猫型ロボットとはまったく関係は無いとここに明記しておく。
「動くぞ!」
「トモヨ、ヘイト!」
「うん! 『ヘイトアップ』! 『タウントコール』!」
「ペーーーーーン!!」
「おわ!?」
「きゃ!?」
「声でけぇ。ラウ、ミサト、大丈夫か!?」
やはり体が巨大だからか、それとも氷で反響しているのか、もの凄く声が響いた。
それに耳が良い獣人のラウとミサトが悲鳴を上げる。
「くっ。ああ、来ると分かっていれば問題ない」
「うはー、私はちょっと厳しいかも。早く倒しちゃいたいよー」
物語では、人間の俺たちより獣人の方が耳が良いという話はよく聞くが、それは〈ダン活〉でも同じらしい。ゲーム時代はその辺なんの描写もなかったんだ。また〈ダン活〉知識が1つ増えてしまったぜ。
「むー! 声なら私だって負けないんだからね! 初めっから飛ばすよ――『プリンセスアイドルライブ』! 『リズム・メロディ・ハーモニィ』!」
ノエルが歌い出しバフを掛けると、ボスが動き出した。
「来るぞトモヨ! イージスで受けろ!」
「うん! 『イージス』!」
「ペーン!」
相手の攻撃、まずはキックだった。
なんと短い足で地面を蹴り、氷のつぶてを放ってきたのだ。
ダンジョンオブジェクトである地面はまったく削れていないのになぜか氷が飛んでくるミステリー。
もちろんトモヨが2枚盾を前に出し、幻影の巨大盾を出す『イージス』で防ぎきる。
「トモヨ、接近しながらヘイトを稼げ。俺とラウも続く!」
「うん! 『タウントシールド』!」
「デバフどんどん掛けてくよー『攻撃力ドレイン』! 『防御力ドレイン』! 『素早さドレイン』! 初っぱなからの~『桃色サンクチュアリ』!」
トモヨを先頭に走り、俺とラウがそれに続く形で接近。
ヘイトが稼げたことでミサトもデバフを掛け始めた。攻撃力、防御力、素早さを下げ、さらに『桃色サンクチュアリ』でHPとMPまでドレインしていく。
「ペーン!」
「『ストライクガード』!」
十分に接近すると今度はマジもんのキック。これはトモヨが防御した。
その隙に俺とラウが側面から接近し。
「いきなり大技行くぜ。『ライトニングバニッシュ』だ!」
「食らえ! 『エンペラーバスター』!」
左右から俺とラウが攻撃、ラウは装備スキルの『ワイルドボルト』が発動し、〈雷属性〉が乗ったパンチが決まる。
「ペーーーーン!!」
バリバリと電流が流れて〈ジャイアン〉を襲った。いいね。
ちなみに道中でゲットしたラウの〈ブリザードン・ツー〉は相手が〈氷属性〉に強いので降板である。
そのまま流れるように攻撃に移る。
こいつの第一形態は大したことはない。キックしたりパンチしたり、大声を放ってデバフを掛けてきたり、飛び跳ねて地震を食らわせる全体攻撃をしてくるくらいだ。
普通にキックなどの物理攻撃にはトモヨが対処。スキル『不動』があるためノックバックも氷で滑ることもないのが素晴らしい。
デバフの大声にはミサトが『セイクリッド・オールレジスト』で耐性を付与。それでも掛かる場合はノエルが『メンタルメディカル』でデバフを回復。常にバフ状態を維持し、飛び跳ねる大地震にはラウがスキル『 獣太震 ( じゅうたいしん ) 』(震脚)で地面を足で踏み抜き相殺。
アタッカーとしても優秀だが、ラウの【獣王】はこういう相殺的な技や防御スキルもかなり良いのを覚えているんだ。
「『超進化』!」
「! トモヨカバー!」
「『ガードポジション』!」
「ペーーン!!」
しかし、ガルゼ先輩の戦法を真似るならもうちょい慣れが必要そうだ。
隙を見て変身スキルを使うと、変身中に〈ジャイアン〉の氷のつぶてに攻撃されて慌ててトモヨがカバーに入るシーンなども見られた。
だが、やはり第一形態はそんなに強くはない。
そうこうしているうちに1段目のHPバーがゼロになる。
すると、ぐるんと一度丸まり〈ジャイアン〉が第二形態に変化していく。
そして丸まった体を元に戻したとき――股の下からは眷属である〈ミニペンジャイアン〉たちが続々と現れてきたのだった。
こいつら、合唱する気だな!?
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後書き。
次回、「危険な〈ジャイアン合唱〉VSノエルの歌対戦!」