第2049話 あ、あれ?レイドボスの召喚盤が多いんじゃが
第2049話 あ、あれ?レイドボスの召喚盤が多いんじゃが
「理由はまだ言えないがクラス対抗戦で必要になりそうなので今日から〈万界ダン〉のレイドボスを周回したいと思います!」
「理由が言えないってどういうことよ! 私にも言えないことなの!?」
これはまだ秘密なので、知る人は少ない方がいい。
〈エデン〉の頭脳陣4人による方針決定を伝えたところ、明らかに不満そうなラナが物申してきた。だが、これは予想の範囲内だ。
「いやか?」
「え?」
「これから〈万界ダン〉のレイドボスを周回し、大量の〈金箱〉をゲットしまくるんだ。ラナはいやか?」
「そ、そんなこと誰も言ってないわ! もちろん嫌じゃないわよ! 私も、〈万界ダン〉のレイドボスたちには、もっといろんなものを出してもらいたいと思っていたところだったの!」
「そうだよな! よし、今日の午後は〈万界ダン〉行こうぜ!」
「賛成よ!」
「…………」
俺は巧みな話術でラナを言いくるめることに成功した。
そのラナの素直なところが大好きです!
あと背後からシエラのジト目が! 俺はこれも大好きです!
こうして午後は〈万界ダン〉でレイドボス周回することに決まった。
午後いっぱい使えば15回から20回くらいまでボス周回が可能。
〈金箱〉は60個から80個だ! うひょわー!(←歓喜の声)
「よっし、時間は無駄にはできないぜ! 早速いくぞ!」
「「「「「おおー!」」」」」
その日は〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉を周回!
さあ出せ! 召喚盤を出せ! と18回ほど倒してあげると、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉は素直に召喚盤を出してくれたんだ!
おっしゃー! レイドボスの召喚盤コンプリートだぜ!
これで夢の競演、〈ヘカトンケイル〉、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉、〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉の3体がクラス対抗戦でぶつかることもありうるかも!?
ふははははは!
そして俺たちはその日から、実に1週間かけて召喚盤を集めていったんだ!
◇
こうして〈エデン〉はまたも学園長が聞いたらおったまげることを開始した。
学園長としては、レイドボスの召喚盤を数個。後は上級の〈金箱〉産ボスの召喚盤で代用しようと考えていたりした。
学園長もそんな、レイドボスの召喚盤なんてとんでもないものがそんな大量にゲットできるなんて思ってない。思ってなかったのだ。
でも、用意しちゃうのが〈エデン〉なのである。
◇
「1週間で召喚盤17個ゲットーー!」
「これでレイドボスの召喚盤は合計――77枚ですね。十分かと」
「そうか! それじゃあ早速放課後、学園長に会いに行かないと!」
「アポを取っておきますね」
俺はセレスタンに召喚盤を見せながらひゃっほーしていた。
レイドボスの召喚盤探しからわずか1週間。
この間、放課後や土日を使い、毎日レイドボス狩りをこなしていた。
時に〈ヘカトンケイル〉、時に〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉、時に〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉とぶつかりまくり、だんだんと自分の腕がさらに成長している気がしたよ。
LV100になってもまだまだ成長できるんだ!
そしてレイドボスは初日に18周回し、平日は平均5周、土日は平均33周倒したことで、戦歴は103戦103勝だ! 〈金箱〉は412個! 412個である! ふぉー!
またも400個超えの〈金箱〉に目が逝ってしまいそうだよー!
そうして開けてみれば、中に入っていた召喚盤は――17枚。
持っていた枚数と合わせて合計77枚だ! 〈万界ダン〉のドロップは召喚盤が思ったよりも出にくくて追加で17枚しかゲットできなかったが、合計は77枚!
詳細は〈ヘカトンケイル〉8枚、〈ヘルズノート・バベルガリッチ〉6枚、〈 悪魔王 ( ア・クマオウ ) 〉が5枚だ。いや、結構出たな!!
レイドボス13種、全種類1枚ずつ〈エデン〉が貰っても64枚だ!
これなら学園長も納得してくれるはず!
セレスタンに聞けば「間違いないでしょう」とのこと、よし、放課後が楽しみだ!
そして放課後。場所は学園長室。俺は学園長とカイエン先輩の前で召喚盤を並べたんだ。
「というわけで、レイドボスの召喚盤が64枚になりました!」
「ほ、ほほほほほ」
「ああ学園長! お茶ですね! ふふふ、ご安心ください。スペッシャルを超えた超スペッシャルなお茶を用意しておりますよ!」
「そ、壮観ですねゼフィルスさん……(ああ! 学園長がとてもやさしい顔に! しかも笑い方がヤバい! ゼフィルスさんも一緒になって笑ってないで!? その笑い、たぶん違う意味だから! かみ合ってないから!)」
ははははは!
学園長が笑い出したので俺も一緒に笑ったよ!
きっとクラス対抗戦が大成功間違い無しと今確信したのだろう!
俺たちも集めた甲斐があったというものだ!
「あっつぅーい!? いや、じゃが、なんじゃ!? すぐに熱さが引いていく!?」
「これが新しい――〈神秘の蘇生茶〉です。私が名付けました。冷たい水がいらない、パワーアップしたお茶です」
「またコレット君がとんでもないものを作っておるぞい!?」
うむうむ。よくわからないが盛り上がっている様子だ。
そんな光景を満足げに頷く俺にカイエン先輩が話しかけてくる。
「ゼフィルスさん。それでこのレイドボスの召喚盤。どれほど使わせていただけるのでしょう?(当初数枚、8枚あればありがたいと思っていたけど、8倍も持ってこられるとは夢にも思わなかったよ……! え? これ、クラス対抗戦のボスが大変なことになるんじゃない? 使用するボスが全部レイドボスになっちゃうよ?)」
「もちろん、全部お売りします! 欲しければ、また手に入れられますしね」
「そ、そうかい……(これ買う予算、どうしたらいいんだろう……)」
と、ここで学園長も話に加わってきた。
「あー、ゼフィルス君。そのお値段なんじゃがの。ずいぶん高額じゃ。できれば分割払い、QPではなく現金でお願いしたいのじゃが……」
「もちろん構いませんよ! 卒業後でも個人に支払っていただける、ということですよね!?」
「うむ。もちろんじゃ」
QPではおそらく俺たちの卒業までに使い切れない、という判断だろう。
学園長はなんと現金の分割払いを提示してきた。卒業後も継続して得られる所得にひゃっほー!
そういうことなら否は無い! 俺は二つ返事で頷いた。
カイエン先輩が尊敬する視線で学園長を見つめているな。
結局この64枚すべての召喚盤は学園買い取りという形で話が付いた。
アリーナシステムを使えば、64体までのレイドボスを一度にアリーナに顕現させることができるとのこと。
これだけの数があれば、クラス対抗戦で全戦闘課の学生が一度はレイドボスと接する機会を作れそうだと学園長が張り切っている様子だったよ。
さぁて、これで俺の仕事はひとまず終了。
来週はダンジョン週間、その後にクラス対抗戦が待っている。
残り2週間だな。楽しみだ。それまで、何しようかな~。
◇
ゼフィルスが帰った後の学園長室では、誰もが身動きもせずにジッと山のように積まれた召喚盤を見つめていた。
信じられるか? これ、年に1回、学園祭で登場する5000人で戦うボスの召喚盤なんだぜ? 去年は3000人だったけど。
その数――64枚。そりゃ山にもなるわ。
ゼフィルスには査定した後、金額を連絡する旨は話したが、いったいいくらになることやら。
そこで、学園長室の扉がノックされる。
「学園長! お呼びとあってこのミストン、参上いたしましたー!」
「うむ。入るがよい」
「失礼いたします!」
それはテンションの高い研究所の所長、ミストン所長だった。
入った瞬間そのギラギラした目がテーブルに山になっている召喚盤に向き、釘付けになる。
「おお、おおおおおお! これがそうですか!」
「うむ。ゼフィルス君が持ってきてくれたものじゃ。……64枚あるそうじゃ」
「『解析』を掛けさせていただきます!」
もちろん呼んだのは学園長だ。
ミストン所長でないとこの山はとてもではないが処理できない。カイエンでもまだ荷が重かった。
ミストン所長がクリップボードを片手に高速でメモ書きするのをなんとかカイエンも追いつこうとメモを走らせるが、メモ書きの速度が速すぎてとても追いつけない。
研究所所長、恐るべし!
そして解析結果がものの数分で学園長に提出された。
「こんなところですな!」
「…………ふむ。あの事業が軌道に乗れば、いけるの」
そっと査定額を見てカイエンが一瞬で目を逸らす。見てはいけない数字だった。
学園長は最近様々な上級ダンジョンを用いた事業を展開している。それが軌道に乗れば何とか払えそうだった。
新たなクラス対抗戦のデモンストレーション。誰もどこも体験したことも、果ては聞いたこともないボスが登場するのだ。
上澄みの学生たちがスカウトできず、良くて中堅どころしか採用できない大企業の方々も、これを見せれば多少は不満も解消されるだろう。
学園は大企業などの寄付金でかなり潤っている。
最近はその寄付金でも物足りないほどの金額が動くようになってしまったが、それでもあるとないとでは大違い。大企業と学園が上手くやっていくため、このようなデモンストレーションを考えたという背景もあったのだ。
「それで学園長、これはいくつ持っていっていいので!?」
「全部持っていくがよい。管理をミストンに任せる。ただ、クラス対抗戦で使うものじゃからその時にはすべて回収するぞい。そして、クラス対抗戦後は最上級ダンジョンボスの練習相手として全アリーナに配置する予定じゃ」
「つまり64枚すべてをお借りできるのはあと2週間ほどということですね! ではこれにて失礼いたします! 必ずや成果を報告させていただきます!」
そう言って、素早く64枚の召喚盤を〈 空間収納鞄 ( アイテムバッグ ) 〉に詰め込んだミストン所長は、目をヤバい感じにぎらつかせながら嵐のように去っていった。
ゼフィルスとはまた違う、嵐のような男である。
「また、クラス対抗戦の試合方法を練り直さないとのうカイエン君?」
「ええ。そうですね(あの学園長? そんな熱いまなざしで見つめないでくださいません!? これ以上期待しちゃダメですからねマジで!?)」
この後、カイエンはとってもたくさん働いた。