第2021話 〈金箱〉回!エリサが張り切っていたけれど!
第2021話 〈金箱〉回!エリサが張り切っていたけれど!
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉がエフェクトの海に沈んで消えると、ドロップしたのはもちろん〈金箱〉4箱だった!
「イエース! 〈金箱〉4箱ビューティフォー! さらに〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の素材も大量入手だぜ!」
「〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉がドロップを落とすなんて、なんだか不思議な光景ね」
一度倒しているからこそ思う不思議。
アリーナの時はあんなに苦労したのにドロップ無しだったからな。
いや、歓声の雨はすっごく俺の心とかいろいろを満たしてくれたけど!
だが、あれはあくまで練習みたいなもの。
本番はこれ、本来はドロップを落とすものなのだ!
いややっぱり逆だな。……追想の方がドロップするのに 本物 ( アリーナ ) の方がドロップしないとかどういうことだし! まあいい。
今はこのドロップした〈金箱〉たちに集中しないとな!
「なんだか禍々しいオーラのようなものを感じるわ……!」
「姉さま、適当なことを言わないでください」
「でもフィナちゃん! あの〈即死〉の闇の手、なんだか私に通じるものがあるような気がしない!? 『ダークバインド』に見た目そっくりだし、きっと私の専用アイテムとか出るのよ!」
「……可能性は無くは無い、ですか」
「でしょ!」
おっといつの間にかエリサが近くに居てフィナ相手に熱弁を振るっているな。
〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は〈即死〉使いのレイドボスだ。確かに、エリサとシナジーを感じる部分は多い。しかし。
「なんで私じゃなくてフィナちゃんが当たりクジなのー!?」
「姉さまドンマイです。そういう運命だったのです」
「むきー!」
恒例のくじ引きで引いたくじは――ハズレ。
しかも双子の妹であるフィナの方が当たりという、幸先で躓く結果になってしまったのだった。でもエリサはめげない。
「でもフィナちゃんが私の専用装備を引けば解決よ! 大丈夫、今までだって使う人が直接当てたということは少なかったもの! フィナちゃんが当てて私が使えばいいのよ!」
「他力本願、いえ、他力懇願でしょうか? さすがは姉さまです。躓いても全くめげないのは素直に尊敬します。でも私でも使える良いのが当たったら私が使いますけどね」
「今のは話の流れ的にお姉ちゃんに譲るところじゃないかなフィナちゃん!?」
「そんなルールはありません。姉のものは妹のものです」
「そんなルール、お姉ちゃん今初めて聞いたよ!?」
なかなか盛り上がっている様子でちょっとうらやましい。
なお、今回俺のところに当たりクジは――来ませんでした。ぬおー! 最近当たりクジが全然残らないんだけどー!
「ではいきます」
「フィナちゃんお願い! お姉ちゃんに良いの当てて!」
「……〈幸猫様ファミリーズ〉の皆様、お願いいたします」
フィナが祈る。そして〈金箱〉の蓋を掴み、いざオープン!
なんだかんだフィナはエリサには弱い。こうも頼まれてしまってはフィナもほだされているはずだ。きっとエリサ用の何かを当ててくるのだろう。
そう、思っていたのだが。
「杖ですね」
「『解析』します。これは――〈 氷魔 ( ひょうま ) と 常闇 ( とこやみ ) の 霊獄杖 ( れいごくつえ ) 〉と書いてあります」
「氷と闇の杖! フィ、フィナちゃ~ん! お姉ちゃんのために、まさにお姉ちゃんのための杖を当ててくれてお姉ちゃん嬉しいー!」
「ちょ、離れてください姉さま、みんなが見てます。やめ、――やめるです!」
「ほぐほっ!?」
エステルの『解析』結果にフィナへ飛び込むエリサ。よほど嬉しかったのだろう。しかし、みんなの見ている前で妹に抱き着くという暴挙(?)をやらかした姉は、チョップを脳天に受けて沈んでしまったのだった。良いチョップだったよ。
しかも、そこに追い打ち。『解析』したエステルが告げる。
「あの、言いづらいのですがエリサさん、この〈 氷魔 ( ひょうま ) と 常闇 ( とこやみ ) の 霊獄杖 ( れいごくつえ ) 〉は『氷属性攻撃魔法威力+50』や『闇属性攻撃魔法威力+50』が付いていますので、どちらかというとメルト殿向けの杖ではないかと」
「ふえ?」
「え、俺か?」
「たは!」
ここでまさかの展開。
エリサは〈氷属性〉と〈闇属性〉の使い手。てっきりこの杖はエリサ用かと思いきや……、メルトの方がよほど適性があることが判明してしまったのだ。
固まるエリサ。なんだかチーンと効果音が聞こえてきた気がした。
てっきり自分用の〈即死〉系がパワーアップする杖かと思ったら、普通に攻撃魔法を強化する用の杖だった件。これはエリサよりもメルト行きだな。
「フィ、フィナちゃ~ん」
「……ふう。仕方ないですね。まったく」
胸にダイブしてきたエリサを、今度は優しく受け止めて撫でるフィナ。なんだかんだ言いつつフィナはエリサには甘い。微笑ましい光景だった。
「痛たた……フィナちゃんの胸が硬い――ふぎゃ!?」
「それは鎧です。鎧にダイブしたら痛いのは当たり前です」
まあ、すぐにチョップが入っていたが。ダイブしたときゴツンって鳴ってたもんね。
「気を取り直して、残り3個も開けるぞ!」
「キキョウ~、頑張って開けるの~!」
「マシロンもモニカも頑張れ~」
「お、応援されても良いのが当たるかはわかりませんよ!?」
今回、フィナを除けば当たりクジを引いたのはキキョウ、マシロ、モニカだった。
アリスとシヅキを始め3人をみんなで応援する。まずはキキョウから。
「えい! ――レシピ! これは、レジェンドレシピです! よかった~」
「では――『解読』です!」
キキョウが引いたのはレジェンド色のレシピ。
これだけでかなりの価値がある。
即でエステルが〈幼若竜〉を光らせれば、ミミズののたくったような文字がしっかり読めるようになっていた。みんなで覗き込む。
「わ! これすごい、装備全集のレシピです! 魔法使い用ですよ!」
「「「おおー!」」」
キキョウが引いたのは〈 常世 ( とこよ ) と 現世 ( うつしよ ) 装備シリーズ〉。
かなり大層な名前の付いた魔法使い用のトップクラスの汎用服装備だった。
〈即死〉魔法使いに加え、現世にいる者を門に引き込み〈敗者のお部屋〉へと招待する〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉のドロップにこれ以上ないほどあっている名前だな。
これで〈ヘカトンケイル〉からは鎧系、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉からは服系の汎用全集装備がドロップ! バランスもいいじゃないか!
「『即死無効』に加え、各種耐性、それに〈 地獄 ( 敗者 ) の 門 ( お部屋 ) 〉に入らなくなる効果があるみたいです」
「対〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦用の装備、みたいだな」
「これ、学園祭のアリーナで使っちゃダメな装備なんじゃ……?」
「学園祭の目玉、レイドボスが軽く捻られてしまうですの!」
キキョウが当てたのはまさにゼルレカの言うように〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉戦対策の装備だった。これを着ておけば、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の〈即死〉攻撃は何1つ効きませんという装備だな。カグヤとサーシャが早速ツッコんでた。さすがだ。
「わ~、私がドロップしたのを見てください! 〈 彷徨 ( さまよ ) える 魂 ( たましい ) の 昇天杖 ( しょうてんつえ ) 〉レシピだそうです!」
「〈光属性〉と〈聖属性〉!? 『霊キラー』もあるよ!?」
「むしろ〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉はなんで自分特効をドロップしてるですのー!?」
マシロが当てたのは杖のレシピ。だがこれはさっきの 攻撃 ( アタッカー ) 用ではなく、どちらかと言うと 回復 ( ヒーラー ) 用。とにかく浄化が強い真っ白~な装備の絵が描かれていた。
カグヤとサーシャもなんでこれをドロップしたよリッチ!? とツッコんでたよ。
「最後はあたしか。まだ慣れねぇでやがりますが……〈幸猫様ファミリーズ〉のみなさま、よろしくおねがいしやがります!」
最後はモニカが独特なお祈りでパカリ。するとその中には、とある【大罪】持ち用の専用装備レシピが入っていた。
「これは――〈兎賢者装備シリーズ〉全集と書かれています!」
「〈 兎賢者 ( 【セージ】 ) 装備シリーズ〉、でやがりますか!?」
「たは!? 私!?」
最後に当たったのはなんと大罪【色欲】――の下級職、【セージ】の専用装備!
「あ、能力値的には【セージ】の性能がパワーアップするみたい! 『サンクチュアリ』が大変強くなるみたいなこと書いてあるよ!」
「なんだと。まさかここでミサトの専用装備が出てくるのか……!」
汎用装備と専用装備では、もちろん専用装備の方が強い。
そして、この専用装備はもちろん【セージ】の上級職であるミサトも装備できる。
【色欲】と 兎賢者 ( 【セージ】 ) 。相反するっぽいのに闇っぽい2つの 職業 ( ジョブ ) 。
確かに〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉がドロップする装備っぽいぜ。
なんだか視界の端でエリサがズシャーンと背後に雷が落っこちているのを幻視したが、まあうん。そういうこともあるよ。
というわけでエリサの装備は当たらなかったのだった。
ちなみに最初に当たった〈 氷魔 ( ひょうま ) と 常闇 ( とこやみ ) の 霊獄杖 ( れいごくつえ ) 〉はメルトが装備することになったぞ!
ミサト専用装備も、マリー先輩に言ってすぐに作ってもらわないといけないな!