第2028話 〈万界ダン〉最奥到着。来る追想最後の悪魔王
第2028話 〈万界ダン〉最奥到着。来る追想最後の悪魔王
〈万界ダン〉76層。
なんとかエクストラダンジョンを抜けた俺たちを待っていたのは、最上級ダンジョンの追想――ではなく、見たこともないような悪魔の城だった。
「え? なにここ? どこの追想?」
「〈魔界ダン〉に少し似ていますが、私にも分かりません。シズ、どうですか?」
「私もです。特徴的なダンジョンですから、学園ダンジョンではないとすぐにわかりました。ですが、外のダンジョンでもこのようなところは聞いたことがないです」
ラナが辺りをきょろきょろ見渡し、エステルも少し困惑顔でシズに振る。
しかし、そのシズでも困った顔をして首を横に振るだけだ。
ほほう、外のダンジョン、その発想は無かった!
確かに、その可能性はあったな。しかし残念、それはハズレだ。
〈万界ダン〉は別名追想ダンジョン。
しかし、すべてが追想ではないのだ。
75層までは学園ダンジョンの追想で間違いないのだが、残りの76層からは〈万界ダン〉のオリジナル階層になるのである。
最上級ダンジョンの追想は、ないのだ。
「ギャギャー!」
「ウキウキ!」
「ヒャー!」
「あれらは、すべて〈悪魔〉系のモンスターですわ!」
「まるで悪魔城って感じだね! 〈魔界ダン〉とはまた違う雰囲気だよ」
そう、リーナとカイリが言うように、登場するのはすべてが〈悪魔〉系に分類される。
なにせ最上級ダンジョンのランク3が〈天使〉系の出るフィールドだったからな。
ランク4の奥地では〈悪魔〉系が跋扈するダンジョンになるのだ。
上級中位ダンジョンのランク5、通称〈魔界ダン〉に見た目が近いが、ここにはクリーチャーや 幽霊 ( ゴースト ) 系は出ない。すべて悪魔系だ。
「ゼフィルス、まさかとは思うけど」
「大丈夫だシエラ、俺が先頭を行くぜ!」
幽霊が出るかも、と心配そうなシエラが大変可愛い。よくやった悪魔たち! さあ、光になれ! 勇者 ( 俺 ) が許可する!
「先制のー『インフィニティ・バニッシュセイバー』だー!」
「「ギャギャー!?」」
「光になったですのー!?」
ナイスツッコミだサーシャ!
「ギャギャー!」
「ウキウキ!」
「ヒャー!」
「って今度はいっぱい来たよー!」
「この光景、なんか見たことある気がする!」
「〈聖界ダン〉に近いんじゃねぇか?」
「あたしもそう思っていたところでやがります。これは、ランク3の時と同じ拠点攻略型ダンジョンなんじゃねぇですか??」
さすがはツッコミ担当のカグヤ、クイナダ、ゼルレカ、モニカだ。良い意見を突っ込んでくる。気が付くのが思ったよりも早かったな。
その通りだ。ここからはまるで〈聖界ダン〉の 対 ( つい ) になるかのように、悪魔の拠点を攻め滅ぼすダンジョン攻略になるんだ。
実は追想とは〈悪魔〉系が出していた悪魔の幻にして幻想、という設定だったっけ。
「あ! 水晶発見だよ!」
「ナイスサチっち!」
「道を開けるから、サチは飛び込んで」
「オッケー!」
流れで悪魔の城に攻め込むと、ほどなくして〈聖界ダン〉にもあった水晶を発見!
うすうすみんな予想はしていたが、これでここは拠点攻略型のダンジョンだと判明したわけだ。
「〈教会ダン〉の延長かしらね!」
「なんだか不思議な絵がたくさんありますが」
「『絵解き』の対象じゃなさそうですわ。何かの儀式でしょうか?」
攻略法が判明したことでみんなに余裕ができたな。
でもなぜだろう? 50層台や60層台より70層台の方が簡単に思えてくる不思議!
また、エステルが壁に書かれた絵を発見するが、それこそこのダンジョンになぜ追想システムが導入されたかの歴史? が描かれた壁画なんだ。
なんか、悪魔たちが儀式をしているっぽい絵が描いてあるね。
「何もないなら先へ進みましょ! 76層なのに拠点が1つしかなかったから少し物足りないのよ!」
「確かに、まるで1層のような手ごたえでした」
「でしょ?」
さすがはラナやエステル。その認識は間違っていない。
なにせ追想が終わってようやく本陣に到着した、みたいなものだからな。
むしろここからが本番? 入り口はもちろんチュートリアルです。
攻略法をしっかり学んだら、次の階層から本番だ。
77層に到着! ここにある悪魔の城は、なんと2つ!
「偵察に向かったところ、2ヵ所とも〈悪魔〉系モンスターの蔓延るダンジョンでした」
「クワァ!」
「拠点は2つ確認で間違いなさそうですわね」
「アイギス、ご苦労様。それじゃあまず片方に集中攻撃するぞ! もう片方の城がどう動くのかを確認する! 〈聖界ダン〉のように即で援軍に来るかもしれないから十分気を付けてくれ!」
「「「「はい!」」」」
というわけで、2つに増えた城も、攻略開始です。
結果はすぐに表れた。
「ギャギャー!」
「ウキウキ!」
「ヒャー!」
「さすがは〈悪魔〉系、結構手ごわいです、が!」
「私たちの敵ではないのデース! 『大忍法・彗星弾の術』!」
悪魔が集団で襲ってきても〈エデン〉のメンバーはいつも通りだ。
次々と返り討ちにしてはずんずんと城を進んでいった。
「……本当に〈 幽霊 ( ゴースト ) 〉系はいないようね。驚かせてくれたお礼をしないといけないわ」
「ウキ!?」
「『カウンター・レイ・ストリーム』!」
「ウッキーーーーーーー!?!?!?」
それ八つ当たりじゃね!?
そう思っても声には出さない。シエラもちょっと怖がってたんだ。許してあげてほしい。敵さん光にされちゃったけど。
「ねぇねぇご主人様! そろそろ私解禁でいいんじゃないかしら!? 今ならお買い得よ!」
「よーしエリサを買っちゃうぞ。やってしまえー!」
「『ホワイトアウト』! そこから『MP全吸収』! 止めの『夢楽園』!」
「「「~~~~!?」」」
さすがはエリサ。
〈六ツリ〉の『ホワイトアウト』は〈四ツリ〉『雪山吹雪』の上位ツリー。つまり「寝るな、寝たら死ぬぞ!」の〈睡眠〉付与魔法。これで寝ると〈即死〉率大上昇するやつだ。
あとは寝ているやつからMPを吸収して永眠へご案内。〈良い夢をごちそう様〉戦法のコンボである。
〈悪魔〉系でも『即死無効』を持っているモンスターは珍しく、持っていても『即死耐性』までだ。『耐性』ならエリサは普通に貫通してくる。いや、強いわ!
周りのモンスターが9割以上光になったな。
「うふふ。私、ご主人様に買われてしまったわ。もうご主人様無しじゃ生きられないのよ――ふぎゅん!?」
「なに不純なことを言っているのですか姉さま? ひっ叩きますよ?」
「すでにチョップしてるよ!? フィナちゃんいつの間に戻ってきたの!?」
「姉さまの討ち漏らしも寝てましたから簡単に一発で光にして、不届き姉さまを処罰しに来たんですよ」
「処罰!? お姉ちゃんへの愛情は!?」
「そんなことよりも教官。姉さまが失礼いたしました」
「そんなことより!? お姉ちゃんへの愛情よりも優先すべきことがあるとでも!?」
相変わらずエリサとフィナは仲がいい。
エリサの〈良い夢をごちそう様〉戦法を使い始めてからは早かった。
あっという間に80層まで攻略してしまい、守護型ボスを張ってたフクロウとカラスを合体させたような悪魔の〈悪魔軍団長・ストラス〉とラクダに乗った可愛い女悪魔の〈悪魔演奏師・パイモン〉の2体も早々に撃破して突破。
その日は85層までその調子で突破したのだ。
「だいぶ拠点が多くなってきたわね」
「はい。まさか1層ごとに1つずつ拠点が増えていくとは思いませんでした」
「あと、大きいわ」
89層では城の数は14にまで増え、さらに大きさも76層の時とは比べ物にならないほど巨大化。
10メートル級の悪魔や20メートル級のエリアボス悪魔なども出るようになったのだからとっても広くて大変。いや、1つ1つの城が大きすぎる!
水晶が分かりやすいところにポツンと置いてなかったら、捜索だけで大変なことになっていたのは間違いないな。
そうして、俺たちはいよいよ、最奥のレイドボスの登場する90層へと到達したのだった。
「ようやく、最奥ね」
「最後の最後で結構時間が掛かりましたわね。あと、76層以降のモンスターはやはり〈悪魔〉系のみしか登場しませんでしたわ。ということは」
「ええ。ここのボスは、間違いなく悪魔系ね。――ゼフィルスの意見は?」
「ああ。シエラたちの予想通り、ここは悪魔系が出るだろうさ。順番的にもぴったりだ」
なにせ天使系モンスターの〈聖界ダン〉では天使系ボスが、猫系モンスターの〈猫界ダン〉では猫系ボスが登場したのだ。ならば、後半悪魔系しか登場しなかった〈万界ダン〉でも悪魔系ボスが登場するだろうというもの。
それに、俺たちには別の意味でも確信があった。
「30.5層のレイドボスは、一昨年の学園祭で第一アリーナに呼び出されていた〈ヘカトンケイル〉でしたわ」
「ええ。そして60.5層のレイドボスでは、同じく学園祭の第一アリーナで去年登場した〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉ね。ということは」
「はい。ここは今年の学園祭で第一アリーナに登場するレイドボスの可能性が高いですわ! そしてそのレイドボスは、未だに無敗。悪魔の中の悪魔と呼ばれている強力なボスモンスターですわ!」
そう、ここはあくまで追想ダンジョン。
30.5層で学園祭1年生編の〈ヘカトンケイル〉、60.5層で学園祭2年生編の〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉とくれば、もう90.5層に居るのは学園祭3年生編で登場するレイドボスだろう! と予想するのは簡単なことだ。
「しっかり情報を入手しておきましたわ」
「さすがだなリーナ! 早速共有しよう!」
今日は8月28日だ。明後日から夏祭りが始まる。なんとか間に合いそうだぜ。
とはいえ今日レイドボスを撃破しないという選択肢はない。
俺たちは早速情報を共有する。
ここに登場する悪魔の王のことを。
「未だに学園祭では誰も勝ったことがないのね」
「はい。〈ヘカトンケイル〉は過去に何度か、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉も去年1度倒すことに成功しましたが、悪魔の中の悪魔、悪魔の王だけは一度も勝った記録がありませんでしたわ。ほとんどが第一形態でやられたみたいですわね。データをなるべくかき集めてきましたわ」
「さすがだリーナ! よくここまで調べてくれたな! みんな、これを元に作戦を通達するぞ!」
リーナの調べてきた情報を元に、作戦を今即興で考えたと見せかけて説明する。
料理アイテムでお昼を食べ、しっかりとバフを体になじませたら、いよいよボス戦の時だ。
未だ誰も勝ったことが無いボスということでみんな緊張しているのが分かる。
「みんな、〈万界ダン〉最後のボスだ。だが大丈夫。〈ヘカトンケイル〉の時も〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉の時も、俺たちは50人で勝ち進んできた! このレイドボスにだって負けないさ! 気合入れていくぞーーー!!」
「「「「「おおーーー!!」」」」」
レイドボス部屋に入ると、超が付くほど巨大な悪魔城が見え、その上空に魔法陣が発生。45メートル級の巨大なレイドボスがゆっくりと顕現したのだ。
なんて威風堂々な佇まい。
これこそ人類が未だに勝ったことのない悪魔の王!
その名も――――〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉。
そいつの見た目はクマだった。