第2014話 ついに中級上位の追想に突入!料理系多し!?
第2014話 ついに中級上位の追想に突入!料理系多し!?
〈ヘカトンケイル〉を倒してから〈エデン〉の士気は最高潮。
LV100という実感がどんどん生まれている様子だ。
そう、俺たちはすでに世界最強の存在! 2年前に最高峰の強さを誇る腕自慢たち、5000人規模の集団と同格以上の実力なのだ! いや〈ヘカトンケイル〉戦の勝率が100%だからもう2年前の5000人集団よりも上だな! 遥かに上だ! ふはははは!
「未だに信じがたいが、俺たちはとんでもない頂きに来てしまったのだな」
「言いたいことは分かるぞラウ。2年前、あの大きく巨大で俺たち5000人規模の集団でも倒せるか分からなかったあの〈ヘカトンケイル〉、今ではこのありさまだからな」
「たは! しかも戦闘不能者がまたゼロだよメルト様!」
そう呟きながら8周目の〈ヘカトンケイル〉がエフェクトの海に沈んでいく様子を見つめるラウとメルトは、どこか達観したような眼をしていた。ミサトがニシシ笑いでメルトをどうやってからかおうかとほくそ笑んでいるように見えるのは、気のせいではないだろう。
現在〈万界ダン〉30.5層の〈ヘカトンケイル〉を初めて倒し、その後7回ほど周回した翌日。
30層にショートカット転移陣で転移した俺たちは、31層へ行く途中、行き掛けの駄賃、あるいは準備運動のためにもう1回〈ヘカトンケイル〉を張り倒していた。
ミサトの言う通り、今回も戦闘不能者はゼロ。
1年生の学園祭の時は5000人中、約800人くらいしか生き残らなかったことを考えれば、俺たちが2年前よりもどれほど強くなったのかがよくわかるだろう。
いやぁ、俺たちも強くなったなぁ!
「よーし、続いて31層へ行くぞ!」
「ゼフィルス、今日は周回はしないの?」
「昨日学園長から素材を市場に流すのはちょっと待ってって言われちゃったからな」
素材を集めまくっても売ることができないので攻略の方へ舵を切る。
宝箱4箱を回収し、俺たちは31層へと進んだのだった。
「ここは、〈 夏日 ( なつび ) の 荒野 ( こうや ) ダンジョン〉。間違いなく 中級上位 ( チュウジョウ ) の追想ですね」
「あ、あっつーい!」
〈万界ダン〉の31層からは 中級上位 ( チュウジョウ ) の追想がスタートだ。
最初のランク1は、真昼間で固定された真夏の超熱い荒野のダンジョンだ。
何時に入ダンしてもお日様が真上から動かず、その力強いランランとした日光を遮蔽物皆無な荒野に降り注がせ続けている恐ろしいダンジョンだ。
ラナが悲鳴を上げるのも分かる。ここマジ暑い!
「カイリ~」
「はいはーい――『自然環境保護』! 『大環境全適応』! 『フォロー・ミー』!」
「快適よー!」
「ふう、楽になりましたわ。カイリさん、ありがとうございます」
「ありがとうカイリ」
「どういたしまして~」
まあ、カイリがいるので楽勝だな。
ここはランク1ということもあって登場するモンスターは弱い。
ぶっちゃけゲームでは真夏の日差しなんてデバフにもならないので楽勝のチュートリアル的なダンジョンだったのだが、リアルになってかなり危険なダンジョンと呼ばれていた。
とはいえ日光を克服してしまえばまた楽勝のダンジョンだな。
「ラクダーーーーー!!」
「だからってラクダは出てくんな!」
なお、ここの登場モンスターはラクダ型の〈フルコブンラークダーツ〉。
コブっぽい塊をダーツのように飛ばしてくるラクダだ。なぜか「ラクダー!」と鳴きながら楽勝のこのダンジョンに茶々を入れてくる。
「ん。これは食べられる?」
「これを食う気かカルア? いや、肉を落とすなら食べられる可能性はあるが」
「ん。肉頂戴?」
「ラク、ダー!?」
なお、結構狩ったがお肉は出なかった。
しかし、ここの採集ポイントでは大量のスパイスがドロップしたのにはカルアも笑いが止まらない様子だったよ。
「これ、カレーの材料、スパイスです!」
「でかした! 超でかした! もっといっぱい採る! ここら一帯、すべて採り尽くす!」
「りょ、了解です!」
ほら、なんかモナもカルアの圧に逆らわない方がいい的な感じで大量に採集してたもん。
おかげで大量のスパイスが手に入ってしまった。
なお、エリアボスは〈スパイシーキャノンラークダーツ〉。大砲を背負い、カレーキャノンをぶっ放ってくるラクダ型のボスだ。
「こ、こんなボスが居たなんて知らない!」
そりゃ言わなかったもん。
言ってたらカルア、たぶん何かとここのダンジョンに入り浸っていただろうしな。
なお、撃破したらカレーのレシピが―――出なかった。
「ゼフィルス! ここ周回! 〈ヘカトンケイル〉やってる場合じゃない!」
「分かった分かった、〈万界ダン〉攻略したら戻ってこような!?」
しかし、これまでの傾向から絶対最強のカレーレシピが出ると確信したカルアの要望に折れる。攻略後はここでエリアボス周回をすることになりそうな予感だ。
まあカルアの思っている通り、カレーのレシピはドロップするので、それまでだな。
「あ! 32層は〈 角兎 ( つのうさぎ ) の 庭園 ( ていえん ) ダンジョン〉だね! メルト様見てみて! ホーンラビット系列があんなにいるよ!」
「でかいな…………。食いでがありそうだ」
「もう~メルト様ったら羨ましいんですか~? ――ウキュ!?」
「やかましい!!」
お、久しぶりにうさ耳クロー炸裂。
さっきからミサトがかまってちゃん――じゃなくてニヤニヤモードでメルトにちょっかいだしてたからな。メルトもとうとう右手が炸裂してしまったんだろう。
モンスターも含めて兎がうっとうしかったからではないはずだ。
この 中級上位 ( チュウジョウ ) のランク2であった〈角兎の庭園ダンジョン〉は〈ホーンラビット〉系列が大量に出るお肉ダンジョンだ。
ランク2ではあるが、リアルではここが 中級上位 ( チュウジョウ ) で最弱のダンジョンと呼ばれている。ランク1は環境がヤバいからね。
なお、〈万界ダン〉の32層ともなると、庭園で遊んでいる可愛いウサギが10メートル級のデカウサギになるため、庭園の風景がもうね、台無しよ。
「お前たち目立ちすぎだ!」
「そうだ! 庭園の平和は、俺たちが取り戻す!」
「たは? そんな感じだっけ!?」
メルトに便乗して俺も庭園の平和を取り戻した。うむ。ウサギがいない方がこの庭園は映えるのだ。あ、また1匹庭園に! いや待て、あれは!
「あ、エリアボスだよ!」
「『看破』します! あれは――〈究極の 兎 ( と ) に 角 ( かく ) 強い王様ラビット〉?」
「王冠を被ってますわ!?」
「ウサギは殲滅だ! 『アポカリプス』!」
「たは!?」
庭園を我が国にしようとたくらむ悪いホーンラビットの侵略者も入ってきたが、無事滅殺し、良いお肉をゲットした。
「メルト様落ち着こう! ウサギは悪くないよ!」
「ん。お肉落とす」
カルアが満足そうだったよ。
まあ、そんな感じで庭園への侵入者をお肉にしながら進んで続いては33層だ。
「プギイイイイイ!」
「壁いっくよー! 『ゴッドオリハルコンランパート』!」
「ブビョオッ!?」
ズドーンと衝撃。
俺たちに向かって突進してきた10メートル級の巨大イノシシ型モンスターが、シャロンが出したオリハルコン製の壁に激突して目を回したんだ。
そりゃレイドボスの攻撃すら抑えることのできる壁だ。通常モンスターの突進じゃびくともせんて。もちろんその後は狩られたよ。
「ん。豚肉もゲット!」
「いや、イノシシ肉だぞカルア。間違えてる」
「ん。スパイス、ウサギ肉に続いてイノシシ肉も手に入った。カレーのレシピも手に入る予定。 中級上位 ( チュウジョウ ) の追想は優秀」
「優秀、なのか?」
カルアにとって有能か否かはお肉とカレーで変わるらしいな。 中級中位 ( チュウチュウ ) は侮れないと言ってた気がするのに、 中級上位 ( チュウジョウ ) は優秀判定だった。
33層は〈 猪突 ( ちょとつ ) の 猛進 ( もうしん ) ダンジョン〉。イノシシ型のモンスターが猛突進してくる、デンジャラスフィールドだ。
「プギイイイイイ!」
「もう! 鬱陶しいわ! 私たちを次のダンジョンに行かせなさい! 『大聖光の無限宝剣』!」
あ、それレイドボスに使うやつ。
ラナが過激になってイノシシたちを肉にしていたんだ。
それもそのはず、なにせ次のランク4と言ったら……。
「ついに到着したわね―― 中級上位 ( チュウジョウ ) のランク4、〈芳醇の林檎ダンジョン〉の追想よ!!」
「おーいえー!」
「リンゴがいっぱい実ってるのです!」
34層に到着、そこは果樹園。
そう、ラナが大好きな〈芳醇な100%リンゴジュース〉をドロップするダンジョンである。
カルアとルルのテンションも高い。
確かにカルアの言う通り、 中級上位 ( チュウジョウ ) の前半は食料系も多い印象だな。
一説によれば、〈万界ダン〉で30.5層レイドボスを倒したご褒美とも言われていたっけ。ゲームでは食べられなかったけどな!
「僕たちに任せてください!」
「〈採集無双〉の出番さね!」
「すべて採りつくすのよ!!」
モナやアンベルさんたち〈採集無双〉が一気に出動!
ラナの指揮もあって大量のリンゴを集めまくる。
「ゼフィルス! 〈ゴールデンアップルプル〉を出すのよ! 〈オカリナ〉を頂戴!」
「最上級ダンジョンでは〈オカリナ〉吹いても意味ないぞ!?」
そう、〈オカリナ〉は中級ダンジョンでのみ使える専用の笛なのだ。
最上級ダンジョンで〈オカリナ〉を吹いてもレアモンスターは出てこない。
「ええ!? それじゃあ〈ゴールデンアップルプル〉は!?」
「残念だがラナ。ここでは〈ゴルプル〉系列のようなレアモンスターは出てこないっぽいんだ」
「そ、そんな……!」
ラナがハンマーで殴られたような衝撃を受けてその場で固まってしまった。
シズがすぐに駆け寄ってきて「ラナ様お気を確かに!?」と汗をぬぐっている。
だが安心してほしい。もっと素晴らしいジュースが、ここには存在するのだ。
「『エリアボス探知』! あっちだよ!」
「それじゃあ遠征に行ってくる! ここのエリアボスと言えば、きっと〈リンウッズ〉系列に違いないからな!」
そう言ってカイリが突き止めた方へ向かえば――〈エンシェントバーストリンウッズ〉というエリアボスを発見できた。
〈リンウッズ〉系列はリンゴの木型のボスモンスター。足は根っこで動けないため、俺たちが迎えに行ったというわけだ。
こいつはバーストという名前の通り、『バースト』系の魔法を連射してくる、まるで固定砲台型の要塞だ。攻略には少しコツがいる。
「『フレアバースト』みたいなスキルを連射してくるのか。あの砲塔が16門、厄介だな」
そう言いつつもメルトが率先して『グラビティ・デトネーション』で攻撃を吸収し、ミサトが反射でダメージを与え、一気に張り付いて攻勢に出れば、固定砲台は意味をなさない。
「『キロロ』系は盾役、頼むぞ!」
「任せて――『シールド・テラ・クワトロ』! 『アジャスト・フル・フォートレス』!」
やはりシエラは頼りになる!
砲撃を盾役が防ぐのもありだが、近づくと〈エンシェントバーストリンウッズ〉は幹を回転させ、枝で薙ぎ払う『キロロ』系スキルを使ってくる。これで吹き飛ばし砲撃してくるのだ。
だが枝を止め、回転自体を止めてしまう受けタンクがいれば、もう近距離でも怖くない。盾役に回転を止めてもらうためにメルトたちが砲撃に対処してくれた、というわけだな。
〈エンシェントバーストリンウッズ〉も撃破!
すると、そのボスドロップでジュースがドロップしたのだ。
「『解析』なのです! これは〈リンジュ〉というジュースだと書かれているのです! 神の飲み物? とテキストが付いているのです!」
「神の飲み物!? なにそれ美味しそう!」
神の飲み物らしいそれを「なにそれ美味しそう!」と言うラナがいつも通り!
「こりゃ、とんでもない飲み物が当たってしまったかもしれないぞ」
当たったのは一升瓶のような大きな瓶に入ったリンゴジュース。名を〈リンジュ〉。
料理に使うほか、これ単体で飲んでもHPの継続回復効果が得られる飲み物素材だ。多分1瓶で2リットルくらいは入ってると思う。
フレーバーテキストには「 神 ( 幸猫様 ) の飲み物」とあり、俺もゲーム時代から、ちょっと飲んでみたいと思っていた代物である。(なお、ルビはゼフィルスが勝手につけています)
「やっぱりここは最高ね! ゼフィルス、早速飲みましょう!」
「だな! 3本ドロップしたから、ちょっと試飲してみるか!」
「賛成よ!」
ということで55人で割って1人当たり100ミリリットルくらい。俺なら3口ほどで飲み終わってしまうが、試飲ならばこれくらいで問題は無い。
注がれたリンゴジュースは底が見えるほど透き通っていて、少し揺らせばふわっとリンゴの香りが鼻に届く。あまりにも優しい香りに思わずため息が出たよ。これ絶対美味しい! 間違いない!
「それじゃあいただきます!」
みんなで一斉にゴクリ。
瞬間、みんな一斉に目を見開いた。
「「「「お、美味しい~~~!」」」」
「美味いな……」
「ふわ~、なにこれすっごい幸せな気分~」
もうあまりの衝撃にグッと手を握り締める美味しさ。
俺的には〈芳醇な100%リンゴジュース〉を軽く超える。
リンゴの凝縮された濃さと美味しさが口の中でドカンと衝撃を与えてきたんだ。
メルトも思わずつぶやき、ミサトなんか表情が蕩けている。
ならばラナは?
「こ、こ、こ」
「こ?」
「これよーーー!! これに決めたわ! こんなおいしいジュース、すごい! 〈芳醇な100%リンゴジュース〉よりもおいしいジュースがあるなんて!」
ラナのテンションが爆発していた。なにがこれなのかはよくわからないが、いや、なんとなくわかる。きっとラナはここが最上級ダンジョンだから〈芳醇な100%リンゴジュース〉を超えるものがあると思ったのだろう。そして期待通り、〈芳醇な100%リンゴジュース〉を超えたと、故の「これよー」宣言なんだろう。
つまり、ラナの最大の賛辞だ!
「決めたわゼフィルス! 〈リンウッズ〉を周回するのよ! 次の打ち上げで思う存分飲むのよー!」
「「「おおー!」」」
「んんん!?」
確かにこれは思う存分飲んでみたい!
みんなの心が1つになり(?)、時間があるときは〈エンシェントバーストリンウッズ〉を周回しようということで話は決まったのだった。カルアが目を見開いていたが、大丈夫、カルアの方のラクダもちゃんと倒すって。
こういう時好きな階層に行ける〈テレポ〉が便利だよね。