第2036話 リーナとデートは食べ歩き!最上級料理爆誕!
第2036話 リーナとデートは食べ歩き!最上級料理爆誕!
ラナを送り届けると、次に向かったのは〈戦闘5号館〉の校舎内。
新しく建ってからすでに1年以上が経過しているが、まだまだ新築と思える綺麗さ。掃除が行き届いているなと感じるぜ。
人もまた多い。まだ出来てからそう時間が経っていない建物だからな、関心を向けながら歩む人も多い様子だ。
「ふふふ、〈幸猫様〉のお面のお力は素晴らしい。未だに誰にも声を掛けられてないんだぜ」
校舎内を1人で堂々と歩いているにも関わらず俺だとバレない。これも〈幸猫様〉のお力だ。そんな力、このお面には無かったはずだが。きっと〈幸猫様〉の加護的なものが宿っているに違いない。
「ねぇーねぇーママー、私もあの猫ちゃんのお面欲しい~」
「あら~、それじゃあお面屋さんを見に行こうかしら~」
おっと、お目が高い幼女が居るな。ふっふっふ、〈幸猫様〉が欲しいとかとてもよくわかるんだぜ。
「ねえ、あのお面って見たことない?」
「確かに、さっき殿下と勇者君が着けていた猫のお面にそっくりだけど、もしかして?」
む! こっちは察しの良い女子か!? いかん、バレる!?
〈幸猫様〉どうか我に幸運を!
「あの!」
「あなた、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ひぃ!? あなたたちは!? 勇者ファンの!」
「ひょわぁ!? 全然よろしくないんだよ!?」
「話は向こうで聞きましょう」
「「ひゃ~~~!?」」
あれ? 〈幸猫様〉に祈ってたらいつの間にか察しの良い女子が居なくなってる。
…………これは、〈幸猫様〉のお力か?
さすがは〈幸猫様〉だ! 万が一バレたときのアフターサービスも万全なんだぜ!
改めて〈幸猫様〉の偉大さに感銘を抱きつつ、俺はある教室に到着した。
「あ! ゼフィル――ではなくて、あなた、こっちですわよ」
そこに居たのは――浴衣に着飾った麗しのリーナ。なお、お面装着済み。
そう、次の11時から12時までの部はリーナとエンジョイの予定だったのだ。
だけどその言動がなんだか危うい。多分、周りに変装している俺がゼフィルスであるとバレないように敢えて言っているのだろうが、まさか「あなた」をチョイスするとは、まるで新婚夫婦だよ! あれ? でも新婚夫婦って夏祭りで待ち合わせとかするのかな?
「リーナ」
俺は手を振りながらリーナに近づく。
うん。顔は分からなくても俺の知っているリーナに間違いはない。
「ゼフィルスさん。その失礼しました」
「いいさ。おかげですぐわかったからな」
コッソリと話す。
でもあなたなんて呼ばれたのは初めてのことで、ちょっと嬉しかったのは秘密にしておこう。
「それより待たせたか?」
「いいえ、時間ぴったりでしたわ」
そこでお互いお面を横にずらし、改めてリーナの姿を見る。
美しかった。
リーナの姿は、とてもおしとやか、この一言に尽きる。
ほんの少し紫に染まった白の浴衣をベースに、紫のアジサイや花びらの絵が散りばめられていて紫の帯を締めている。髪は2つのお団子にまとめられており、手には紫の巾着袋、足は漆塗りの下駄という、完璧な仕上がり。
顔はうっすら化粧をしているのだろう。紅がとっても色っぽかった。
「清楚美人……」
「ゼフィルスさん?」
「いや、リーナの姿がとってもきれいで思わず見とれてしまったんだ」
「ま、まあ。ゼフィルスさんったら。でも気合を入れた甲斐がありましたわ」
そうにっこりと優しく微笑んで見つめてくるリーナに、ちょっと照れる。
「(やはりゼフィルスさんが清楚系に弱いというオリヒメさんの情報は当たりでしたわね)」
「さ、さて、遊べる時は1時間しかないからな。存分に楽しもうか! ここがリーナおすすめのお店なのか?」
あんまり見とれていると時間があっという間に過ぎてしまいそうなので、ずっと見ていたい誘惑を振り切り、リーナに問う。
「はい! ここでは、とても美味しいクレープが食べられるのですわ」
「クレープか!」
ふと思い出すのは1年生の時の夏祭り。
あの時もリーナはクレープを所望していた。
リーナはクレープが大好きなんだよなぁ。なぜかたった2年しか経っていないのに懐かしい気持ちになる。これも追想ダンジョンの〈万界ダン〉の影響かな? あそこ、別名思い出ダンジョンとか呼ばれているからな。あそこを攻略したあととか、ふと思い出が蘇るんだよ。
「ゼフィルスさん、この出店ですわ」
「おう。はは、リーナと一緒に回るときはいつも食べ歩きをしている気がするな」
「わたくし、屋台が好きなんですの!」
「知ってる」
リーナは屋台とか出店とか、こういうお祭りなどで出るお店のものが結構好きだ。というか、おそらく買い食いとかがそもそも好きなんだと思ってる。
聞いた話では、リーナの実家では結構厳しめに育てられたらしく、その反動でお祭り大好きになったとか。買い食い好きもその延長だろう。
「実は10時からすでに色々回っておりまして、いくつか戦利品を手に入れておりますの。一緒に食べましょうゼフィルスさん」
「それはいいが、一緒に回らなくてもいいのか?」
「もちろん、後半の30分は一緒に回りますわ!」
「了解だ」
リーナが待っていた教室はクレープ販売店だったらしく、昼食用の肉や野菜、キノコなどが入ったクレープから、ホイップクリームとカスタードのお菓子クレープまで、様々な種類が揃っていた。
「うわ、どれも美味そうだな」
「そうでしょう? わたくしもすぐに目を付けましたもの。ちょうど空いていて、ここだと思いすぐにチャットをお送りしましたわ」
「だからここにいたのか」
リーナとの待ち合わせ場所は事前に決めていたのではなく、ラナを送り届けた直後くらいにチャットで届いた場所だった。時間内に到着出来て本当に良かったよ。
「ゼフィルスさんは何にいたしますの?」
「このグラタンクレープとほうれん草とキノコのバタークレープは食べてみたいな! リーナはどうする?」
「わたくしはデザートで十分ですわ。イチゴとホイップのものをくださいな」
「毎度あり!」
リーナは今までの時間も屋台巡りをしていたらしいので、がっつり系ではなくデザート系を注文。
俺は昼食用の2点を注文した。
すごかったよ。
作りおきのクレープ生地をまるでタルトのような形に整えたかと思うと、グラタンを注いで熱を入れて完成さ。バーナーっぽいものまで使って上に乗せたチーズとパン粉に焦げ目がつくまで焼いてあるのも好ポイント。いや、絶対美味いだろ!
これ本当にクレープなのかな?
もう1つは総菜系クレープ。
刷毛 ( はけ ) でバターを生地に広げたらそこにほうれん草とベーコンのソテーが乗せられてクルクルされた。お好みでコーンもつけられるというのでお願いし、受け取ると、すさまじいバターの香りが鼻を抜けていったのだ。
これも楽しみすぎる!
しかもこれ、どうやら俺たちが〈食ダン〉の追想で手に入れてきた最上級お野菜などが使われているらしいのだから余計に期待が高まる。
最後にリーナのクレープ。
ホイップクリームを贅沢にたっぷりと入れ、イチゴもなんと10個も入れちゃうイチゴデラックス。カスタードやチョコ、他の果物は入れない、シンプルこそ至高という一品だった。
以前の巨大ケーキの時も思ったけど、リーナってホイップクリームにイチゴの組み合わせが大好きだよね。
「それではそこの席でいただきましょう!」
「ここにもテントが! 中は――おお、広い! それにいくつも個室があるのか!」
「使用中の看板を垂らせば20分まで個室は使用可能ですわ」
「すげぇな大量個室付きテント!」
以前シエラと過ごした、ちょっと大人向けバーのような雰囲気ではなく、中は飲食店の様相。結構大きなテントの中にいくつもの個室が作られている作りをしていた。個室だけではなく、カウンターやテーブル席もあるな。テントの中とは思えん!
「最近、お祭りでは席確保のためにテントを使うことがスタンダードになってきましたからね。テントの売れ行きがすさまじいらしいと聞きますわ」
「そうなのか!」
「ちなみに〈アークアルカディア〉の【錬金術師】さんたちも作ってましたわよ」
「あ、そういえば少し聞いたことあるかもしれない」
「はい。テント機能付きのレシピは〈エデン〉も結構持っていましたから。生産をお任せしたのですわ」
すごいことになってるな。
確かに、これだけ大きな空間を一時増設できるんだからやらない手はない。
学園の生徒数は、年々増加傾向にあるからな。食べる場所が足りてないらしいのだ。
そんな話をしながら個室の1つに入ると、買ってきたクレープをいただく。
「それじゃあ、いただきます!」
「わたくしも、いただきますわ」
まずはグラタンから。
ふお!? とろ~りチーズと濃厚なグラタンのインパクトが味覚と嗅覚を突き抜けていく~!?
「これ美味いぞ! 分かってたけど、これすっげぇ美味い!」
「ふふ、やはりあの店に狙いを定めて正解でしたわ」
たった1時間で狙いを定めてしまうリーナがすごい。
続いてほうれん草入りのバタークレープ。
サラダクレープの亜種だ。
パクっと食べれば突き抜けるのはバターの香り。それはそれはすさまじく、たっぷり使われているのだと分かる香りだった。
味わいも良い。やはり濃厚なバターのソテーは美味い!
「これも良いな。リーナにも是非味わってもらいたいほどの一品だぞこれ!」
「こちらのイチゴデラックスも素晴らしいですわ! このホイップクリームの甘さ加減が絶妙で、わたくしの好みど真ん中ですわ」
おお~! リーナ絶賛!
好みの味のホイップクリームとか、なかなか出会えるものじゃないからな。
リーナが「これはいくつか購入を、いえ、いっそ専属契約を」とか呟いていた気がしたが、きっと気のせいだろう。
ここでリーナが何かに気が付いたかのように顔を上げる。
「はっ! これだといつもの食べ歩きですわ。せっかく2人きりなのですから、もっと甘い雰囲気にならなければ……」
「どうしたリーナ?」
「ゼ、ゼフィルスさん、そちらも食べさせてくださいな?」
「もちろんだ。好きなだけ食べてくれ」
「ひ、一口で十分ですわよ? それじゃあ、あーん」
リーナが目を瞑り、小さい口を開けてあーん待ちをしている!?
うっかりそれに見とれてフォークの手が止まると、片目を開けてチラッとこっちを見たリーナに首を傾げられた。
「ゼフィルスさん?」
「お、おう。それじゃあいくぞ。あーん」
リーナが俺の2品を一口ずつ食べる。
「ん~! これは昼食としても当たりですわ! さすが〈食ダン〉の追想のお野菜を使っているだけありますわね!」
「リーナもとても気に入ったみたいだな」
特に最上級ほうれん草が使われたソテーが美味い。グラタンも超美味しい!
「はい! ゼフィルスさんも是非こっちのイチゴデラックスを食べてくださいまし」
「お、それじゃあいただきます!」
「では、いきますわ。あーん」
リーナからクレープをあーんしてもらうのはもう何度目だろう?
最初こそ照れたものだが、今ならば少しの照れで……いや、やっぱり何回やっても照れるな! 見ればリーナの顔もいつの間にか真っ赤になってる。
「あーん。――うん、美味しい!」
「よ、良かったですわ!」
あまーい! そして美味い!
イチゴの甘さと酸味がまた絶妙で、ホイップクリームの味をさらに引き立てていたんだ。逆も然り。
うん。リーナが目を光らせる理由も分かるぜ。
軽めの食事を食べ終えると、後半は散策に移った。
リーナと手をつなぎ、お面を横に着けて校内を歩き回ったよ。
いやぁ、楽しかったぁ。
でもメインはやっぱり食べ歩きだった。
この時間にリーナと一緒に散策できて良かったよ。