第2045話 夏祭り最後を彩る魔法花火コラボレーション。
第2045話 夏祭り最後を彩る魔法花火コラボレーション。
「あ、ゼフィルス先輩来ましたよ~」
「お、マシロたち発見!」
予約席は〈 戦闘4号館 ( 3年生の校舎 ) 〉に近い場所だ。さすがにこの辺は人もまばらになってさすがは特等席という感じの場所になってくる。
そしてひと際豪華な造りの――いつの間にこんなの作ったの? というウッドデッキの近くでマシロたちが手を振って出迎えてくれたんだ。
トモヨやシヅキ、それにシオンもいるな。
「く~、手なんか繋いじゃって、羨ましい!」
「分かる。私の心の悪魔たちが暴れだしそうだよ!」
「ぴえんしてる」
トモヨとシヅキの視線は繋がれた俺とシエラの手にがっつり向けられているな。
ふっふっふ、いいだろう?
あとシオン、面白いツッコミだったぞ。70点をあげよう。
「間に合って良かったわね」
「もうすぐ始まりますよ、席はこっちです~」
「サンキューマシロ」
純粋なマシロは邪気皆無。
手をつないでいても全く気にしないマシロに案内されて、俺たちはギルドマスター席とサブマスター席へと案内されたんだ。
すると100人という大所帯で貸し切りになった豪華な観賞スペースに、もう大体のメンバーが集まっていた。
「ああ! シエラ、ゼフィルス! もうタイムアップよ! その手を放しなさい!」
すると俺とシエラを見てパァっと笑顔になったラナが、一点を見つめてその表情を一転させていたんだ。さすがはラナ、表情が変わるのが早い。
「まだ3分ほどあるわ。午後7時台は私の時間でしょ?」
だがシエラがクールに躱す。確かに、今はまだシエラの時間と言えるだろう。しかし、
「私たちは5分前には解散したわよ!?」
そう、次の子へのバトンタッチがあるからね。基本は5分前には終わりなのだ。
現在シエラは2分延長中。さあ、今度のシエラはどう躱すのか? と思っていたら、ここでハプニング発生。
「それじゃあゼフィルスに聞いてみましょう。ゼフィルス、手を放したいかしら?」
「んん!?」
ここで俺にデンジャラスパスが放たれたんだ。
え? これ手を放したいと言ったらシエラが、手を放したくないと言ったらラナからむむむとされるやつじゃない? どの選択肢を選んでも爆発するやつやん!
こ、ここは第三の選択肢を模索しなくちゃいけない場面。
さあ、手を放すのか、放さないのか。その3つ目の選択肢は――どうしろと?
『直感』さん!
「放したくありますん」
「どっちよそれ!?」
「ゼフィルス?」
あ! シエラがジト目だ! 今日初のジト目だ! やったー!
だが、この場を切り抜けるためには今は喜びを我慢しなくては……!
「こほん。さあ、もう花火が打ちあがるぞ! 早く席に着こうぜ!」
「あ」
そう言って俺はごまかした。シエラの手を放してしまったが、他に目的があることにして仕方なく手を放した形に持って行ったんだ! これも『直感』さんの助言通りだよ!
俺はそのままササっと席に着いた。
セレスタンが場所を指し示してくれたおかげで素早く着席できたな。
えっと、でもここは?
改めて周りを見てみると、そこは去年とは違う形。
去年は丸い席の半分を囲う形で座っていたが、今年はテーブル自体が無い模様。
そして俺の座った椅子は――なんと豪華な長椅子だったんだ。
これは!
「ゼフィルス君、遅かったから心配したよ?」
「ハンナ」
しかも隣はハンナだった。
長椅子なのでとっても距離が近い。ともすれば、膝どころか腰まで密着してしまいそうだぞ! 誰だ長椅子をチョイスしたやつは! 120点をあげよう。
「隣、失礼するわね」
「シエラ」
そして反対側に座ったのは、シエラだった。
どうやら席順は決まっていた模様……。セレスタンが案内していたからな。まず間違いない。どうやって決めたのか気になったが、『直感』さんが「世の中には知らなくていいこともある」と囁いてきた気がしたのでそのまま何も聞かなかったんだ。
去年と同じく、俺の隣はハンナとシエラ! でも去年とは圧倒的に距離が近い!
シエラなんかすでに腰と腰が当たってる気がするもん!
「ゼフィルス、デレデレしないの! ちゃんと後ろから見てるんだからね!」
「ラナ!?」
ラナとエステル、アイギスにリーナの席は俺の後ろだった。
長椅子が等間隔で設置されているのだ。俺、見られてる。
俺は心がデレッと蕩けそうになるのをなんとか制し、キリっと表情を引き締めたんだ。
「シエラさん、今日はゼフィルス君と何をされたんですか?」
「ダンス会場を見学したわ。いえ、あれはダンス会場というよりもライブ会場、みたいなものだったけれど。とても楽しかったわよ。ハンナは?」
「私は普通に校舎の中を回りました~。その中にカエル対戦という催し物があったんですけど、ゼフィルス君ったら~」
あと俺を挟んでハンナとシエラがおかしく今日の思い出を語っております。
2人とも、本人が間に挟まってますよ??
でもハンナはシエラと話すためだろう、なんだかさっきよりもグイっと近づいていた気がした。シエラもハンナと話すためだろう。さらに距離が近くなった気がしたんだ。気のせいかな? うん、きっと気のせいに違いないな! 後ろのラナからもお咎めないもん!
とここで校内アナウンスが流れた。
『お待たせいたしました――午後8時になりましたので、これより花火大会を開催いたします。皆様、混雑の中よそ見をしすぎますと誰かにぶつかったりと大変危険です。花火大会を見る際は出歩かず、道をふさがないようにして観賞してください』
「始まるわね」
「はい。シエラさん、また後でお話しましょうね」
「ええ」
そう言って両サイドの2人が姿勢を正して正面を向くが、近づいた距離が戻ることは無かったんだ。つまり2人とも近いまま! というかむしろ密着したまま!
これいいの!? いいんだ!
「ようやくね! わくわくしてきたわ!」
「1年ぶりですからね。私もです」
「リーナさん、あれは」
「言い時を見失いましたわ……。まさかシエラさんだけではなくハンナさんまで結託していようとは。上手い手でしたわ……!」
ラナとエステルが純粋に花火の方に集中したのを聞いてほっと一安心。
リーナとアイギスが小声で何かを話し合っていたが、そっちは残念ながら聞き取れなかったんだ。
「あ」
最初の1発が放たれる。
だがそれはまさに始まりの合図だった。
次の瞬間にはドドドドドドドドドドンと一気に放たれる大量の花火。
夜空に煌めく芸術の花々。それが次々と夜空に広がっていったんだ。
「きれい……」
「ああ」
ハンナのつぶやきに俺も頷く。
花火はいつ見てもいいものだ。
「夜空に輝く星みたいね」
「あれはどうやってるのか、重力でも操っているのかな?」
火の粉が夜空で燃え切らず、そして空にとどまるようにしてキラキラしていた。
時々花火だけじゃない、明らかに魔法も飛び交って夜空にアートを描いていたんだ。
それがまた面白く、綺麗だったんだ。
「これは良いわね」
「ああ。新しい催しだな。花火だけもよかったが、魔法が加わったことでより幻想な光景が増した感じだ」
新しい花火のスタイルだ。
花開いた花火の火の粉を操って形を変えていく。それが動く夜景のようでもあって美しかったんだ。
その時、ぎゅっと手が温かなもので包まれる。
見ればそれはハンナの手だった。ハンナが花火に照らされてちょっと淡い光の中、いじらしく俺を見つめた気がした。
すると反対の手もまた温かくも柔らかいもので包まれた。シエラの手だ!
これ、去年もあった。
両サイドからくっつきすぎて後ろからではわからないだろう。
すぐ後ろのラナやリーナたちをごまかし、手を握ってきたハンナとシエラにドキドキ。
シエラを見れば、クールに花火を見続けていたんだ。まさにクール美少女。
でも花火の光に照らされたその顔は、割と赤かった気がしたんだ。
そんな体勢のまま約40分間、俺たちは花火を見続けた。
だが、楽しくも暖かな時間はあっという間に過ぎていき、見ごたえのあった花火大会も終わる。
『これにて花火大会を終了いたします――』
そんなアナウンスと共に、静寂がこの一帯を包み込んだ気がした。
少しだけ、感傷にも似た寂しさを覚えた気がしたが、すぐに2人と触れ合っていた温かさがじんわりと心を解きほぐしていったんだ。
寂しいけど温かい。
「これは、また来年も来たいな!」
「そうね」
「うん。絶対また来ようね!」
こうして今年の夏祭りも終わりを迎えたんだ。