第1273話 新乗り物〈マッシュルームキャラバンⅡ改〉!
第1273話 新乗り物〈マッシュルームキャラバンⅡ改〉!
「な、なんで 商人 ( マリア ) ちゃんがいるの!?!?」
「 盾 ( トモヨ ) ちゃん、来ちゃった♪」
マリアの育成を始めて数日後の週末。
今日までに初級ダンジョンを全 制覇 ( 攻略 ) したマリアをトモヨに引き合わせると、良いリアクションが返って来た。
「あ、分かった! ゼフィルス君の仕業でしょ!!」
「残念。これはマリアたっての希望なんだ」
「私も馬車の運搬はできますからね。トモヨちゃんを運びたくて立候補したんですよ」
「ま、マリアちゃん!」
メガネをクイッと上げてキメたマリアの言葉にトモヨが感激して目を輝かせる。
あれ? 新しい商売がしたくて立候補したんじゃなかったっけ? とちょっと頭を過ぎったが、世の中には口に出さない方が良いこともあるのだ。
「ということは、マリアちゃんもダンジョンに行くの!?」
「うん! そのために色々揃えてきたんですよ」
そう言ってポーズを決めてみせるマリア。
その装備は上級〈銀箱〉産、〈 夏旅商人 ( なつたびしょうにん ) シリーズ〉。
全体的に明るい感じになっており、上は少し厚手の長袖にレザー系のグローブ、下は青系のハーフズボンでコーディネートされ、腰にはいくつものポーチや〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉が取り付けられていた。
武器は〈護身用短剣(上)〉。攻撃力ではなく、なぜか器用さが上昇する装備だ。完全に戦わないことが前提の装備である。
「じゃあ早速試運転してみるか。トモヨは今誰とパーティを組んでるんだ?」
「えっと、最近はノーアさん、クラリスさん、アリスちゃん、キキョウちゃんかな。付き添いでカルアちゃんとリカさん、ラクリッテちゃんとノエルさんが入ってくれてるよ」
「アルテさんはどちらにいらっしゃるのですか?」
「アルテちゃんはナキキちゃんたちのパーティに出張中だね」
「じゃあ丁度良かったな」
「はい! ――任せてトモヨちゃん。今日は私が最奥まで運んでいってあげるね!」
「ありがとうマリアちゃん! なるほど~、だから今日はアイギスさんもエステルさんも居なかったんだね~」
「あはは~」
マリアが笑って誤魔化していた。
そう、実はこちらのノーアたちのパーティだが、昨日まで運搬してくれていたアルテやアイギス、エステルが軒並み不在となっている。これはマリアが早速キャラバンをお披露目してみんなを運びたいと希望したために裏から手を回して――げふんげふん。お願いして回った結果だった。
他の人たちにも挨拶して回る。
「ええ!? 戦闘職じゃないのに大丈夫なんですか!? 〈エデン〉は本当に非常識です……」
「わ~、よろしくねマリアお姉ちゃん」
キキョウはやっぱり〈エデン〉の非常識っぷりに驚き、アリスはマリアとはあまり接したことがなかったからだろうか、新しいメンバーとのふれあいに喜んでいた。
「まさかマリアさんがダンジョンに出てくるなんて、驚きましたわ」
「ゼフィルス様、内緒にしていましたね?」
「ではマリアさん、あなたの〈乗り物〉、是非見せてくださいまし。内部の隅々まで興味が尽きませんわ!」
「あ、お嬢様お待ちください。何私を置いていこうとしているのですか」
「クラリスも早く来るのですわ、最前線で拝見いたしますわよ!」
ノーアと従者クラリスはちょっとは驚いてくれたがそんなのよりもマリアの馬車の方が気になる様子だ。
「では早速お見せしますね。これが私の専用〈乗り物〉――〈マッシュルームキャラバン Ⅱ改 ( ツーカイ ) 〉です!!」
「「「「おお~!」」」」
デンッと〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉から取り出されたのは、まさにキノコをベースとした車両。
というかキノコ型の白い車(?)のような見た目をしていた。それが2台、連結してくっついている。
動力は不明でエンジンらしきものも無いのに運転すればしっかり走り出すという優れものだ(?)。
全体的に丸く、どっちが前を向いているのかよく分からないが。実はこれ、2台の車両が後ろ向きにくっついている構図になっているため、どちらの車両に乗り込んでも前進できる作りとなっていたりする。
さらにはオープンモードにすると壁が開閉しお店モードへと展開する仕組みになっていたりする。
〈雷ダン〉の階段の見当たらない4階の隠し部屋、その〈銀箱〉でゲットしたレシピから造った【マーチャントキャラバン】用の〈乗り物〉装備だ。
なお、装備の攻撃力と魔法力が脅威のゼロなので攻撃性能は有していない。要注意だ。
その代わりに上級ダンジョンの環境下でもそれなりに走ることができるため有用な装備である。
そして、これを見たみんなの反応は。
「キノコですわ!」
「キノコですね」
「2つのキノコに車輪が4つずつ付いています。これ車両ですか?」
「キノコ?」
ノーア、クラリスが普通にキノコだね断言派で、キキョウとアリスは首を傾げる派の様子だ。
うむ。良き。そんな反応になるよね。
俺だって最初みたときは「双子のキノコじゃん!」って思ったもん。
タネテちゃんの「これに目と口を付けたら可愛くなりますよ」という言葉に少し検討しているくらいだ(?)。
「うわぁ~これまた凄いの来たね。見た目のインパクト的に」
「どうですかトモヨちゃん、私の馬車は?」
「なんて答えれば良いのかわかんない!」
そうだろうな~。さすがはトモヨ、的確な答えすぎる!
マリアは結構この〈マッシュルームキャラバンⅡ改〉気に入っているようなんだが、見た目的には双子のキノコだ。
中は普通の馬車よりも広い作りになっており『空間拡張』スキルと同系統の別バージョン、『キャラバン』スキルを所持している。
この『キャラバン』スキルには『テント』スキルが内包されているので上位互換と考える人も居るな。【マーチャントキャラバン】じゃないと使えないスキルだが。
「まあまあ、中を見ていってよ。すんごいんだから」
「一番乗りですわ!」
「ちょ、お嬢様速いです。先に行かないで、いえ私を置いていかないでください!」
「じゃあ私はこっちのキノコに入ろうかな?」
「いいですよ~。あ、ドアは隠れてるから中に入るときはそこのスイッチ押してね」
「は、ハイテクだね~。お邪魔しま~す?」
「いらっしゃーい」
早速ノーアとクラリスが1台の馬車へ向かったので、トモヨはもう1つの馬車を覗くことにしたようだ。
外にあるチャイム的なボタンを押すと、取っ手も無かった壁が普通に開く。
「「おお~」」
「2つの馬車にはどっちも商品が積まれているの。ほとんどは〈 空間収納倉庫 ( アイテムボックス ) 〉の中だけど、売りにするための商品や見本なんかはすでに窓側に設置されているから、そっちは触らないようにしてね」
中も丸い空間だったが、お店モードで展開する壁側には商品が山になっていた。
居住空間ももちろん有り、個室がたくさんあってダンジョンで寝泊まりすることも可能となっているとわかる。
「なんか、福女子寮の部屋より広い気がする!」
「それ私も思いました!」
トモヨとマリアは福女子寮なのだが部屋の広さはこちらの方が上のようだ。
「これは確かに、ダンジョンで寝泊まりしても苦にならないかも。むしろこっちに住むのもあり?」
「おーいトモヨ。戻ってこーい」
トモヨが迷走し始めていたのを元に戻し、キャッキャと言って盛り上がる女子をしばらく見守る。
うんうん、新しい馬車のお披露目は大成功だな。
「では、そろそろ運転してみますね」
マリアが運転席へと着席する。