第1876話 勇者猫の三種の神技!ユニークスキル大戦!
第1876話 勇者猫の三種の神技!ユニークスキル大戦!
「まさかレイドボスがレイドボスを召喚するなんて、予想を遥かに超えておりましたわ。さらにはゼフィルスさんのユニークスキルまでなんて」
「だな。だが前者は想定できないことはない。なにせ、〈バトルウルフ(最終形態)〉なんて歴代の〈バトルウルフ〉全てを召喚していたからな。それよりも格上の〈ベヒモス〉なら、それなりのボスを召喚してくるのだと想定できたはずだ」
「ゼフィルスさんのおっしゃる通りですわ。〈猫津波〉戦を繰り返し、有効な戦法を見つけておいてよかったですわね」
「本当だな!」
「…………」
形態変化を待つ間。ハンナ特製ポーションを補給しながらリーナとちょっとした意見交換。
そこで、なぜかシエラが俺をジト目で見つめてくるんだ。なんだか知らないがやったぜ!
これで最終形態も楽勝だな!
まあ、もちろんそんなことはない。
「! 形態変化が終わるぞ!」
「何か来るよ! 『主の盾』!」
「! 『欲望渦巻く混沌の 闇球 ( やみたま ) 』!」
「『グランド・デス』っす!」
それにまず反応したのはトモヨだった。
それは雷。いや、雷を纏った〈ベヒモス〉だ。
その〈ベヒモス〉が初手で大技を繰り出してきたのだ。
膨大な雷の力が集まり、フィールド全体にぶっ放される。
「なにあれ!?」
初見であるみんなは分からないだろうが、俺は知っている。
〈ベヒモス〉は勇者スキルを使える。しかし、【勇者】系列の 職業 ( ジョブ ) って実は【勇者】と【救世之勇者】だけじゃないんだ。
覚えているだろうか? 俺が〈 上級転職 ( ランクアップ ) 〉で選ばなかった【勇者】の上級職が、他にも2職あったことを。
これがそのうちの1つ。
――【超勇者】の第一ユニークスキル『 超暴走勇者魔法 ( ブレイブ・バースト・ビッグバン ) 』だ!
トモヨはそれを盾で受け止め、モニカがブレイク系の闇球を放ち、ナキキが暴れる雷を地面に叩きおとした――が、まだ終わらない。
「シエラ、ラクリッテ! 大技!」
「! 『プラネットドアヘヴン』!!」
「ポン! 今こそ現れるは最強無敵の盾狸王――『 幻獣霊最強 ( げんじゅうれいさいきょう ) ・ 狸王様完全盾 ( たぬきおうさまかんぜんたて ) 』!」
「きゃあ!?」
ズババババババババ、バリバリバリバリバリ――っと凄まじい電撃がボス部屋を駆け巡る。シエラのドアに電撃が吸い込まれていき、ラクリッテの大狸様が受け止め、5人のタンクが揃って大技で受け止めることでようやく『 超暴走勇者魔法 ( ブレイブ・バースト・ビッグバン ) 』を防ぐことに成功した。
「よっしゃナイス!! だが前を見ろ、次が来るぞ!」
大技防いで労いたいところだが、〈ベヒモス〉の攻撃はまだ終わらない。
「ニャオオオオオオオ!!」
「な、速い!?」
「キキョウ! 究極の盾!」
「は、はい! 『究極嫉妬盾』!」
ガガガガガツン!
トモヨたちに防御されたあと、そのまま盾を攻撃するでもなく回り込まんとする〈ベヒモス〉。その狙いはアリスたちの居る6班だった。すぐにキキョウが究極の盾で受ける。だが、数撃の連続攻撃で一気にヒビが入っていくのが見えた。
あれも【超勇者】のスキル、『 全超勇者聖剣撃滅 ( ぜんちょうゆうしゃせいけんげきめつ ) 』。『聖剣』による連続攻撃だ。
「キキョウ~!?」
「私の嫉妬盾を甘く見ないでください! 羨ましい羨ましい羨ましい~~~!!」
「盾が直っていくよ~!?」
「ニャオオオ!?」
キキョウの『究極嫉妬盾』は嫉妬が強ければ強いほど硬度が増す防御スキルだ。相手が強ければ強いほど嫉妬力が増すので、ぶっちゃけなんでも防げる盾と言われている。故に究極の盾。(もちろん限界もある)
最初ヒビが入っていた盾もどんどん修復されて、1人で〈ベヒモス〉の猛攻を防ぎきる。さすがはキキョウだ! スキルLVは10まで上げておいたが、レイドボスの攻撃を1人でも受けきることができるとは! よし、その頑張り、俺が報いる!
「『 英勇転移 ( ブレイブポート ) 』! 『聖剣』!」
「ニュオ!?」
「今ですわ! 『 四戦兵砲 ( よんせんへいほう ) ・エーテル・バスター・クワトロ』!」
「よくもやったの~! 『神様は お怒り ( ゴロゴロ ) です』!」
「あの回避力を妨害します――『 呪縛 ( じゅばく ) の 閃弾 ( せんだん ) 』!」
「ナイス!」
俺が転移で上を取って『聖剣』でぶった切れば、40メートル級のレイドボスでもピタリと止まる。そこにリーナの指示で攻撃集中。アリスを含む多くのメンバーの攻撃が突き刺さった。
あとシズは回避妨害スキルで動きを阻害したな。さすがだ。
「ってキキョウちゃんHPすっごい減ってる!? 『ヘブンズハート』!」
「わ、盾の上から、このダメージですか……!」
キキョウのダメージがかなり深刻。
『究極嫉妬盾』に守られていてなお3割もダメージを受けていたのである。さすがは【超勇者】の『聖剣』連打スキルだ。
全弾直撃すればタンクでも戦闘不能になる威力。LV85のタンクを戦闘不能にできる連打だ。1発でも入ると『聖剣』の硬直効果で全弾喰らうので1発も喰らってはならない。
「これは、この第三形態はもしかして……」
「おそらく、単純な強化タイプだ」
「真っ正面から打ち破って見せろ、ということですか!」
クイナダ、メルト、エステルの目がさらに真剣味を帯びる。
今まで動きすぎでその姿をしっかりと捉えきれなかったが、仕切り直しでようやくその全体図が見えた。
〈ベヒモス〉の身体は筋肉がモリっと膨らみ、まさにトラ。
身体は稲妻を纏っているが、〈ヨウネル〉の時のように近くに居るだけでダメージを受けるということはない。
パワーと素早さは相当上がっており、単純なパワーアップ変化という姿だった。
「なんというか、完全にパワーアップしていますわ!」
「少なくとも、さっきの〈ベヒモス〉の比では無いわね」
そう評価するのも分かるくらい、ストレートにパワーアップしていたんだ。
「ニャオオオオオオオ!!」
「なあああああでありますーーー!?」
「ヴァン! 退避ーーー!」
続いて〈ベヒモス〉が襲ったのはヴァンの第二拠点。
シャロンと共に構築した安全地帯。非常に自信のあった要塞がモンスターの侵略を受けていた。
『神域の壁』で強化された防壁は〈ベヒモス〉が後ろ脚で立ち、前脚で連打パンチすることで粉砕された。なんで猫って要塞をネコパンチで粉砕してくるのだろうか。
みんなからの攻撃を喰らいながらも拠点を破壊しまくる大怪獣猫。否、勇者猫。
「いっけーみんなー!」
「大魔王様たち! リベンジの時間だよー!」
ヴァンとシャロンはヒーラーと共に退避し、未だに拠点を破壊しながら入り込まんとする〈ベヒモス〉にフラーミナやシヅキのモンスターが襲い掛かる。
だがネコパンチでやられる大魔王様が続出。
なんで猫って大魔王様をネコパンチで倒せるのだろうか? 大魔王様たちー!
「ニャオオオオオオオ!!」
「『城・大爆発』!」
ドッガーーーーーン!
拠点がものの数十秒で占領されてしまったので大爆発を発動して大ダメージ!
いや、演出は派手だけど全然ダメージを受けてない。さすがはレイドボス・大型だ!
「油断するな! あいつの攻撃は必ず防御スキルで防げ! あの拠点や大魔王を倒したネコパンチは直撃を喰らうなよ!」
「あんなの喰らったら、ぼくは一瞬で〈敗者のお部屋〉に直行しちゃうよ!」
まさにニーコはそう。
だが、防御スキルで防げればヒーラーが回復してくれるので何とかなる。
……ニーコは防御スキル持ってないから必ずどこかのタンクの側に居ることを言い含めておいたよ。
「ニュガアアアアアア!!」
「! 『操剣防御』! きゃあ!」
「クラリス!?」
「ヘイト無視ですの!?」
「よくもクラリスを――狩らーんですわ!」
「ニャ!?」
「ここで『神代わりカウンターストライク』ですわ!」
「クラリスちゃんに『ハイヒール』!」
「ノーアちゃん狙われてる狙われてる!」
「ノーアよ、引け! ――スイッチ! 『ゼルワン・カイザーバスター』!」
「ニュアアアアアア!」
「私が止めるよ! 『タイムストップ』!」
「ナイス!」
「回り込め!」
クラリスが防御の上からぶっ飛ばされたが、防御スキルを発動していたため3割もダメージを喰らっていない。『ハイヒール』で十分。
ノーアはあの一撃で戦闘不能になるかもしれないほどの攻撃になんかカウンターを合わせてドカン、ラウもドカンしていたが、反撃を喰らいそうなところでルキアがフォローして事なきを得る。
「タンクは今から言う位置に移動! 抑え込め!」
防御が大事だ。
〈ベヒモス〉の暴れっぷりはまさに最後の気力を振り絞った勇者状態。『勇者の最後の力』を発動中だ。これはバフじゃなくて単純にスキルのアクションなのでバフ打ち消しもできない。
その攻撃の威力はべらぼーに強く、タンクが防御スキルを使って防がないと、アタッカーが直撃したら一撃でやられかねないところまできていた。
さらにはあっちこっち行くせいで狙いが定めづらく、アタッカーの不意が突かれやすい。
故にここはタンクの位置が大事。よし、今だ!
「モニカ、防御!」
「『 大強欲吸覇城占盾 ( だいごうよくきゅうはじょうせんたて ) 』!」
「今だ! エフィ!」
「『アルティマス・グラディウス』!」
「ニュガアアアアア!」
「シャロンの方に行ったぞ! 防御!」
「『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「今だ! サチ、エミ、ユウカ!」
「「「『 三柱神授神器 ( みはしらしんじゅじんぎ ) ・ジャストメイトジャッジメント』!」」」
「ニャアアアアア!?」
「次、シエラの方だ!」
「任せなさい。もう見切ったわ」
「え?」
あっちこっち行くのなら、そこにタンクを配置し、パーティを配置すれば良い。
そのどこに行くかのパターンは、大体俺の中に入っている。
移動してきたらタンクが受け止めアタッカーが攻撃、また移動して誰かに襲い掛かろうとしたら近くに居たタンクが止めて攻撃する。
シンプルにしてベスト、しっかり防御を固めてじわじわ削る戦法だった。
だが、シエラの方に行ったのが運の尽き。
「――『カウンター・レイ・ストリーム』!」
「ニャ!?」
またも見切っちゃったシエラのカウンターがぶっ刺さり、なんと勇者状態の〈ベヒモス〉がダウンした。
「そ、総攻撃だああああああ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
さすがはシエラ、超さすがだシエラ!
なんであの状態の〈ベヒモス〉の攻撃を見切っちゃっているのかとても不思議!
だがこれが切っ掛けとなり、大量の攻撃が降り注いで、流れが完全に俺たちのものになる。
「そろそろダウンが終わる! 乗り込め!」
「とう、なのです!」
「やっぱり乗れるんだ!」
「回復頼む! ここから一気にぶっ倒すぞ!」
「任せなさい! ――『ヴァース・フォーチュン・ゴッドブレス』!」
ダウンが終わる寸前、俺たちは〈ヘカトンケイル〉の第二形態の時の如く背中に乗り込んだ。
でっかい猫に乗ることにちょっと感動。
残りHPは1割を切っている。ここで決める!
しかし、〈ベヒモス〉もタダでは終わらない。
「ニャアアアアアアアア!」
「こ、このスキルはまさか!」
「これは――『 完全勇者 ( アブソリュートブレイバー ) 』だ!」
【救世之勇者】の第一ユニークスキル。完全無敵モード。
どんな攻撃を受けようともノーダメージというとんでもモードだ。
取り付かれたら敗北は必至、ここで『聖剣』なんて打たれてはたまらないということだろう。あれ、動き止まるしな。故に無敵モードになって振り落とそうとしてきたのだ。だが、
「それは他のスキルも使え無くなるデメリットがあるんだぜ!」
「ニャ!」
もちろんそんなことは知っているとばかりに鳴く〈ベヒモス〉。
その身体からぶわりとあのオーラが舞い上がったのだ。そう、『 完全勇者 ( アブソリュートブレイバー ) 』は、ユニークスキルだけは使えるんだ。
あ、まずいぞそれ。
俺は〈ベヒモス〉のやろうとしていることに気付いて戦慄した。
この溜めは間違いない。【勇者】系列の上級職、最後の1つにして最強の勇者―――【真の勇者】の第一ユニークスキル『ディメンション・セイバー・ライトニング』だ!
普通ならレイドボスが溜めなんかしても成功しない。つまりこの溜めを成功させるために無敵モードになったということか!
そういえばHP1割以下で低確率でこのコンボをしてくるんだっけ。俺たちは、見事にその低確率を引いてしまったらしい。
そのユニークスキルはアカン。
そこら中に斬撃で次元の裂け目を作り色んな次元から雷を呼び込む全体攻撃だ!
ニーコとか一瞬で戦闘不能になるぞ! 俺はここでキキョウのユニークスキルを切ることに決める。
「キキョウ、ユニーク頼む!」
「! 『羨ましいからそれ禁止』!」
バンッっと〈ベヒモス〉の『 完全勇者 ( アブソリュートブレイバー ) 』が消える。
そう、この『羨ましいからそれ禁止』は、なんと最強の『 完全勇者 ( アブソリュートブレイバー ) 』すらも禁止にしてしまえる超罪深いユニークスキルなんだ。
というか『 完全勇者 ( アブソリュートブレイバー ) 』を無力化できるのはこのスキルくらいしかない。
「ニャ!?」
「それ中止だーーー!! 『聖剣』!」
「ニャ!?」
ズバンと一閃。
溜め強制解除。
何かを溜めている最中は無防備。そしてなにかしらの攻撃を受けると溜めが 失敗 ( ファンブル ) してしまうのだ。
これで『ディメンション・セイバー・ライトニング』は 失敗 ( ファンブル ) だ!
「今だーー攻撃しまくれーー! 振り落とされるなよ!! 喰らえーーこれが本物の『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』だ!!」
「『ヒーロー・セイバー・モーメント』なのです!」
「ニャアアアアアアア!?!?」
背中から取り付いてボッコボコ。〈ベヒモス〉も抵抗して大暴れだ。
ダメージの我慢比べだな。しかし。
「これで終わりだ! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「ニャ!?」
ズドンと強烈な一撃が首に決まったところで――ついに〈ベヒモス〉のHPがゼロになる。
「ニャオ…………」
「飛び降りるぞ!」
「とう!」
そのままズシーンと倒れた〈ベヒモス〉は、膨大なエフェクトを発生させて消えていったのだった。