第1632話 追いついてきたセレスタン。威力3倍の『突貫』
第1632話 追いついてきたセレスタン。威力3倍の『突貫』
「さすがにここからじゃ〈東3巨城〉と〈東4巨城〉までは観客席で見えないか!」
「ん?」
北、西、南西まではここからでもなんとか確認できるが、南東方向は観客席が邪魔になってパメラたちのツーマンセルがどこまでいったのか確認が難しい。
だが、赤本拠地から続く道を見れば予想は可能だ。
俺とカルアの速度にかなり迫ってきていたことから、〈天下一パイレーツ〉のツーマンセルも相当な速さで揃えてきていたことが分かる。
まさかパメラ、ミジュ、クイナダ、ゼルレカが速度で負ける?
そんなことを少し思ったが、いや、無理だろう。
なにせ、4人は全員が『ブースト』系スキルをLV10まであげており、さらにミジュとゼルレカは六段階目ツリーで新たに手に入るスキル、『オーバーブースト』系を獲得している。
パッシブスキル『オーバーブースト』は『ブースト』系の上位スキル。
1.6倍だったものを、最大1.8倍に増やすというスキルである。
非常に特殊なスキルで、SP1で獲得するだけで効果を発揮し、『ブースト』系スキルを『オーバーブースト』系に〈系統進化〉させてしまうとんでもスキルである。
〈エデン〉ではトップのカルアがAGI――2600! 続くミジュが2300超えであり、4人の中で最も遅いクイナダでも1460である。
まあ、そう簡単には追いつけないよね。
故に、南側に延びている赤マスは途中から変な軌道を描いているのが確認できるな。ブロックされて道を塞がれ、彷徨ったのだろう。
また案の定、〈天下一パイレーツ〉は〈東4巨城〉へ向かうためのルートを、わざわざ遠回りしていたんだ。
赤本拠地から真っ直ぐ延びる〈東3巨城〉への道。
これは評価できる。
だが〈東4巨城〉へ向かわず、そのまま〈東3巨城〉を落とす狙いのようで、じゃあ〈東4巨城〉はどこから向かうのかと言えば、一旦中央付近に出る 遠 ( 西 ) 回りの斜め9マスルートを選んでしまったようだ。(図AC―30)
中央に出てくるなら、同じく中央に出るパメラ、ミジュ、クイナダ、ゼルレカと勝負しなければならない。
パメラたちの速度であれば、間違い無く勝てるだろう。
後は最速のAGI2300超えのミジュと1780パメラのツーマンセルが どこまで ( ・・・・ ) 行けるかだ。
結果が非常に楽しみである。
さて、他のメンバーもだいぶ良い感じに進めているようだ、俺たちも頑張らなければいけないな。意識を戻す。
俺たちが目指すは〈東2巨城〉。
ここは赤本拠地から最も近く、間に観客席を挟んでいるとはいえ、〈救済巨城〉と数えられる城だ。
つまり、本来であれば赤本拠地が非常に獲得に優位な巨城だ。
故に油断もある。
〈救済巨城〉はその特性から、「これは我々が手に入れたも同然の城なのだから、獲得は後回しでいい」と思いがちになってしまう、油断しやすい城だ。だって白本拠地から狙うとなると、〈東2巨城〉は赤本拠地のほぼ真後ろにあるんだもん。まあ、普通は相手に狙われないと思うよね。
だが、その油断が命取りだ。
〈エデン〉VS〈世界の熊〉戦でもそうだったように、
〈エデン〉VS〈エデン〉戦でもそうだったように、
〈救済巨城〉というのは決して安泰な城ではない。
救済は取らなければ救済に非ず。絶対ではないのだ。
むしろその救済を受け取らなかったら全くの無意味である。
故に〈エデン〉は、初動早々に〈西2巨城〉へハンナ、リーナ、ラナ、フラーミナを含め5人向かわせている。
それは〈九角形〉フィールドでは、ハンナやリーナやフラーミナが動かなければいけないほど初動で人が足りないという意味でもある。
そして案の定、〈天下一パイレーツ〉は〈東2巨城〉へはまだ誰も行かせていなかったのである。
おそらく〈東1巨城〉を落としたメンバーに帰って来次第獲得させようと思っていたのだろう。
遅い遅い。それじゃあ狙われていたとき、間に合わないのだ。
「よっしゃ〈東2巨城〉の隣接もゲットだぜカルア!」
「余裕!」
到着後すぐに〈東巨城〉の周りのマスを取って保護 期間 ( バリア ) を張りつつ、攻撃開始、少しずつ削って行く。
「やめろーーーーーー!?!?」
おっとここでサターンたちが追いついてきたか。だが、保護 期間 ( バリア ) に阻まれて〈東2巨城〉の隣接を取ることが出来ないでいるな。
「ふふ! 南側から回り込み隣接を取りましょう!」
「それだ!」
「もちろん行かせるわけがないぜ?」
ジーロンの提案でまだ隣接を取られていない〈東2巨城〉の南側マスを狙うが、もちろん俺とカルアも並走して付いて行き、南側のマスも確保。
ジーロンたちは完全に入れなくなったな。
だが、まだ希望は潰えたわけではないようで。
「ふふ! 見えました。2人の火力では2分以内に陥落させることは不可能です! 保護期間が明けたマスを確保し、巨城を攻略しましょう!」
ほう? ジーロンめ、なかなか見えているじゃないか。
そう、巨城のHPは膨大だ。さすがに六段階目ツリーを開放した俺たちでも2人だけでは2分以内に落とすことは難しい。
保護期間は2分で明ける。ジーロンはその後悠々と巨城隣接マスを取り、巨城攻略に取りかかることができると思い至ったのだ。
だが、俺がそれを読んでいなかったとでも?
「ゼフィルス君! おまたせーーー!!」
「来たか! タイミングぴったりだぜノエル! それに、セレスタン!」
「ふあ!?」
そう、それは後続。
俺とカルアがしたのはあくまで〈スタダロード戦法〉。
これは後続が来ることが前提の戦法だ。
〈東1巨城〉に関しては、サターンたちがユニークスキルを早々に切ったのでセレスタンたちがやってくる前に落とすことを決めたのだが、本来はノエルとセレスタンは〈東1巨城〉を落とすための後続だった。
まあ、そうなったときは〈東2巨城〉へ直行せよと前もって指示していたのも俺だけどな!
もちろん、ノエルとセレスタンがすることは決まっている。
「では参りましょう」
「俺様は参らなくても全然困らないぞ!?」
「オッケー! 『ハイテンションエール』! 『リ・エール』!」
「全然オッケーじゃねぇーーー!!!?」
難なく保護期間の中に入ってきたノエルとセレスタンが、ヘルクやトマたちのセリフを華麗にスルーして準備する。
セレスタンが『こんなこともあろうかと』と〈マイセット早着替え〉を使い、素早く〈城掘突貫ドリル〉を装備する。一瞬で武器換装だ!
凄まじい雰囲気を放ちながらもドリルを振りかぶるセレスタン。
保護期間が明けるまで、まだ30秒ある。余裕だな。
「『突貫』です!」
「「「「ぎゃあああああああ!?」」」」
ギュイーンという音がしたかと錯覚するレベルで減る巨城のHP。
ノエルの『ハイテンションエール』は1度だけ威力を3倍にするスキル。
それに城特効であるパッシブスキル『 城掘 ( じょうくつ ) 』付きの『突貫』で繰り出された攻撃は巨城のHPを一気に4割削り取った。残り4割くらい。
さすがは〈50人戦〉の巨城、これだけパワーアップしたセレスタンの一撃で4割かよ。
だが、もちろんこれで終わるわけが無い。
「 硬 ( か ) ったい!! でもこれならどうかな? 本気の究極エールいくよー? 『アルティメットテンションエール』!」
それはノエルの六段階目ツリー。
『ハイテンションエール』の上位ツリーである。
そしてこれは、単体用ではなく、 パーティ ( ・・・・ ) 用なのだ。
ギルドバトルであれば、周囲に居る仲間の次の一撃の威力を3倍にしてしまうという。マジとんでもないスキルなのである。
これが意味するものは、1つしかない。
「では巨城は僕が――『突貫』です!」
『リ・エール』を掛けていたおかげでクールタイムがゼロとなり、連続で使われる『突貫』スキル。
俺とカルアもそれをワクワクした顔で見守った。そして、ドッゴーンと轟く衝撃音!
「「「「あああああああああああ!?!?!?」」」」
いつの間にか集まっていた9人の〈天下一パイレーツ〉の悲鳴が響き渡る。
そう、今の『突貫』で残りのHPも全て削りきり、〈東2巨城〉も陥落してしまったのだった。
〈東2巨城〉も〈エデン〉獲得!
俺たちが追撃を放つまでもなかった!
じゃあ俺とカルアは。この3倍増しの威力を誰にぶつければいいの? となる。
チラッ。
俺とカルアが同時に振り向く先には――サターンたち。
城の天辺に立つ〈エデン〉のエンブレムが描かれた 旗 ( フラッグ ) を茫然と、それこそ目を見開いて固まる隙だらけな、サターンたちがそこにいたのだ。
よし。あそこが良さそうだな。