第2024話 上級上位の追想で気づいてしまった竜の言葉。
第2024話 上級上位の追想で気づいてしまった竜の言葉。
「もしかして、ホラー系ダンジョンは今ので最後かしら?」
「そうかもしれないわね。初級で1つ、中級で3つ、上級で4つ、もう8ヵ所よ!」
「ホラー系だけやたら多い気がしますね。ですが、 上級上位 ( ジョウジョウ ) ランク6以降にホラー系が登場したという記録はないはずです」
「ランク6、7、10に関しては攻略まではしていないから断言はできないけど、今までの傾向から多少安心はできそうかしら」
シエラがホッと一息ついていた。
現在66層。そう、ラナやエステルの言う通り、65層までで主だったホラー系ダンジョンと呼ばれる追想フィールドは終わってしまったのだ。
なんてことだ、なんてことだよ! ホラー系もっと頑張れよ! いえ、結構楽しかったです! スクショもそこそこ撮れた。あとで要チェックしなければ。
「ゼフィルス、何を考えているのかしら?」
「――この66層をどうやって突破しようか、それ以外は考えてないぞ!」
「…………」
なぜかシエラの勘が鋭すぎます! あとジト目も鋭くて嬉しいです!
「〈 厳寒 ( げんかん ) の雪山ダンジョン〉、噂には聞いていたが、すごいところだな……カルア、あんまり遠くにいくなよ!」
「ルルー、アリスさん、キキョウさんも離れないでくださいねー」
「あい! ルルがしっかり見てるのです! 安心するのですシェリアお姉ちゃん!」
「ルルお姉ちゃん~見てみて~」
「雪でお城を作ってみました」
「ふぉおお! これはわんだふぉーでぶらぼーなお城さんなのです!」
「全然安心できませんよルルー」
今俺たちがいるのは66層、〈 厳寒 ( げんかん ) の雪山ダンジョン〉。
その名の通り、 玄関 ( げんかん ) から3メートル級の雪で埋まったフィールドがこんにちはしていた。なお、ロリ組は早速雪に突撃してアートを築いている。
「ん。かまくら、いっちょ上がり。リカ、リカ、来て」
「いや。うむ。ではお邪魔しよう」
カルアが何かしてると思ったら、3メートル級の雪に洞窟作って暖を取ってらっしゃった。
〈秘境ダン〉でたくさん作ったことあるもんね。
リカはこんなことをしている場合では、とほんの少し葛藤したが、結局かまくら(?)にお邪魔していた。おかしいな、カイリのおかげで寒さは感じないはずなんだが。
「ルルの腕にかかれば、こんなものなのです!」
「ルルお姉ちゃん、すっごーい!」
「大きい~! すっごい大きな雪だるまです!」
おっと向こうではルルが巨大雪だるまを作り上げていた。20メートルくらいありそう。
強力なSTR数値を持つルルだからこそあの雪玉を転がせたのだろう。
魔法アタッカーのアリスとタンクのキキョウが、それはそれはキラキラした目でルルをすごーいしていたんだ。ルルはとっても自慢げだった。
「さらにこれで完成なのです! 『瞬間移動』!」
仕上げとばかりに巨大雪だるまの頭の上にキキョウが作り上げたお城を載せれば完成。
ルルたちの合作、雪だるま城!?
すごい存在感だぞ! 記念撮影しておかねば! パシャパシャ。
しかし、その瞬間悲劇が起きる。
「イッエ~~~イ!!」
「「「あ!」」」
「〈イエティ〉系の大型モンスターですわ!」
「しまった。和みすぎた」
雪の中から〈イエティ〉系の最終進化系、〈アルティメットイェーイエティ〉が飛び出してきたのである。ボスではなく通常モンスターである。
その大きさ、10メートル級。
雪だるまの半分だった。
「ふふん! ルルたちの雪だるまの勝ちなのです!」
「イッエ~~~イ!?」
あ、〈イエティ〉が「うそやろ!?」みたいな顔して雪だるまを見上げている!
かと思ったら、ルルに――ではなくなぜか雪だるまに躍りかかったのだ。
あ、そっちは違うぞ!?
「イッエ~~~イ!!」
「「「ああ!?」」」
瞬間、粉砕される雪だるま。パンチ一発で文字通りの粉々にされてしまったのだった。これは許されない。
「『精霊王降臨』!」
「『変身・プリンセスメイクアップ』!」
「『時代最強ノ姫侍』!」
「『 勇気 ( ブレイブハート ) 』!」
「イエーイ?」
気が付けば通常モンスター1体の周りに、ものすんごいオーラを出しているメンバーが囲っていたんだ。
「ルルたちが丹精込めて作った雪だるまを破壊するなんて万死、いえ、億死に値します!」
「ルルも怒っちゃったのです! めちゃくちゃ本気モードで成敗するのです!」
「私も助太刀いたそう」
「俺もだ! 勇者からは逃げられねぇぜ?」
「イ、イエイ?」
イエイじゃない。さっきの雪だるまの記念撮影が 遺影 ( イエイ ) 撮影になっちまったじゃねぇか! 殲・滅!
「『天変地異・エレメントヘヴン』!」
「『ヒーロー・スターレイ』! 『ヒーロー・セイバー・モーメント』!」
「『必殺の太刀・六閃華』!」
「『 勇者の剣 ( ブレイブスラッシュ ) 』!」
「アリスもかたき討ちするのー! 『雷神竜・インフィニティ』!」
「私もやります! アリスのそれ、貰いますよ――『完全コピー魔法・真・それ私もやるー』!」
「イ、イエ~~~イ!?!?!?」
チュドドドドドドン。
66層最初のモンスターは、こうして袋叩きというか。雪だるまの代わりにみんなでコロコロして光にしたんだ。
まあ、最上級ダンジョンで遊んだツケとでも思っておこう。
結局ルルたちも「また作ればいいのです!」と言ってたしな。
「ゼフィルス様」
「お、おう。ちゃんと撮影はしておいたから安心しろってシェリア」
「それを聞いてホッとしました」
シェリアの説得も無事終わり、俺たちは改めて66層を進むことにした。
雪山とか普通に遭難の危険があるし大変危険な環境だが、カイリの『安全ルート探知』があれば正解のルートが即時に分かる!
3メートル級の積雪はスキルやら魔法やらで吹き飛ばして進んだよ。あれ、ダンジョンオブジェクトじゃないから乗るとたまに沈むんだ。まあ、情報が集まってからは途中から〈イブキ〉に乗ってちょっと浮きながら突破したんだけどな!
「67層は〈氷海の回廊ダンジョン〉。ここも寒いダンジョンだな」
「寒いの続くとか、困る」
「いや、寒くはないだろ?」
カルアが耳を抑えて寒がっているが、何度も言うけどカイリのスキルのおかげで寒くはないはずなんだ。でも猫が寒がってると抱きしめて暖を取ってあげたくなるのはなぜだろう?
そう思ったのは俺だけではないようで。
「カルア、ならば私に抱き着いてみるんだ」
「ルルも抱き着いてあげるのです!」
「おしくらまんじゅうなの~」
「あったかいですよ?」
「ん。大歓迎」
リカの背中にヒシっと抱き着いたカルアの左右と背中をルルたちがさらにおしくらまんじゅうして大変尊い光景に。
シェリアが「私も寒いです」とか言って速攻仲間に入りに行ったが、何度も言うが寒さは感じないはずなのでエステルが連れ戻していたよ。
そんな67層だが、〈氷海の回廊ダンジョン〉の名の通り、氷の道が浮く海に囲まれた、氷のダンジョンだ。
回廊という名がついているためか、道を歩いていくだけのオーソドックスダンジョンだな。なお、海に落ちれば即〈敗者のお部屋〉行きなので気をつけろ。
ちなみにオリヒメさんが『海路形成』と『冷凍氷河』を駆使して道の幅を大きく広くしてくれたため、誰も海に落ちずに突破できたのだった。
「ここは、覚えてるわ! 〈教会ダン〉ね!」
「68層は〈教会ダン〉の追想、想定通りですわね」
ラナのテンションが高い。ここは別名、ギルドバトルダンジョンとも呼ばれていた、疑似的なギルドバトル〈拠点落とし〉ならぬ〈教会落とし〉が楽しめるダンジョンだったな。
「久しぶりに来たのだから全部落としましょうよ! 第三勢力の強さを天使と悪魔に思い知らせてやるわ!」
「いいな! 本当の〈教会ダン〉と比べる意味でも悪くない案だ! 早速作戦を練るぜ!」
どうやらギルドバトルに飢えていたのは俺だけではなかったようで、せっかくだからと全部の教会へ攻めに出た。32の教会を4チームに分かれたパーティが次々と落としていく光景はとても楽しい。
「―――!」
「ガアア!」
天使と悪魔は進化ルートが多いせいか今までのような単純なアルティメット系ではなく、〈教会ダン〉でも登場したサイズのモンスターが数多く登場した。進化系ではなく、強化体だ。
まあ、確かにあのサイズじゃないと教会に侵入できないしね。
17ヵ所目を攻略した折り返し地点で階層門を発見。でもいったんスルーし、足並み揃えて他の教会を占領しきったよ。
ちなみに29ヵ所目にしてようやくエリアボスが登場したらしいが、俺たちのチームのところに出なかったのが残念。こちらも首尾よく撃破し、32ヵ所のミッションコンプリート。すべての天使と悪魔をこのフィールドから追い出したんだ。
「すべての教会を制圧したわ!」
「みんなお疲れ様だ! いやぁ、とても楽しかったな!」
「歯ごたえがありました。物量、火力共にここまでで一番強かったですね」
「デースが次はもっと力強いと思うのデース!」
「そうですね、なにせ〈教会ダン〉の次と言えば……」
ラナとハイタッチしてしながら階層門へ移動開始。
そう、パメラやシズの言う通り、〈教会ダン〉を攻略し終えれば次のダンジョンは決まっている。
「69層は、〈竜宴ダン〉ね! 〈竜の試練〉の追想もあるのかしら?」
「もしあるとしたら、その報酬はすごいことになりそうね」
ついに69層に到着。ここは〈竜〉のみが跋扈する〈竜宴ダン〉の追想だ。
ラナとシエラの言う通り、もし〈竜の試練〉最上級版があってそれをクリアすれば、とんでもない数のレジェンド装備が手に入った可能性があった。
だが、残念ながら追想ダンジョンに試練は無しなんだ。残念。
その代わり様々なドラゴン種が登場して俺たちを出迎えてくれた。
「バハムーーーーーーート!!」
「ドラアアアアアアアア――ゴン!!」
「クエエエエエエエエエ!!」
「『看破』!! あれは、〈バハムート〉と〈カイザードラゴン〉です! それと、〈フェニックスドラゴオン〉!?」
「つなげて聞くと、〈バハムートドラゴン食え〉になる」
「いやそうはならな――なるよ!?」
「ドラゴンは食料だったですのーーーー!?」
ここでもなんかすごいのいっぱい出たな。
まさかの〈バハムート〉登場である。それ、特殊進化しないと手に入らないのに!
あとカルアには参った。まさかあんな風に鳴き声を繋げるとか、俺たち〈ダン活〉プレイヤーでもその発想は無かったぞ!
おかげでちょっと吹いちまったじゃねぇか!
「狩りましょう。ドラゴン狩りの時間ですよゼニス!」
「クワァ!」
「んん!? 今ゼニス〈食うわ〉って言った?」
「ぶは!?」
「ゼフィルス先輩が吹いた!」
「あ、なんか向こうのドラゴンたちがちょっとビビってるですのー!?」
ぐおおお!? 腹筋にきた……!
カルアなんて誤変換を……。もうゼニスの鳴き声が「 クワァクワァ ( 食うわ食うわ ) 」にしか聞こえなくなっちまったじゃねぇか!
「今ですゼニス! 『神飛・ドラゴンオーバーストライク』!」
「 クワァ ( 食うわ ) !」
「バハムーーーーーーート!?」
「ドラアアアアアアアア――ゴン!?」
「クエエエエエエエエエ!?」
「ぶはぁ!?」
それ繋げちゃダメーーーー!?!?
俺は今日、新たに気づいてはいけない〈ダン活〉知識に気が付いてしまったのかもしれない……!
「ようやく70層ね。ここもバトルタワー型ダンジョン……?」
「本当にここは海の中なのね。なんだか、ちょっとわくわくするわ!」
「分かるぜ」
上級上位ダンジョンのランク10は〈孤島の海底ダンジョン〉。
どういう仕掛けなのか、孤島から海底遺跡とも言えるダンジョンに向かって降りていく変わったダンジョンで、その見た目はまるで水族館。
岩壁の形をした透明な結界っぽいものに分断されて海水は入ってこられない、孤島内部の奥から大量発生してやってくるモンスターたちを蹴散らしてどんどん降りていくバトルタワー型のダンジョンだ。
正直景色だけ見ると最高だな。どんどん海底へ降りていくのだが、海の様子が逐一分かるのである。
とはいえ、追想は1層分しかフィールドがないため、20ウェーブもこなせば海底の最奥に到着。
そこに住まう守護型ボス――〈超新星シャーチ乗り魚人シャークマン〉は結界を透過して海からボス部屋内部に飛び込んでくるというとんでもないボスだった。
〈海ダン〉以外で初めて〈シャーチ〉を目撃したぜ。なお、今回の〈シャーチ〉は足の生えてない本当のシャチ型だったよ。乗っていた人型の〈シャーク〉は〈 人型 ( マン ) 〉にまで進化していてヤバかった。足を生やしてまで陸上に進出した〈シャーク〉、ついに人型にまで進出しやがった! あと〈シャーチ〉と〈シャーク〉がコンビ組んでいるのも地味にじわるポイント。メルトが「シャークとシャーチが組んでるだと!?」と反応して面白かった。
でもぶっちゃけ魚人シャークマンよりもシャーチの方が本体じゃね? と何度も思ったね。シャークマンの銛突きよりシャーチの噛みつき&突撃の方が威力高かったもん。
でも結局は撃破して70層も無事攻略したのだった。