第2020話 〈地獄の門番〉モード。下半身分離から門変形
第2020話 〈地獄の門番〉モード。下半身分離から門変形
「オオオオオオオオンンンンン!!!!」
形態変化、最終形態は――〈地獄の門番〉モード。
まず上半身から戦車になった下半身が分離。下半身の骨組みが変わり、なんと50メートル級の大きな門に変化する。じゃあ下半身が無くなっちゃった〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉はどうするのかと言えば、バサッと黒マントで体を覆い、次にバサッと広げればあら不思議、新しい下半身が生まれていたのだった。
ツッコミどころ満載!
「今だカグヤ、サーシャ、言ってやれ!」
「その下半身どこから来たのー!? 召喚かな!?」
「門を下半身で作った意味が分からないですの!? 普通門の方を召喚すればいいですの!」
「オオン!?」
初手ツッコミ。
ほら! ほら! 学園祭の時も思ったが、やっぱり下半身についてツッコミを受けてるぞ〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉!
俺たちもさんざんツッコんだ形態変化だ。こっちの人でもやっぱりツッコミどころ満載な形態変化だったらしい。
「準備、できました!」
「全員、闇の手に掴まるなよ!」
「「「おおー!」」」
「オオオオオオオオンンンンン!!」
ツッコミという大事なことを終えれば、最終形態編開幕。
門から無数の闇の手が生えたかと思えば、それが一気に伸びて俺たちに襲い掛かってきた。
「来た、地獄の闇の手だよ!」
「多いですわ! 各自、打ち合わせのポジションから迎撃開始ですわ!」
「〈五ツリ〉以上で反撃だ! 全部叩き落してやれ! 『ゴッドドラゴン・カンナカムイ』!」
「『フリーズドバスター』ですの!」
「『雷竜アターック』なのー!」
これらの闇の手に捕まれば門に引きずり込まれ強制的に退場、〈敗者のお部屋〉へと転移する。これは〈即死〉ではない、連れていかれるという独特な現象なので『即死無効』持ちでも防げないところが超厄介だ。
だが対処法はある。それが〈五ツリ〉以上の強力なスキルで闇の手を 迎撃する ( 叩き落す ) ことだ。
サーシャやアリスの攻撃を皮切りに、ガンガン強力な攻撃が闇の手に叩き込まれる。すると闇の手は「いってぇぇぇぇぇぇ!?」とばかりに手を引っ込めた。イエス!
まあ、痛みが引いたらまた闇の手を伸ばしてくるんだけどな。故に撃破することはできない。HPも無いしな。
「オオオオオオオオンンンンン!!」
「『アグニ』! そして、『カウンターバスター』ですわ!」
「お嬢様、私より前に出ないでくださいと言っていますでしょうにー!? 『操剣山雨』!」
「おーっほっほっほ! こ~んなノロマさんに捕まる私ではありませんわー! 『レボリューションセンチュリー』!」
「はーっはっはっはー! いいぞノーア! 『フルライトニング・スプライト』!」
大量の武器が射出されて無数の闇の腕が引っ込んだな。闇の腕は数百本。これが〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉がレイドボス・連型に分類されている理由だ。
俺も花火をぶっ放して範囲攻撃で一掃する。
学園祭の時はまだそこまで〈五ツリ〉持ちの人材がいなかったせいでてこずり、ハンナたち特製の爆弾で対応したのが懐かしい。だが、今は50人という少ない人数ではあるが、全員が強力なスキルや魔法の使い手だ。闇の手を押し返す。
「道を開いたらアイギスの出番だ! ――行けるか、アイギス?」
「もちろんです。私が先陣を務めます!」
「クワァ!」
これも学園祭の戦法と重なる部分。
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は〈火属性〉魔法を多用し、さらに自分に一番近い者へ、そして近づいてくる者へタゲを向ける特性がある。それを逆手に取り、先頭に〈火属性ダメージ100%カット〉持ちのアイギスを突っ走らせれば、第二形態の時のようにすべてを無効化してくれる盾として活躍してもらえるのだ。
だが、第二形態でもそうだったように、この最上級ダンジョンの〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は、攻撃パターンが増えていた。
「オオオオオオオオンンンンン!!」
「攻撃魔法、来ますわ!」
「あれは、〈雷属性〉だよ! タンク!」
「オオオオオオオオオオン!」
そう、学園祭ではこのタイミングでは火球しか撃ってこなかったのに、なんと〈雷属性〉の魔法を大量にぶっ放してきたのだ。
「『必中 受け ( ドロー ) 』! あたしに任せやがれです! 『 大強欲吸覇城占盾 ( だいごうよくきゅうはじょうせんたて ) 』!」
「モニカナイス!」
「回復します! 『エクストラハートヒール』!」
ここで遠距離攻撃に強いモニカが雷を全部必中受けで自分に集めて防御する。
レイド級の攻撃を自分に集めて防御するなんて、そんなことをすればいくらタンクの〈六ツリ〉防御スキルでも防ぎきれるものではないが、そこは【強欲】。
『超ダメージ減少LV10』『遠距離攻撃ダメージカットLV10』に加え、ドレインシールド系の『 大強欲吸覇城占盾 ( だいごうよくきゅうはじょうせんたて ) 』によって回復しながら防御し、がっつりと4割ものダメージを受けつつもすべてを受けきっていた。さすがはモニカ!
即でマシロにHPを戻してもらい、次の攻撃にも対処する。
「ゼフィルスさん、これでは!」
「慌てるなアイギス! チャンスは来る!」
「クワァ!」
予定では闇の手を引かせたあと、再度闇の手が生まれる前に〈火属性〉魔法を連射する〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉にアイギスを先頭にして近づき取り付く心算だったが、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉がまさかの〈雷属性〉を使いまくってくることにアイギスが動揺した声を出す。アイギスは〈火属性〉なら無効化できるが、〈雷属性〉は無効にはできないからな。
作戦失敗か? と思いきや、ここで粘ること1分、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が手を変え、次に〈闇属性〉魔法をぶっ放してきたのだ。
「〈闇属性〉魔法ですわ!」
「防御するよ! 『主の盾』!」
「魔法防御なら私にお任せですわ――『絶界』!」
「最上級では自分の撃つ魔法の属性をスイッチするみたいだぞ!」
「では〈火属性〉まで待てば!」
「おう、アイギスの出番だ! 今は待機! 持ちこたえるぞ!」
そう、最上級ダンジョンの〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は属性を変えてくる。学園祭ではハンディみたいなものが付いていて〈火属性〉一辺倒だっただけにすぎない。まああの時は途中で〈氷属性〉の強力な全体攻撃も使ったけど、それは置いといて。お、来たな。
「〈火属性〉魔法攻撃です!」
「よし、今だーー! 『インフィニティ・バニッシュセイバー』! ――アイギス、発進だ!」
「はい! ――ゼニスいきます! 『 竜猫炎 ( ドラゴニャン ) 防盾 ( シールド ) 』!」
「クワァ!」
「アイギスに続けーーー!!」
「〈戦艦・スターライト〉発進です! 『戦車姫最終奥義・戦車覚醒』!
俺が全体攻撃を使って闇の手を退け、道ができたところでアイギスとゼニスが炎で出来た竜猫の盾を出しながら低空飛行で突撃、その後ろから〈戦艦・スターライト〉が追いかけユニークスキルまで発動して、一気に〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉本体へと走り出す。
「オオオオオオオオンンンンン!!!!」
「効きません!」
「クワァ!」
大量の〈火属性〉魔法に狙われるアイギスだが、無傷。ダメージゼロ。
アイギスの〈 竜猫炎化大盾 ( ドラゴキャニジョンシールド ) 〉は火属性をすべて無効化する! 突破!!
「オオオオオオオオンンンンン!!!!」
「闇の手来るぞ! 捌けーーー!」
「『タイムストップ』!」
「『スターソニック・レインエッジ』!」
「『大忍法・超巨大手裏剣の術』デース!」
「うおおおりゃああ! 『レイジー・バスター』!」
「『必殺・大閃刹那落とし』! 露払いは任せてね!」
当然のように闇の手の一部がアイギスを狙うがルキアがストップさせる! するとカルア、パメラ、ゼルレカ、クイナダの速度特化組が〈戦艦・スターライト〉から飛び出して薙ぎ払い、露払いしてアイギスたちの駆ける道を作ってくれる。
「オオオオオオオオンンンンン!!!!」
「ゼニス、行きますよ! 『アルティメット・ドラゴンクロウ』!」
「オオオオオオオオンンンンン!?!?」
ついにアイギスとゼニスが切り込んだ。〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の魔法攻撃を突破し、強力なクローの一撃をズドバーーンする。
そこへ到着する俺たち。
「アイギスに続いていくぞー! 『 天光勇者聖剣 ( あまのひかりのゆうしゃせいけん ) 』!」
「『512・ヘル』!」
「ゼフィルス殿、またI字にしますか!?」
「許可する!」
「了解です! 『 彗星槍 ( すいせいそう ) 』!」
あ、つい許可しちゃった。
思い出すのは学園祭の悲劇。〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の下半身をI字バランスにするがごとくみんなで攻撃していたら、骨盤がボキっと鳴って脱臼しちゃったのだ。またあれやりたいと素でエステルが許可を求めてきたのでうっかり出してしまった次第。しかし。
「『必殺の太刀・六閃華』!」
「『大忍法・ 激炎龍 ( げきえんりゅう ) 爆楼 ( ばくろう ) 』!」
「『ゼルワン・カイザーバスター』! なに!」
「このボス、足が開かないよ!?」
「オオオオオオオオンンンンン!!!!」
なんと最上級ダンジョンの〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は、足が開かなかったのだ。I字どころか大股開きも無理と来た。ゲームと同じだ。まさか、あれもアリーナの〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉特有の現象だったのか?
「いいえ負けないっす! 『メタルインパクト・クラッシャー』っす!」
「ナキキ!」
そうだ、思い出した。確かあの股が盛大に開いたのはナキキの攻撃からだったな! 行けるか!? あ、無理だった。残念。
「オオオオオオオオンンンンン!!」
しかも「お前らいい加減にしろーー」とばかりに〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が今度は〈氷属性〉魔法で全体攻撃を放たんとする。見れば、いつの間にか杖がとんでもない光を放っていたのだ。だが、問題は無い。
「シエラ、行けるか!」
「任せて。私が受け止めるわ――『フリーズガード』! ――『インダクション・フォートレスカバー』!」
「カカカカカカカカ!!」
笑い声をあげる〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が奥の手を発動する。放たれる超強力な〈氷属性〉の全体魔法。直撃すれば、今のアタッカーでも一撃でやられかねない威力だ。
しかし、その全てがシエラが使ったフォートレスに集中する。こんな攻撃〈五ツリ〉ではまず受け止められないはずだが――――シエラには効かない。
「無駄よ」
「カカカカカカカァ…………カ?」
おお! まるであの時の再現!
シエラのセリフが相変わらず超かっこいい!
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉、反応もアリーナの時のままだ!
とっても首を傾げてんぞ!
「今だーー総攻撃!」
「オオオオオオンンンンンン!?」
この隙にがっつりダメージを与えていく。
大技を防いだらアタックのチャンスだ!
だが、これで怒りモードになったのか、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉もまた、学園祭ではしなかった挙動を見せる。
「カカカカカカカカカカカ!!」
「ん!? 『直感』にキタ!」
「門に注目してくださいまし!」
「門が、闇色に光ってる? 何かくるよ!」
「な、なんだこの尋常じゃない圧は!?」
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の杖の先が闇に包まれたかと思うと、呼応するように門からも闇色の光が噴出する。
いや、まるで何かのエネルギーが凝縮するように集まっていったのだ。
それも尋常じゃない威力が込められていると、俺たちは誰もがすぐに分かった。あれは直撃しちゃいけないやつだと。
これは、明らかに溜め攻撃。そして、〈闇属性〉だ!
「んん!? 『直感』ヒシヒシ、攻撃来る!」
「あれは喰らってはいけない!」
「これは――〈闇属性〉の溜め攻撃が放たれるぞ!」
「〈闇属性〉!? 〈闇属性〉カット持ちはいないよ!?」
それな! こうなれば、タンク全員で防ぐしかない。
俺の声に反応したタンクたち10人は、すでに集まっていた。さすが。
そして呼応する〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が杖を高く掲げる、今だ!
「タンク――防御スキル展開! 今だ!」
「『プラネットドアヘヴン』!」
「ポン! ユニークスキルは 夢幻 ( ゆめまぼろし ) の巨塔――『 夢幻 ( むげん ) 四塔盾 ( しとうたて ) 』!」
「ラクリッテちゃんの塔強化~『プリンセスヴァレション』!」
「『 神守盾 ( しんしゅたて ) 』!」
「『天域大結界』!」
「『究極嫉妬盾』!」
「全力防御であります! 『ロード・オブ・オリハルコン』!」
「全部相殺してやるっす! 『シールドオブセット』!」
「こっから先は通さない! 『主の盾』!」
「全部ふせぎやがりますよ! ――『欲望渦巻く混沌の 闇球 ( やみたま ) 』!」
瞬間、ズバアアアアアアアアアンと門が開き、すさまじい闇の 閃光 ( ビーム ) 魔法をぶっ放す。
これは〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の必殺技『地獄の門、今開かれん』だ。「さっきまでの闇の手は開いてない門から出てたの!?」と盛大にツッコまれ、プレイヤーからは『お 股下砲 ( またしたほう ) 』なる名前で呼ばれたりもした、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉最強最大の一撃だ!
プレイヤーたち曰く、下半身の門から放たれた闇ビームが そんなかっちょいい名前 ( 『地獄の門、今開かれん』 ) のわけがない、とのこと。
溜め攻撃なんだから「待たした」とかけて「 股下砲 ( またしたほう ) 」。
そこに「お」を付けて『お 股下砲 ( またしたほう ) 』で十分だ、と名付けられてしまったのだ。
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉も「待たしたな。喰らうがいい!」みたいな気迫していてもう無理!
こんなの喰らいたくない!
しかし、名前に反してその威力は絶大。
なんと〈ヘカトンケイル〉の攻撃ですら9つの防御スキルのうち、4つを壊されるだけで防ぐことに成功したのに、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の闇のビームは10のうち半分の5つを破壊してきたのである!
しかし、止めたぜ! さすがシエラたちだ!
「今だ、門をぶっ壊せーーー!」
「任せろ! 『獣王の拳を防げる訳無し』!」
ここで総攻撃が〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉本体ではなく、門へと打ち込まれる。そしてドゴーンという音と共に今まで鬱陶しかった闇の手の門が破壊されたのだった。
「オオオオオオンンンンンン!?!?!?」
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が振り向き、目を見開いて驚愕したのを幻視したぜ。
まるで「俺の下半身がぶっ壊されたーーー!?」と言わんばかりだ。
「ゼフィルスさん、こっちは終わったぞ!」
「ナイスだラウ! ――おっし、最後の仕上げ、囲って一気に叩くぞ! タンク組はアタッカーを攻撃から守ってくれ! 圧力を上げろー!!」
「「「おおー!」」」
門破壊を担当していたラウ班が帰ってきて、一気に圧力を上げていく。
「変身を許可する!」
「「「「『大天使フォーム』!」」」」
「「「「『姫騎士覚醒』!」」」」
「『究極変身・ヒーロープリンセス』!」
「「「『女神化』!」」」
もうここまで来たら一気に叩く。
時間が経てば門が復活してしまうからな!
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は大量のレイド級魔法をばらまいてきたが、うちのタンク組がほとんどの攻撃を防ぎ切り、ノエルがバフを、ゼルレカがデバフをじゃんじゃん付与してがっつりダメージを与えまくった。
「オオオ、ンン…………」
「トドメだ行くぞーー! 『 太陽 ( たいよう ) の 聖炎 ( せいえん ) 』! 『 真 ( しん ) ・ 陽光剣現 ( ようこうけんげん ) 』! ―――『アトミック・レイ・サンブレード』!!」
「―――――!?」
そして最後はまたも俺の〈ガラティーン〉が決めてくれて、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉のHPをゼロにする。
「おっしゃー!」
「勝ったわー!」
そしてゆっくりと倒れていく〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉が膨大なエフェクトに包まれたところで大歓声が響き渡ったんだ!
「「「「「わああああああああああ!!」」」」」
I字バランスにできなかったのは残念だったが、去年3000人で挑んだボスにも50人で勝利!
こうして俺たちは、〈万界ダン〉の60.5層を突破することに成功した。