第2010話 30.5層――50人VS〈ヘカトンケイル〉戦!
第2010話 30.5層――50人VS〈ヘカトンケイル〉戦!
「入る。ダメージが入るよ!」
「以前は5000人の精鋭たちが全力で攻撃しても全然ダメージが入らなかったのにね!」
「うん。これなら、いけるよ! 『神宝弓・フルパワーダートストリーム』!」
「ヴオオオオオオオオ!!」
サチ、エミ、ユウカの言葉通り、俺たちの攻撃は確実に〈ヘカトンケイル〉に効いていた。
2年前は5000人の攻撃でようやく目に見えてHPが減っていく感じだったが、今は50人の攻撃で確実にHPが減っていく。
学園祭の〈ヘカトンケイル〉はHPバーが1本だったし、最上級ダンジョンのこの〈ヘカトンケイル〉と比べると4分の1しかHPが無かったが、他のステータスはほとんど同じだ。故に、俺たちがたった50人でも2年前の5000人の戦力と比べて同等の実力を持っているとしっかり分かる。
いや、むしろ超えているな。
「こいつは斬撃、〈雷属性〉に弱いぞ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!
「うむ、ならば任せてもらおう! 『二刀斬・ 如法暗夜 ( にょほうあんや ) 』!」
「えーい『 雷神父 ( らいじんちち ) アターック』!」
「すっご! アリスたちの攻撃、効いてるよ! あ! 『痛いの痛いの飛んでいけ』!」
「なんでゼフィルス先輩たちこいつの弱点知ってんだ!? うお!? 『働くな斬り』!」
「2年前の戦いで〈ギルバドヨッシャー〉が看破してくれたのさ! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』!」
そう、2年前の学園祭で〈ギルバドヨッシャー〉が即興で研究し、よく効く物理攻撃と属性を看破してくれた。さすがは〈ギルバドヨッシャー〉だぜ! ゲーム時代の攻略サイトにも書かれていたのとおんなじこと言ってたからな!
そして、よく効くそれは最上級の〈ヘカトンケイル〉でも変わらない。
さらにみんなが使うのは〈六ツリ〉。
あの時の〈三ツリ〉や〈四ツリ〉のスキルとは一味二味どころか五味くらい違う強力な火力。
そこにゼルレカのデバフ、相手のバフを消したり奪ったりして弱体化を維持し、俺たちはノエルのバフを始めとする強化を施せば、そのダメージは2年前の学園祭の時の効率を簡単に上回った。――そして防御力。
「ヴオオオオオオオオ!!」
「と、跳んだわー!?」
「シエラ、シャロン、ヴァン、トモヨ!」
「『アブソープション・ワン・フォートレス』!」
「『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「『オリハルコン城』!」
「『主の盾』!」
超強力な『50射ヘカトンパンチ』。
あの巨体でまさかのジャンプしてのパンチに驚愕するが、うちのタンクは冷静だ。
4人の〈六ツリ〉防御スキルでそんな必殺の超攻撃すらも完全に防ぎ切り、反撃でさらなるダメージを稼いだ。
ここも学園祭の時とは異なる部分。
あの時はおそらくこれを止めるには50じゃきかない防御スキルが必要だっただろう。
むしろ狙われた瞬間退場していたはずだ。そして戦力が減ったことだろう。
だが、今の俺たちは攻撃を受け止められるし、戦闘不能にならないから戦力も減らない。
「後ろに回り込んで足をやれ!」
「また足カックンか!」
「足カックン!?」
「おーいえーデース!」
「アイギス、レグラム、フラーミナ、フィナ、エフィは顔面だ!」
「任せてください!」
「クワァ!」
「ヴオオオオオオオオ!!」
「行きますよゼニス、『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』!」
「クワァァァァァ!」
上空からの戦力であるゼニスの強力な火球、『神竜の業火・ファイナルエクシードブレス』を筆頭にしてレグラムとオリヒメさんのコンボ攻撃、フラーミナの〈海竜神リヴァイアサン〉のヴァイアによる突撃、フィナの上空からの一撃『天界の一撃・スペリオールジェネシス』、エフィの最強魔法『ヴァーミリオンプロミネンス』が顔面に直撃し、あの〈ヘカトンケイル〉がわずかに下がる。
「今! 『二刀斬・ 一念通天 ( いちねんつうてん ) 』!」
「うん! 『 狼王剣 ( アルマーレイ・エスパーダ ) 』!」
「足を貰うデース! 『大忍法・超巨大手裏剣の術』!」
「ヴオオオオオオオオ!?」
そこにタイミングよく膝の後ろにズドドドドン。
強力な攻撃を放ちまくると、見事に足カックンが大成功する。
あの学園祭の時の再現により、〈ヘカトンケイル〉は見事にダウンした。
「総攻撃だーーー!!」
「『全軍一斉攻撃ですわ』!」
「「「「やー!」」」」
がっつりとHPを削りまくり、みんなに自信と確信を植え付けたな!
「倒せる! 〈ヘカトンケイル〉だって50人で倒せるよ!」
「は、はい! 〈ヘカトンケイル〉も、ただのレイドボスです!」
「もう1本目のHPバーも消えるぞ! 一斉に攻撃を叩き込め! 『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
「「「「おお!」」」」
ノエル、ラクリッテの言葉が真実だ。
俺の鼓舞も手伝ってみんなの士気も最高潮に達した!
「ヴオオオオオオオオ!?」
「1本目のHPバー、ゼロを確認!」
「やったわね!」
「「「わー!」」」
2年前のようなヒットアンドアウェイではなく、ほとんど正面から第一形態を打ち破ったことで、もう〈ヘカトンケイル〉を恐れる者は皆無だな!
「次来るぞ! デストロイヤーモードだ!」
「あのハイハイね!」
「あれをハイハイと言っていいのかは疑問の余地がありますが!」
歩きながら伸びるパンチで相手を吹き飛ばす〈ヘカトンケイル〉の第一形態は、ボスのネームバリューにちょっとだけビビっていたメンバーが気を引き締めたことで無事撃破。
舞台は第二形態、通称デストロイヤーモードと呼ばれていた100の拳で地面を殴りながら迫ってくる強烈なハイハイ攻撃に移行する。
いや、ハイハイて、名前は確かに大変可愛らしいんだけど、絵面がヤバすぎる。
一歩踏み出すごとに50パンチが地面にめり込み、二歩進めば100の拳が地面をえぐる。
そんな強烈なハイハイがかなりの高速で走って(?)くるのだ。音とかもうドドドドドドドドドドドドドドンと、絨毯爆撃でも迫ってきてるんじゃないのという衝撃を繰り出しながら迫ってくる恐怖よ。
逃げても追いかけてくるもんだからこれにやられた学生が数知れず。
もちろん対処法は存在する。1年生の時に〈馬車〉で追いかけてたあれだ。
しかし俺たちはあれから成長している。もう〈馬車〉ではない。もっとすんごいものを用意してきたぜ!
「ロゼッタ、あれ出していいぞ!」
「はい! いきます――〈スプールルート〉召喚です!」
「はわ!」
「ロゼッタさんの奥の手が降臨ですわ!」
ドンッとロゼッタの〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉から取り出されたのは超巨大な蒸気機関車型の〈戦車〉。その名も〈スプールルート〉。
最上級ダンジョンのランク3、〈聖界ダン〉で手に入れたレジェンド級の〈乗り物〉だった。
実はタネテちゃんからエステルの〈足特装型戦車〉と一緒に渡されてたんだ。
今朝、早めにロゼッタたちにもダンジョンに入って受け渡ししておいたんだよね。
朝練で慣らしもばっちりである!
超巨大な蒸気機関車〈スプールルート〉は50メートル級の巨大な車両。
客車は無し、蒸気機関車の中が一種の豪華客船のような、機関車自体が客も乗車できる作りになっている。
ロゼッタが素早く乗り込むと装備した。
「乗ってください!」
「近くに居る者は乗り込め! 近くに居ない者はエステルの〈戦艦・スターライト〉へ!」
しかも離れた場所にはエステルが〈戦艦・スターライト〉を出してメンバーを乗せていた。戦闘中、全員が近くに固まっていられることも少ないため、二艦体制でみんなを乗せ、〈ヘカトンケイル〉の形態変化が終わったときには全員がすでに乗り込んでいた。
「すごっ! ロゼッタ先輩ほんと、いつの間にこんなものを!?」
「俺が答えよう。今朝さ!」
「今朝納品で初運用ですのー!?」
おっと、こっちには運良くカグヤとサーシャが乗り込んでくれたようだ。これでツッコミ要員も安心!
俺たちはデッキ部分に出て先頭へと向かい、そこから運転するロゼッタに指示を出す。
「安心しろ! ロゼッタには今朝渡したがしっかり練習してもらったからな!」
「はい! 大きさはかなり違いますが、運転の仕方は〈ブオール〉と変わりません。なら、問題はありません!」
「だな! 〈ヘカトンケイル〉が動くぞ! まずは横移動、あいつの後ろをとる!」
「はい! 『列・横移動』!」
「前ではなくさっそく横に動いたよこの機関車!」
「車輪の方向が間違っているですのー!」
「ヴオオオオオオオオ!」
「こっちに来ようとしていますわ! ロゼ!」
「大丈夫です! いきますよ――『オーバードライブ』!」
「横移動しながら『オーバードライブ』ーー!?」
「列車は前に進むべきですのーー!?」
さっそくツッコミ役のカグヤとサーシャが輝く!
いや、輝いているのは運転しているロゼッタだ。
こっちに高速ハイハイしてくる〈ヘカトンケイル〉に先頭を向けつつ、横移動で円を描くようにして後ろに回りこまんとする。
そこにズドドドドドドドドーンという衝撃が響いた。
「ヴオオオオオオオオ!?」
「エステルさんの方から砲撃が入ったよ!」
「おそらくユニークスキルを使っていますわ! どんどん攻撃が降り注いでいますわ!」
「ロゼッタもやったれ!」
「はい! 『列車砲・デラックスハードコイルガン』!」
シエラからの『完全魅了盾』が切れて〈スプールルート〉に狙いを定めた〈ヘカトンケイル〉だが、その隙に〈スターライト一号艦〉からジャンジャン攻撃が降り注ぐ。
ロゼッタも負けじと列車砲を用意。
〈スプールルート〉の先頭から巨大な大砲が現れる。そしてドカンっと砲撃!
「ヴオオオオオオオオ!?」
「ヒット! ナイスロゼッタ! どんどん撃っていけ!」
「はい! 『列車砲・サイドレイドスラストキャノン』!」
もういっちょドカン!
エステルのように『スラスト砲・解禁』スキルを持っていないので、『列車砲』系統しか撃てないが、それでもあるのとないのとじゃ大違い。確実にダメージを与え、腕の1本を吹き飛ばしたのだ。
「ちょ、腕が吹っ飛んでいったんだよ!?」
「そういえば2年生は初見だったな! 〈ヘカトンケイル〉の第二形態は腕を切断して吹っ飛ばせるんだよ」
「初耳ですのー!?」
一昨年は俺たちが〈ヘカトンケイル〉の背中に乗り込んで腕を切り落としていったんだ。懐かしい。今回もやるぜ!
「〈ヘカトンケイル〉、〈スターライト一号艦〉にタゲを変更!」
「そりゃあれだけ攻撃すればな! チャンスだ! ロゼッタ、後方から突っ込め!」
「はい!」
回り込もうとするも、〈ヘカトンケイル〉も常にこっちに向いているため回り込めずにいたが、おそらく〈スターライト一号艦〉に乗っているシエラが『完全魅了盾』を当ててくれたのだろう。
〈ヘカトンケイル〉がそっちに顔を向けたことで大チャンス。
「ロゼッタ! ユニークスキル発動だ!」
「いきます! 『暴走列車・ 特急城壁螺激槍 ( とっきゅうじょうへきらげきそう ) 』!」
ロゼッタがユニークスキルを発動すると、蒸気機関車の先頭部分にドリルが生まれ、激しい回転を始めた。そして〈乗り物〉は急加速で前進。
勢いのついた状態で城にドカンするとかなりのダメージをたたき出すギルドバトル用のスキルだが、ボス相手にも有効だ。
「突撃!」
「ヴオオオオオオオ!?」
「ひっ!?」
ズドンとハイハイ中の〈ヘカトンケイル〉の後ろにドリルが直撃した。
どこにズドンしてしまったのか、敢えて明言はしまい。か弱い女子からは悲鳴も漏れた気がしたが、これも気のせいだ! あまりの衝撃に〈ヘカトンケイル〉の動きが停止する。
「乗り込むぞーーー!!」
「この状態でですのー!?」
下半身をやったことで動かなくなった〈ヘカトンケイル〉の背に乗り込む俺たち。
俺の〈ガラティーン〉が光る。
「行くぜ、 急所 ( 首 ) は俺がもらった! 『 太陽 ( たいよう ) の 聖炎 ( せいえん ) 』! 『 真 ( しん ) ・ 陽光剣現 ( ようこうけんげん ) 』!」
「あれは……!」
発動するのは〈ガラティーン〉の武器スキル。
これは〈陽聖剣・ガラティン〉時代にも見たことがあるだろう。
聖剣の力を引き出し、太陽のように輝く〈ガラティーン〉。
次の一撃、特定のスキルの威力を特大に押し上げるバフたち、その強化版だ。
そして俺は、〈ヘカトンケイル〉の弱点である首に〈ガラティーン〉を振り落とす。
「『アトミック・レイ・サンブレード』!」
「ヴオオオオオオオ!?」
ズドーーーーンとすさまじい衝撃が入った! まるで太陽が落ちたと錯覚するような輝きの奔流が首に吸い込まれ、すさまじいダメージがHPに入る。その威力は〈ヘカトンケイル〉は尻を上げるポーズでダウンしてしまうほどだった。
「今だ! 総攻撃!」
「ゼフィルスお兄様! ルルも援軍に来たのです!」
「ん! 腕全部切り落とす」
「任せるがいい」
「おっしゃみんな行くぞ! 『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
いつの間にか真上まで来ていた〈スターライト一号艦〉からもルルたちが乗り込んできて総攻撃に参加する。
〈ヘカトンケイル〉は強い。
しかし、ゲームでは1年生の時に相対するために、弱点が多く存在するレイドボスでもある。
特に背中に乗りこむと攻撃がほとんど来なくなるのは致命的。背中側に弱点があるのも致命的だ。さらに腕まで斬り飛ばせてしまうのだからとんでもない。
ダウンが復活するころには腕は半分になっており、ハイハイの速度は大きく低下。そこからさらに残り10本になるまで斬られたところで2本目のHPバーもゼロになる。