第1605話 いつも通り進んで28層で休憩〈六角の秘湯〉!
第1605話 いつも通り進んで28層で休憩〈六角の秘湯〉!
〈秘境ダン〉20層守護型ボス〈冷凍軍艦バットン〉を下すと、俺たちは21層へと突入した。
ちなみに〈金箱〉が2つだったよ。
去年のように〈銀箱〉の〈乗り物〉が出なくて良かった。あの時当たった〈ガンゴレ〉が魔改造された衝撃が一瞬頭を過ぎったが、そっと記憶に蓋をしておく。
「〈金箱〉2つが両方とも〈温泉結晶〉だったのですが……」
「ゼフィルス様、ご相談がありますのよ!」
「聞こうじゃないか!」
ちなみに〈バットン〉の〈金箱〉2つは両方とも〈温泉結晶〉という、〈エデン〉ギルドハウスの温泉施設にも使われている超大当たりだったのだから半端ない。やべぇな。これどうしよう?
そう思ったのは俺だけでは無かったようでクラリスが動揺し、ノーアが嬉々として俺に提案を持ち込んできたシーンもあった。
だが最終的に例のシエラとハンナの話が採用され、〈エデン〉ギルドハウスの風呂をより 巨大 ( ビッグ ) にするために使われることになったんだ。
3つの〈温泉結晶〉からは別々の効能の温泉が出るよう設定できるため、より味わい深い風呂になるだろうとギルドメンバー全員がワクワクしていたよ。これは1つも売れないな! むしろもっと欲しいまである!
「ゼフィルスさん、方向はどちらに切りますか?」
「おっと悪いなアイギス。2時の方角に向かってくれ。ちょっとした丘の向こうから湯気が出ているだろ? あそこで一度『湯着』スキルを張り直そう」
「承知しました。出発します!」
ここからは階層門の位置が分からない未到のダンジョンエリア!
『湯着』スキルは2時間で効能が切れるので、未到のダンジョンということもあり一度スキルを張り直した。
21層にあったのは秘湯と言うにはオープンな〈 滝湯 ( たきゆ ) の温泉〉。
手前にある丘から滝になって温泉が落ちてきている、滝壺の温泉だ。修業とかできる。
ゲームでは20層ボスを倒したらまずはここで一度『湯着』スキルを張り直すのが鉄板だった。
「たきー!!」
「滝なのです!」
早速幼女組が滝の修業にチャレンジ。
俺も一緒にやるとどんどん横にメンバーが加わってきて、なぜか全員参加の修業になってしまったんだ。楽しかった。
よし、『湯着』スキルも得たので続きだ! 22層への階層門に向かってみよう!
「アイギス、進路を11時の方角に執ってくれ。そっちに階層門がある」
「了解です」
「あの、ゼフィルス先輩、ここって一応未踏破のエリアなんだよね? 21層だよ?」
「なんか見慣れた光景な気がするですの」
「ゲフンゲフン。あーあー、そう、さっきのあの丘を越えたときにチラッと見えたんだよ。あそこからならフィールドが一望できるって思ってたら、大当たりだった寸法さ!」
おっと、カグヤとサーシャのツッコミコンビからツッコまれた! なんかいつも通りすぎて逆に違和感なかったんだぜ。幸いにも上手くごまかせたのでセーフ(?)。
上級で未踏破のダンジョンを踏破しまくった俺たちである。
もはや未踏破な階層を突破するのも慣れたものだ!
しかし、カグヤやサーシャは未だに新鮮な感想を告げてきてくれる貴重な存在。
この子たちは、ずっとこのままでいてほしい!
そんな調子で21層から28層まで突き進む。
28層に到着するころには『湯着』スキルも残り30分くらい。予想通り、ちょうど良いくらいだ。
「よし、『湯着』スキルも切れそうだし、この辺で秘湯を探すか!」
「そんなに簡単に探せるものなの!?」
俺の宣言にミリアス先輩が良いツッコミをくれる。
その言葉に俺は満足げに頷くのだ。
「ふっふっふ、探し方があるのさ。14層の〈湖温の秘湯〉もそうやって見つけたからな」
「えっとゼフィルス君、〈湖温の秘湯〉は最初から知っていたような?」
「細かいことはいい! ――アイギス、まずはあっちに向かってくれ! みんなは手分けしてモンスターがいないか確認してくれ! 索敵だ!」
「「「はーい」」」
ふう、ミリアス先輩のフレッシュなご意見に感動して、うっかり口がチュルンと滑ってしまったんだぜ。ハンナ、しーっだ!
ここで1年生やクイナダたちにも秘湯の探し方をレクチャーする。
「お兄ちゃん、あっちに何か居るよー」
「ゼフィルス先輩、向こうにもいます! 2時と3時の方角!」
「正面にも見えるぜ!」
「3方向から何かくるよ!」
「よーしアイギス、9時の方角に向かってくれ!」
「はい!」
「みんなはそのままモンスターをどんどん見つけてくれ! ――アイギスは報告が無い方向へどんどん向かうように」
「はいは~い!」
そうしてモンスターのいない方へいない方へと進んで行くと、正面を見ていたアイギスとゼルレカから報告が上がる。
「お、おお? 正面、湯気を発見です!」
「あれってもしかして温泉か? 山の頂上だ! モンスターもいないぞ!」
〈エクストラダンジョン〉なので出会うモンスターも少なく、メンバーのみんなも大体このダンジョンの特性が分かってきたようだ。
「分かってきましたわ! このダンジョンは 救済場所 ( セーフティエリア ) がすごく多いのですわね!」
「そして、その 救済場所 ( セーフティエリア ) の一部には秘湯が隠されている。という訳ですか」
おっとノーアとクラリスが感づき始めた。
「つまり、モンスターが出ない場所に秘湯あり、秘湯を見つけたければモンスターの居ないところを重点的に探せばいいわけなんですね」
「よく気が付いたな! 1年生はみんな優秀だ!」
「もうお兄ちゃん、そんなにヒントくれたらアリスたちだって分かるよ~?」
「ああ。ちょっと分かり易すぎたまであるな」
おっと、レクチャーしすぎたかな?
キキョウやアリス、ゼルレカからもそんな声が上がる。
そう、ここの温泉や秘湯はみんな 救済場所 ( セーフティエリア ) にあるのだ。
一節によれば、温泉にモンスター避けの効果があるとかなんとか。
なにせ俺たちが上級ダンジョンのエリアボス戦でよく使っているモンスター避けアイテム、〈モンスターケムリン〉もこの温泉を素材に作られているからな。
逆に言えば、 救済場所 ( セーフティエリア ) を見つければ秘湯もあるのである。絶対じゃないけどな。
大きなほぼ崖と言えるレベルで切り立った山の上から、ホカホカ湯気が出ているのをアイギスとゼルレカが発見。〈イブキ〉なら崖を登るのもなんのそのだ。
そうして登っていくと、そこには予想通り秘湯があった。
「あったー!」
「ってなんじゃこりゃ!? どうなってんだこれ? まるで人工的に作られたみたいな温泉じゃねぇか!
和気藹々と叫ぶアリスとゼルレカの対比が凄く凄い。
だが、ゼルレカのセリフも分かる。
そこは上から俯瞰して見ると、六角形の角柱の頂上に、これまた六角形の窪みがあり、温泉が溜まっている形の秘湯だったのだから。
そして温度は適温。広さは300人が入っても余裕があるほどデカく広大。お湯が出てきている様子も無く、ただそこに溜まっている。
こんなの見たら「なんじゃこりゃー」と言いたくなるのも分かるな。
これが28層の秘湯。〈 六角 ( ろっかく ) の秘湯〉だ。
ダンジョンは不思議なことでいっぱいだ!
「よし、アイギス着水!」
「はい!」
「いきなりか!」
先頭のアイギス号が最初に温泉の上を進んで行くと、他の3台も付いてくる。
タラップを降ろし温泉の温度を確かめて、人が浸かっても問題ないことをささっと調べた。
「よし、オッケーだ」
「ゼフィルス先輩が慣れすぎ!」
「完全に温泉発掘技士みたいな動きでしたの!」
「はーっはっはっは! そう褒めるな! ここで一休みしよう!」
「「「はーい!」」」
そうしてまたスポポポーンと脱いでいく女性陣。
『湯着』スキルがあるため、上にバスタオルを羽織った姿となっているメンバーもいたくらいなので、俺が許可を出せばみんな一斉に湯に乗り込んでいった。
「あ! またヴァンがぶっ倒れたよ!」
「起きるですのヴァン! 必殺 紅葉 ( もみじ ) 起 ( お ) こし、ですの!!」
「はっ!? ここは天国で、ありますか?」
「必殺紅葉!」
「ぬおおお!?」
なお、アイギス号にはヴァンも乗っている。
またもぶっ倒れたヴァンはカグヤとサーシャから必殺紅葉起こしを食らい、さらに紅葉を咲かせるようになったようだ。
カグヤー、ヴァンの意識は一撃目で戻ってるから! 追撃はしないであげて!?
「ふわ~、これは良いお湯ですわ~」
「!? これは、みなさん、MPを見てください!」
「へ? ちょ、さっきのボス戦で減ってたMPが回復したんですけど!?」
「ええー!? ここって回復エリアなの!?」
そして一瞬で効能の効果が知れ渡った。
そう、実はここ、回復の泉ならぬ、回復の温泉なのである。
回復の泉って、入ったらかえって凍えるのでは? という意見を参考にし、〈ダン活〉の開発陣が「ならば温泉にすれば解決だな!」と安直に決めたという温泉地帯だ。なお、この28層だけじゃなく、回復の温泉はこの先結構いっぱいあったりする。
「なんだか普通の温泉ねと思ったら、これ凄いじゃない!」
「いえ、普通はあんなにアトラクションのような温泉はそうそうないのですよラナ様」
うむ、エステルの言うとおり。
どうやらラナは15層にあった流れるプールな〈 流輪 ( りゅわ ) の秘湯〉や、16層にあったウォータースライダーな〈 滑山 ( すべりやま ) の秘湯〉みたいに、何かしらのアトラクションを期待していたみたいだ。
まあ、去年は楽しませることをメインにしていたからな!
「こ、こいつはスゲぇぜ! モナ!」
「うん! この温泉、出来るだけ採取していこう!」
おっと〈採集無双〉の採集魂に火が付いたらしい。
〈食ダン〉のリンゴジュースの時のようにタルを用意し始めたぞ。だけどそれは堪能してからでお願いします。
なお、一応言っておくとモナはトランクスタイプにラッシュガードスタイルだ。
「景色もいいわね。かなり広大な雪の平原が一望できるわ」
「はい。回復効果も合わさって、疲れが溶けていくようです」
「ここで〈白の玉座〉を出せば、モンスターを一掃出来そうだわ~」
「その手があったわね」
なんか1人だけとんでもないことを言ってるぞ?
確かに、回復地に籠もって砲撃とか超強いけどさ! 考えることがヒーラーを超えているような気がしたが、きっと気のせいだろう。
タバサ先生も、その手があったわねみたいな反応しないで!?
まあ、シエラもエステルもラナもタバサ先生も、気に入ったということだろう。
「ゼフィルスくん、一杯どうかしら?」
「メリーナ先輩!? 是非いただきます!」
「はい、これグラスね~」
俺もみんながはしゃぐ姿を確認しながら温泉に入ると、メリーナ先輩とマリアが〈 深泉 ( しんせん ) のアップルジュース〉とグラスをくださった。
ちなみにメリーナ先輩は黄緑系の競泳水着タイプで肩の辺りにフリルがあしらわれたおしゃれ水着。
マリアは薄い桃色のバンドゥビキニで、ハイビスカスのような飾りが頭、胸、腰に飾られた可愛い水着だった。
「雪見ジュースよ。こんなに良い景色なのだから全身で味わってね」
「ありがとうございます!」
雪見ジュース! なんて贅沢なんだ!
メリーナ先輩にお酌され、俺もお返しにメリーナ先輩とマリアに注いだりして、乾杯。
こんな雪景色の中飲んだら絶対美味いじゃんと思いながらごくり。
やっぱりめちゃくちゃ美味いやん!!
「はぁ、美味しいわね。最後にとてもいい思い出が出来たわ」
「そうか、メリーナ先輩も卒業だもんね」
「とは言っても〈ダンジョン商委員会〉に務めるのは変わらないのだけど」
「そうなのか!?」
それは初耳なんですが!?
「ええ。先日学園からスカウトされたのよ。それでゼフィルスくん。私、卒業しても、たまにギルドハウスに遊びに行ってもいいかしら?」
「もちろん大歓迎さ!」
朗報! メリーナ先輩、卒業しても学園に残る。
この報告により、俺たちは寂しくない気持ちで再びグラスをカランと合わせたのだった。