LNCrawler

第1936話 アルルの挑戦。LV100になって作る最初の装備!

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第1936話 アルルの挑戦。LV100になって作る最初の装備!

「多分1000個くらいは入ってると思うよ?」

「超希少どころか、もうなんて表現したらええか分からへんほどの最上級鉱石が量産品みたいにつまっとるんやけど?」

ハンナのほんわかしたセリフに目を丸くするアルルがこっちに振り向くが、それがハンナだ。

「気持ちは分かるぞアルル。だがそれを作る度にハンナはMPを全消費しているのを忘れてはならない。だから普段なら1時間とかぶっ続けで大量生産するハンナが、1回1回、コツコツと作らなきゃいけなかったくらいだ」

「うん。1回1回回復しなくちゃいけなかったし、〈アルティメットエリクサー〉を飲み過ぎるとお腹もたぷたぷになっちゃうからそんなに飲めなかったし、これだけの数を作るのも大変だったんだよ?」

「いや。理解はできるんやけどなハンナはん、多分普通は大変だったんだよ? じゃすまん気がするんや」

さすがはアルル。生産職の頂点の一角たる生産7人衆の1人。

ハンナは俺の最強育成論の通りにレベルをカンストまで持っていっている。それでも大変なのだ。

つまり普通なら大変じゃすまない。

アルルはよく見えていた。

ちなみに〈アルティメットエリクサー〉も普通のポーションと同じで1本30ccくらいの少量だが、1回で出来る〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉は20個が限界らしく、1000個も作るためにそこそこの量の〈アルティメットエリクサー〉を飲んだらしい。

「まあ細かいことは良いじゃないかアルル! ――ハンナ、〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉をこんなに量産してくれて、ありがとうな。まだまだ作ってもらうことになるけど大丈夫か?」

「うん。普段の作業は『MP回復速度特大上昇LV10』装備を身に着けているからできるし、休憩の合間にMPが全回復したらコツコツ作っておくから大丈夫だよ」

「御安心くださいゼフィルスさん、ハンナさんはこのアルストリアと」

「シレイアでしっかり見張っておきます!」

「助かるぜ」

「見張ってるってどういうことかな2人とも!?」

つまりはハンナが無理をしてそうなら止めてくれるブレーキ役ということだ。

安心度が違う。

「それじゃ、次はいよいよアルルの番だな。アルルの工房に行くか」

「おっしゃ! 今度は油断はせいへん。うちもハンナはんの頑張りに報いるため、最っっっ高の装備を作りあげたるで!!」

「頼もしい!」

アルルの工房へと移動する。

中に入れば、まず目に入ってきたのは豪華な、それはそれは豪華な炉だった。

清廉潔白を思わせる白。焦げ1つ付着しておらず、神聖な炎をその身に灯してそうな鍛冶専用の炉だった。

これは〈 鍛冶炉 ( かじろ ) ・ 神炎 ( かみのほのお ) 〉。

〈鉱ダン〉の最奥レイドボス、〈クリスタルドラゴンゴーレム〉、通称〈ドラゴレム〉からドロップしたアルルの【 神炎 ( しんえん ) の鍛冶王】専用の、最高の鍛冶専用アイテムだった。

さらに〈ドラゴレム〉を周回したことで手に入れた、金床、ハンマー、鍛冶ばさみなどを含む〈 神鉱 ( しんこう ) の鍛冶セット〉が並んでいる。

「火を移すで」

短くそう言ったアルルが、炉にある小さな窓を開けると、そこで神聖な炎が燃料も無く燃えていた。

アルルはそこから少しだけ火を貰い、炉の大口に 焚 ( く ) べると、一気に炉の中に火が灯ったのだ。

あの小窓の中に入っていたのは、永遠に消えない神の炎だ。その火で鍛えられたものは神の祝福が与えられると言われている。

まあ実際は最上級の鍛冶炉なので、他の鍛冶炉よりも数段質の高いものができる、というだけだ。

「うん、今日も神の炎は絶好調やな!」

「燃料も無くよく燃えてるよな」

「ちゅうても、炉から出したらすぐ消えてまうけどな」

〈 鍛冶炉 ( かじろ ) ・ 神炎 ( かみのほのお ) 〉は不思議なもので、燃料が無いにもかかわらず火が消えない。それが消えない神の炎を思わせてより神聖に見えるのだ。

さらにこの炎は炉の中でしか生きられず、炉から出すとすぐに消えてしまうという特性があるのだが、アルルは【神炎の鍛冶王】のユニークスキル『神炎を操りし鍛冶の神』を持っているため、少しだけ長らえることができる。それを使わないと窓から大口の炉に神の炎を移すことができない仕組みだ。故に【神炎の鍛冶王】専用。

実際見ると、なんかテンション上がる!

俺が炉を見てテンションを上げている間にアルルはテキパキと準備を進めていたみたいで、数枚のレシピを俺に見せてきた。

「ゼフィルス兄さん、これから選んでくれへんか? うちがなにから作るべきかをな」

「ほう、どれどれ? まずは――やはり短剣辺りからやるのが鉄板じゃないか? 使う鉱石も少ないからな」

「やはりゼフィルス兄さんもそう思うか」

俺の選択はアルルの考えにも合致していたようですぐに採用。

最初は使用する鉱石が少ない短剣――〈 励起 ( れいき ) ・ 聖刃 ( せいばー ) 〉から作製しようと決まる。これは〈聖界ダン〉の最奥レイドボス、〈 熾天使 ( してんし ) ・セラフィム〉を周回中に手に入れた短剣のレシピだった。

アルルが炉から伸びる台座にレシピを乗せると、レシピが光って炉の中の炎の質が変わったように見えたんだ。まさか、レシピ毎に最適な炎、温度を炉が作り出してくれる性能でもあるのか? おお! なんか言ってみたらテンションがさらに上がってきた気がする!

「いくで――いきなり〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉を1つ、投入や!」

使用するのは〈天聖祝福のオリハルコンメタル〉1つ。

インゴットに加工するまでもない。ハンナから昇華してもらったこの素材は、そのまま使える。

そこに〈 熾天使 ( してんし ) ・セラフィム〉の素材をいくつか。それを炉に入れると、聖なる炎に包まれ輝かしいまでに発光して1つになった。

「ここからやな」

「…………」

俺は黙ってまずは見守る。

アルルの鍛冶。

俺はそれを何度も見たことがあったが、ここまで緊張したアルルの姿は初めて見るな。

だが呼吸を整え、目を一度瞑り、そして開いたアルルの目は、凄まじい闘志のようなものが宿っていたんだ。

そこからは一瞬で鍛冶ばさみを炉に入れ、熱された素材の塊を取り出すとハンマーを振り上げるアルル。

「このハンマーに全てを賭けるで! 『フル 炎 ( えん ) 2000連打鍛冶』!!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

まるで削岩機とでも表現すべき凄まじい音が響き渡る。

その正体はアルルだ。アルルが目にも止まらない凄まじい鍜治打を連打していたんだ。

見えるのは燃えるハンマーの残像。

『フル 炎 ( えん ) 2000連打鍛冶』は、まるで震えているかのような残像を残しながら2000回連続でハンマーで打つ【神炎の鍛冶王】の最強技。

1回でMPを2000も消費して打つだけあり、その力は絶大だ。

一応五段階目ツリーの 技 ( スキル ) ではあるものの、【神炎の鍛冶王】の六段階目ツリーはほとんどがパッシブスキルで『フル 炎 ( えん ) 2000連打鍛冶』を強化するためのものなので、実質 これ ( 〈五ツリ〉 ) が最強だ。

まるで永遠に思えた鍛冶打ちだったが、あるときピタッと止まる。

「シッ!!」

瞬間、目にも止まらない速さでアルルが神の炎にまた短剣の形になった素材を入れると、ここでようやく一息吐いた。

「くはっ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、やっぱこのスキル、めっちゃ疲れるわぁ」

「そうだろうなぁ」

めちゃくちゃ残像起きてたし、というか力一杯2000回も打つとか普通なら肺とか爆発してるんじゃないかな? ちなみに、一度研究員の方に本当にこのスキルを使い続けても大丈夫なのかと見てもらったことがあったんだが、実はこのスキル、2000回も打っているように見えて実は400回くらいしか振りかぶってないらしい。1回の打つのに5回分の分身的な要素が加わっていたようだ。なら、大丈夫、なのか?

一応研究員の人は短時間に連続では使わないように、って言ってたけど。

でもなぜか、俺はハンナでこれと同じような光景をよく見たことがあるので、大丈夫そうと思ってしまうんだ。

「ふう、しかし、このスキル使うと鍛冶してる実感得るわぁ」

「めちゃくちゃ叩いてたもんな」

そんなことを言いつつ、アルルは空っぽになったMPを補給するために〈アルティメットエリクサー〉をグビッと飲む。

アルルのMPも2000で止めている。このスキルを使えるようになればMPはそれ以上育てる必要が無いので、後は他のステータスに振ってしまったからだな。

生産職の上級職は、誰しもこの『MP2000消費』級の スキル ( 奥義 ) を持っている。故に生産職はMP2000でストップがセオリーなんだ。

なお、この『MP2000消費』級のスキルがあるから生産職もMPにステータスを振らざるを得ない仕組みだ。そうじゃなければMP上げる装備を着せるだけで済ますよ。

「よし、仕上げや」

アルルの神炎のハンマーに打たれ、〈 鍛冶炉 ( かじろ ) ・ 神炎 ( かみのほのお ) 〉によって神の炎を注入された素材の塊が、良い感じに光ったのを見てアルルはそれを炉から取り出した。

この見極めが大事らしく、炉から出した瞬間、レシピと短剣の形の素材は一気に光りだし――光が収まると素材があった場所には、1つの完成品の短剣が残っていたんだ。

レシピに描かれた〈 励起 ( れいき ) ・ 聖刃 ( せいばー ) 〉と瓜二つ、というか〈 励起 ( れいき ) ・ 聖刃 ( せいばー ) 〉だった。

「俺に任せろ――『解析』!」

〈幼若竜〉を持った俺が『解析』を掛けると、〈幼若竜〉にしっかりとそのステータスが表示されていた。

――――――――――

・武器 〈 励起 ( れいき ) ・ 聖刃 ( せいばー ) 〉(短剣)(最高品質)

〈攻撃力552〉

『 励起爆発 ( れいきばくはつ ) LV10』『短剣 聖刃 ( せいばー ) LV10』『幽霊キラー』『AGI+150』

――――――――――

あ、強い。

もう一瞬で分かった。

攻撃力が〈552〉もある。

ちなみに 上級下位 ( ジョーカー ) のドロップ短剣武器の最高が140くらいだった。

4倍近くあるな。

上級下位 ( ジョーカー ) は最高でLV35が 成長限界 ( レベルキャップ ) だったことを差し引いても凄まじい上昇値だ。

さらにスキルなんか 上級下位 ( ジョーカー ) では3つあれば最上みたいな感じで普通は1つだったが、〈 励起 ( れいき ) ・ 聖刃 ( せいばー ) 〉はスキルが4つもある。

竜の名を持つ〈幼若竜〉と同じスキル数だ。パナイね。

「これが、うちが初めて打った最高の装備……!」

アルルが短剣を手に取り、感動に打ち震えるように声を出す。

「ああ。おめでとうアルル。最高の装備作製は――大成功だ!」

俺はアルルを拍手で祝った。