第1870話 すわ、ピンチか!?〈エリアボス参戦現象〉!
第1870話 すわ、ピンチか!?〈エリアボス参戦現象〉!
―――〈怠惰な暴食猫・クレイジーニャークロー〉。
明らかに怠惰で暴食しまくったぽっちゃり――否、デブ猫みたいな見た目をしたエリアボスである。オブラートに包めないお肉をお持ちなのだ。さすがは〈猫猫ダン〉5層で守護型ボスをやってた〈デブルンニャフルン〉、通称〈デブニャン〉の最終進化系だぜ。
だが能力はなかなかに厄介。徘徊型と戦っている最中に出てきて参戦してくるため、他の徘徊型戦をしている6パーティとは別に、3パーティ待たせておくのが吉だ。
その3パーティも主力的なキャラを残しておかないとエリアボスに押し込まれるので、徘徊型に全力を出していると参戦してきたエリアボスに食べられることになるとんでもない現象だ。ちなみにバクンと食べられると様々なデバフをもりもりにされてペッてされるぞ。
合計9パーティが突発的に必要になる、それが最上級ダンジョンの参戦現象だ。
「ラナ、そっちは大丈夫か!」
「任せなさいよ! こっちはみんなでなんとかするわ!」
ラナが頼もしい! さすがは王女様!
リーナと俺という指揮官が徘徊型と戦っているこの状況、エリアボス戦を指揮できる人が居ないことが多少気がかりではあったが、ラナが3班、6班、9班の指揮を執り、フィナ、キキョウ、モニカの3人掛かりでエリアボスを抑えてくれたんだ。
補佐として9班のメルトも細かい指示を出してくれているので安心。
「こっちも徘徊型を全力で抑え込むぞ! この徘徊型の高機動と広範囲の移動力を考えると、エリアボスとの戦闘にも巻き込まれる可能性が高い!」
「下手をすれば、エリアボスがこちらにも攻撃してくるということですか!?」
「ハンディがどうなるのか、とても気になるけれど。そもそもボス2体を合流させてはいけないわね」
さすがはシエラ。その通りだ。
とはいえハンディはぶっちゃけ変わらない。このレイドに出現するボスたちは、最初からハンディ持ちだからか、その後ハンディが上がることは無いのだ。
故に参加できるパーティ数の上限が決まっているという仕様なんだけどな。
だが、参戦現象はその仕様を狂わせる。
ハンディ数は変わらないが、お互いの行き来が可能になってしまうのだ。
エリアボスは俺たちに攻撃できるし、逆に俺たちもエリアボスに攻撃ができてしまう。9パーティ対ボス2体みたいな局面だな。場合によっては6パーティ対ボス2体になることもあって、対策していないと厳しいボスだ。
ならまず8パーティくらいで集中的にエリアボスをまず屠って、残った徘徊型を9パーティで殲滅するのが有効なんじゃないか? という意見が出てきそうだが、それは難しい。
なにせ、ヘイトが入り乱れてしまうからだ。
徘徊型を最初に相手にしていた6パーティがエリアボスを攻撃すると、徘徊型が凄まじく怒ってヘイト管理が狂ってしまう鬼仕様があるのである。
つまりはエリアボスと戦っているところにヘイト関係無く飛び込んで来るのだ。
2体のボスが合流してしまうことになり、とんでもない戦況に早変わりしてしまう。
故に集中してどちらかを叩くことは難しいとなっている。
エリアボスはエリアボス、徘徊型は徘徊型の担当で別々に叩くのが正解という寸法だな。
「シャロン! ヴァン! 間に壁を作ってくれ!」
「うん! 『防壁召喚』!」
「了解であります! 『城壁展開』!」
こういう時有効なのが、物理的に分断してしまうことだな。
シャロンとヴァンに頼み、〈怠惰で暴食なデブ猫〉との間に壁を作ってもらい、物理的に分断する。〈ドラ猫〉は飛行できるが、〈デブ猫〉はこれを超えられないだろう。後は俺たちが〈ドラ猫〉を抑えつけられれば、それぞれのボスに集中できる。
「あ! ゴーレムが!」
「ドラニャー!」
「徘徊型が逃げるよ!」
「させないさ! カタリナ!」
「はい! 『 多重操 ( たじゅうそう ) 聖琴 ( せいきん ) 結界』!」
「ドラニャー!」
カタリナの〈五ツリ〉『 多重操 ( たじゅうそう ) 聖琴 ( せいきん ) 結界』は板結界を無数に操るという魔法だ。重ね合わせるも良し、並べても良しの非常に使い勝手の良い魔法である。
それでカタリナがほんの少し時間を稼いでくれた。すぐに結界がひっかきで切り裂かれるが、その時には俺がすぐ側に居る。
「『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「ドラニャー!?」
「そのままそこに居るがいい! 『 防食 ( ぼうしょく ) 咆哮 ( ほうこう ) 牙狼 ( がろう ) 』!」
「無論、私たちが逃がさん! ――『抜刀術・ 壊斬大一閃 ( かいざんだいいっせん ) 』!」
俺がボスの動きを止めたところでラウとリカの追撃が突き刺さり、発動しかけていたスキルも相殺されて再び飛び立つのを封じられてしまう。
「ドラニャー!」
「くっ! 攻撃力、防御力、どれもピカイチだな!」
「あのドラゴンのような身体、〈五ツリ〉の攻撃でもあまり通りませんわ!」
「あれは間違い無く〈竜〉の特性! 生半可な攻撃はほとんどダメージにならないぞ!」
「〈上竜特性〉持ちの猫ってこと!?」
そう、ここで徘徊型の特性判明。
〈ドラゴン猫〉なのだ。そりゃ〈上竜特性〉も持ってる。
あの〈竜の試練〉で俺たちを苦戦させた(?)、強力な防御性能だ。
生半可なスキル ( 四段階目ツリー以下 ) はほとんどダメージにならない。
「あ、また逃げるよ!」
「今度は私の番だよ! 『クロノス』!」
ノエルの言葉に名乗り出たのはルキア。
そのユニークスキル、ボスの動きを一定時間ストップさせるとんでもない効果でようやく空へ飛び立てた〈ドラ猫〉が停止してしまったのだ。
逃がさないって。
「ゼニス、上からいきますよ!」
「クワァ!」
「私たちも行くよワダラン!」
「グワァ!」
「『 神飛 ( しんぴ ) ・ドラゴンオーバーストライク』!」
「『シン・ドラグイブニル・ジェット・ユニット』!」
「ド!?」
ズドンと真上から突撃するのは、アイギスとアルテの〈竜騎姉妹〉。
これは2人とも超速の突破突撃スキルだ。
移動にも使える『ドライブ』系の特性も持っている突撃でとんでも速い速度で敵に激突する。
特にアルテの使った『シン・ドラグイブニル・ジェット・ユニット』は上級ユニークスキル。その速度はカルアの『ナンバーワン・ソニックスター』に迫る程の超速だ。
そんな突撃を真上からダブルで受けた〈ドラ猫〉は落下。
地面に思いっきり叩き付けられダウンしてしまう。
「今だーー!! 総攻撃!」
ここで総攻撃がヒット。
かなりHPを削ったな。
だが、起き上がった〈ドラ猫〉は思わぬ反撃に出る。
「ド、ドラニャー!」
「ぐあ!?」
「くっ!」
地面に向かってブレスを吐いたのだ。
ブレスは地面に命中して拡散。地面に広がり一気にアタッカーたちにダメージを与える。
「『奥義・ 神使 ( しんし ) 特大回復 ( とくだいかいふく ) 儀式 ( ぎしき ) 』!」
「カグヤナイス!」
ここはカグヤの〈六ツリ〉回復魔法でHPが戻るが、ブレスの余りの衝撃に〈ドラ猫〉を抑えきれず、逃走を許してしま――いや許さない。
「カイリ!」
「『徘徊型は逃げられない』!」
「ニャー!?」
まるで見えない壁にぶつかったかのようにして弾かれて落ちてくる〈ドラ猫〉。
ふっふっふ、カイリからは逃げられないんだ。
俺が指揮官であるリーナのいる班を参加させたのは、まさにカイリの『徘徊型は逃げられない』が欲しかったからだ。
「トモヨー変身して捕まえてくれ!」
「任せて! 『大天使フォーム』!」
「『 英勇転移 ( ブレイブポート ) 』! 『聖剣』!」
「ドラニャ!?」
そろそろHPもラストスパートに入るのでトモヨに変身指示。
俺は転移で体勢を整えつつある〈ドラ猫〉の真上を取って、再び『聖剣』。
ダメージはほとんど入らなくても効果の硬直は入るのだ。
「閉じ込めるわよ――『オープン・ザ・サウザンドシールド』!」
その間にシエラが千の盾を出して〈ドラ猫〉を囲ってしまい、逃げること不可。
そこへ変身の終わったトモヨも飛んできて。
「いくよー! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』! 『エルシール』!」
身動きすら封じることに成功。
「これが最後だ! HPを削りきるぞー! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「「「「「おおー!」」」」」
「ド、ドラニャー!?」
トモヨが張り付き身動きがかなり制限された〈ドラ猫〉は、そのまま大量の攻撃を食らったことでHPがゼロになってしまう。
「ド、ドラ~~~」
「やっぱりこのボス、猫じゃなかったんじゃないでしょうか?」
「ドラドラ言ってるよ~」
エフェクトに消えていく〈ドラ猫〉がなんか猫らしく無いことを言うせいでアイギスとエフィが勘違いしていたが、あいつは猫なんだ。間違い無い。ここは猫世界だからな!
「ラナ! こっちは終わったぞ!」
「こっちもそろそろ終わるわ! 『大聖光の無限宝剣』!」
「トドメと行きます――『 彗星槍 ( すいせいそう ) 』!」
「ラナ様に向かってきたのが運の尽きです――『メイド・フォーシス・バルカン・グレート』!」
「これで仕留めるデース! 『大忍法・ 激炎龍 ( げきえんりゅう ) 爆楼 ( ばくろう ) 』デース!」
「総攻撃ですね。『エル・バランレード・ラグナロク』!」
「アリスもやるー! 『 雷神竜 ( らいじんりゅう ) ・インフィニティ』!」
「私もいくよー『魔王砲』!」
「『必殺の溜め』! 力一杯だよ! 『必殺・ 大神抜閃 ( おおかみばっせん ) ・ 破邪銀狼華 ( はじゃぎんろうか ) 』!」
「よーしトドメなら任せてくれたまえ! 『トリガーハッピー』!」
「おっしゃ、あたいのHPも半分もってけ! 『ライフフォース・アトミック』!」
「『グラビティフィールド』! これで動けないだろう。トドメだ――『コキュートス・ゼロ・ディザスター』!」
「たは! 最後だから私も参加だよ! 『 誘惑生吸 ( ゆうわくせいきゅう ) ・ライフミナドレイン』!」
おお~、ボッコボコだ~。
徘徊型は〈上竜特性〉に加え、5ハンディだったからなぁ。どうしても時間が掛かったが、こっちは結構楽勝な様子。
俺たちが終わった時にはエリアボス戦も終わろうとしていた。
「グニャニャニャニャニャ!?!?!?」
全弾命中してズドンと後ろにゴロンと倒れ――否、転がる〈怠惰な暴食猫・クレイジーニャークロー〉。
目を回してダウンするボスのHPは、見事にゼロだった。
そのまま膨大なエフェクトと共に消えていく。
うむ、知らないうちにやられてしまったようだ。あとでラナに詳しく聞くとしよう。
こうして、すわ、ピンチか!? と思われた〈エリアボス参戦現象〉も見事に討ち果たし、その後には徘徊型から〈金箱〉が2つ。エリアボスから〈金箱〉が1つドロップしていたんだ。