第1654話 ハンナと一緒の朝の道で大変とサターン現る。
第1654話 ハンナと一緒の朝の道で大変とサターン現る。
Sランク防衛戦が終わった翌日。今日は1月25日、日曜日である!
今日も今日とて隣には幼馴染みのハンナを連れながらギルドハウスへ向かう。
「なんだか、すっかり有名人になっちゃったね」
「はっはっは! だが、元々有名だった気もするぞ?」
「そうかも?」
道を歩けばみんな遠巻きにして俺たちを見つめてくる。
いや、前々からそうだった気もするが、やっぱり昨日の六段階目ツリーのインパクトがそうさせるのか、かなり視線が集中している気がするな。
こりゃ、視線が好きではないシエラとか大変そうだ。
でも、前からこうだったような気もする。はて?
「私なんてあのゴーレム軍団やゴーレムロボを売ってほしいって、早速依頼があったよ? しかも試合が終わってすぐ」
「ゴーレム軍団は単純に強いし、ゴーレムロボに乗り込んで攻撃すれば、生産職だろうが支援職だろうが戦力になる。そう気付いたんだろうなぁ。いやぁ、お目が高い」
「でもあれアリーナ用だよ? ダンジョン用に作ったものじゃないし、大丈夫かなぁ、狭いダンジョンで使ったりしないかな?」
「そこら辺は注意書きしとけばいいさ。というか、ハンナはあれ売る気か? 量産とか難しいだろ?」
「うーん、〈ヒヒイロカネ鉱石〉使うし、忙しいアルルちゃんの手も借りなくちゃいけないし、量産は今のところ難しいんだよね。軍団ゴーレムは残しておきたかったから、とりあえずゴーレムロボだけは売っちゃうことにしたけど。〈ミーティア〉さんに」
「〈ミーティア〉がゴーレムロボ使ってくるようになるのか……」
そんな世間話(?)のようなのほほんとした会話をしながら通学していると、なんだか昨日も見た様な顔がずらりと並び、俺たちの歩みを遮った。
「待っていたぞ、ゼフィルス!」
「な! そこにいるのは、サターンたちか!」
「え? え? ゼフィルス君? 待ち合わせしてたの?」
「いや、待ち合わせをした覚えはないぞ? あっちが勝手に言っているだけだ」
むろん、それはサターンたちだった。
昨日負けたのに!? もう俺に会いに来たというのか!?
どうやら昨日分からされてしまったサターンたちは、翌日には忘れてしまったようだ。
「ふふ、僕らの前で惚気ないでいただけますでしょうか?」
「くっ! 朝から見せつけられて心に痛みが!」
「俺様を忘れてもらっては困るぞ! 話を聞いてもらおうか?」
「まさか、ランク戦再戦のお誘いか!?」
「そ、そんなわけがあるかー! ゼフィルス貴様! 昨日我らをあれだけボコボコにしたのにも飽き足らず、まだやろうというのか!」
「おう!」
俺が良い笑顔で言い切るとサターンたちが焦ったような表情をする。
忘れてしまったのならば好都合。もう1戦やろうぜ!
「そんなこと言うなよ。〈エデン〉はいつでもウェルカムなんだ! どんどんランク戦を仕掛けてきてくれ!」
「ふふ!? 自らランク戦を仕掛けてくるように言う者がいるとは!」
「くそう、舐められてるぞ!」
「俺様を舐めてもらっては困るぞ!」
「来月が楽しみだな!」
「来月もやるつもりか!? いや、我らはそんなに暇ではない!」
「なんだと!?」
え? サターンたちが暇じゃない? そんなバカな。ではここに並んでいるのはいったい?
サターンたちはいくらギルドが合併したとはいえ〈エデン〉との誓約がある。
故に〈決闘戦〉はなかなか仕掛けられない。ならばランク戦を仕掛けるしかない。だからこそわざわざAランクギルドに駆け上がり、すぐさま〈エデン〉に仕掛けてきた、と思っていた。
また、昨日ランク戦で勝ったことで、〈エデン〉は1ヶ月の防衛実績期間に突入した。
〈天下一パイレーツ〉が〈エデン〉に再戦するのならば、1ヶ月待たなくてはならない。
今回はその宣戦布告だろうと思っていたのだが、別に用件があった模様だ。
「ならいったいなんの用なんだ??」
俺は心底不思議に思って本気で首を傾げた。
サターンはいつも宣戦布告しかしていなかった気がするが。
「ふふ、僕たちも少しは大人になったということですよ。だから再戦は――しばらくはしません」
「やっぱりしばらくじゃねぇか」
まだやる気でいてくれて嬉しい。さすがは〈天下一パイレーツ〉だ!
あの六段階目ツリーの猛攻に負けずさらなる再戦を望むプライド。
だから俺はサターンたちを嫌いにはなれないのだ。
しばらくとは、きっと1ヶ月とかそういう意味だろう。楽しみだ!
しかし、ならば本当に心当たりがないな。なんの用だろう?
「ギルドマスターの様子が、おかしいのだ。なぜか昨日の試合終わりから〈天下一パイレーツ〉のギルドマスターの座を我に返すかもしれないと言い始めたのだ!」
「なんだと!?」
正気かモニカ!?
ギルドマスターをサターンに任せたら、任せたら――あれ? もっと〈エデン〉にランク戦を仕掛けてもらえるのでは?
ならば問題ない?
「ふふ、それだけではないのです。エリエル先輩など、他の先輩方も脱退の用意をしているように見えるのです」
「まさかゼフィルスが関わっていないよな?」
「俺様には声を掛けなかったのに!」
なぜか憤慨するヘルク。忘れられたと思ったのだろうか?
しかし〈天下一パイレーツ〉が内部崩壊をしようとしている?
やはり昨日、ちょっと本気を出しすぎたか?
そんなことを考えていたら、横からハンナがきょとんとしながらこう言った。
「えっと、それって単純に卒業に備えてなんじゃ?」
「「「「「!」」」」」
ハンナの言葉に全員が驚愕の視線でお互いを見る。
卒業?
今日は1月25日、日曜日。
卒業式は3月3日火曜日。
…………あれ?
いつの間にか卒業式まで1ヶ月と1週間しかねぇじゃねぇか!!
「卒業だと!? 3年生が!」
「今気が付いたの!?」
サターンの驚愕の言葉にハンナもびっくりしている。
そんな大きな穴に気が付かないとは。
もしかしなくてもサターンたちも俺たちも、昨日のランク戦を楽しみにしすぎていたようだ。
「えっと、ゼフィルス君、学業は大丈夫? 2月14日にはダンジョン週間が始まって、それが終わったらテストだよ? 前みたいにテスト忘れてない?」
「忘れてた」
「忘れてたの!?」
1ヶ月後、それは期末テストの真っ最中だ。
ダンジョンは封鎖されているし、もちろんギルドバトルだって閉鎖されている。
そして3学期の期末テスト期間が終われば――卒業式だ。
「バカな、では我らが最高戦力で〈エデン〉に立ち向かえたのは、昨日が最初で最後だったとでも言うのか……!?」
「なんてこった……!」
サターンも俺もうっかりしていたと驚愕の目でお互いを見る。
むしろなぜ気が付かなかったのか。卒業までもう少し!
再びサターンと目が合う。
「わ、我らは用事を思い出した。さらばだ!」
「ふふ、ゼフィルスも首を洗っておくことです」
「次は負けないからな! 覚えておけよ!」
「俺様を忘れるんじゃないぞ!」
そう捨て台詞のようなものを残し、サターンたちは足早に去って行った。
昨日あれだけ大敗したというのに、とてもいつも通りなサターンたちだ。
おっと俺もこうしてはいられない。
「ハンナ、こうしちゃいられないぞ! 俺たちも行こう!」
「あ、ゼフィルス君待ってよー!」
俺も急ぎ足でギルドハウスへと向かう。
幸い準備はすでに終わっている。
そして昨日からダンジョン週間に突入しているのだ。ここからドカンと攻略していきたい所存!
まずは最上級ダンジョンの入ダン条件達成のため、2箇所の上級上位ダンジョンを攻略しにいくぞ!