第2039話 夏祭り1日目の終わり。閉祭ぎりぎりまで遊ぶ!
第2039話 夏祭り1日目の終わり。閉祭ぎりぎりまで遊ぶ!
ゆったりとしつつも、最後までダンスで楽しんだアイギスとゼフィルスの時間ももう終わりだ。
「そろそろ時間ですね。名残惜しいです」
「アイギス、楽しかったか?」
「はい、とっても。できればこの時間がいつまでも続けばいいのにと思うくらいでした」
「そう言ってくれると俺も嬉しいな。俺も楽しかった」
ダンスが終わってもしばし両手を繋いだまま正面から見つめ合ってしまう。
それくらいなんだかこの時間が名残惜しかった。
だが、いつまでもこうしているわけにもいかず、どちらからともなく手を離す。
「ここで別れちゃっていいのか?」
「はい。この後ここでアルテたちが合流することになっていますので」
「わかった。それじゃあな」
「はい。ゼフィルスさん」
そう手を振ってゼフィルスが去っていくと、その背中をジッと見つめていたアイギスにすぐ話しかけてくる者たちが現れる。
「アイギス姉さま、見てましたよ」
「……何を見てるのですかアルテ」
もちろんアルテである。外向きの言葉遣いから、他にも誰かが居ることを知ったアイギスがゆっくり振り返ると、そこには顔を赤くしたサーシャとカグヤの姿が。
サーシャとカグヤはアイギスの1つ前にゼフィルスと遊んでいた組。
どうやらそのままアイギス観察班に加わったようだ。
「だってアイギス姉さまがどこまでいけるか、気になったんですもん!」
「気になったんですもん、ではありません。せっかくの夏祭りだから楽しめばよかったものを」
「十分楽しみましたよ! ――ね、サーシャさん、カグヤさん?」
「はい。それにアルテさんとも仲良くなれたですの!」
「3人でお祭り中のデートを尾行するの、なんだか楽しかったんだよ~」
どうやらこの3人はアイギスとゼフィルスのデートを肴に親睦を深めたらしい。
追跡するドキドキ感が、いつも以上に絆を強めたらしかった。
同じギルドメンバーなんだから仲良くすることは良いことだ。でもそのやり方が問題。叱ることもできず、アイギスはふうと息を吐いて流すことしかできなかった。
「それで? それで? アイギス姉さま、何を話していたんです!? さすがに声までは聞き取れなかったんですよ!」
「私たちも気になっていたんですの!」
「大人っぽい余裕のある感じのデートだったよね~」
「大人っぽい余裕のあるデートですか。そうですか。意識していた通りに進められてよかったです」
「あ、アイギス姉さまが照れてます! 大丈夫ですよ! お似合いっぽかったですもん!」
見ていた3人からの感想が自分の意図した感じだと知れてデートの成功を確信するアイギス。内心グッとガッツポーズ状態だ。多分頬も赤くなっていることだろう。
だが、余裕を意識しすぎただろうかとか、もうちょっと攻めればよかっただろうかとか、後悔が無いわけではない。最後の夏祭りだもん。それが終わってしまってなんとなく空虚な感覚もしているのだ。こういう時は人と話すに限る。
「その辺、私ではわかりませんでしたから、傍から見ていた3人に反省点など意見を聞かせてもらいたいのですが」
「もちろん私はいいですよ~。それじゃあ残りの時間お祭り回りながら感想会ですね!」
「私も付いていくですの!」
「私も参加するよ~」
「ありがとうございます」
こうしてアイギスとアルテ、サーシャとカグヤは残りの時間いっぱいまでお祭りを楽しみながら先ほどのデートについて色々話し合ったのだった。
「あとアイギス先輩の浴衣が素晴らしいですの! これ、アルテさんが着付けたんですの!?」
「鮮やかで力強くて、アイギス先輩の魅力を存分に引き出してる! 着付けも完璧だよ~」
「……アルテ」
「ん? なんですか?」
「着付け、ありがとうございました。おかげでとても楽しいひと時を過ごすことができました」
「えへへ~。どういたしまして!」
◇
アイギスと別れたあと、午後8時から9時の部は〈エデン〉メンバーの中でもまだ常識が残っている貴重な存在、モニカ、ゼルレカ、クイナダの組だった。
さすがに夜も遅くなるからこの時間から女子と待ち合わせはどうかなとも思ったのだが。
「あたしらLV100でやがりますよ? まったく問題ねぇでやがります」
「だな! あたいらなら拳で黙らせられるぜ!」
「装備は心もとないけど、いざとなれば〈マイセット早着替え〉という手もあるからね」
とのことで、もう〈エデン〉の女子たちは朝だろうが夜だろうが危険はなさそうな予感だ。確かに、この3人が揃っていればどうにかできる人は少ないだろうな~。
3人とも浴衣にあったお祭り用の巾着袋型〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉を腰から下げておくそうなので、〈マイセット早着替え〉ですぐにフル装備に換装もできるだろう。
モニカたちとは、体を動かす系で遊んだ。
もう夜なのに、夜だからこそ面白いナイトボールなる、暗闇に潜む的を撃ちぬけ的なゲームにハマったのだ。チーム戦で、2対2で分かれて的を死守するルールで3つの的を撃ちぬかれたら負け。相手のチームは暗闇で見えず、的はレールによって動かすことができる。車輪の付いた3つの的を動かし、どこに的があるかを絞らせないようにしつつ戦略的に的の位置を掴んで迎撃する。これがかなり楽しめた。そして。
『――みなさん夏祭り1日目お疲れ様、いよいよあと10分ほどで 閉祭 ( へいさい ) し――』
そんなアナウンスが聞こえてきたんだ。
「うそだろ? もう時間!?」
「うえ!? まだ1勝しかしやがっていませんのに!」
「私は4勝したから満足かな~」
「ほとんど独占でここ使わせてもらっちゃったな」
あまりお客さんがいないのが不思議なくらい面白くて、気が付けばあと10分で9時。
さて、急いでどこか他のところに行くか、帰りの準備をするか、それとも残り続けるか。
「みんなはどうする?」
「「残る!」」
ゼルレカとモニカのセリフがかぶったな。2人の勝率は俺たちの中で最も低いのでこのままじゃ終われないという雰囲気だ。
「このままじゃ終われないぜ!」
あ、実際言ってる。
「そういうことでやがります。ゼフィルス先輩とクイナダ先輩は向こうにつくでやがりますよ!」
「ふっふっふ、その挑戦、受けて立とうじゃないか! ――な、クイナダ?」
「もう、あと1戦で終わりだよ~」
早ければ3分で決着することもあれば、長ければ10分以上掛かることもある。
結構ぎりぎりになるな。ご迷惑をおかけします!
でもここの支配人というか、運営する学生はニコニコ状態だ。これは売れると確信した顔つきをしている。俺たちしか客が居ないけど本当に大丈夫か?
その確信が勘違いじゃないことを祈るんだぜ。
「うおらー!」
「こらゼルレカ! 声を出すなでやがります! 音から位置を探られるでやがりますよ!」
「そこだよー!」
「ああ!? 的が1つやられた!?」
「言わんこっちゃねぇです!?」
ふっふっふ、的というのは基本ゼルレカかモニカのどちらかが押しながら動かしている。故に人の声がする方にボールを投げれば的をやれる可能性は高い。
ボールが飛んでくる方向もヒントだ。そっちに人がいるってことだからな。まずは人を見つけてそこへボールを放るのがセオリーと見たね。
「そこと見た」
「ぎゃー!? 2つ目の的がやられやがったでやがりますー!?」
向こうの暗闇の中からモニカの悲鳴が聞こえたな。モニカの声もヒントだったんだ。
的は単線の線路を左右にスライドさせるだけの簡単な作りだ。直線に3つの貨車がある感じ。
そして投げる側はその後方に待機しながらボールを投げている形。
なので当てずっぽうでも当たる時は当たるが、音に集中すれば結構絞り込める。
ほら2台の的が一気にやられて最後の的をやらせないよう慌てて動かすと。
『コンッ』
貨車と貨車がぶつかった音が聞こえてきた。
「そこだよ!」
「そこだな!」
「「ああーーー!?」」
貨車の位置がバレてドーン。ゲームオーバーの悲鳴が聞こえてきた。
「がああ! なんで負けるんだ!? ちゃんとゼフィルス先輩やクイナダ先輩の声がするところに投げてんのに!」
「いや、的が周囲に無い時に声出してるしな」
「それくらいはね~」
むしろ的とか動かしたら音で逆に位置バレるじゃん。
また、一度ボールが投げられたところは相手が的が無いと思い込んでいるからそっちに3台とも移動してしばらく放置しておけば割とボールは来ないことが分かっている。ゼルレカとモニカには秘密だけどな。
「イエーイ!」
「イエーイ!」
クイナダとハイタッチしていると、閉祭時間の5分前。
「みんな、帰るぞ!」
「くー、次は絶対勝ってやるでやがります!」
負けず嫌いなモニカが決意を固めているが、俺的にはもうやることは無いんじゃないか? と思っている。
3人を福女子寮へ送り届ければ解散だ。
夏祭り1日目は、これで終わりだな。