第1894話 戦車が来る!シエラをお姫様抱っこして大回避
第1894話 戦車が来る!シエラをお姫様抱っこして大回避
15層の守護型ボスは2体に増えた。両方が2ハンディを持つ天使系モンスターだ。
片方の聖域を攻めていると当然のように〈守護型参戦現象〉を発生させて援軍の天使を率いて飛び込んで来るので、参戦してくる前に足止め要員を配置。他の2パーティに任せて撃破した。
16層からは聖域が3つになった。
これも1箇所に攻め込んでいると隣の聖域から援軍が送られてくるという仕様だったが、お隣からの援軍だけなのでセーフ。
もしこれが全域からの援軍とかだったら危なかったね。
その代わりエリアボスが出るようになったけど。
うむ。実は〈聖界ダン〉ではエリアボスが16層から自然発生するようになる。
エリアボスはその階層のどこかにいるボスということで聖域にはいないのだが、聖域を攻めるとなんか参戦してきて場を混沌へと突き落としてくるのだ。
なので、先にエリアボスを屠っておき、それから聖域を制圧する流れができた。
合流前に潰す。各個撃破だな!
26層からは聖域が4つになって、階層門の特定の難易度がどんどん上がっていく。
まあ、こっちにはリーナがいるので『階層門発見』でちゃちゃっと見つけ、時間が押していたりするときは階層門のある聖域をピンポイントで狙って援軍が来る前に押し通ったりした。放課後って時間少ないよね。
そうしてたどり着いたのが30層。
つまり、レイドボスの門がある階層だ。
ここばっかりはちょっと準備がしたかったのでエリアボスや4つの聖域を全て制圧して、がっつりと調える。
「よし、みんな準備はいいか!」
「ええ。いつでも大丈夫よ」
「〈樹界ダン〉や〈猫界ダン〉では30.5層のレイドボスは連型でした。なら、ここもおそらくそうだと思われますわ」
「もう集団戦には慣れちゃったわよ! どれだけ集めても私たちを抜くことはできないと思いなさいよね!」
俺の掛け声にシエラが代表で頷き、リーナが予想を口にする。でもリーナよ、そういう時って大体外れることが多いんだ。
最後にラナがちょっと得意げな表情で言い募った。
その言葉に同意するメンバーは多い。30層に到着するまでにどれだけ天使系モンスターを倒したのか、という話である。
もう数を相手にした戦闘もだいぶ慣れてしまったんだぜ。
故に、ここのボスは 連型では無い ( ・・・・・・ ) 。
レイドボスの門を潜ると、そこにあったのは巨大な聖なる祭壇。
中級ダンジョンの〈祭ダン〉を思わせるが、あれは邪悪な感じだったのに対し、こちらは神に向けたような、神聖な白の石作りの祭壇だった。高さは100メートルを超えているレベルの大きさで、それが雲の上にそびえ立っている様子は非常に神秘的。
あまりの神秘的な建築物に思わず魅入ってしまいかねない、そんな場所が目の前にそびえ立っていた。
そして祭壇の上にある巨大な宝座には、40メートル級天使が座っている。
「…………」
「エステル!」
「…………」
「エステル、『看破』だ!」
「! は、はい! 『看破』です!」
ボスが現れているのにいつまでも行動しないエステルに声を掛けるが1回目は無反応。2回目でハッとして我に返ったエステルが慌てて『看破』を発動する。
いやびっくりだったね。俺もゲーム画面では「おお~」と魅入ってしまったが、リアルだと魅入りすぎてこうなるのか。やべぇ!
「みんなしっかりしろ! ボスがいる! それぞれ配置に付け!」
「「「「ハッ……!?」」」」
俺の声にみんながハッとする。なんだろうか、こんなリアル効果があったのか。
あまりの神々しさに声も出ない、我を忘れて魅入るギミック? なにそれやべぇ!
だってこいつの初手は――。
「みなさん、ボスの名が判明しました! レイドボス・大型――〈座天使・ソロネ〉です!」
そう、ここ30層のボスは、上位天使である〈座天使〉――〈ソロネ〉だ。
これまでの30.5層では連型だったが、〈聖界ダン〉では30.5層はいきなり大型が登場する。もちろん 単体 ( ソロ ) だ。
プレイヤーの間では「もしかして、〈ソロネ〉だから〈ソロね〉、ということなのか?」「あの開発陣ならありうるな」とか勘ぐられていたっけ。
もちろん真相は迷宮入りである。
「オオオオオ」
「下って来るぞ! シエラ、シャロン!」
「! ――『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「ふええええ!? 突っ込んで来た!? 『ゴッドオリハルコンランパート』!」
これにはみんながビビったことだろう。
〈座天使・ソロネ〉は〈火車〉のシンボルを持つと言われている天使だ。
その姿は女神を思わせる女性型。まるで幾何学模様の輪みたいなものに座っており、それがこの〈ソロネ〉の〈戦車〉である。
そう、〈ソロネ〉はなんと〈戦車〉の使い手なのだ。
そして幾何学模様の輪を立ててこっち側に向けると、なんと100メートル以上ある祭壇から駆け下りてきたのである。まるで坂を下るように。
どう考えてもやべぇスピードが出まくっているタイヤが、遥か100メートル上空から転がってきたと言えば想像しやすいだろうか? しかもそれ、40メートル級のタイヤなんだ。
「全員回避ーーー! エステルはシャロンを頼む!」
「承知しました!」
「シエラすまん!」
「きゃ!」
当然のようにシエラとシャロン、渾身の〈六ツリ〉スキルにぶつかったかと思うと、ほんの少しの拮抗で破壊してきたのである。
「「「「きゃーーー!」」」」
「シエラのあれが壊されるとか、初めて見たわ!?」
ラナも驚く超強力攻撃。
これが〈座天使・ソロネ〉の初手。
『100メートル 直滑降 ( ちょっかっこう ) 火車突撃 ( かしゃとつげき ) 』だ。
ぶっちゃけ受け止められない攻撃の代名詞。
シエラの『 破壊 ( ブレイク ) 無効』効果付きの『アブソープション・ワン・フォートレス』すら力任せにぶっ壊す、ただただ攻撃力の高い攻撃なのだ。威力もお察し。
これのせいで初手で壊滅するプレイヤーが後を絶たなかったほどの初見殺しである。
もちろん俺は知っていたので多少の時間稼ぎを兼ねてシエラとシャロンに壁を出してもらい、俺たちは全員揃って左右に分かれて脱出。
シエラとシャロンの防御スキルをぶっ壊した〈ソロネ〉はそのままズガガガガガガという凄まじい音を出しながら通り過ぎて行った。
「ゼ、ゼフィルス」
「大丈夫だったかシエラ?」
「ええ。私は大丈夫よ」
ちなみにシエラとシャロンはスキル硬直があるため俺とエステルで抱っこして連れてきている。お姫様抱っこだ。
腕の中のシエラはすまし顔だが少し赤くなっているように感じた。
「下ろすぞ」
「…………もう少し」
「え? なんだって?」
「……いえ、なんでもないわ」
シエラが何か小さい声で呟いた気がしたので聞き返したが、何もなさそうなので(?)下ろして状況を確認。
「被害状況は!」
「50人全員無事ですわ!」
よし、逃げ遅れたメンバーはいなかったらしい。さすが〈エデン〉のメンバー。
あの突撃を見ればみんな逃げるよなそりゃ。神々しさに魅入りすぎて動けなかったメンバーも居なかったようで安心。いや、マジでちょっとドキドキしたよ。
「オオオオオ」
「こいつは〈戦車〉使いだと思え! 直線上にいると轢かれるぞ! 正面ばかりじゃなく、常に左右へ飛び回避できるよう心を備えておくんだ!」
「〈戦車〉! 全体に通知しますわ! 『マルチコネクトネットワーク』!」
ちょうど運良くリーナが近くにいたので、向こう側へ逃れたメンバーも含めて指示を飛ばしつつ対峙する。
「〈戦車〉……〈戦車〉ね! そういうことなら問題無いわ! どれだけ〈戦車〉を使ってきたと思ってるの!」
「はい。〈戦車〉対決とあれば、負けるわけにはいきません」
おっと〈エデン〉メンバーには〈戦車〉と聞いてなにか負けられない要素でもあったのだろうか?
なんだか全体がやる気に満ちあふれてるぞ?
「オオオオオ!」
「来るわ!」
「〈戦車〉相手なら、〈戦車〉特効持ちの私に任せるっす!」
「さっきよりもだいぶ遅くなってるわよ! 『大聖光の無限宝剣』!」
「タンクみんなで受けるよ! 『主の盾』!」
旋回して戻ってくる〈ソロネ〉だが、ラナの言うとおり、そのスピードはだいぶ落ちている。さすがにあの直滑降の加速を維持することは難しいようだな。
だからだろう、タンクメンバーがシエラ以外総出で盾を張り、〈ソロネ〉を抑えに掛かったのだ。ついでにラナの宝剣がザックザク刺さる。
「止めた!」
「ナイス! 攻撃開始だ! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「『チャリオット・クラッシャー』! 『グロリアス・ロールオーバー』っす!」
なんとタンクたちはみんなの力を合わせて〈ソロネ〉を止めてしまったのだから凄まじい。
あの初手の攻撃を見て怯んでないメンバーが頼もしいぜ!
隙を突き、俺が『聖剣』系で動きを止めれば、ナキキが【破壊王】のスキルで〈戦車特効〉をぶっ放し、さらには横転させに掛かる。
「オオオオオオ」
「〈乗り物〉で来たのが不運だったっすね!」
「ナキキがひっくり返したぞ!! 総攻撃だ!」
結果、なんと〈ソロネ〉は横転。本体が後ろ向きに倒れる形で幾何学模様の輪も倒れ、ダウンを奪ったのだ。40メートル級を転ばせるなんて大したものだ。ナキキの気迫を見た気がするぜ。
ここで総攻撃を叩き込むと、流れがこちら側のものになる。