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第2040話 夏祭り2日目の最初はハンナとフライングデート

ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~ — kakuyomu.jp · All chapters

第2040話 夏祭り2日目の最初はハンナとフライングデート

「ゼフィルスく~ん? あ~さ~だ~よ~?」

「むにゃ……ハンナ?」

「う、うん。起きた?」

「あ~起きた。って、もうこんな時間か!?」

「うん。ゼフィルス君ぐっすりだったよ?」

朝のいつものハンナの目覚まし。

だが、時計の針は8時きっかりを指していたんだ。

いつも6時台には起きることを習慣としている俺からすると、超寝すぎである。

いや、最近はそうでもない?

ふっ、どうやら昨日の夏祭りで 覇者 ( はしゃ ) ぎすぎてしまったようだ。

「ゼフィルス君、今日の予定は覚えてる?」

「もちろんだ。朝一番はハンナの予定だからな」

「うん!」

今日は夏祭り2日目にして最終日。

そのトップバッターは、なんとハンナだ。

いつもラストがお好みのハンナが朝一番とは……いったい何があったのかは聞くまい。こういうイベントの俺の予定は、俺自身ではなく女子たちの手によって決められるのである。ハンナが朝一番に一緒に夏祭りに行きたいと言えば、それを叶えてあげるのが俺の使命だ。

「朝食はどうする? 軽くとっとく?」

「……じゃあ軽く」

「うん、今用意するね。ゼフィルス君は顔洗ってきて」

「はーい」

なんだろうこのやり取り。

いつまでたっても体中を走るこそばゆい感じが慣れません!

でも毎日でもしたいと思ってしまうんだ。不思議!

普段のイベント時なら朝食は取らずにお祭りの露店で朝昼兼用で済ますところだが、ハンナの朝食が食べられるのもあと少しかもしれないと思うと勿体なく思ってしまうのだ。せっかくだから食べる! たとえ露店で食べる量が減ってしまってもハンナの料理は食べたい!

「はい! 今日は軽めにオムレツとパンとコンソメスープだよ~」

「おお~!!」

オムレツ!

ハンナのオムレツは毎回中に入っている具材が変わるので楽しみなのだ。

ツナだったりベーコンだったりほうれん草だったり牛肉だったりと千差万別。

でも毎回美味しいのである。果たして今日は何かな?

「はい。デミグラスソースをかけて食べてね~」

「このソース、ハンナが作ったの!?」

「う~ん、本当は作りたかったんだけど、時間かかるからミーア先輩に頼んだんだ。ほら〈食ダン〉の追想ダンジョンで手に入れた食材をふんだんに使ったって聞いたよ。このコンソメスープもだね」

「ほほう~、あれか!」

思い出すのは〈万界ダン〉71層に登場した〈食ダン〉の追想フィールド。

あそこのフィールドで2日ほど食材狩りしまくってミリアス先輩に流したからな。

これはその成果であり、お礼ということだろう。

特に手間がかかるデミグラスとコンソメをいただいたようでありがとうございます!

早速オムレツにかけていただきます。

果たして今日のオムレツは何が入っているのでしょう? パクリ。

「んん! これは……チーズか!」

「蕩けちゃう感じをイメージしました~」

「確かにこれは蕩ける~!」

ただのチーズ、されどチーズ。

チーズがインする美味しさはまさに濃厚。オムレツの中心地にあるために常に温かく、冷めず、蕩けているのである。それが口の中に入った瞬間蕩けて飛び出し、幸せいっぱいにしてくれるのだ。

「美味しい~!」

「ふふ、良かった~」

パンも合わさってあっという間にペロリと平らげてしまう。

デミグラスソースの采配も完璧だった。

しかし卵自体も濃厚で負けておらず、しっかりと自己主張して最後まで口の中を楽しませてくれたんだ。

朝からこんなに贅沢しちゃって良いのか? 良いよな!

「おお! このコンソメスープも絶品……!」

「ミーア先輩の力作なんだって~。これでまだ料理アイテムじゃないんだから最上級食材ってすごいよ~」

「これは、また採り尽くしに行かなくてはなるまい……!」

コンソメスープは食材の旨味たちが溶けだした最上のスープ。

最上級の食材たちの美味さがここにぎゅっと凝縮されていたのだ。

端的に言おう。美味しかった。ただただ美味しかった、と。

これを配ったら〈エデン〉メンバーの目の色が変わるぞ? しばらく食材集めだけに奔走しちゃうんじゃないかな?

「これのことはしばらく黙っていよう」

「う~ん。その方がいいかも? ゼフィルス君に任せるね」

「おう。それじゃあ準備しようか」

「うん! あ、ゼフィルス君、良かったらお散歩行こ!」

お祭りが始まったら1時間交代。でもお祭りが始まる前ならいつまでも交代しなくていいのだ。ちょっとした裏技だな。

以前ハンナと、夏祭りでは2人だけの時間をたくさん作ると約束したが、こういう形になったんだ。

時刻はまだ9時を回った時間だが、浴衣姿で朝の散歩としゃれこむことになった。

さすがに一緒に寮から出るところは見せられないので、福女子寮で待ち合わせして、改めてハンナを迎えに行く。

この待ち合わせみたいなものが重要らしい。

福女子寮に到着すると、相変わらず庭でお茶している令嬢さんたちが俺を見てざわめいていた。

「あ、ゼフィルスく~ん」

「ハンナ!」

そんなところへ駆けてくる美少女現る!

もちろんハンナだ。

そしてハンナの姿は、俺を起こしに来た時とは変わって、浴衣姿だったんだ。

きっと〈マイセット早着替え〉をしたに違いない。あれは一度着て登録すると、即着替えられるからな。

「えっと、どうかな?」

「すげぇ似合ってる。可愛い……」

「え、えへへ~」

ハンナの浴衣はピンクをベースとしたもので、胸、腰、足のところに美しい花の絵が描かれているものだった。いや、これは――。

「これは、花とチョウチョの絵が描かれているのか」

「うん! その、ゼフィルス君ってチョウが好きだよね?」

「!」

そう言ってハンナが上目遣いで俺を見る。

ちょっとドキッとしたんだ。

確かに俺は去年の夏祭り、ゼフィルスの名に 因 ( ちな ) んだ チョウの絵が描かれた浴衣を着ていたのだが、ハンナはどうやらそれを覚えていてくれたらしい。

どうしよう。俺も去年の浴衣を引っ張り出してお揃いにするか!?

「覚えていたのか?」

「もちろん。ゼフィルス君のことだもん。忘れないよ」

そんなことを言われたら嬉しくなっちゃうじゃないか!

思わずハンナの手を掴む。いや、手をつなぐ。

「あ……」

「テンション上がってきたぜ! 行こうハンナ!」

「うん!」

もう福女子寮のざわめきも耳に入らない。

俺はハンナと手をつないでそのまま散歩デートとしゃれこんだのだ。

その辺をぶらぶらしながらハンナとしゃべり、遠回りしながら夏祭り会場である〈戦闘5号館〉に向かう。

ちょうど到着したところで10時となり、夏祭り2日目がスタートしたんだ。

「わわわ、すごい人~!?」

「これでも会場が〈戦闘2号館〉と〈戦闘5号館〉で分散されているおかげで一昨年よりは人が少ないらしいけどな」

「人波でおぼれちゃいそう~」

「ならもっとくっつくしかないな。ハンナ、おいで」

「ひゃ~!?」

俺は昨日ラナにもやったあれを実行。ハンナを俺の斜めすぐ横に立たせて右手でハンナの右手を掴み、左手でハンナをかばうようにして抱き込む形をとる。

「ゼフィルス君!? あのね、なんだかとっても近いんだよ!?」

「これくらいくっつかないと人波に攫われちゃうぞ? ハンナなんか特にな。ほら、もっと身を寄せるんだ」

「ふえ~!?」

ほとんど密着状態でゆっくり人波に合わせて歩いていく。

歩きにくいが、歩みがゆっくりなので一歩一歩確実に動かせば問題ない。

でもハンナがくっついているのでとっても大変です。何がとは言わないが。ハンナ、香水でもつけてるのかな? 朝と香りが違うんだけど??

そんなちょっとドキドキの人波大脱出は無事、校舎に入ったところで解消された。

「ここまでくれば大丈夫か?」

「う、うん。そうだね。もうちょっと人波にのまれていてもよかった気がするけど」

「ん? なんか言ったか? 後半聞き取れなかったんだが?」

「う、ううん、なんでもないんだよ! そ、それより時間がもったいないから校舎を回ろ!」

「おう、そうだな」

顔を真っ赤にしたハンナが大変可愛い。

しかし時間を見れば、なんとすでに10時20分。

位置が悪かったな。おかげで校舎に来るまでにこんなに時間が掛かってしまった。

でもなぜだろう? 別に悪くなかったと思う俺が居る。不思議!

残り時間は少なかったが、それでもハンナと回った校舎は楽しかった。

「ゼフィルス君ゼフィルス君! 見てみて! 〈激闘・カエル対戦〉だって!」

「どのチームが勝つか当てられたら景品……。コインゲームかな?」

「これゴーレムなんだ~」

これ、どの辺が夏祭り? というゴーレム系のおもちゃに見えるドンパチするお店があったり。

「お、ハンナあれを見てみろ!」

「何か見つけたのゼフィルス君!?」

「〈生徒会〉主催、生産隊長様が作った歴代ポーションの展示だってよ」

「ひゃー!? ゼフィルス君恥ずかしいから見ないで!?」

文化祭でもないのになぜかハンナが作った貴重なポーションたちが飾られた部屋があったりと面白かったんだ。あと ハンナ ( 生産隊長 ) 展はなんか厳重な警備が敷かれていたね。警備員が俺とデートするハンナを見てとてもうろたえていた気がするけど。お互い見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。

「は~。もうこんな時間か~」

「あっという間だったな」

「うん……」

時間は10時55分。そろそろ終わりの時間だ。

「ゼフィルス君、楽しかったね」

そんなことを言いながらも、まだまだ遊んでいたいと顔に書いてあるハンナを見て、俺の口が勝手に開く。

「俺もだハンナ。また来年も、夏祭りに来ような」

「!」

気が付けば俺は、そんなことを口走ってた。

来年以降の約束とかはあまりしない俺が、ハンナにはまた来ようと無意識に言えたんだ。俺も自分で言ってて驚いた。見れば、ハンナも結構驚いていて、でも、さっきの憂いていた表情は消えていたんだ。

「うん! またお祭りに来ようね、ゼフィルス君!」