第2042話 タバサ先生とポッキーゲーム。
第2042話 タバサ先生とポッキーゲーム。
「タバサ先生の思いやりのおかげでとても楽しい買い物ができました!」
「うふふ。喜んでもらえて良かったわ。フラーラを抱き込んだのは正解だったわね」
〈幸猫様〉と〈仔猫様〉と〈愛猫様〉のぬいぐるみを10個ずつ入手!
すごいんだ。等身大ぬいぐるみはもちろん、他にも種類がいっぱいあってさ、手乗りサイズのバッグに取り付けられるキーホルダー付きぬいぐるみから、ミニサイズや小サイズ、中サイズなどなど大きさにもバリエーションが豊富でパナイ!
こんなの全種類手に入れたいに決まってるじゃん! タバサ先輩の商売上手!
俺は頭の中が幸せになってしまったんだ。
「ゼフィルスさん、ぬいぐるみもいいけれど、食べ歩きも良いと思うのよ」
「! おおっと俺としたことが失礼しました! それじゃあ早速行きましょう!」
「ええ。時間はまだあるから、食べ歩きデートね」
「はい!」
うっかりタバサ先生が居るのに意識が〈幸猫様ワールド〉に旅立ちそうになったのを何とかつなぎ止め、デートの続きへとしゃれこんだのだった。
「あ! あれなんかいいんじゃないかしら?」
「あれは――え? ポッキーゲーム?」
タバサ先生が指し示したものは、どこかで見たことのある名前がデカデカと書かれた、2人で食べる用の食料品を扱う露店だった。
「すごいのよここ。食事とゲームが1度に楽しめるのが売りなのよ?」
た、食べ歩きとは……!?
確かに飲食系っぽいけど!?
「すみません。1本くださいな?」
「毎度~」
「1本で利益が出るのこれ!?」
タバサ先生が渡されたのは、俺が知っているあのお菓子を少し太く長くしてあり、両側がチョコレートにコーティングされて中央が持ち手になっているという。まさに両側から食べることが前提となっている棒状のお菓子だった。
そしてタバサ先生は、その片方をこっちに差し出してきたのだ。
「はい、ゼフィルスさん、あーんして?」
「あーん」
俺は今まで、数々のあーんを経験してきた。
しかし、ここまでその、すさまじいあーんは初めてだったんだ。さすがはタバサ先生! なお、俺はまったく抵抗することなく口を開けたよ。
「反対側を私が 食 ( は ) んだらスタートよ?」
いったい何が始まるというのでしょう?
「はむ」
「よーい」も「心の準備」もせぬままにいきなり「始め!」でスタートした!
「はむはむ」
タ、タバサ先生がゆっくり 食 ( は ) み 食 ( は ) みしながらお菓子の持ち手の部分まで迫ってきます!
俺も少しずつ食べながら進んでいく。すると当然のようにタバサ先生のお顔が大きくなっていって……! 大変! しかし――。
ポキッ。
「あら?」
「ありゃ?」
なんと棒状のお菓子が半ばから折れてしまっていたのだ。
「はいざんねーん。それを折らずに食べられるかがゲームなんだよ~」
それまでジッと見ていた女子店員が言う。そんなゲームだったっけ?
「ちなみに持ち手のところは簡単に折れるようにしてあるから、折れないように息を合わせて頑張ってね! 成功すればとても幸せな報酬が待ってるよ! ということで、もう1本いく?」
くっ! なんて商売してやがる! ここにも商売上手がいるぞ! せっかくだからもう1ダース買わせてもらいましょう!
「毎度~」
「それにしても興味深いものがたくさん売られているわね。この渦巻きが2つあるソフトなクリームも男女でいただくものなの?」
「はい。これも男女2人で食べることで、中央で合流してしまうのです!」
「まあ!」
よく見ればここはポッキーゲームだけではない。
〈海ダン〉の時にタバサ先生が持ってきた恋人用ストローが刺さったジュースや、なぜか渦巻きが2つのツインソフトなアイスなど、恋人と2人でほにゃほにゃすることを前提としたとんでも品々が並んでいたんだ。
ここ、本当に年齢制限B(12歳以上のゲーム)で通用するお店なのか!?
その時だった。
「あ! 〈秩序風紀委員会〉の方々! あそこです!」
「そこか! 通報にあった申請とは違うメニューを出しているお店は!」
「ひえ!? ち、違うの! ちょっと形が変わっているだけで申請にミスはないんだよ!?」
「言い訳は詰め所で聞く。――連れていくのです!」
「「「「は!」」」」
あっという間だったよ。
俺とタバサ先生が見ていたお店の女子店員が〈秩序風紀委員会〉に連れていかれてしまったんだ。やはり風紀的にアウトだった模様だ。
「行っちゃったわ」
「行ってしまいましたね」
タバサ先生も俺も呆然とそれを見送った。
でもちょっと面白かったのは秘密なんだ。
あと、さっき1ダースほど購入してしまったお菓子はどうしよう? 今食べたら俺も捕まりそうなので、こっそり巾着型〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉に隠しておいた。俺は捕まりたくないので今日はもうこれは食べられそうにないんだぜ。
誰だ通報したのは!
「気を取り直して、続き行きましょう?」
「だな! 結局お菓子しか食べてなかったもんな」
再びヒシっと左腕に抱き着いてきたタバサ先生と一緒に露店巡りの続きにしゃれこんだんだ。
その後は順調にクレープ食べたりりんご飴を2人で分け合ったりしながらお祭りを楽しんだよ。
「ああ……もう時間なの?」
「タバサ先生、俺も残念でならないよ……」
「私も、やっぱりあのポッキーゲーム店が途中で潰れちゃったのが痛かったわね」
タバサ先生との時間も終わりが近づいてきた。
本当に1時間なんてあっという間だ。
それなりに色々巡れて楽しかったが、タバサ先生的にはまだまだ遊び足りなかった様子だ。
「……やっぱり夏祭り、2日間じゃ全然足りないと思うのよ。今度7日くらいやりませんかって学園に申請してみるわね」
「7日間だったらだいぶ時間が取れそうだ」
タバサ先生もお別れを惜しんでくれているようでそんな冗談を言ってくれる。
……冗談だよね?
学園の先生の中でもLVがトップの位置にいるタバサ先生が本気で行動したら本当に叶ってしまうかもしれないしね。
「タバサ先生、楽しかったです」
「私も楽しかったわ。それと――ゼフィルスさんが買ったあのお菓子、また今度リベンジしましょうね?」
「タバサ先生!?」
「うふふ。じゃあね」
最後耳元でそっと囁いたかと思うと、タバサ先生は身をひるがえし、そのまま去っていったのだった。
余韻が大変で大変です!
それから午後1時からは、カタリナ、フラーミナ、ロゼッタの番だった。
「ゼフィルスさん! お待ちしておりましたわ。ささ、ひとまず私のお隣で」
「ちょーっと待とうかカタリナ! なにがひとまずかわからない上に言動が怪しいから!」
「落ち着いてくださいカタリナ。フラウもです。言動には細心の注意をしてくださいと先ほど打ち合わせをしたばかりでしょう。2人とも早速乱れていますよ」
ここは本当に夏祭り会場なのかな? というちょっとした休憩室で3人と合流すると、カタリナがするっと気が付かない間に隣にいた。早い! 俺が浴衣を褒めようとした一瞬の隙を突かれた!
「ゼフィルスさん、できれば手を掴まらせてもらってもよろしいでしょうか? できれば、両方とも」
「両方??」
「ええ。こうです」
そう言ってカタリナは俺の左側で、左腕を抱きしめつつ俺の右手を掴むという高度な技を披露してきた。確かにこれなら人波が来ても大丈夫だろう。いや、大丈夫じゃない。
「ちょーーっと待とうかカタリナ! それ、私たちの分でしょ!」
「そうです。せめて片方は私たちの分に残しておいてもらわないと、不公平ですよ!」
フラーミナとロゼッタが物申したのだ。確かに、カタリナだけに両手を使っていたらフラーミナとロゼッタをかばえないだろうしな。
ということで離してもらって……あれ? 離れないぞ?
「もう絶対離れませんわ!」
確かに夏祭りで離れちゃダメだけど!
なお、なんとか右手だけ離してもらって、フラーミナとロゼッタがなぜか交代で使う感じになっていた。くっ! 俺に自由にできる腕がもう1本あれば!
「あ、ロゼ!? くっつきすぎ、というか、押し付けすぎですわ! 私を追い抜いたものをそんなに押し付けちゃダメですわ!」
「ちょーっとカタリナは黙っててね! ロゼもそんなにくっついちゃダメだから!」
「つい」
つい、とは? ロゼッタが珍しくボケていたんだ。
ロゼッタはそれはそれは成長著しく、カタリナをあっという間に追い抜いて、今ではリーナに並ぶほどの成長を遂げている。
フラーミナがカタリナとロゼッタをきょろきょろ見ながら唸っていたが、俺は気が付かないふりをし続けたのだった。