第1780話 封印された最後の門、最上級ダンジョン解放!
第1780話 封印された最後の門、最上級ダンジョン解放!
卒業パーティ、卒パは滞りなく進んだ。
俺もお世話になった人たちにたくさん挨拶できたし満足だ。
だが、この卒パには続きがある。しかもこの上なく大きな超イベントが待っているのだ!
本来ならば卒パが終われば、お別れしてバイバイしなければならない。
だが、もうちょっとだけ、せめて最上級生と一緒にこの超イベントを体験したい!
最上級生だって、この超イベントを生で見たい!
そんな要望の下、卒業パーティが次の段階へと進む。
戦闘課校舎の校庭に放送が流れたのだ。ついに来たな。
『こほん。みな楽しんでおるかな? ヴァンダムドじゃ。ただいま準備が整った。興味のあるものは集まるが良い。これより学園は、封印されし最後のダンジョン門――最上級ダンジョン門の解放を執り行うことをここに宣言する!』
しーん。
いったいなにを言われたのか、卒業パーティで色々気持ちが膨れ上がっていた学生たちに浸透するのに、少し時間が掛かった。だが、それもほんの少し。
浸透した瞬間、爆発的な歓声が上がったのだ。
――――わああああああああああああああああああ!!
『場所は分かっておるな? これより1時間後に解放式を執り行う。ゆっくり来るが良い。よいか? ゆっくりじゃぞ?』
そんな学園長のお言葉は歓声にかき消されて誰の耳にも届かず、ムカイ先生が気を利かせて学生たちの〈学生手帳〉のインフォメーションに文字を起こして記載してくれた。助かる。
「よっしゃーーー! ついにこの時が来たぜ! 最上級ダンジョン攻略のこの時がーーー!」
「またゼフィルス先輩がとんでもないことをおっしゃってますの!?」
「まだ解放されてない最上級ダンジョンを、もう攻略する気だよ!?」
「相変わらずゼフィルス先輩はとんでもねぇな。まあ、あたいはどこへでも付いていくけどな!」
「混沌は、重要なことを聞いてしまったんだ。ケヒュン!」
膨らんだ気持ちが当然のようにばふんと弾け飛ぶ感覚を得ながら、俺は両手を上げてシャウトすると、いつの間にか近くにいたサーシャ、カグヤ、ゼルレカが目を丸くしていたんだ。あと近くで「混沌野郎ーーーー!?」という叫び声も聞こえた気がする。
ふふふ、このツッコミが心地良い。……あれ? でもちょっと足りない。
クイナダのツッコミが無いぞ? どこだ!?
「…………そっか、みんな最上級ダンジョンに挑戦するんだよね。いいなぁ」
「クイナダ」
「あ、ゼフィルス」
発見した。だが、その時のクイナダは、かなり寂しそうだったんだ。
いや実際寂しいのだろう。俺だっていざ最上級ダンジョンが解放されようとしている時に帰らなくちゃいけないから攻略できないよ、なんて宣告されたら大ダメージを受けてしばらく寝込むくらいはするだろう。
そうなっていないだけクイナダは立派だ(?)。
だから、俺はクイナダの前に歩み、向かい合う。
「クイナダ、最上級ダンジョンを攻略したいか?」
「……へ?」
「分かるさ。俺だって気持ちは一緒だ。最上級ダンジョンがせっかく解放されたのに、攻略もできずに帰らなくちゃいけないなんて、悔しいよな」
「え? いや、別にそこは重要じゃないんだけど……」
「ゼフィルス先輩、全然分かってないですの!」
「全然気持ちが一緒じゃないんだよ!?」
「クイナダ先輩は多分別れが寂しいだけだと思うぞ? こんなに盛り上がっているイベントに自分だけ参加できない、みたいな」
俺がしみじみ頷いている傍らで1年生3人がこしょこしょ喋っているが、周囲の歓声がまだ鳴り止まないので小さな声では聞こえない。
俺はグッと拳を握りしめる。
クイナダのその気持ち、俺が絶対になんとかしてやると決意を込めた。
「安心しろクイナダ」
「あれ? なんだろう。これ全然安心出来ないやつじゃない?」
「俺が連れて行ってやる!」
「へ?」
「留学生が帰還するまであと1週間、それまでに俺は、最上級ダンジョンを1つ攻略してみせよう! クイナダと共にな!」
「「「「…………ええええええええええええええ!?」」」」
せめてクイナダが帰るまでに1つだけでも攻略してあげたい!
それがギルドマスターとしての、俺の務めだと思う!!
クイナダが加入して1年。その集大成、最上級ダンジョン攻略を成し遂げさせてあげたい!!
これならクイナダも、多少は憂いが晴れるに違いない!
「絶対ゼフィルス先輩勘違いしているですの!」
「たった1週間で、今までずっと封印されていた最上級ダンジョンを攻略? そんなのできるのかな!?」
「ゼ、ゼフィルス先輩だからな。他のやつならホラで済ますが、ゼフィルス先輩だからなぁ(2回)」
「なんだかとんでもないことになってきちゃったんだよ!?」
本当はもうちょっとゆっくりと攻略しようと思っていたのだが、クイナダのあんな顔を見てしまったからには自重は無しだ!
幸い昨日から自重さんは旅行中。これならきっといける(?)。
1週間で、最上級ダンジョンの1つを攻略してやんよ!
そうと決まれば話は早い。
準備はすでに整っている。
最上級ダンジョンの解放は前から決まっていたからな。
すぐにみんなに伝えなければ。
「ゼフィルス」
「んお!? な、なんだシエラか」
ギルド内メッセージを飛ばそうと〈学生手帳〉を手に持ったところで後ろから声を掛けられてちょっとビビる。俺をビビらせるなんて大したものだよ?
振り向けば、そこに居るのはシエラだったんだ。なぜシエラの声にビビってしまったんだろう? 不思議なんだぜ。
「何をしているの?」
「聞いてくれシエラ!」
俺はシエラにクイナダのことを話す。見てくれシエラ、このクイナダの寂しそうな、悔しそうな顔を!
……あれ? 別に悔しそうな顔はしてないな。なんだかオロオロしているように見える。
こほん。それはともかくだ。俺はクイナダのため、最上級ダンジョンをクイナダと一緒に攻略するのだと、シエラに伝えたんだ!
なぜか伝え終わった時のシエラは最高のジト目だった。
やっほう! これは「いいわよ」ってことだよな!?
「クイナダ?」
「ひゃい!?」
「ゼフィルスはこう言っているけれど、クイナダはどうなの? 私たちと最上級ダンジョンに潜りたくないの? 攻略はしたくない?」
「あ……」
なぜかクイナダもシエラにビビってたが、そう問われて落ち着いた様子のクイナダ。
1年生ツッコミ役3人と一緒に見守っていると、クイナダは真剣な様子で顔を上げ、シエラを見つめて言った。
「私は、寂しい。うん、本当はみんなともっと一緒に居たいし、最上級ダンジョンにも一緒に行ってみたい! 一緒に攻略もしてみたい! もし、攻略もできるなら、私も、一緒に」
「……そう、分かったわ」
最後、くしゃっと顔を歪めたクイナダにシエラは短く分かったと告げ、続いて俺に振り返った。
「協力するわゼフィルス。クイナダの思い出作り、私も全力を出すわよ」
「よっしゃ! シエラがそう言ってくれるなら、タンク100人力だぜ!」
決まりだ。
シエラ ( サブマスター ) がクイナダ側に付けば〈エデン〉の方針は決まったも同然だぜ。
「とんでもないことが私たちの目の前で決まってしまいましたの……!」
「ううぅ! でも、私も協力するよ! 仲間だもん!」
「だな! ここで下がるようじゃ〈エデン〉メンバーは名乗れねぇぜ!」
気が付けばサーシャ、カグヤ、ゼルレカもやる気満々、助ける気満々だ。
これが友情! ふふふ、これは勝ったな!
「それじゃあ早速最上級ダンジョン門へ向かうぞ! 俺たちが最初に最上級ダンジョンへ潜るんだ!」
「「「おおー!!」」」
「今日はデモンストレーションだから、すぐに戻ってくるわよ?」
「分かってるって。今日は下見だよな。全力で丸裸にしてやるぜ!」
忘れちゃいけない、本日は卒業式。
本格的な攻略は明日からということで、今日は最上級ダンジョンに入ダンするデモンストレーションとして〈エデン〉が参加する予定だ。
なので、入ダンしても、すぐに戻ってこなくてはいけない。
だが、もちろん手土産無しなんてことはしない。たっぷりとお土産を持ち帰ろうじゃないか!
◇
約1時間後、最上級ダンジョン門の前には多くの人・人・人が集まっていた。
上級中位ダンジョン門、上級上位ダンジョン門と続き、3回目のダンジョン門の解放だ。
建物は他のダンジョン門と雰囲気は似ているが、かなり豪華な作りをしており、一目でここが最上級、一番上のダンジョン門なのだと分かる作りをしていた。
その 閂 ( かんぬき ) の数、約20本。その全てが俺の身体よりもデカい金属塊で出来ていて、門を厳重に封印していたんだ。
「うぉっほん。ではこれより、学園至上最高峰のダンジョン5つが封印された、最上級ダンジョン門の解放の儀を執り行う!!」
―――――わああああああああああああああああああ!!
ダンジョン門の扉の前にはいつも通りステージが置かれており、その中心に立ちマイクに向かって喋るのは、この学園の長、ヴァンダムド学園長だ。
俺たち〈エデン〉は〈ハンター委員会〉〈救護委員会〉〈攻略先生委員会〉と一緒に周りに控えている。
盛大な音楽が流れると同時に、俺もステージへと歩み出た。
「ゼフィルスさん。頑張りましょうね」
「はい! タバサ先生も!」
「うふふ」
ダンジョン門を解放するための5つの鍵。
それを各ギルドの代表と学園長の5人で持つ。
俺の隣はタバサ先生だった。なんだか嬉しくなる。
「解放せよ!」
学園長の言葉と同時に5人でガチャンと鍵を差し込み、ガチャリと回す。
すると封印されていたダンジョン門に掛けられていた金属製の 閂 ( かんぬき ) 約20本が、ガシャンガシャンガキンガシャンガチンと順に外れていった。
おお! 凄い演出だ! まさに最後の門の解放っぽい!
同時に真上には花火が上がり、豪華な演出を披露する。そして、
「開門!」
ガゴンッと重い音が響き、ダンジョン門の扉がゆっくりと開かれていく。
――――おおおおおおおおおおおおおおおお!?
すると会場の盛り上がりは最高潮だ。
ついに最後の扉。この世界で最高難易度を誇る、最上級ダンジョンの扉が開かれたのだ。盛り上がらない訳がない。
「これより、〈エデン〉が入ダンし、中を確認する! 見届けよ!」
――――おおおおおおおおおおおおおおおお!!
やっべ、テンション上がってきたーーーー!!
学園長、今日は一段と輝いてますよ!
なんだか覇気がいつもと違う気がするもん!
最近主治医を招いたし、そのおかげかな?
それはともかく、今はダンジョン門だ!
「〈エデン〉、いくぞ!」
「「「「「おお!!」」」」」
言葉は短く、しかしハッキリと。
俺が告げれば、ケルばあさんからストップの掛かってない総勢49人+5人の〈エデン〉メンバーが集まり、大歓声を背中に受けながら出発した。
手続きはすでに終え、ケルばあさんや他のスタッフがダンジョン門内のシステムを確認してくれる。
「問題無さそうだね。これまで通りの手順でダンジョンには潜れそうだよ」
「よっしゃ。それじゃあ〈エデン〉は最上級の最初のダンジョン、ランク1―――〈新世の樹界ダンジョン〉へ入ダンします」
「承認するよ」
こうして手続きも完了。
俺たちが最初に潜るのは、最上級ダンジョンのランク1、〈新世の樹界ダンジョン〉だ。