第2001話 16層は魑魅魍魎溢れるホラーダンジョン!?
第2001話 16層は魑魅魍魎溢れるホラーダンジョン!?
ついに着いてしまったな16層。
〈ダン活〉では10のダンジョンがあれば1つくらいはホラー系ダンジョンが存在する。
初級のホラーダンジョンが6層の〈幽霊の洞窟ダンジョン〉ならば、中級下位ダンジョンでは16層のここがそう。
その名も―――〈 暗森 ( くらもり ) の 魑魅 ( ちみ ) ダンジョン〉だ。
「…………」
この階層門を出てフィールドに出た瞬間、シエラが一瞬で固まったのが分かった。それと他の何人かも。
みんなこの〈 暗森 ( くらもり ) の 魑魅 ( ちみ ) ダンジョン〉がホラーダンジョンだと、知っていた様子だな。
「ゼフィルス」
「なんだシエラ?」
「帰りましょう」
「いや帰らないが!? 今日は20層まで行くって言っただろ? 時間だってまだまだある」
「…………」
シエラが冗談を言うなんて珍しい。いや、シエラにとっては冗談じゃないかもしれないが。
俺は一度咳払いし、空気をリセットしてみんなに告げる。
「あー、もう気付いているメンバーも多いかもしれないが、ここ16層はどうやら〈 暗森 ( くらもり ) の 魑魅 ( ちみ ) ダンジョン〉。 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) が跋扈する、ホラー系ダンジョンの一角みたいだ」
「「「「きゃー!?」」」」
俺が宣言すると悲鳴が上がった。
一部黄色いのも混ざっていたかもしれないが、大体が悲鳴系かな?
見ればこのダンジョン特有の紫の葉をした樹木が並ぶ暗い森のフィールドから、小さな妖怪型モンスターがこっちを覗いていたんだ。
幽霊 ( ゴースト ) 系や悪魔系も居るな。
ちょっと遠くて暗くて分からなかったが、俺の宣言で合点がいってしまったらしい。
「何か見てる! 覗いてるよ!」
「きゃー! ユウっちー!」
「わっぷ。エミ落ち着いて! サチも抱きつかないの!?」
「はわわわわ!? ノエルちゃん、あれすっごい不気味ですー!」
「あははは! もうラクリッテちゃんったら、自分が幻影使うくせに幻覚とか苦手なんだから~」
サチとエミは一瞬でユウカに左右から抱きついてキャーキャー言ってるな。
ユウカも結構 幽霊 ( ゴースト ) 系が苦手なはずだけど、若干ビビリながらも気丈に振る舞ってサチとエミを落ち着かせている様子が微笑ましい。
ラクリッテは幻の狸様たちを操るのに 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) は無理らしい。ちょっとその辺が面白い。
「懐かしいな~。ここでカイムちゃんと契約したんだよね」
「シヅキちゃんだけなんか古巣に戻ってきたくらい和んでるよ!?」
1班のシヅキはさすがの貫禄。トモヨが目を丸くしているな。
ここは悪魔系モンスターが初めて登場するダンジョンでもある。
現在〈 グリード ( 強欲 ) 〉に進化しているシヅキの鳥型悪魔カイムと初めて契約した場所でもあるのだ。
そう思っていると、俺に触れるくらい近づいてきた人物が1人。
「ゼフィルス、私の近くから離れないで」
「なんだかシエラのセリフがいつもと違う意味に聞こえる……!」
普段のシエラなら、ここから「私が護るわ」と大変かっこいいセリフが続くだろうが、今は「ゼフィルスお願い、離れないで、近くに居て、お願い、怖いの……」と続く感じに素早く脳内変換された。
もうシエラを見る目がガラッと変化しちゃいそうなくらい大変なインパクトです!
「おっしゃ俺に任せろシエラ! 1班、3班、5班、7班、9班メンバーは配置に付け! 6層を突破したように他の班を護衛しながら17階層を目指すぞ!」
「「「「おおー!」」」」
「なんだかシエラが護られてるのは新鮮ね! 私に全部任せてなさい! 全て『レクイエム』で光にしてあげるわ! 『レクイエム』!」
「「「アア―――!?」」」
「戦闘開始デース! 『目立ちNINJA見参』! 『真・お命頂戴』デース!」
「パメラ、私たちはラナ様のサポートということを忘れないように。『バースト・フォース・ガン・メイデン』!」
あ、3班のラナが俺たちを木陰から覗いてた 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) の 幽霊 ( ゴースト ) を光にしたな。ここでもラナが超特効だ。残った悪魔系を素早くパメラとシズが処理する。パメラがキラッと目立つ光を放ってヘイトを奪うと、そのまま刀で斬りつけているな。シズが深入りしないよう注意を促しながら手に持った両手銃と宙に浮いた自在銃二丁で牽制していた。
だが、ここからが本番。
魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) は複数形を差す総称名。だからか知らないが、ここではやたらとモンスターとのエンカウント率が高いのだ。要は次から次へと森から 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) がやってくる。
あ、いっぱい来た! しかし。
「みんな光になりなさい! ――『神の天誅』!」
ラナがズドンして光にした。
まだ名前も判明していない 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) なモンスターたちに南無と祈ったんだぜ。
ほら見ろ。せっかく〈幼若竜〉を構えたのに、射程内にモンスターが入る前に殲滅されるせいでエステルが棒立ち状態になっちゃってんじゃん。
「良いのかエステル?」
「ふふ、構いませんよ。私の攻撃はあまり〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉には効きませんし、パメラやシズの方が効果的にラナ様から目を逸らしてくれます。それに、『看破』する機会はまだまだありますから」
「そうだなぁ」
「あなたたち、よくあれがどんどん森から出てくる様子を見て冷静で居られるわね」
エステルと話してたら真後ろからジト目の気配……!
なにしろ今のシエラは俺が 護ら ( 近くにい ) ないといけない存在だからね。
もう背中にジト目が至近距離で直撃して大変だよ!
でもシエラが震えているような気配も感じ取れている。いつものジト目の圧よりも今日は力が弱い気がするんだ。くっ、シエラのジト目を弱めてしまうなんて、なんてモンスターたちだ! 俺が直接行って聖剣で成敗したい!
「んん!? 『エリアボス探知』! も、もうエリアボス来たよ!」
「ここのボスは、なんだっけ?」
「ここのボスは 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) を従えた〈 魑魅 ( ちみ ) 徒 ( と ) 公 ( こう ) 〉だ」
「魑魅と公? ちみとこう? ちみと――」
「おいラウ、なんかルキアがループしてるぞ? なにを教えたんだ?」
「いや、ボスの名を教えただけだが……」
「来ます!」
「チーミー!」
「チーミーって言ってる!?」
「さっきからボスの鳴き声が少しおかしいですの!」
「巨大な風船みたいな妖怪ね! いえ〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉なのかしら?」
「ですが、周りの眷属たちが凄まじい数ですね。まさに妖怪大決戦もかくやですよ。――『看破』! ボスの名は――〈デスパレード・ボムストーム〉です!」
「あれ!? 中級下位 ( チュカ ) のボスの名残が欠片も残ってないよ!?」
「むしろ鳴き声のチーミーはどこから来たんですの!?」
カグヤとサーシャは今日も良いツッコミをありがとう。
名前は気にしない方向でここは1つ。いや、気にしないとダメだな。
「名前からして、デスパレードはあの連れている 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) 軍団だな。そしてボムストームは、もしかしたら爆発するかもしれないぞ!」
「また!?」
「あんなに大量の〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉は無理ですー!?」
名前からはボスの特徴が出る。そう、こいつ風船型だからか爆発するんだよ。
その時、ちょこんと後ろから袖を掴まれる気配。
「ゼフィルス、大丈夫? あれは〈4〉よ」
「俺に任せとけシエラ。ここで待っていてくれるか? もしなんだったら、15層に避難していてもいい」
「……いいえ。あなたの活躍を、ここで見届けるわ」
「それを聞いたら気合いを入れないわけにはいかないな!」
シエラが見てる。そっと名残惜しくも袖からゆっくりと手を離すシエラがとてもいじらしい。
これはもうあれだよ。男として良いところを見せないといけない!! 男の子だもん!
「ラウいくぞ! こいつの相手は1班、3班、5班、9班で請け負う! 7班は護衛に残ってくれ!」
「応!」
「は、はい! ゼフィルス先輩たち、頑張ってください!」
ラウの居る5班は参加決定。でもキキョウやアリスなどのいる7班はここで護衛という名のお留守番を指示し、いざ――戦闘開始。
もうね、シエラが見てる。
それだけで気合いが入りまくった俺は、とても無双しまくった。
「アンデッド系が勇者に勝てるかー! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』! まずはボスの周りにいる 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) から排除だ!」
「まっかせなさい! 『レクイエム』!」
「ようやく出番がやってきた。私も大量殲滅を開始する――『大天使フォーム』! ―――――『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』! 『エクストリーム・エルフォース』!」
「ボスの足止めは俺が承る。――『 破 ( は ) 獣王咆哮 ( じゅうおうほうこう ) 』! 『 獣太震 ( じゅうたいしん ) 』!」
俺、ラナ、そして9班リーダーのエフィがボスの周りからガンガン押し寄せる 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) を屠り、ラウたちがその間にズドンとボスを抑える。
するとボスは、とんでもない攻撃を敢行してきた。
「チーミー!」
〈デブブ〉と同じく口から大量の 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) を出すと、それが爆発したのだ。
「バァ!」「バァ!」「バァ!」「バァ!」「バァ!」
「きゃ!」
後ろから「きゃ!」って聞こえた気がした!
こいつら! バァと脅かすフリして爆発しやがる! 幽霊のバァは爆発のバァじゃないんだぞ! 間違った使い方だ! 俺が正さなければなるまい!
「今度の風船型 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) は爆発するぞ! 爆発する前に全部仕留めるが吉と見た! ――ナキキ、やれい!」
「『幽霊は皆クラッシャー』っす!」
「『ビッグクマン・ギガデストロイフィスト』!」
「反撃だ! 『 神獣拳闘気合爪破凱 ( しんじゅうけんとうきがっそうはがい ) 』!」
魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) は爆発する前に消してしまえばいい。
素早くそれを指示し、ナキキやミジュ、ラウが一気に飛び込んで処理をすると、ボスまでの道が開けた。ここで仕留める!
「ラウ、ボスを叩くぞ!」
「露払いは任せてもらおう! ――『獣王の拳を防げる訳無し』!」
「チミ!?」
ラウの攻撃を 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) たちを盾にし、爆発する防御スキルで防ごうとしたボスだったが、そんなものでは【獣王】の拳は防げないとばかりに強烈な一撃をぶっ放し、防御ブレイク効果で 魑魅 ( ちみ ) 魍魎 ( もうりょう ) たちを粉砕。
そこへ俺が光る剣を携えて飛び込んだ。
「『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「チミ!?」
ズドンと強烈な衝撃。ボスの身体が硬直する。
「『ゼルワン・カイザーバスター』!」
「『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
ズドンズドン!
ここでラウと俺の超強烈な攻撃が突き刺さり、ボスはダウンしてしまう。
大チャンス!
「総攻撃だーー!」
「「「「おおお!」」」」
このボスはもう本当にピンチの時に真っ赤になって大爆発を起こす。どこかのキノコのボスのようにな。
だがダウンしてしまったボスはそれもできず、俺たちに光にされてしまったのだった。