第1878話 最後の御神体、今〈ファミリーズ〉が揃った!
第1878話 最後の御神体、今〈ファミリーズ〉が揃った!
「なら、次は俺だな」
「メルト様、私が共同作業に立候補してあげようか?」
「よかったら私がするよ? 私も開けてみたいな~」
おっとここでミサトとシャロンがメルトとの共同作業に立候補したー!?
きっとレグラムとオリヒメさんの仲の良さに当てられたに違いない!
これはいったいどうなってしまうのかー!? メルトはどっちを選ぶんだ!?
周囲のみんなもメルトの行動に注目したのを感じる。オリヒメさんなんか目がキラッキラしてるぞ。メルトの答えは如何に!?
「俺は1人で開けよう」
「「「ああ~」」」
そうだな。メルトはそう言うと思ったよ。からかわれていると思ったのかな?
注目していた女子たちが残念、という声を漏らしたが、メルトはスルーして〈金箱〉の前に屈んだんだ。
ちなみにミサトとシャロンはニッコリ笑顔のまま固まっている。ドンマイだ。
お祈りするメルトがなんだかシュール。
でもしっかりお祈りするところは素晴らしい。俺も一緒になってお祈りを捧げる!
そしてメルトは〈金箱〉の蓋を掴むと、一気に持ち上げた。
中に入っていたのは―――レジェンド色に輝くレシピ!
「レシピだな」
「今度はルルが『解読』してあげるのです! 〈幼若竜〉さん、どうかこのレシピを良い感じの文字にしてくださいなのです! 『解読』!」
もしかしてルルはレシピの内容を〈幼若竜〉が決めると思ってる?
可愛い。なんだか、緊張した空気が解れるのを感じたんだ。
だが、そんな空気も一瞬で変わる。
「む、これは、〈猫のバスライダー〉レシピだと?」
「〈乗り物〉系のレシピですか!?」
メルトの言葉にまたもや一斉にレシピを確認したのだ。
猫バス? 猫ライダー? 名前から完全に〈乗り物〉だと思うよな。だがちょっとだけ違うんだ。
「いや、これはダンジョン馬車などじゃない、地上で使う系のバスだ」
「〈セグ改〉や〈水上バイク〉なんかと同じアイテム系乗り物か……! しかも50人乗り!?」
「あ、それは便利かも!」
「分かりますわ!」
メルトが当てたのは、なんとアイテムの乗り物だった。50人は乗れる大型バスのレシピだな。ダンジョンではなく、地上で使うタイプ。しかも猫型バスだ。
便利と言ったのはクイナダで、同意したのはリーナだな。その気持ちは分かる。
俺も〈名も無き始まりの村〉から馬が引く馬車で10日もかけて学園に来たんだ。振動と退屈で危うくこの世界に来たばかりで昇天するところだった。
だが、猫型バスならば速いし揺れも少ない、はず。乗車人数なんか馬車と比べるまでもない。
もしかしたら、地上の駅馬車が、全て猫バス駅になってしまうかもしれないぞ。
なんだか想像したら楽しくなってきた。よし、これは学園長へのプレゼントにしよう。この世界の輸送手段が猫型バスに占領される日も近いかもしれない。作るのに〈ベヒモス〉の素材がいるけれど。
「さぁ、いよいよ最後だな!」
ドンと、最後の〈金箱〉に目が吸い寄せられる。
ラナにオススメされた〈金箱〉だ。これにお祈りすれば、きっとあれが手に入る、はず!
俺は片膝を突いてパチンと手を叩き、真剣にお祈りする。いつもより真剣度増し増しだ! 300%増しを目指す!
「〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉。ついに来たるべき時が来ました。どうか、どうか俺の手に祝福を! 神棚にいっぱいお供えします。お祝いもします。神棚をもっと豪華に色づかせて見せます! ですからどうか、この俺の手で〈ファミリーズ〉の完成をさせてください! よろしくお願いします!!」
これだけの言葉を並べてお祈りを捧げたのは初めてかもしれない。いつもの3倍は言葉を贈ったな。
俺はクワッと目を見開き、集まる妖怪たちをねじ伏せる気持ちで〈金箱〉をパカリと開けた。緊張の瞬間!! すると中には――。
「にゃあ」
1匹の猫様がこんにちはしていた。
「喋ったーーーーーーーーー!!!!」
「ね、猫さんが入っていますーーーーーーー!?」
俺とマシロの叫びで固まったみんなも解ける。
「えええええええええええ!? なにこれ!? 〈幸猫様〉!? え? でもちょっと違うわ!?」
「今、喋りました!」
「とりあえず『看破』! 誰か『看破』して!」
「『看破』です! あ、あれ? ダメです。『看破』通りません!」
「そりゃ通らないだろう!?」
震え声でエステルにツッコミながら、俺は震える両の手でその猫様を取り出す。
俺はこの猫を見たことがあった。というかこの〈猫界ダン〉攻略中はずっとこの方の姿を思い浮かべていた。
デフォルメされ、完全に〈幸猫様ファミリーズ〉の一員ですね!? と一目で分かる可愛い姿。〈幸猫様〉に似ているが、片手を上げ杖を持ち、とても威厳のある姿で可愛くポーズを取られている。背には後光のような光すら見えるようだ。
ゲームでは喋る描写なんてなかったはずなので意表を突かれたが、間違いない。
来ちゃった? あの方来ちゃった!?
「エステル、『看破』じゃなく『解析』だ!」
「は、はい! 『解析』!」
決めゼリフを言う余裕すらなく『解析』するエステル。その瞳がまたも驚愕に染まった。
「『解析』できました! これは、この猫さんは――〈幸運を呼び寄せる神猫様〉というアイテムです! そ、その効果は〈〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉が揃っているとき、『超幸運』を『神幸運』に昇華する〉。そして今までの効果に加えて〈ボスドロップの宝箱を確定で1個増やす〉です!」
「「「「「…………えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?」」」」」
まさにアンビリーバボー。
え? そんな効果あり?
例えばレイドボスは3個確定で〈金箱〉ドロップするだろ? それに+1するってことだよ?
つまりだ――『神幸運』状態でレイドボス戦やるってことは、それ毎回〈パーフェクトビューティフォー現象〉が確定するってことなんだよ!!
『超幸運』は〈幸猫様〉〈仔猫様〉〈愛猫様〉の3体が揃わないと発動しないため、『超幸運』が大前提のこの『 神幸運 ( 追加効果 ) 』は、〈幸猫様ファミリーズ〉が4体全て揃わないと発動しない。
まさに〈幸猫様ファミリーズ〉が揃った超絶幸運!
そう、この御方こそ〈幸猫様ファミリーズ〉の4体目、最後の御神体様なのだ!!
素晴らしい! 素晴らしいぞ! そこで俺の意識は吹っ飛んだ。
「〈神猫様〉キッターーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「ゼフィルスさんが暴走しましたわ!」
「やっぱり! ゼフィルス抑えて! 抑え…………あ?」
「〈神猫様〉ーーーーーーーーーー!!」
「ゼフィルス殿がクルクルダンスを、でもその相手は〈幸運を呼び寄せる神猫様〉だけのようですね」
「ちょっと、なにアイテムと踊ってるのよ! クルクルする相手はここにいるでしょう、ゼフィルス!?」
「そうれクルクルクル~~~~~~!!」
「ゼフィルス先輩がまた狂ってしまったですの!!」
「…………」
「あ、あれ? シエラさんの目が厳しいような?」
「ゼフィルス君、別の意味で正気に戻らないと!」
「シエラさんが――ってああ!? 油断したシエラさんがゼフィルス君に捕まったーー!?」
「きゃあ!?」
「う、上手いです! あのシエラさんが冷めて盾を降ろしたタイミングを、見事に突きました!!」
「ラクリッテちゃんがまるで評論家のように解説してるよ!?」
「そうれクルクルクル~~~~!!」
「きゃあ!」
「次は私よ! 私が替わってあげ――じゃなかった。――シエラ、今助けるわ! ――きゃあ!」
「クルクルクルクル~~~!」
「ゼルレカ、クイナダ先輩、説明するでやがります。ゼフィルス先輩はどうしやがったんでやがりますか!? あとラナ殿下が自ら罠に掛かりに行ったように見えたんでやがりますが!?」
「あ、モニカは初めてだったな。ゼフィルス先輩は、すっげぇ嬉しいことがあると、こうなるんだ」
「う、うん。特に〈金箱〉が4箱出たりするとなりやすい、かな?」
「いや、完全にやべぇことになってやがりますが?」
「いつものことだから」
「これがいつものこと、でやがりますか……?」
「クルクルフィーバータイムだーーーー!!!!」
「「「きゃ~~~~!」」」
その日、俺の手に〈幸猫様ファミリーズ〉最後の御神体。〈神猫様〉が来られた。
俺はしばらく記憶が飛ぶほどクルクルしていたらしい。
あといつの間にか胸には〈猫界ダン〉の攻略者の証が着けられていたんだぜ。