第1913話 ソドガガがしゃべった!? 学園長が旅立った!?
第1913話 ソドガガがしゃべった!? 学園長が旅立った!?
「〈エンペラーゴブリン〉のドロップは、〈竜笛〉と〈竜笛〉だったわね……」
「また笛!? もう〈エンペラーゴブリン〉はどうしてこんなに笛が好きなのよ! もっと出してもいいわ!」
シエラが2つの〈竜笛〉を持ちながら複雑そうに言えば、ラナが目を丸くして、次にはひゃっほーしていた。
なぜか俺とハイタッチ。うんうん、ノリがいいな~。俺もイエーイしておいた。
「確か、前にもあったという話でしたわね」
「おう。あの時も〈エンペラーゴブリン〉は〈笛〉ばかりをドロップしてな~。まさか最上級ダンジョンでも同じことが起こるとか、びっくりだよ」
いや、本当にびっくりした。
これ、毎日俺と戦いに来いっていう、〈エンペラーゴブリン〉からの挑戦状だったりしない?
俺、なんか喜んで毎日〈エンペラーゴブリン〉に会いに来たいんだけど。
「さあ、今日はここまでにしましょう。〈万界ダン〉のことはなんとなく分かったわ。早く帰りましょう」
「まあ待てシエラ嬢、6層を少し覗いてから帰らねば――いや、シエラ嬢はここで見張りをしていれば良いと思うぞ。俺たちでチラッと見てこよう」
「たは!? メルト様が一瞬でてのひら返ししたよ!?」
ショートカット転移陣にすぐにでも乗りたそうなシエラに、メルトが待ったを掛けたようだが、シエラの顔を見た瞬間、即で前のセリフを覆していた。メルトの危機感知能力が高い。
ま、まあね。少しでも情報を多く持ち帰りたいメルトの気持ちも察していただけるとありがたい。
でも、〈野草の草原ダンジョン〉の次って言ったらさ、順番的に〈幽霊の洞窟ダンジョン〉の可能性が濃厚なのさ。シエラができればこのまま帰りたいと思うのも分かる。
ということで一部のメンバーが〈転移水晶〉を手に6層を覗きに向かうことになったのだが。
「思った通り、6層は〈幽霊の洞窟ダンジョン〉にそっくりだったわ! そこら中に〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉系の最終進化系みたいなのがうようよしていたのよ!」
「シエラ殿は行かなくて正解だったかもしれません。アレは苦手な人だと、慣れるのがとても大変そうなダンジョンでした」
行ってきたラナたちの感想がこれだった。
「やっぱりそうなのね……」
あ、シエラが俺に早く帰りましょうと目で訴えてきた。身体が若干震えていて俺の袖をほんの少しだけ掴んでいる気がするのは、きっと俺の目の錯覚なのだろう。よくやった俺の曇りあり 眼 ( まなこ ) よ。
やっぱりカイリのユニークスキルでスキップできる話はシエラにはまだ内緒にしておこう。
「よしみんな、今日は帰るぞ!」
「「「はーい!」」」
こうして最初の〈万界ダン〉調査は終わった。
◇
「みんな、ここは一度脇に逸れ、〈鉱ダン〉に行ってみないか?」
「賛成よ」
「ちょ、シエラ? 賛成が早すぎない!?」
「……気のせいよ」
翌日の朝、いつもの〈エデン〉のギルドハウスで俺は例の〈鉱ダン〉へ行くことをメンバーに提案していた。ブリーフィングだ!
根回ししていたことが一瞬でバレるほど即で賛成に回るシエラにラナがツッコミを入れているな。
普段なら「ゼフィルス、なにか訳があるのね?」とか言って話を進行してくれるはずのシエラが今日は不在な件。いや、俺の横ですまし顔で立ってるけど。
「ええっと、もちろん〈鉱ダン〉に行きたいのには理由がある。みんな聞いてほしい」
そう言って自分で進行役を務めつつ、昨日リーナたちにも言った〈オリハルコン〉を取りに行こうぜ、という話を聞かせる。
「それは大賛成や!」
「腕が鳴るわい!」
「ソドガガが喋った!?」
これに真っ先に賛成したのはアルルとまさかのソドガガ。
よほどのことがない限り喋ることのないソドガガが喋ったことでモナも目を丸くしてびっくりしていた。
「普段はブリーフィングの参加を免除されているのに、今日は出てほしいって頼まれたからなんやと思おたら、こういうことかいな! ――みんな聞いてほしいで! 大事な大事な装備の話や!」
「いいぞアルル、是非前に出てきてくれ!」
燃えるアルルに前へ来てもらい、俺の横で重大なことをメンバーに説明しまくるアルル。
「ちゅうわけで、レジェンドレシピに書かれた〈オリハルコン〉系の鉱石が全く、どこを探しても手に入らんのや! 〈採集無双〉にも聞いたが激レア鉱石すら〈オリハルコン〉とは別の鉱石類、ランク4でも手に入らんとなると可能性があるのはランク5か、もしくは〈鉱ダン〉の奥、未踏破区域くらいや!」
うむうむ。
みんなの装備を作ってくれているアルルの言葉だ。
要約すれば、このままだとみんなの装備が作れない。素材採ってきてくれ! である。〈オリハルコン〉は本当、最上級ダンジョンのランク4でも手に入らないので、アルルがやきもきしているのだ。
実際〈オリハルコン〉は〈鉱ダン〉の奥、もしくはランク5の〈神界ダン〉でしか採れないのだが、〈鉱ダン〉の方がいっぱい採れるし、〈神界ダン〉は難易度が無茶苦茶高いので行く前にできるだけ準備したかった形。
故に、このタイミングで〈鉱ダン〉に行きたかったのだ。
「知らなかったっす。確かアルル先輩が最新の装備を作らないのはLV100になるまで待ってるからって聞いたっすが」
「それも含んでるで。うちのLVは今93。もうすぐ人類の到達点や。おそらく、〈オリハルコン〉さえ大量に回してもらえばいける気がすんねん!」
「というわけだ。〈鉱ダン〉に行き、〈オリハルコン〉を手に入れ、アルルのLVを100にすれば――」
「最強の装備が作れる、というわけね」
「その通りだ! 上級上位 ( ジョウジョウ ) で揃えたみんなの装備も、能力値的にそろそろ世代交代。みんな、〈鉱ダン〉に行き、最強装備を手に入れようじゃないか!」
―――おおおお!!
俺がグッと熱く宣言すれば、流れが完全に最上級ダンジョンの攻略から、最強装備集めに向く。
よし、〈万界ダン〉攻略を途中で打ち切る形にはなるものの、みんなこっちがいいとしっかり分かってくれたようだ。
〈採集無双〉からの説得も効いたな。
というか、ソドガガの熱も半端なかったのだ。
ソドガガ、君そんなにしゃべれたの!? ってくらい熱く語ってたからな。
最上級ダンジョンでは鉱石類の産出量が甘いと前々から言っていて、アルルからのプレッシャーもあったのだろう、〈オリハルコン〉をずっと求めていたのだ。
前にそんなソドガガを元気づけるために〈鉱ダン〉に行く約束もしていたし、今がそれを果たす時だろう。
最終的に賛成多数で可決。
〈エデン〉は、最後のエクストラダンジョン、〈鉱ダン〉へ向かうことが決定したのだった。
◇
「え? コレット君、スマンが最近耳が遠くなっての、もう1回言ってもらえないかのう?」
「耳、ですか。蘇生茶飲めますかね?」
「ち、違うぞ!? 耳の話じゃなくて今さっきコレット君がしてくれた報告を今一度聞きたいという話じゃ! あと、耳は蘇生茶は飲めんからの!?」
ここは学園長室。
いつも通り忙しそうな学園長がまたなにか報告を受けていた。きっと〈エデン〉絡みだろう。カイエンも背筋を伸ばしているが、仕事はストップ状態だった。
「もう1度報告いたしますね。〈エデン〉は〈万界ダン〉に入ダン。その時の簡易的な報告が上がってきました。ゼフィルスさんは、これを別名〈追想ダン〉と命名しておりまして、詳しくは別紙の通り、5層まで調査したそうです。ですが〈エデン〉はそこで装備の更新が必要だと判断、〈鉱ダン〉の奥地へ向かうとのことで申請がありました」
「…………カイエン君」
「なんでしょう学園長(え? こっちに振るの? お願い振らないで!? 学園長なんとかして!?)」
「〈エデン〉がまたパワーアップしちゃうのじゃ」
「そうですね。いったいどこまで行くのやら(雑談かな? ただの雑談だよね?)」
「それともう1つ報告ですが、ゼフィルスさんから、〈エデン〉の全員のLVが95に到達したとのことです。もし〈鉱ダン〉の奥地のレベルキャップがLV100だった場合、〈鉱ダン〉攻略の際に前人未踏、人類の頂点であるLV100になって帰ってくる可能性もあると」
「…………カヒュン」
「ああ学園長! お気を確かに!」
「が、学園長ーーー!!(また学園長が旅立っていったーーーーー!! 学園長カムバーーーック!!)」