第1646話 選手交代!防衛と攻撃をチェンジでハンナ出撃
第1646話 選手交代!防衛と攻撃をチェンジでハンナ出撃
「んもー! 全然〈天プラ〉たちが来ないじゃないの!」
「仕方ありませんわラナ殿下。どうやら、向こうもラナ殿下の射程を熟知していて、入ってこられないようですもの」
「もうー! ちょっとはこっちに来なさいよね!」
「まあまあラナ殿下、勝ってるんですから」
「私はでっかいの撃ち込みたいのよ! リーナとハンナもそう思うでしょ?」
「えーっと、まあ?」
「それは、はい。ちょっと新型を出してみたくはありますけど……」
ここは〈エデン〉の白本拠地。
そこではラナがいつまでも来ない相手に焦れまくっていた。
モニカはラナの宝剣の射程を把握していて、その範囲に入ってこないうえに、ゼフィルスが久しぶりの〈城取り〉だー、とか言って全力ではしゃいでいるのでそうなるだろう。
だが、このままではラナやリーナたち本拠地防衛組は、本当に何もせずに終わってしまいそうなのである。
このままではいけない。いいはずがない。
「でしょ!? リーナ、ゼフィルスに通信よ! 私にも活躍の機会を与えなさいって!」
「そんなストレートに、ですか?」
「ゼフィルスはこれがきっと一番効くわ」
「わ、私もそう思います」
「そういえばそうですわね」
みんな、ゼフィルスへの理解度が高い。
ゼフィルスのモットーは全力で楽しめだ。
楽しめないメンバーが出たなんて後で知ったら悲しむだろう。悲しむかな? きっと悲しむに違いない。
まあそんな訳で、ラナたちが「楽しめてない、私たちにもやらせなさい」と言えばゼフィルスは聞いてくれる。そして案の定。
「ということですのゼフィルスさん」
「『なんだって!? それはいけない。ついこっちもはしゃぎ過ぎちまったようだ。ようし作戦を変更しよう。リーナ、みんなを本拠地に集めてくれ! 一旦退くぞ!』」
「! 承知いたしましたわ! 『マルチコネクトネットワーク』!」
ゼフィルスはすぐに了承してくれた。
ラナたちの予想通りである。
リーナはすぐさま六段階目ツリーで覚えた『マルチコネクトネットワーク』を発動し、『総員帰還してくださいまし』と通達する。
これは『ギルドコネクト』の上位ツリー。同じダンジョンやアリーナにいる全員に指示通達ができる超有能スキルである。まだ〈スキルLV〉が低いので相互通信はできないが、『ギルドコネクト』の上位ツリーなら〈スキルLV〉さえ上がれば相互通信も可能だろうと期待されているスキルだ。
◇
「な、なんだ?」
「〈エデン〉が引いていくぞ?」
「た、助かった―――ほびゃあああ!?」
「まだ助かってないぞ! 俺たちも姉御たちが復活するまで小城マス取りに徹するんだ!」
突如引き始めた〈エデン〉に〈天下一パイレーツ〉の生き残ったメンバーたちも安堵の息を吐く。
なんか最後に気を抜いた1名がついでと言わんばかりに退場してしまったが、もう〈天下一パイレーツ〉のメンバーも残り20人ほどに減っていたので誤差みたいなものだ。
「あ、あれ? サターン? ジーロン? トマ? み、みんな倒されてしまったのか? なぜ俺様だけ生き残ったのだ??」
あと、ルルにぶっ飛ばされたヘルクだけトドメを忘れられて生き残っていた気がしたが、きっと気のせいだろう。
よく分からないが、引いたのならば好都合。
もちろんこのまま本拠地に攻めたところでやられるだけなのでギルマス復活まで小城マス取りに専念する。
今はとにかく小城マス取りに集中しないと本気で勝ち筋が潰れてしまうと頑張る〈天下一パイレーツ〉たちだった。
◇ ◇ ◇
「攻めよう!」
「賛成よ!」
作戦は秒で決まった。
俺の一言に、ラナが食いついたからだ。具体的な説明も無しに伝わる以心伝心。
だが、もちろんここで止めてくれるのはストッパーのシエラだ。
「ゼフィルス、それだけじゃ分からないわ。具体的に説明して頂戴」
「作戦の通達はわたくしにお任せくださいな」
「おっとそうだったな。まず、さっきまでは〈天下一パイレーツ〉が攻めてきたから対応していたが、あいつら、意外にラナの攻撃範囲圏内を分かっていやがった」
「そうね、白本拠地の12マス以内には絶対に入ってこなかったものね」
「わたくしの『超長距離兵砲・グングニル』なら届きましたが、向こうのギルドマスターの手で防がれてしまいましたわ」
「頭のいいブレーンがいるな。あの〈天下一パイレーツ〉の中だとギルドマスターだと思うが。もしくは外部からの協力の線もある」
そう、実は〈天下一パイレーツ〉は攻めてくると見せかけて、中途半端な場所から西にほとんど攻めて来なかった。
それは赤本拠地から西に8マスの地点だ。(図AB―24)
白本拠地と赤本拠地はお互い約20マス離れている。正確には21マスだが、その半分も侵攻せずに止まっていたのはラナの宝剣を恐れてのことだと考えられる。
ラナの宝剣の射程が12マスなのは、すでに認識されているのだ。
「サターンやモニカの退場した時間は、ニーコ」
「ばっちり記録しているよ。あと6分は大丈夫さ」
「なら、6分ほぼジャストくらいに攻め込むか! それまで作戦を練ってみんなに通達しよう!」
「はいはい! 私が攻めに参加するわ!」
「もちろんラナには参加してもらうさ! というか、さっき出撃したメンバーを総取っ替えしよう! 今度は本拠地を守っていたメンバーに全員出撃してもらう!」
「へ? 私も?」
「ぼくもかい!?」
「おう! シャロンもニーコも攻めてみようぜ! ハンナもな!」
「ふえええ!?」
今度は攻守交代(?)。
防衛担当だったメンバーズが相手の本拠地へ挑むという、真逆の人選で攻めてみようと思うのだ。
相手に白本拠地へ攻めさせるのは、おそらく無理。本気で攻めて来ない。向こうの作戦は時間稼ぎだろうからな。勝ち筋を潰さないようにする時間稼ぎだ。
モニカはきっとタイムアップギリギリになってようやく本拠地を落としに動くだろう。
だが、その頃には〈天プラ〉たちが何人に減っているか。
〈敗者復活〉ルールは無限に復活できるわけでは無い。スリーアウトしたら本当にアウト。もう復活できないのだ。そしてすでにサターンたちはツーアウトらしい。
これ、タイムアップまでとても持たないよ。あと1時間以上あるし。
タイムアップ直前には〈天下一パイレーツ〉の残り人数が1人とかになっている可能性もある。
となると、攻めさせるよりもこっちから攻めた方がいいんじゃない? となる。
作戦はすぐに決まった。赤本拠地侵攻作戦だ。
白本拠地を完全に空けさせるのは無しなので、さっきまで攻めに出ていた24人のうち10人を白本拠地に配置し、残りを各地に散らばらせて伏兵として配置する。
「ゼフィルスはどうするの?」
「え? 俺? もちろん俺も出撃組だ。リーナも出撃組だから〈竜の箱庭〉も使えないし、しっかり前線で指揮を執らないとな!」
俺は心の中で「ふははははは!」と高笑いしながら出撃を表明する。俺が出撃しないと始まらん!
リーナの側に居れば、いつでもどこでも通信が可能だしな!
「本当にぼくも行くのかい?」
「私のゴーレムが守ってあげますよ!」
「なんでハンナ君は生産職なのにこんなに逞しいんだい?」
支援職もバッチリ参加だ。もちろん生産職も、アルルは不参加だが、ハンナは防衛担当だったので、今回は出撃組。
「大丈夫かハンナ? 行けるか!?」
「もちろんだよ! さっき使わなかった新型ももう1つ持ってきてるし、私も頑張るね!」
ハンナももちろんフンスした。
何を持ってきたのか気になるところだ。
こうして準備は完了。
「防衛担当が全員出撃で、攻撃担当が防衛……前代未聞の出撃ね」
「シャロンが造ってくれた要塞は全て解除することになったが、まあ大丈夫だろう。ヴァンやシエラも残ってくれるしな! 防衛は頼むぞシエラ!」
「ええ。出番があるかは分からないけれど。こっちは任せて頂戴」
「よし! 行くぞみんな! 出撃は3つに分かれて行なう! ちゃんとリーナのブクマを見ながら時間通りに行くぞ!」
「「「「おおー!」」」」
フィールドにはいつの間にかリーナの『ギルドチェーンブックマーク』と『投影コネクト』により、指示が書かれて浮かんでいた。
俺たちは3つの班に分かれ、北、中央、南から侵攻し、足並みを揃えながら赤本拠地を目指して進み出す。
もちろん道中のマスは全て白のものだ。
さあ、サターンよ。今度こそ戦おう! 第三ラウンドといこうじゃないか!