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第1911話 〈万界ダン〉は恐ろしい。ホラーも突然来るよ

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第1911話 〈万界ダン〉は恐ろしい。ホラーも突然来るよ

今のところ順調。

2層のジャングルでエリアボスの〈クマアリクイ(最終形態)〉を屠った俺たちは――ついでだからエリアボスの〈フルート〉をサティナさんに吹いてもらって全員が1度は戦って狩りまくり、ウォーミングアップを終えて再出発することにした。

3層で登場したのは巨大な整地された石橋の洞窟。 初級下位 ( ショッカー ) の1つ、〈石橋の廃鉱ダンジョン〉のフィールドだった。10メートル級の様々な鉱石系の〈ゴーレム〉がいっぱい出たが、俺たちの敵では無かったな。

4層で登場したのは地下水がこれでもかと広がる洞窟。 初級下位 ( ショッカー ) の1つ、〈静水の地下ダンジョン〉のフィールドだった。ここは正直、モンスターよりもフィールドの方がやっかいだ。なにせ地下水が広がっているからな。

道幅は狭く、地下水から10メートル級のイグアナ系モンスターが飛び出して襲い掛かってくる。

まあ、〈竜ダン〉で溶岩までコチンコチンにしたサーシャが居たので余裕で通過したが。

5層で登場したのは広大な草原。 初級中位 ( ショッチュー ) の1つ、〈野草の草原ダンジョン〉のフィールドだった。登場するのは〈ゴブリン〉系。

最上級の〈ロード・オブ・ゴブリン〉や、〈クイーン・オブ・ゴブリーン〉、〈カイザー・ボルト・ゴブリン〉に〈アルティメットヒーローゴブリン〉などが道中でも登場し、なかなかの戦力で襲い掛かってきた。もちろん全て撃破した。

「さっきから気になっていたのだけど。やっぱりあれが守護型ボスよね?」

「だな。きっとあそこに階層門があるに違いないぜ?」

そしてここの守護型ボスは、忘れもしない。ゴリゴリマッチョに王冠とマント、右手には剣、左手には杖を持つ 杖剣 ( つえーけん ) スタイル。

〈エンペラーゴブリン〉。いや、その最上級バージョンだった。

遠目に見える巨体、それはこのフィールドの守護型ボス――〈 国落 ( くにおとし ) の 災厄 ( さいやく ) ・ヘルデザート・スペード・エンペラーゴブリン〉だ。

間違いなく、〈野草の草原ダンジョン〉のレアボスだった〈エンペラーゴブリン〉の最終進化系である。

全長20メートル級はあろうかという、でっかくなっちゃったなぁというゴブリン。

でもなんとなく、久しぶりだなと声を掛けたい衝動に駆られたよ。

そんな〈エンペラーゴブリン〉を遠目に見ながら、俺たちは別のことを話していた。

「このダンジョンのこともなんとなく分かってきましたわね」

「さすがリーナだ。頼りになるな!」

「リーナじゃなくても分かるわ! ここはあれでしょ? 本校にあるダンジョンが強くなって再登場しているんでしょ?」

「ラナが的確に表現してる!?」

「どういう意味よ!」

「ラナはいつも俺の欲しいセリフを言ってくれるな~っと、そういう意味さ」

「も、もう~。そういうことならいいわ! ゼフィルスはもっと私を頼りにすべきなのよ!」

「なに言ってんだ、ラナは頼りにしてるぞ? これ以上ないくらいにな!」

「どうしてですの? わたくしと会話し始めていたゼフィルスさんが、気が付けばラナ殿下に取られていましたわ……!」

ラナだけじゃない。大体のメンバーは察している様子だ。

この〈万界ダン〉は別名〈追想ダン〉。

今まで体験したダンジョンやそのモンスターがパワーアップして再登場するダンジョンだ。

しかし、それを聞いて少し顔色が悪くなっているメンバーもいるようで。

「ねぇゼフィルス、ここって初級ダンジョンを追想するダンジョン、なのよね?」

「初級だけとは限らないぞ、もしかしたら中級も、上級も追想するかもしれない」

「……もしかしてなのだけど、中級以降も追想するということは、今まで避けていたあのダンジョンが出現する、ということではないかしら?」

あ、シエラが気付いた。

5層で早くも気が付くとはさすが、お目が高い。

いや、〈エンペラーゴブリン〉をでっかくしちゃったこれを見れば、察するにあまりあるか! でも6層辺りで気付いたシエラもちょっと見たかったのは内緒。

〈万界ダン〉は何度も言うように、本校のダンジョンを追想する。

じゃあその規模は? どこからどこまで登場するのか?

この〈迷宮学園・本校〉のダンジョンは――80個。

初心者ダンジョンが1。

初級ダンジョンが9。

中級ダンジョンが30。

上級ダンジョンが30。

最上級ダンジョンが5。

エクストラダンジョンが5。

計80で構成されている。

ちなみにアリーナもダンジョンの一部ではあるが、あれは完全に制御下にあるのでこの80には含まれていない。攻略者の証もくれないしね。

話を戻そう。

ではこの〈万界ダン〉ではどのダンジョンまでが追想されるのか?

10個? 20個? それとも30個? もしくは全部?

シエラが懸念しているのは――全部。

思い出してほしい。俺たちは全てのダンジョンを攻略してきたのか?

答えは否。

実は避けていたダンジョンというものが存在する。

言うまでもないかもしれないが敢えて言おう!

それは――― 幽霊 ( ゴースト ) やアンデッドモンスターの登場するダンジョンだ!

うちのタンク最強、シエラが苦手なダンジョンである。

特に中級や上級はなぁ。下位、中位、上位、で各10ダンジョンずつあるだろう?

それだけあると、10ダンジョンのうち1つくらいはホラーダンジョンが存在するんよ。今まではそんなダンジョンに敢えて潜らずとも、他のダンジョンの攻略者の証をゲットすれば先に進めたので全く問題無かったが、ここは別。

必ずホラー系のフィールドを通らなければならない。

そこにシエラは気が付いてしまったのだ。

まあ、この調子でいくと、次の階層は〈デブブ〉たちの登場する〈幽霊の洞窟ダンジョン〉だからね。シエラなら気が付くよね。

だからこそ、敢えて言おう。

「そうだな。このまま進めばどこかの階層はホラー系フィールドになっている可能性が高いだろうな。特に次の6層とか、順番的に〈 幽霊 ( ゆうれい ) の 洞窟 ( どうくつ ) ダンジョン〉の可能性が――」

「戻りましょう」

「「え!?」」

「決断 早 ( はっや ) っ!?」

シエラの決断は早かった。

きっと心の準備もままならないのにこのままホラーフィールドに突入することを考えて足が竦んだのだろう。

さっきまでかっこよく〈クマアリクイ(最終形態)〉を盾で受け止め、受け流し、横っ面をメイスで殴ってダウンを取っていた勇ましいシエラの姿は無かった。

最上級のホラー、いったいどういうところなのか。

シエラってそういえば中級のホラーまでしか体験したこと無かったんだっけ。

考えるだけで恐ろしいと言わんばかりの顔だった。

「ゼフィルス。準備が足りないわ」

「お、おう。そうか? そうかもしれないな」

「ええ。ここまで1階層ごとに環境がガラッと変わるダンジョンだもの、準備は多く必要よ。戻ることを推奨させてもらうわ」

「シエラさんが戻ると言いだすなんて!」

「こんなことは初めてよ。いえ、結構あったかしら?」

「ですが、確かにシエラさんの言葉には一理あります。この〈万界ダン〉が全てのダンジョンを模しているのだとすれば、それは全てのダンジョンの対策を持ってくる必要がある、ということですわ」

シエラの懸念にリーナとラナも一度は面食らうが、リーナが考え直したな。

リーナの考えも尤もで、もし全てのダンジョンを模しているのだとすれば、全ての対策を持ってくる必要がある。

今の俺たちの装備にプラスし、例えば上級下位ダンジョンで登場した救済アイテムのようなものが必要になるかもしれないと、リーナは考えた様子だな。

その考えは――ぶっちゃけ合っている。

だが、一部考えすぎでもある。

ここまで階層を進んできて気が付いたかと思うが、このダンジョンは1階層毎に丸々別のフィールドに変わるのだ。つまり、その階層をスキップしてしまえば回避できたりする。ホラー系フィールドになったらスキップしちゃえばいいのである。

え? 階層ってスキップできるの!? できるんだなぁそれが、カイリのユニークスキルで。しかし。

「ん? ですがカイリさんの――――」

「おおっとリーナ、それはちょっと待ってもらおうか」

「むぐっ!?」

リーナも気が付いたらしいが、俺はそれにちょっと待ったを掛けた。

具体的には、リーナの口を物理的に手で塞ぐ。

「ちょ、ゼフィルス何やってるのよ!」

「ゼフィルス?」

「ははは。――リーナ、その話はまだ内緒で」

「え、ええ。分かりましたわ」

ラナがぷんぷん、シエラが特大のジト目になって詰め寄って来たけれど、なんとか誤魔化したんだぜ。リーナと2人になったところでさっきの話を再開する。

「ゼフィルスさん、でもなんで内緒にされたのですか? カイリさんに頼めば階層を飛び越えることができますわよね? 確かに、危険は伴いますが」

「ああ。俺もどうしてもダメならカイリのユニークスキルを使おうとは思っていた」

「?」

「実はな、その前に行きたいところがあったんだ。みんなが次は〈万界ダン〉攻略だ! という流れが強くて言いだしづらかったんだが……今の〈戻ろう、準備をしよう〉という流れは悪く無い」

「ゼフィルスさんの行きたいところですの?」

「ああ。俺は最後のエクストラダンジョン、〈鉱ダン〉に行きたいんだ」