第1909話 目指せLV100!〈万界ダン〉は追想ダンジョン!
第1909話 目指せLV100!〈万界ダン〉は追想ダンジョン!
「ゼフィルス! 次は〈万界ダン〉よね! 早速行きましょうよ! ゼニスの力をそこで遺憾なく発揮してもらうのよ!」
「クワァァァァァ!」
ラナの言葉にやる気を漲らせるようにゼニスが咆哮をあげる。
最上級ダンジョン、ランク3〈聖界ダン〉の次は――ランク4〈万界ダン〉だ。
〈聖界ダン〉のレベルキャップに到達してしまった俺たちは、レベル上げや新たなダンジョン攻略を求めて、次は〈万界ダン〉攻略に乗り出すのが筋道となる。
だが、懸念もあるのだ。その懸念を俺が知っていたらおかしいので、さてどうしよう?
「シエラさん、どうでしょうか? 私もラナ殿下に賛成です。ゼニスもやる気十分な様子ですし」
「そうね。どのみち次はランク4ダンジョンに向かわなくてはいけないもの。もうすぐテスト期間に突入するけれど、ダンジョン週間中に30層までなら攻略できるかしら?」
ん? おかしいな。アイギスが俺よりもシエラに今後のことを尋ねている気がする。俺に尋ねてもいいんだよ?
「私、〈万界ダン〉に行ってみたいな!」
「うん! LV100! もうLV100がすぐそこだよ!」
「ダンジョン週間中にLV100になれる可能性。私も是非行きたいな」
「ぼくも前人未踏のダンジョン、そしてLV100の領域を見てみたいね」
「LV100か~。まさか私がそんなあと1歩のところまで来られるなんて~」
サチ、エミ、ユウカ、ニーコ、カイリの順に〈万界ダン〉に行きたい賛成組が手を上げる。
他のメンバーもほとんどが賛成に手を上げ、どうやらみんな、LV100が目の前に来て興奮しているようだ。なにせ、人類の頂点だからな。
「ゼフィルス?」
「ゼフィルスさんは、気乗りしませんか?」
そんな中、賛成に珍しく手を上げない俺を訝しんだのか、シエラとアイギスが尋ねてきた。
そうだな、みんな行きたいのなら、まずは行ってみようか!
「よし、決めた! 賛成多数により、〈エデン〉はこれから、〈万界ダン〉に行ってみることにする!」
「「「おおー!」」」
「だがこれだけは留意してほしい。人類の頂点たるLV100。それほど簡単に上がらせてくれるのかと!」
「「「!?」」」
「つまり、ゼフィルスは〈万界ダン〉に懸念があるのね? これまで――簡単とは言えなかったけれど、誰1人戦闘不能者を出さずにこれまでやってこられた。もしかしたらそれが次は崩れる可能性があると?」
「そこまでは言ってないさ。だが、似たようなことがあることも、十分心に構えていてほしい! 俺の『直感』さんが言っているんだ。次は危ないってな」
「「「!!」」」
俺からそんな言葉が出るとは夢にも思わなかったのだろう。
今までどんな困難があろうとも突破してきた俺たちだ。戦闘不能者だってシエラの言う通り、〈エデン〉や〈アークアルカディア〉組からは出したこともない。
だが、次のダンジョンでは何かが起こる。かもしれない。
それまでLV100目前、次も勝ってLV100になってしまうのだ、っと思っていたメンバーたちは浮かれた気持ちが吹っ飛んだように気を引き締めたのを感じた。
よし、これなら〈万界ダン〉のあの最初の難関(?)も乗り越えられるだろう。多分。
シエラは大丈夫かな?
だが、やはりみんなの〈万界ダン〉へ行きたいという要望に応え、俺は次に入ダンするダンジョンを〈万界ダン〉へ決めたのだった。
◇
「いやはや、中途半端な時間に申請が来たかと思ったら、次はランク4に向かうのかい? 豪毅だね~」
「〈聖界ダン〉のレイドボスを〈竜笛〉を使って周回したら早々にレベルキャップになってしまいましたので」
今居るのは最上級ダンジョンのあるダンジョン門。
―――〈ダンジョン門・最上級伝〉通称:〈 最上 ( さいじょう ) ダン〉だ。
〈聖界ダン〉から戻って来た俺たちは即でケルばあさんに来てもらい、〈万界ダン〉に潜る手続きを踏んでもらっているところだった。
「そうかいそうかい。あんたたちには最上級ダンジョンですら生ぬるいってことかねぇ。みんな、綺麗なもんさ」
「ありがとうございます」
ケルばあチェックで目が光る。
だが、その結果は白。
つまり、問題無しだった。シエラがホッと1つ息を吐き、ケルばあさんにお礼を言う。
俺が驚かせていたからか、ケルばあチェックに耳を傾けていたメンバーが多かったようで、みんな安堵していた。果たしてそれがどこまで持つか……。
「よし、手続きが済んだよ。これで〈エデン〉は〈万界ダン〉へ入ダンできるようになった。行ってきなさい」
「はい! ――それじゃあみんな準備はいいか! これから行くのは最上級ダンジョン、ランク4――〈 三千 ( さんぜん ) の 万界 ( ばんかい ) ダンジョン〉だ!」
「「「「「おおーーー!!」」」」」
「それとみんな、約束してほしい、厳しければ撤退もあり得ると! 俺が撤退を表明したらすぐに引き上げることを!!」
「「「「「!?」」」」」
過去、俺が撤退なんて言葉を使ったことは無かった。厳密に言えばあったが、ダンジョンからの撤退は初めての発言だ。
さっきの言葉もあって、多くのメンバーが目を見開くほど驚いている。
「なによゼフィルス、今回はずいぶん弱気じゃないの!」
「それほど、何かがあるということ、なのね?」
「ああ。俺の『直感』さんがそう言っている。故に今回の入ダンは攻略ではない。まずは調査とするぞ!」
「それ、いつもとどう違うのよ?」
「…………」
俺が慎重論を唱えたら、ラナからツッコミが入った。
考えてみたら、いつも調査から入っていた気がする。報告書を書きたかったしね。
「こほん。それじゃあいつも通り行こうか!」
「「「おおー?」」」
こうして俺たちは〈万界ダン〉に入ダンした。
◇
「え? ここは……」
「見たことある、ダンジョンね」
「見たことあるって言うか、ここ〈初心者ダンジョン〉……じゃないですか?」
――〈三千の万界ダンジョン〉。
そこに入ダンしたときのみんなの反応は、既視感。
周囲は何もない草原が広がっており、一本の道が敷かれているだけの簡単な作りのダンジョン。
このダンジョンを、俺たちは、俺たち全員が知っている。
カグヤの言う通り、〈万界ダン〉の1層は〈初心者ダンジョン〉と酷似していたのだ。
「え? え? どういうことなの!? みんなここのこと知ってるの!?」
「ああ、クイナダは転校生でやがりましたね。実はここ、本校の〈初心者ダンジョン〉に作りがそっくりなんでやがりますよ」
さっき全員が知っていると言ったな。あれは嘘だ!
いや、ちょっと訂正させてくれ。そういえばクイナダは知らなかったな。
「あ! あれは、〈モチッコ〉ですの! 第一モンスターは〈モチッコ〉系ですのー!」
「それって〈初心者ダンジョン〉の1層と同じじゃねぇか!」
ここでサーシャが第一モンスターを発見!
それは〈モチッコ〉系列のモンスター。
ゼルレカが言ったように、〈初心者ダンジョン〉の最初のモンスターは、〈モチッコ〉だった。懐かしい。
だが、ここに居た〈モチッコ〉は、あの〈初心者ダンジョン〉に出た 並 ( ただ ) の〈モチッコ〉とは全く変わっていた。
「「「「モッチモチー!」」」」
「でっかー!! 1体10メートルくらいはあるよ!?」
「大きすぎて最初は〈モチッコ〉だって分からなかったですの! それが4体!?」
「私のチーちゃんより全然大きいんだけど!?」
「『看破』! あれは〈アルティメットモチモチモチッコ〉というそうです!」
「〈モチッコ〉系統の最終進化系の一種だ!」
その〈モチッコ〉はデカかった。
デカすぎて最初はモンスターじゃなくてオブジェクトか何かと思ってしまうくらいには大きかった。動くまで誰も気が付かなかったくらいだしな。
フラーミナの〈アルティメット 心折 ( しんせつ ) モチッコ〉のチーちゃんは7メートルくらいだから体格負けしている。
だが〈モチッコ〉系列は打撃に弱い。
驚きはしたが所詮1層のモンスター。ミジュやラウがサクッと倒して終了だった。
ドロップは――〈アルティメット餅米10キロ〉。凄く凄い。
そして次に出てきたのは――〈ラビット〉系列。
10メートルに迫る〈ウルトラチョッパー・ホーンラビット〉だった。
角が鎌になっている。刃渡りだけで5メートルくらいのそれを頭から角の代わりに生やしているやべぇ兎だ。
「覚えていますわ。〈初心者ダンジョン〉の2層に登場したのは、〈角無しのホーンラビット〉でした!」
「ああ、肉が美味かったな」
つまり〈ラビット〉系列も〈初心者ダンジョン〉に登場したということだ。
〈初心者ダンジョン〉はあと、3層で〈ウッド〉系列や、4層で〈コケッコー〉系列も登場したな。
それを証明するように、次に登場したのは――〈エンシェントリンウッズ〉と、〈 鶏鳳凰 ( コケッコホウオウ ) 〉だった。
共に〈ウッズ〉系列と〈コケッコー〉系列の最終進化系だ。
ドロップは〈最高級木材〉と〈鳳凰の卵〉だった。これ市場に流しても良い感じの素材なのかな?
階層門を見つけたので2層に入ると、そこに草原はなく、なんとジャングルが広がっているのが見える。
これも見たことがあった。
初級下位ダンジョン――〈 熱帯の森林 ( ジャングル ) ダンジョン〉に瓜二つだったのだ。
もうお分かりいただけただろう。
〈三千の万界ダンジョン〉は別名――〈追想ダンジョン〉とも呼ばれたこともある、今まで攻略して来た学園ダンジョンの強化版が体験できるダンジョンなのだ。