第2012話 〈金箱〉が史上初ドロの〈ヘカトンケイル〉!
第2012話 〈金箱〉が史上初ドロの〈ヘカトンケイル〉!
〈ヘカトンケイル〉敗れたり!
挙動が学園祭の時とほとんど同じだったため、一度勝った俺たちなら挙動を知っているというのは大きなアドバンテージだったな。
学園祭の〈ヘカトンケイル〉は勝率1割以下とも言われ、5000人もの人を紙吹雪にするかの如く蹴散らす恐怖の存在だが、あれから約2年。
俺たちは50人で十分〈ヘカトンケイル〉を倒せる強さを身に付けていた。
「勝った、のか?」
「勝ったよ、ラウ君!」
よし、ここで俺も、一度勝ち鬨を入れよう。
「みんな! 〈ヘカトンケイル〉は俺たち50人に敗れたり! 俺たちの勝利だ! 俺たちが勝ったんだーーーー!!」
「「「おおおおおおおお!!」」」
「「「わああああ!!」」」
〈ガラティーン〉を天に向けて輝かせ勝ち鬨を上げれば、歓声がボス部屋に響き渡ったのだった。
「やったわー! なんだか、これまでのレイドボス戦で、一番燃えた気がするのよ!」
「ええ。私も、ゼフィルスの剣に当てられたのかもしれないわ」
「シエラ、〈いっけー〉って言ったものね!」
「あれは、ちょっと、盛り上がっちゃって……」
ラナに振られてふいっと顔を逸らすシエラ。
おお……! ラナナイス! 照れ顔のシエラがプライスレス!
いいぞー!
心の中でラナに喝采を送っていると、〈ヘカトンケイル〉が消えた後に4つの〈金箱〉が現れた!
「〈金箱〉!」
「〈金箱〉だわ!」
「そうか、この〈ヘカトンケイル〉は〈金箱〉を落とすのか……!」
カルアが最初に反応し、ラナがキャーと黄色い声を上げ、ラウが震え声で目を見開く。
そう、ここは最上級ダンジョンだからな!
「〈ヘカトンケイル〉の〈金箱〉!? こ、これってもしかしなくても学園とかでとんでもない取引額に発展する感じのやつが入ってるんじゃないの!?」
「きっとルキアさんの言う通りのものが入っているのでしょう。学園祭の〈ヘカトンケイル〉はあれだけの人数で撃破しても、宝箱は一切落としませんから」
「軽く考えただけでも様々な場所に衝撃という名の波紋が届きますわね。〈ヘカトンケイル〉が実際にダンジョンで登場したことも然り、ドロップ品も然りですわ。展示物としてこれほど有用なものもそうありませんわね。歴史に残りますわ」
今まで謎だった学園祭レイドボス、そのドロップ品が目の前に転がっていて、動揺を隠せない様子のルキア、シェリア、リーナが口々に言う。
「〈ヘカトンケイル〉と言えば、学園祭三大レイドボスの中で最弱と呼ばれ、最も勝率が高いレイドボスです。確か、宮廷で役職に就いている軍の方々などは、この〈ヘカトンケイル〉の撃破を想定した訓練もしていると言われているほどメジャーな存在です。そのドロップ品となれば、欲しがるところはさぞ多いでしょう」
「これはまたお爺さまに良いお土産ができそうですわね!」
「……学園長、本当に帰ってこられなくなりそうですが……」
クラリスも、これが起こす激震について思いをはせ、ノーアはウキウキと喜んでいる。その後のクラリスのつぶやきは誰にも気づかれずに空気に溶けていったんだ。
「それじゃあクジの時間だな!」
「今回は大物だもの! 当てるわよ!」
「ルルも当てるのです!」
「ん。勝負」
勝負はすでに始まっている。そう、くじ引きという名の勝負が!
俺は素早く50人分のクジを用意すると、みんなが次々と引いていく。
「! おーっほっほっほ! 来たわ、来ましたわクラリス! 大当たりですわー!」
「お嬢様が1番に!?」
最初はノーアからだった。くっ、ノーアはやはり何かを持っているぜ。
俺もあやかりたい!
「あは! 私も当たり引いたよ~!」
「わ、私も当たりが出ました」
ノエル、そしてロゼッタまで当たりクジ!
残りは5本。
来てる、俺の時代が今来てる! ここまで少なくなればあとはもうちょっとだ!
これは俺の手に当たりクジが来るパターンだろ!
「まあ! 当たりクジですわ!」
「最後はカタリナだったね」
「ごふっ!?」
残り4本のところで最後の当たりが持っていかれて俺はごふった。
おかしい、俺のところに当たりクジが残るパターンは!? どこ行っちゃったのー!?
結局宝箱は、ノーア、ノエル、ロゼッタ、カタリナに決まる。
「私はこれが怪しいと思いますわ! とんでもない装備を当てて差し上げますわよ! おーっほっほっほ!」
ノーアのテンションが高い! さすがは当たりクジツモ者!
ラナがとってもうらやましい目で見つめているんだ。きっと俺も同じ目をしているのだろう。
「頼むぜノーア! 俺の代わりにとんでもない当たりをツモってくれ!」
「いきますわ! 〈幸猫様ファミリーズ〉の皆様、良いものくださいですわー!」
ノーアに託し、まず1箱目オープン!
すると中から出てきたのは――レジェンド色のレシピ!
「レジェンド色のレシピキターーー!!」
「おーっほっほっほ! クラリス、出番ですわよ!」
「はい。お嬢様動かないでくださいね――『解読』!」
クラリスが〈幼若竜〉を使えば、ミミズがのたくった文字がしっかり日本語に正される。果たして――!
「これは――〈 巨人鉱鎧 ( へカトンアーマー ) シリーズ装備〉、全集ですわー!」
「「「「おおー!!」」」」
「専用装備じゃない汎用系、全身鎧系の装備か! でかしたぞノーア! これはタンクのつなぎにも使えるし、今後間違いなく売れる装備品だ!」
「おーっほっほっほ!」
「はーっはっはっは!」
イエス! ノーアとハイタッチ!
高笑いしながらその成果にイエスした。
なにせここはLV100まで育成できるボス。その装備全集というだけで価値がすごいことになる。
なにしろ、これを着ればLV100ボスと言われる、〈万界ダン〉までのレイドボス、加えて〈神界ダン〉でも通用するという、最高峰の装備シリーズだ!
汎用系の全集装備の中ではトップクラスと言っていい。
これ以上になると専用装備の領域になるな。
ついに汎用系トップクラスの装備レシピが出始めたのだ。
専用装備を装着する気がないなら、この装備が ゴールの1つ ( 最終装備 ) と考えてもいいくらい。それほどの装備だと言えばこれの価値も分かるだろう。
帰ったらアルルに渡そ!
「あは! このビックウェーブに私も乗るよー!」
「頑張ってノエルちゃん!」
続いてノエルの番。〈幸猫様ファミリーズ〉にしっかりお祈りを捧げて、いざオープン。
「ん? あ、ああ! 召喚盤だ!」
「召喚盤!?」
「『解析』します! これは、間違いなく〈ヘカトンケイルの召喚盤〉ですね!」
「あれ召喚できちゃうの!? 猫津波でもものすごいのに!?」
なんと! ノエルが当てたのは〈ヘカトンケイルの召喚盤〉。
それ、術者が召喚できちゃうやつ!
「おかしい、3年に1度しか召喚できないはずの〈ヘカトンケイル〉がこれからは日に何度も召喚できると聞こえる」
「それは幻聴じゃないよラウ君。私にもそう聞こえるもん! 学園祭に〈ヘカトンケイル〉が2体召喚されちゃうかもしれないよ!」
「…………」
どうやらラウは衝撃を受け止めきれないようだ。上を向いて何かを受け止め、いや、見ないようにしているのかもしれない?
「つ、次は私ですか」
「ロゼ、頑張ってね! 応援しているよ!」
「はい。では、僭越ながら」
「そんなことないさ、自信を持てロゼッタ! 第二形態や最終形態相手の活躍、俺はしっかり覚えてるぞ!」
「ゼフィルスさん!」
緊張しながら〈金箱〉の前にしゃがむロゼッタに俺は発破を掛ける。
すると、少しは緊張がほぐれた様子が見て取れた。
〈幸猫様ファミリーズ〉にしっかりお祈りする。
「では、いきます!」
いざオープン! 果たして中身は!?
「中に入っていたのは、これはもしかしてグローブですか?」
「おお! それは両手用の拳武器だ! 間違いないぞ!」
「『解析』します! ゼフィルス様の言う通り、それは拳武器のグローブですね。〈 神をもぶっ飛ばす巨人の腕 ( ゴッドヘカトンクラッシャー ) 〉と書かれております」
「それ名前がとってもまずい気がするよ!?」
「私も同じくとんでもヤバい気がするですの!?」
「数値は鬼強いですよ。ドロップ品なのに攻撃力が800を超えてます」
「……う~ん、でもそう聞くとレシピ産が如何に強いのかが分かりますわね」
クラリスの『解析』結果にノーアが〈智天使・ケルビムの 回炎剣 ( かいえんけん ) 〉を眺めながら答える。それ数値1000を超えてるからね。
「ゼフィルスさん、それは俺に使わせてはもらえないか?」
「ラウ?」
ここでラウからの立候補。ラウの装備よりも確かに強い。
つなぎとしても悪くはない。ミジュやセレスタンにも聞いたが問題ないとのことだったので、〈 神をもぶっ飛ばす巨人の腕 ( ゴッドヘカトンクラッシャー ) 〉はラウが使うことになった。
「感謝するぞゼフィルスさん! これでより一層の貢献を約束しよう!」
「では、最後は私、ですわね!」
ぐっと拳を握って俺に決め台詞を言うラウ。そんな感動的シーンは一瞬でカタリナが〈金箱〉の前に座ったことでかき消えてしまったのだった。
「見ていてくださいましゼフィルスさん。私、きっと良いものを当てて見せますわ!」
「期待してるぞカタリナ!」
「…………」
「ラウ君ドンマイ?」
カタリナはしっかり手をパチンと合わせてお祈りする。届けこの思いを〈幸猫様ファミリーズ〉へ!
「いきますわー!」
そしてオープン!
中に入っていたのは腕輪。
お、おお!! これは!!!!
「腕輪装備ですわ!」
「拝見させていただきますね――『解析』!」
今日はクラリスが〈幼若竜〉係。
一瞬で〈幼若竜〉の目が光ると、腕輪の名と効力が明らかになる。
「これは――〈 巨神の怪力腕輪 ( ヘカトンゴッドパワァァ ) 〉。これ、汎用装備なのにSTRが+350も上がりますよ!」
「な、なんですってーー!!」
がばっと叫んで振り向いたのはノーア。
その上昇数値の異次元に、思わず立ち上がって振り向いてしまった感じだ。
「クラリス、今+350って言いましたの!?」
「間違いないです。すごいですよ。上級では専用装備ですらSTRの上昇値は+100前後、なのにこれは汎用装備なのに+350です。もしこれがレシピでドロップしていたら、とんでもないことになっていましたね」
「現物でもとんでもないですわー!」
ノーアの目がキラッキラしてる! そしてクラリスは説明役感謝!
そう、〈ヘカトンケイル〉といえば神話なんかで神々を凌ぐ怪力の持ち主として書かれている。その影響か、この腕輪はヘカトンのパワーを得られるというコンセプトの下、とんでもなく強力な数値として生み出されてしまったのだ。
これも汎用系でこれ以上の数値は無い。間違いなくトップクラスだ。
まあ、代わりに『STR+350』以外の装備スキルは無いんだけどな!
でも+350って言ったら、上級高位職のSUP、約LV10分のプラス値だと言えばこれがどれほどすさまじいかが分かるだろう。すごいんだ+350って。
これはノーアが着けることになった。欲しがっていた人は多かったけど、くじ引きにしたらノーアが勝ち取っていた。ノーアは革命娘すぎない?
その運を俺にも分けてくれ~!