第1647話 赤本拠地への強襲。保護期間戦法破れたり!
第1647話 赤本拠地への強襲。保護期間戦法破れたり!
「ノーーーーーー!! 〈エデン〉が攻めてきちゃっただとーーーー!?!?!?」
「ポリス、騒がしいぞ!」
こちら〈天下一パイレーツ〉の赤本拠地。
アリーナで退場した人は一度〈敗者のお部屋〉に送られたあと、10分後に自陣の本拠地で復活する。
サターンたちも復活し、後はモニカやエリエルたちが復活すれば全員復活する。
というところで〈エデン〉が侵攻中という報告が舞い込んできた。
なぜか報告はサターンではなくポリスに届けられているのはご愛嬌。
「これが驚愕せずにいられるものか! 〈エデン〉が三方向から赤本拠地に向かってきていると報告が来たのだ!」
「なにーーー!!」
やっとここでサターンも事態を把握。
先程の「騒がしいぞ」と注意したセリフはいったいなんだったのかというレベルで思い切り叫ぶ。
「ふ、ふふ。こ、好都合ですね。ここで迎え撃ちましょう」
「い、引導を渡してやるぜ!」
「さっきはよくも俺様だけ忘れてくれたな! 俺様を忘れたことを後悔させてやる!」
ジーロンとトマは強がっているが、震え声だ。
ヘルクは自分にトドメを刺すことすら忘れて撤退してくれた〈エデン〉に憤慨中だ。憤慨のポイントがどこかズレているような気がするのは、まあヘルクだからで済ませてほしい。
「これはなんの騒ぎでやがりますか?」
「モニカ! 戻って来たか!」
「ふふ! 〈エデン〉が侵攻中なのです、この本拠地に」
「……へ? また?」
「モニカモニカ、素が出ていますよ?(こしょこしょ)」
ここでモニカ復活。一足先に復活していたサターン、ジーロンから報告を受けてポカンとし、エリエルからこしょこしょ耳元で諭されてハッとする。
「こほん。ああー、お前たち、配置に付きやがれです! 〈ギルバドヨッシャー〉から伝授された〈保護 期間 ( バリア ) 戦法〉を使うときが来やがったでやがりますよ! とにかく時間を稼ぎやがれです!」
「「「おおー!」」」
―――〈保護 期間 ( バリア ) 戦法〉。
それは本拠地の亜隣接→隣接という順番でマスを獲得することで保護期間中のマスで本拠地を囲み、相手に本拠地まで侵入させにくくする戦法。
また、これはタイムアップギリギリで使い、逃げるが勝ちの精神でタイムアップまで本拠地を守る時に使われる戦法でもある。
つまり、残り時間が4分を切った辺りで使う戦法なのだ。保護期間は2分間。亜隣接、隣接の2マスで計4分粘れるからだ。
だが、モニカは〈ギルバドヨッシャー〉からそこまで詳しく教えてもらっていなかった。いつこの手札を切るかは自由なのだ。タイミングは自分が決めるといいと言われていたりする。
ちなみにゼフィルスは残り4分を切らないと絶対に使わない。なにせ、これが使えるのは1試合にほぼ1回のみ、一度自陣マスになったマスは相手に取られない限り再度取得することができない。
4分は防げる、じゃあその後はどうするの? となるからだ。
だが、モニカは〈エデン〉が包囲しながら接近中と聞いて、しかも割と目視で見える位置に居ることを確認してしまい、時間稼ぎに出た。
復活したばかりで分からない周りの状況を把握し直さないといけない。
「ポリス! 状況報告しやがれです!」
「は、はい! 〈エデン〉は三方向、正面の白本拠地から真っ直ぐこちらに接近してくる組と、北の観客席を回り込んで来る組、そして南の観客席を回り込んで来る組に分かれています! 各10人ほどが確認されています!」
モニカに呼ばれたポリスが震え声で答える。モニカ相手にはなぜか敬語だ。モニカの方が年下だが、ギルドマスターである。
「10人ずつ、つまり30人ですか!? さっきの25人くらいすら手に余ったのに……!」
「やっべぇでやがりますね」
エリエルの言葉に同意するようにモニカが冷や汗をかく。
「姉御! そろそろ張りますか!?」
「よし、十分に引き寄せろでやがります! タイミングを計――」
「姉御ーー宝剣来ますーーー!?!?」
「は? あああ!? こんのぉ! 『強欲ドロードレインシールド』! ――あ?」
亜隣接マスに人員を配置、小城の隣に立っていつでもタッチできるようにしていたら、まるで見透かしたようにタイミングギリギリで宝剣が飛んで来た。
これにはモニカが強引に全てをドローして防がんとする。
先制で来たのは普通の『大聖光の十宝剣』だった。
だが、その『大聖光の十宝剣』は、本拠地マスに入った瞬間消えてしまったのである。
「そうか! 本拠地バリアでやがります!」
各本拠地は、本拠地マスに相手が入れないよう見えないバリアが張られている。
隣接マスを相手が取ることをトリガーにして消えるこれは、相手の本拠地マスへの侵入や遠距離攻撃なんかも、全て防いでしまうのだ。
これのおかげでまだ隣接マスを取っていない〈エデン〉の攻撃は消滅してしまう。
遠距離攻撃なんかほとんど想定していないからモニカも忘れていたがこれはラッキー。いやラッキー?
「(いや待て、よく考えやがれです! 本拠地バリアが張られているのに本拠地に攻撃するなんてありえねぇです! 〈エデン〉が意味の無い攻撃なんてするわけがないでやがります! それじゃあ、今の攻撃の意味は――!!)」
モニカがハッとしたが、もう遅かった。
ゼフィルスが『 英勇転移 ( ブレイブポート ) 』でエフィと共に転移し、とある小城に斬り込み、亜隣接を確保してしまったからである。
「あああああ!? 狙いは指揮官の指揮封じでやがりますか!?」
そう、モニカが指揮ができないこと自体が狙い。
完全にタイミングを計られていたのだ。
というか、こんなに堂々と亜隣接マスの小城の所に人が立っていたら何をしようとしているか分かる。だってゼフィルスだもん。
バレバレだったのだ。故に、ラナが『大聖光の十宝剣』でモニカをピンポイントで攻撃し、びっくりさせたその隙を突いてきたのである。
モニカはギルドマスター、つまり指揮官にしてタンク。しかも全メンバーを守ることができるほど強力なタンクだ。
それが強力な攻撃が接近していたら、つい防ごうとしちゃうのは自明の理だった。
そして宝剣に注目している間に亜隣接をかっぱらう作戦。
つまりはブラフ。モニカは完全にゼフィルスの作戦に引っかかってしまったのだ。
亜隣接マス(図AH―24)が奪われれば、次は隣接マス(図AI―24)。
モニカの予定では、隣接マスを取るのは亜隣接マスの保護 期間 ( バリア ) が消えた瞬間、つまり2分後だったので、当然隣接マスには人はいない。
「ターーーッチ!!」
「や、やっべぇでやがります!!??」
もちろんゼフィルスも隙だらけな隣接マスに容赦しないので、あっという間に隣接マスを確保されてしまったのだった。
本拠地の隣接マスを取られたが最後、本拠地マスを覆っている結界が消え、相手側のメンバーはどこからでも本拠地マスへ侵入可能になってしまう。しかも、
「全包囲! ばらけていいぞ!」
「おけ。対人戦を楽しんでくる」
ここで散開。
今回ゼフィルスとツーマンセルを組んでいたエフィが散ると、亜隣接マスを保護期間にして隣接マスにダッシュしていた〈天下一パイレーツ〉メンバーに飛び掛かったのだ。
〈エデン〉の狙いは最初から対人戦。
モニカやサターンたちが復活した直後、まだ状況を把握しきれていないところを強襲し、奇襲し、一気に数を減らす作戦だ。
本拠地陥落はそれからでも遅くはない。
「ターゲット、ロックオン」
「!? こ、この俺を狙うとは良い度胸なんだぞな!」
エフィが目をつけたのは【キングドミネイター】男子。
壮大な 職業 ( ジョブ ) 名にしては、なんとなく小者なセリフ。
「『支配の渦』!」
最初に仕掛けたのは【キングドミネイター】男子。
正面に黒い渦を出し、そこから黒いなにかが出てきたのだ。
「初めて見るスキル――『真実の天眼』! 『センチネル』! なるほど、召喚系スキルと看破する」
エフィの〈六ツリ〉『真実の天眼』は『索敵』や『看破』などを内包するスキル。
同じく『センチネル』は『気配察知』や『危機感知』などのスキルを内包するスキルだ。両方を合わせると弱点の看破などに使えるぞ。
これにより、エフィの目はスキルエフェクトが光り、全てのスキルを看破する。
右目を金色の『真実の天眼』、左目を赤色の『センチネル』に光らせたオッドアイのエフィは、美しくも恐ろしい戦闘大好き天使だった。
「! ふ、いくら看破したとてこれは躱せんぞな! ゆけ! 我が支配下にある猫よ!」
「フシャアアアアアア!!」
黒い物体は、なんと猫だった。巨大な猫。とても凶暴そうだ。
しかし、エフィは揺るがない。こっちはネコミミ天使である。
「『アルティマス・グラディウス』!」
右手に持つ剣で一閃。
非常に強力な斬撃スキル。コンパクトにして〈六ツリ〉の威力を持つ強力な攻撃。
これにより、一撃で黒い猫は消えてしまうのだった。
「え? 嘘だぞな? 我が支配下にある猫が――」
「あれ? これで終わり? まだなにかあるかな? 『アルティメットノヴァ』!」
「ぞ、ぞな――――」
エフィ、追撃。
左手に持つマスケット銃にも似た形の杖を向けると、無慈悲なシンプルにして究極の魔法をぶっ放す。
それは【キングドミネイター】男子を容易く飲み込んで、その後には誰も居なかったのだった。
「あれ? 本当に何もないの?」
【キングドミネイター】は本来支配の術で 配下 ( モンスター ) を操るテイマー系。
しかし、エフィの前には無力だった模様だ。
そしてこれを皮切りに、〈エデン〉メンバーが次々と赤本拠地に襲い掛かった。